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~名もない蛾と虹の錯乱~ 内の思いと外の色彩をつらつらと。
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New Musicなう
前回のエントリーに拍手ありがとうございます。

最近仕事もあったりで音楽を聴く機会と楽しみが増えてほくほくです。
祖父から来た日本の番組の録画(もうすぐ録画リタイアだそうです)では録音が出たことを聴いて以来聴きたかったジョン・アダムスのサキソフォン協奏曲も聴けましたし、バルトークのバイオリン協奏曲第2番もよかったですし。

そしてなにより今の楽しみは(前回も書きましたが)BBC Proms。
イギリス現地で盛り上がるのはもちろんですが、インターネット上でコンサートの録音が期間限定で聴けるのがとってもうれしい!しかもトラック分けもちゃんとしてますし。

Promsといえば威風堂々の斉唱で盛り上がる最終日のコンサート(Last Night of the Proms)が有名ですが、その他にも色々なコンサートがあります。
去年メル響が参戦したように世界の様々なところから奏者が参加したり、ユースオケの演奏もあったり、ソロの演奏もあり室内楽もあり、そしてバロック以前から現代音楽まで時代も様々、さらにはミュージカルシアターやクラシック以外のジャンルの音楽家との共演もあり、今年はレーザー照明のダンスミュージックコンサートもあり、とにかくクラシック音楽を一夏幅広く楽しめるフェスティバル。

今年もすでに録音をいくつか聴いてそのバラエティの一部を味わってます。
今のところいいなーと思ったのはプーランクのオルガン協奏曲(プーランクは好きな曲とイマイチな曲が分かれるのですがこれはすごかった!)、ストラヴィンスキーの八重奏曲(やっぱ木管強いですねストラヴィンスキー)、ホルストの惑星(いつ聴いても楽しい曲、盛り上がる木星に渋い土星)、プロコフィエフのピアノ協奏曲第2番(プロコピアノ協奏曲全曲演奏だったそうです)、そしてラフマニノフの交響曲第2番(堅実な演奏で素晴らしかった)など。

そして今日聴いて一聴き惚れしてしまったのがこの曲。陳其鋼の「ヴェールを取られたイリス」というソロの女性歌い手3人、中国楽器とオケのための曲です。
陳其鋼は中国出身でフランス国籍だそうですが、1951年生まれで家族が画家で文化大革命に直撃受けてたり(譚盾と同世代になるのかな)、そしてその後なんとメシアンの弟子になった人だそう。

実際曲を聴くとメシアンによく似た和音いっぱい出てきます。メシアンの弟子のくだり読む前からものすごくフランスな雰囲気は出てましたし。あと譚盾に似てる、と思った部分は中国のスタイルってとこでいいのかな。ソロ歌手の一人は京劇のスタイルで歌ってたりそっちの源泉も共通してる。その他にもポストメシアン世代に共通するような細かい打楽器の使い方があったり、そして西洋と東洋の合わせ技は他とは違う独特なスタイル。
諸々のエレメントが自分にストライクで、とにかく美しい曲で好きになりました。また聴きたいですし、陳其鋼の音楽もっと知りたいです。

そういえば歌い手も女性ですしたしか中国楽器の奏者も女性、さらにこのコンサート(乗騎ラフマニノフ2番含む)の指揮者も女性だったはず。さらに惑星のコンサートも別の女性指揮者だった。今年のPromsは女性がものすごく活躍してるのかな。作曲家の方はどうだろう。

現代音楽に関してはこれから聴きたいのが(冥王星を作曲した)Colin Matthewsの弦楽四重奏曲やオーストラリアが誇る作曲家Brett Deanの田園交響曲あたりかな。現代音楽以外でもまだショスタコの7番とかバッハのバイオリンソナタ群とか聴けてない。
これからもまだまだ来ると思うので楽しみです。


今日の一曲: セルゲイ・プロコフィエフ ピアノ協奏曲第2番 第4楽章



今回のBBC PromsでのSergei Babayanの演奏(ヴァレリー・ゲルギエフ指揮、ロンドン交響楽団)が素晴らしかった一曲。
ものすごーく好きで自分にとって特別な曲で自分の理想の演奏にはなかなか出会えないのですが、いい演奏でした。第4楽章特によかったー。
そして自分にとって特別な曲なので(あとブログ初期に当時のテンションで色々語っちゃってるから)なかなか今日の一曲でも紹介しないのですがこれを機に久しぶりに。

プロコのピアノ協奏曲第2番といえば色々な意味でヘヴィーな曲です。音楽の性質だったり感情の性質だったり和音の重さだったりがっつんがっつん来るのが好き。
好きは別の話として、この重さにはオケの働きも関係しています。編成は交響曲のようなフルオケ編成、金管もホルン4トランペット2トロンボーン3テューバ1とフル参戦、打楽器もそこそこに揃っています。そこからフォルテとか容赦なくどっかんどっかんかましてくるのがこれまた凄い交響曲。(もちろんピアノが1人でそれに立ち向かってるってのも凄いんですよ)

そんなオケが一番暴れるのが多分第4楽章じゃないかな。ものすごいオケ弾いてますよ(頻度というよりは音の数と量の意味で)。
パンドラの箱を開けたらありとあらゆる災いが逃げていったという話を思い出すようなスピーディーな冒頭からちょっと民謡的なところがあるメロディーの第2主題から、アクロバティックだったりミステリアスだったり縦横無尽に活躍します。

中でも途中でちょっとファゴットのソロがあったり、あとソロとまではいかなくともものすごくテューバが出張ってるところがあったり(テューバ奏者はプロコフィエフで活躍するってこういうことなのか)、初聴きでは気づかないかもしれないけど知識があると「これすごいな」と思うポイントが色々あったり。

そしてピアノの話も忘れちゃいけない。そもそもプロコフィエフのピアノ作品ってトリッキーな難しさがあるのですが、それを大きく超えるピアノパート。ピアノだからこそできる広い音域に渡るアクロバティックな分散和音や音の跳躍、流れるような分散和音や跳ねるようなスタッカート、分厚い和音での素早い立ち回り。聴いてて難しいと分かるし恐ろしいですが、同時に曲のスピード感と演奏の素晴らしさで妖しい楽しい魅力があるピアノパートです。

とはいえこの協奏曲だとやっぱり狂乱の長いカデンツァがある第1楽章、規則正しいカオスの第3楽章がお気に入り。録音を選ぶときもこの2つの楽章を重点的に評価しています。第3楽章が重々しい演奏が好きなのですよ。
手持ちの録音は巨人ブロンフマン(彼が弾くとほんとなんでも苦労一つ聞こえない自然な演奏になりますね)と手が小さいんだけどどう弾いてるのかわからないアシュケナージ(自分にとっての王道かな)があるのですが、リンクしたキーシンの演奏も前々から気になってます。重めの第3楽章、そしてスピード感があるけど安定した第4楽章の冒頭。ちなみに一緒に収録されてる第3番もこれぞプロコフィエフ的な素晴らしい曲ですよ。

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星空の音楽
今年もやってきました、イギリスの夏休みの音楽の祭典、BBC Proms。
今年もコンサートの録音が後から期間限定で聴けるようになっています。こちらから。
仕事のお供に数曲ずつ聴いています。

そのPromsで数日前にホルストの「惑星」の演奏があったり、その前にQ2 MusicのMeet the ComposerシリーズでKaija Saariahoのインタビューを聴いたり、その前には‎ニュー・ホライズンズの冥王星接近があったり、それらの縁で何回かホルストの「惑星」の追加曲として作曲されたコリン・マシューズの「冥王星」や他の4曲の追加曲を聴きました。
作風とか性質は元の「惑星」と大分違った曲で、何かと事前にハードルが上がっちゃうようですがこの5曲はこれでまた面白くて美しく、宇宙的な曲です。

それで思ったのですが自分は太陽の曲も付きの曲も好きながら、「星空の曲」もものすごく好きなんだなと実感しました。そもそも「惑星」が好きになったのも小さい頃の宇宙好きですが、現代音楽全般好きになった今も宇宙・宇宙的なものは自分の「好き」の鍵になってるような。
ということで(キーワードto音楽には仕立てられなかったのですが)星空や宇宙に関する・思わせる(自分にとって)ような曲を10曲チョイスしてみました。偏りはいつもの通りです(苦笑)

(1)グスタフ・ホルスト 組曲「惑星」より「海王星」
そもそもホルストの「惑星」は天文学的でなく占星術的な惑星の描写なのですが、「海王星」に関しては曲の性質がとても宇宙的というか。イギリスの作曲家だけどドビュッシーやその先のメシアン、クラムにも通じる、SF音楽の祖みたいにも思える暗い神秘ときらめきの音楽。

(2)グスタフ・マーラー 交響曲第7番 第2楽章
マーラーの7番は「夜の歌」。第2楽章は魔法が生まれるような夜で、第4楽章はロマンチックな夜というイメージなのですが、どちらの夜も情景を頭の中で描いてみると星が輝いているような、絵本の絵のような感じになります。マーラーの作品は大自然の中の別荘で書かれてるし、自然の美を表す音楽となるとやっぱり空には星が輝いてるはず。

(3)セルゲイ・プロコフィエフ 交響曲第5番 第3楽章
星空・宇宙の描写に関しては星が瞬く様子とか全体的な雰囲気とか色々要素があるのですが、この曲に宇宙を感じたのは果てしなく何もない距離と空間の感覚から。20世紀音楽の一部に特徴的な無機質さ、そして楽器の様々な限界を使う作風、音の余韻や隔たりを使った表現で屋内にいながら無限の孤独と距離が感じられる、そんな音楽の凄さが味わえる曲です。

(4)ドミトリ・ショスタコーヴィチ 交響曲第5番 第3楽章
一つ前のプロコフィエフもそうですが、地球の上に居ないような、他の星に立っているような感覚に陥る音楽が20世紀からどんどん増えてる印象を受けます。人間としての小ささと孤独だったり、宇宙の果てしなさだったり、地球の上の音楽では感じられない様々があって。中でもこの曲はそのちょっとロマンティズムに近い感覚から天文学よりもSFに近い音楽なんじゃないかな。

(5)カロル・シマノフスキ 夜想曲とタランテラ
星空の中でも「月がない、でも真っ暗ではなくて星だけが輝く夜」という情景を表すならこの曲かな。そういうイメージは自分だけかしらん。ちょうどピンポイントでその暗さを表してる様に思うんですよね。夜想曲と一言に言っても色々なシチュエーションや情景があって、その夜がどれくらい暗いかってのを音楽でどうやって伝えるのかというのも興味深いです。

(6)オリヴィエ・メシアン 「幼子イエスに注ぐ20のまなざし」より第17番「沈黙のまなざし」
まなざしで星空といえば第2番「星のまなざし」かと思いきやどうしてもこっち。星空を見上げるのではなく、弾いていて両手の中に瞬く星と深い宇宙があるような感覚を覚える特別な曲。星の光が様々な色で構成されてるように、和音の中にも様々な色があって。前から思ってるんですが宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」でジョバンニとカンパネルラが途中下車する場所の水のようだと思うのです。

(7)武満 徹 「夢の引用 ―Say sea,take me!―」
題材にしてるのはドビュッシーの「海」ですが、ドビュッシーや前述海王星、メシアンの流れを濃く受け継ぐ宇宙を感じる曲。この曲がすごいのはその宇宙的なものがとても流動的に感じるところ。海のようで、夢のようで、果てしなく広がる。これも天文学的な宇宙というよりは脳内に広がる海とか宇宙に似た何かなのかな。

(8)ジョージ・クラム マクロコスモス第3巻「夏の夜の音楽」より「星屑の音楽」
もう何回も何回もここで話に出してますが自分にとって星空といえばこの曲がダントツなのです。愛しくてたまらない音楽、そして星空。これまで紹介した曲でも星空の描写は弦と打楽器が大事な傾向があるっぽいのですが、この曲の打楽器の描写力はすごいぞー。星の光る様子はcrotaleの鋭いアタックがふさわしい。そしてクラムは他にも宇宙に関する題材で素晴らしい曲をたくさん書いているのですが残念ながら今回はここで割愛。

(9)ジョン・アダムズ City Noir
都会の闇や夜の深さをロマンを含めて描いたこの曲。都会だったら(元ネタの時代でも)なかなか星なんてみえないんじゃないかな、とも思いますが街の灯りが輝く様子も地上の星空とかみたいでいいなじゃないかな、と。何言ってんだと自分でも思いますよ!でもこの曲の街の描写を聴くそういう気分にもなるんです。そういうロマン。

(10)トーマス・アデス Polaris
〆はやっぱりこれで。星空がどーんと主役の音楽です。海のまっただ中にいる船を導く星、海の上でこれまで以上に見渡す限りに広がる星空。人里離れると数え切れないほどたくさんの星が輝くのが(これまた弦楽器と打楽器中心に)直に感じられる、overwhelmingなくらいの星空。録音でもすごいのですが生はもっとすごい曲です。

曲が20世紀に偏るのはいつものことなのですが、今回は実際にじっくり考えてみても星空・宇宙イメージの音楽はほぼ20世紀にしか見つからなかったんです。(例えば月ならもちょっと広く色々あるんですけどね)
一つは楽器の進化がありそう。ピアノにしても打楽器にしても、もっと鋭い音やはっきりした余韻が出せる楽器が出来たり、金属製の打楽器が増えたり進化したり。
あと作風として音の余韻をより効果的に使ったり、使用音域が増えたり楽器同士の音の間を広くとることが増えたり、不協和音のような和音の使い方の幅が広がったり。

それから天文学とか宇宙科学とかがぐんぐん発展したのも20世紀だし、それが直接音楽に与える影響となると限られてきそうですが宇宙の知識や常識、宇宙観が変わることによる宇宙や空の描写の変化ってのもありそう。
そしてそれに平行してSFジャンルの発展もやっぱり影響あるんじゃないかなー。(音楽とSFはなにかと相互に繋がりあるみたいですし)
ここらのジャンルの影響はもっと知りたい。

ということで今日は10曲紹介したので今日の一曲はお休みですがとにかくPolarisと夏の夜の音楽を猛烈にプッシュしたいです。きっと日本の夏の夜にぴったり。
 宇宙好きと音楽好き、そしてSF好きの間に(現代音楽を中心として)もっと接点ができるといいな。もっと宇宙に音楽を(?)

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Benaud Trioコンサート「Miracles」感想
前回のエントリーに拍手ありがとうございます~&ちょっと更新間があいています。
ただいま両親がマレーシアから来てるのでだらだらするやらどっか行くやら食べるやらやってて書くことがあるようで実はない日々が続いてます。

ただ今日は両親を初めてMelbourne Recital CentreのSalonでのコンサートに連れてったのでコンサートの感想を普段通り。
Benaud Trioは大学時代の知り合いがもう何年もやってるピアノトリオ(ピアノ・バイオリン・チェロ)で、アデレードとメルボルンを中心に活動してます。Benaudというのはオーストラリアのクリケット選手(今年亡くなったはず)にちなんで名付けられていて、それで分かるように3人ともクリケットが大好き。オーストラリアのらしい一側面を表してるようなところがあるトリオ。奏者同士の相性がいいのか(バイオリン奏者とチェロ奏者は兄弟ですし)チームワークは初期からぴったりで、今回久しぶり聴いたらすっかりトリオとして確立された音になっていました。

プログラムは以下の通り。
Benaud Trio 「Miracles」
ピアノ:Amir Farid、バイオリン:Lachlan Bramble、チェロ:Ewen Bramble
朗読:Roland Rocchiccioli
リヒャルト・デーメル 「浄められた夜」(朗読)
アルノルト・シェーンベルク 「浄められた夜」(ピアノ三重奏編曲:エドゥアルト・シュトイアーマン)
ヘンリー・ヴァン・ダイク 「Stars and the Soul」(朗読)
ペトリス・ヴァスクス 「Plainscapes」
アルフレッド・ブライアン 「私は息子を兵士に育てなかった」(朗読)
マシュー・ハインドソン 「1915」

今年は豪&NZが第一次世界大戦でのガリポリ作戦から100周年ということでMelbourne Recital Centreでは(これまでのコンサートいくつかもそうでしたが)そのテーマにちなんだ曲が演奏されています。それがHindsonの「1915」なのですが、実は最初の朗読のデーメルもまた第一次世界大戦に参戦してたり、そこも繋がってます。

両親がツボったのはシェーンベルクくらいですが私はVasksがどストライクでした。
シェーンベルクもよかったですよー。ロマン派の終わりに輝く星のような曲。詩のテーマも延々考えてられるものなのですが曲は曲で素晴らしい。元々は弦楽六重奏版なのでピアノに移すとどうなるかちょっと懐疑的だったのですがしっかりピアノパートしてました。ピアノ三重奏でも難の遜色もなく機能する(ただ弾く方はちょっとトリッキーなのかなー)。

シェーンベルクのすごさが言葉で表せない魂の何かを表す音楽の素晴らしさであるならばVasksの素晴らしさはその風景画家のような音楽描写に尽きると思います。彼はラトヴィアの(存命の)作曲家なのですが、ペルト(お隣のエストニア出身)と似た冷たさとミニマル・ミュージック的表現に、民族音楽的なメロディー、それからメシアンやクラムにも通じる線のはっきりして複雑な描き上げ感で今のメルボルンよりも寒い大地が身近に感じられます。最後の方に即興的になる部分は鳥の声だと思うんだけどなー。

そしてHindson。彼が「哀歌」的な音楽を書くのを初めて聴きました。私が知ってるHindsonはアップテンポで都会的な曲が多いので。でも今回の「1915」もHindsonの作品群に例外なく現在の音楽だという印象を受けました。曲のテーマは2015年の若者を対照にした1915年の若者だったのですがそれでもやっぱり音楽の中心は現代から振り返る感じで。

今回のコンサートは詩+曲が対になる構成・・・でいいのかな。少なくとも内容が聞き取れた1曲目と3曲目はその前に朗読された詩と強いつながりがあります。こういう構成も面白い。
そして今回朗読した方はオーストラリア訛りがきついというわけではないながらもものすごくオーストラリアな感じで朗読していました(名字はイタリアっぽいけど)。この声で「浄められた夜」聴いても元がドイツ語だとは想像付かないなーみたいな。それも悪くないというか、特にこのトリオだと良い方向に働いたように思われました。

Benaud Trioの演奏を聴くのはものすごく久しぶりでしたがAmirの演奏の良さは相変わらずで。技巧とか音楽性とかの素晴らしさはもちろんなんですが全てが自然で素直で人間的な演奏になる特別さがあって。あとEwenは大学で一年先輩だったのですがあの頃よりも音が凄く変わっててびっくりしました。力強さはそのままに、繊細で線の細い表現がぐーんと伸びてて。今日聴きながら「自分はこういう音のチェリストになりたかったのかもしれない」と思いました。

やっぱり新しい曲に出会うのはいいですね。Vasksはもっと聴き広げてみたいですし、シェーンベルクの「浄められた夜」周りでロマン派の最後の息吹をもっと探ってみたくなりましたし。
そしてSalonのあの独特な雰囲気で両親にコンサートを味わってもらえてよかったです。

さらにコンサート後はサウスバンクのアイリッシュパブで牡蠣(キルパトリック!)やアイリッシュシチューをいただきました。どっちも大好物です。

さて、次の更新がいつになるかわかりませんが観光の両親に釣られてちょっと写真を撮っているのでそれも近いうち上げたいですね。


今日の一曲はお休みです。

拍手[0回]

知ってるけど知らない作曲家
明日両親がこっちに来たり(なので家を掃除したり)無双ブラストやったり無双エンパやったり、堪え忍ぶ冬をなんとか乗り切っています。
それにしても寒い。本当に両親この時期にこっちに来るのか。(マレーシアは常夏だから逆にいいとは言ってますが)

以前ここで紹介した欲しいCD6枚とかクラム・ビオラ最強のを購入後、クラウドファンディング企画特典のミックステープが来たりなんだりはしたもののCDを新しく買うのはちょっと考えないようにしてました。(ゲームも買いましたしね)
あ、でもこないだオンラインで楽譜頼みました。ラフマニノフのピアノソナタ第1番(弾く用)、ワーグナー(リスト編曲)のトリスタンとイゾルデの愛の死ピアノ版(いつか弾く用)、クラムのApparition(見る&密かに歌う用)、それからなぜか安くなってたクラムのProfile of a Composerの本。これはこれで楽しみ。

ただCDをそのうち買うに当たってここはカバーしておきたいなあ、と思う作曲家が何人か頭の後ろの方で常に待機しているのです。コンサートとかで(目当ての曲としてでなく)聴いたりラジオで聴いたりでこの作曲家好きだな、とものすごく思うのになぜかその後フォローアップを怠ってる作曲家。今日はそんな作曲家5人をちょろっと紹介。というか自分に言い聞かせるのがメイン。

(1)アルバン・ベルク
20世紀初頭に活躍したオーストリアの作曲家。伝統的な西洋音楽の調から脱却した十二音技法で有名な「新ウィーン楽派」の一人です。そもそも新ウィーン楽派(シェーンベルクとかヴェーベルンとか)全般好きなのに全然詳しくない不勉強な私ですが、中でもベルクに一番親和性があるような気がします。iTunesライブラリをシャッフルで聴いて「この曲知らないけどいいな」と思うと高確率でベルク。しかも出会いも中学生の時にメル響が彼のバイオリン協奏曲を弾いて、とかなり前からで。なのにあんまり知らない作曲家。
新ウィーン楽派の他の2人よりもなぜベルクに惹かれるか、というのは説明しにくいのですが無調の度合いと曲線の感じが自分に馴染みやすいのかなー。ただピアノ曲をほとんど書いてない人なので分析するのは至難の業になりそう。
もっとフォローアップしたいベルクの曲は手持ちのバイオリン協奏曲「ある天使の思い出に」、オペラ「ルル」組曲、オペラ「ヴォツェック」組曲。他にも歌曲や数少ない小規模器楽曲もお知り合いになりたい。

(2)アルフレット・シュニトケ
民族的にはユダヤ系、ロシア育ちでショスタコーヴィチの影響を受けていてかなり暗い音楽を書く、さらに神秘主義のフレーバーが強い、となれば自分にとってはどストライク。実際彼の音楽を聴いて好きじゃなかったことなんて一回もなかったのですがどうしてフォローアップしてない。
理由は初聴きでの重さと難しさ、それから多作なのでどこから手をつけていいかわかりにくいところかな。あと期待値ちょっと高めなのもためらいの一因かな。
シュニトケは以前も紹介したとおりクロノスが弾いてる「Collected Songs Where Every Verse Is Filled With Grief」がわかりやすく好きで、他に手持ちだと連弾ピアノ協奏曲を比較的良く弾きます。他の協奏曲ももっと知りたいですし、室内楽・ピアノ曲・合唱曲・オケ曲も気になります。ほんとどこから始めよう(汗)

(3)クシシュトフ・ペンデレツキ
ペンデレツキはちょこちょこ縁がある作曲家なのですがとにかく演奏頻度が低いのでコンサートで出会う機会も少なく。曲の難解さは上の2人以上(個人的な印象ですが)なので聞きこまないと親しみを感じるのは難しい。ただ映画音楽のイメージもあり(他のメディアにも転用されてることもあり)実際は思うほど取っつきづらくはないはず。
で、自分が聴いた数少ないペンデレツキの作品を思うともっと弦楽器の作品を聴きたいと思います。多分そこから攻めるのが一番やりやすい。以前聴いた弦楽四重奏曲第2番、こないだ聴いた「ポリモルフィア」もフォローアップしたいですが、楽曲一覧見ると協奏曲あたりも面白そうですし「カディッシュ」も気になる。宗教楽曲は大いに興味が湧きます。

(4)ラリー・シツキー
オーストラリアから一人。他の4人と同じく難解で暗い音楽に特に魅力を感じる作曲家です。(作曲家自身は至ってユーモアに溢れた人ですが)この国の作曲家とあって演奏される頻度はそこそこあるのですが、主に最近の作品・小規模作品に触れることが多いです。
彼の音楽を好きになったきっかけはピアノ作品「Dimensions of Night」や三重奏曲「Blood from the Moon」なのですが、この2曲も他の曲にもちらほら自分が好きな題材のものがあるんですよ。アッシャー家とかホイットマンとか。気になる気になる。
オーストラリアの作曲家の音楽は色々聴きに行ってますが(コンサートも多いしすごい作曲家が多いのでフォローアップが追いつかない)、いくらか絞ってもっとフォローアップするならシツキーは断然入ります。曲の性質やクオリティの高さもそうですがとにかく噛めば噛むほど味が出る。
それからリアルタイムで新曲を聴くことが多いオーストラリアの作曲家の作品は録音が入手不可能で聞きこもうにも聴き込めないのが悩み。Blood from the Moon、録音出ないかなー・・・

(5)ヴィトルト・ルトスワフスキ
私がなぜルトスワフスキの作品を聴き込まないか、と問う以前になぜルトスワフスキの作品の演奏頻度がこれまでにも低いのか、という疑問を常に抱いています。有名な曲(管弦楽のための協奏曲とか)は有名ですし、色んなジャンルで曲を書いてるのでどっかの楽器の人とかの主なレパートリーに入ってるんじゃないかなと思われるのですが。
確かにちょっと理詰めな感じがあって取っつきづらいところはあるかもしれませんが、ものすごく不協和音的でもものすごく難解でもない、ちょっとバルトークに似ているけどユニークな作風だと思うのですが。私にとってポーランド四大作曲家はルトスワフスキとシマノフスキとグレツキとペンデレツキですよ。
それでも自分のルトスワフスキの不勉強は単純に自分が不勉強だからで。管弦楽のための協奏曲も大好きですし、ピアノ協奏曲も大好き(メシアンに通じるところがあってちょっと弾きたいかも)。他にも好きな曲いくつかあります。でもまだまだ少ない。聴き広げるならまずはピアノ曲(知り合いが録音してたはず)、それから室内楽・オケかな。ピアノ+1人の室内楽曲が多いのでどっかにCDでまとまってるといいんだけど。

ちょろっととは言いましたが文字の量としてはかなり書いてしまった(汗)
奇しくもどれも難しめで暗めの作風の作曲家が揃ってしまいましたが全て自分が心から好きな(はずの)作曲家です。ちょっと難解な音楽を聴くのにチャレンジしてみるならここから、とかも良さそうかな?自分のために書いたエントリーではありますがおすすめです。


今日の一曲: ヴィトルト・ルトスワフスキ 管弦楽のための協奏曲 第2楽章



今回言及した曲のなかで一番容易におすすめ出来るのがこのルトスワフスキの管弦楽のための協奏曲。そこそこ聴きやすいってのもありますが、バルトークの有名な「管弦楽のための協奏曲」と一緒に聴いたり比べたりもできるので入り口があるわけです。

で、この第2楽章は以前このブログで紹介してないけど言及してるんです。1回は第1楽章を紹介したときこの第2楽章がほんとはお気に入りと書いてて、あと1回は虫にまつわる曲の特集で。題材と明記されてないけどこの曲絶対蛾だよねと書きました。今もその思いは変わりません。絶対蛾。聴いたら分かります。

第2楽章は「Capriccio notturno ed Arioso」=夜の奇想曲とアリオーゾ。
2部構成の最初の部分は軽やかで素早く気まぐれに飛び回る蛾(まだ言うか)のようなスケルツォ。すっごく速いです。フルートのタンギングの速さがスーパーすごい。それを物ともせず優雅に舞うバイオリンのメロディーとチェレスタの動くライン。(そう、チェレスタが地味ながら素敵な仕事してるのもこの楽章の魅力なんです)
この空気のような軽さと繊細さ、大きなオケながら一糸乱れぬアンサンブル、それからルトスワフスキの木管楽器使いがたまらないスケルツォです。

打って変わってアリオーゾの部分は強く堅くresoluteな性質。急に直線と角で出来てる音楽になるのは見事なもの。ソヴィエト系統だなというのも感じられるのですが、意外とチェコ系(スメタナとかフサとか)の楽曲で出てくるコラールのようなところもある、力強い歌。
そこからエンディングにどうもっていくかってのもうまいことなってて好き。

さっき言及したのでバルトークとルトスワフスキの「管弦楽のための協奏曲」が一緒に楽しめる録音をリンクしました。ちょっと試聴したらバルトークもルトスワフスキも勢いがあって楽しく聴けそうな録音でした。フレンドリーな音楽とはちょっと違いますが楽しく聴いて欲しい2曲です。


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「Plexus: Progression」コンサート感想など
前回のエントリーに拍手ありがとうございます。

毎回書いてるような気もしますが寒い!南極からの南風が痛い!
こんなにメルボルンの冬って寒かったか。ユニクロができてよかったですよ(ヒートテック・フリース・ダウンは本当ありがたい)。

そんな寒い中またコンサートに行って来ました。毎回おなじみPlexusのコンサートです。
早速プログラムから。

Plexus: Progession
バイオリン:Monica Murro、クラリネット:Philip Arkinstall、ピアノ:Stefan Cassomenos
Lachlan Davidson 「Trio for Fred」
Luke Howard 「Faithful Unto Death」
Martin Kay 「The Burrow」
Tony Gould 「Trio for Stefan」
Allan Zavod 「Flurry」
(全て世界初演)

今回は5曲のほとんどにジャズのエレメントがあって、いつもよりも似通った曲が揃いました。それはそれで楽しかった。Tony Gouldとかジャズがネイティブで自然で息をするようにジャズだったなー。
あんまり響かない曲もあったながらもFaithful Unto Deathは自分にどストライクだったし、The Burrow(コンサートで会った友達にはこの曲が人気でした)の聴き応えもすごかったですし。
ちなみに今回作曲家出席率はもしかしたら過去最高に近かったんじゃないかな?5人中4人来てました。あと今回は年配の作曲家がほとんどでしたね。まだまだ元気なおっちゃん揃い。

クラリネット奏者の方はほぼ毎回複数の楽器持ち替えしてるのですが今回は(借り物の)アルトサックスも登場。ただサックスより今回はバスクラがすごかった。どの曲かちょっと記憶が曖昧になってしまったのですがバスクラが機動力あるmoving bassをがんがん奏でてたのが最高にかっこよかったです。バスクラってただのベースラインじゃなくてチェロみたいに幅広い活躍ができるんだなと改めて。みんなバスクラのパートを音で埋めようぜ。

それで今回はMelbourne Recital Centreでのコンサートで大学時代の友達(一人はブリスベンからこっちに来てた)と一緒だったので奏者・作曲家共々隣のBlondieというレストランバーで飲みました。ちなみに日本酒置いてました(飲まなかったけど)。ただRecital Centreのコンサート・営業時間と連動してるのか昨日はコンサート終わりでRecital Centreが閉まるとキッチンも閉まったりちょっと遅くに来るのには向いてないかも。

今回の集まりはどうも喫煙者が多くて寒い中外で随分長い間立ち話してました(メルボルンは飲食店屋内は禁煙で、他にも喫煙できない場所が色々あります)。6時開演の1時間ちょいコンサートで、なんだかんだで10時半くらいまで帰りませんでした。寒いし煙たかったですがあんまり苦にならないくらい話が盛り上がって。

音楽仲間ってやっぱりいいですねえ。基本個性がきつい人が多くて、性格的・人間的にものすごく合うわけじゃない人も珍しくない中、音楽やそのほか諸々の話で盛り上がるのが楽しくてそういうことが全く気にならなくいつまでも時を過ごせるというか。初めての人に会ったり話したりするのも音楽絡みならほとんど人見知りしない。趣味が共通している集まりって結構そういうとこがあるのかもしれないけど、自分にとっては音楽でとにかく突出している様子。

そんなこんなでご飯はちゃんとは食べなかったので10時半過ぎに帰る時にFlinders Street駅に行ったらコーヒー屋も一つまだ開いてたし食べ物屋さんもいくつか開いてたのでお寿司が買えるところでたこ焼き(1串4つセット)を買って食べました。前述日本酒も色んな所で扱ってる店が増えてますがたこ焼きも増えてくれると嬉しいな。

さて、Plexusのコンサートは宣伝によるとDeakin Edgeで8月に一回、Melbourne Recital Centreで9月に1回で今年は終わりみたいなことが書いてあるのですがそれ本当なのかしら。聞くの忘れちゃったのですが。とりあえずその2つのコンサートを楽しみにしてます。

そしてMelbourne Recital Centreではこれまた別の知り合いのトリオを近いうちに両親がメルボルンに来たときに聴きにいく予定です。両親にはちょっと冒険なプログラムですがお気に召すかなはてさて。


今日の一曲はお休みです。


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