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~名もない蛾と虹の錯乱~ 内の思いと外の色彩をつらつらと。
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How to enjoy music

前回のエントリーに拍手ありがとうございます。

ただいま真・三國無双7 Empiresでエディット武将作りにはまっております。実在の人物(目の前にいた妹やら自分やら)を作ってみたり、漫画の人物を作ってみたり、自分の脳内にもほとんどアイディアがない状態から武将を作ってみたり。今度エンパとAoW3とそれぞれキャラクター作成についての(How toでなく楽しみについて)エントリーを立てたいです。

さてちょっと思い出して書いてみたくなった話。今年の豪ABCのカウントダウンについて書いたときコメントを寄せたリスナーの皆さん(&プレゼンターの皆さん)がどんなシチュエーションで音楽を楽しんでいるかという話がいろいろ寄せられてその多彩さが興味深かったので、それをちょっと思い返しながら&自分の体験・習慣を思い返しながら音楽の楽しみ方をちょっと色々書いてみようと思いました。
ついでにそれぞれのシチュエーションに合う曲をくっつけてみたり。例によって個人的な見解ですが。

(1)コンサートで生で聴く
やっぱり最初にこれを挙げたい。以前Metropolisコンサートシリーズの感想書いたときに書きましたがJonny Greenwoodも生で音楽を聴く体験の大切さについて語っていたり。集中力はかなり必要ですしお金もそこそこ要りますが、臨場感や音の圧、音楽や人間の存在感など生で間近でしか味わえないものも多いです。頻度は少なめで、とにかくIntenseな音楽体験が味わえるのがやめられないです。
おすすめ曲:マーラーの交響曲、ストラヴィンスキーの春の祭典、レスピーギのローマの松(ステージ以外で弾いてる奏者ありなので特に)、あとオルガン曲は建物が楽器なので楽器の中で聴く体験は貴重です。

(2)車のステレオで聴く
私の音楽諸々の大部分は子供の頃車で聞いた音楽に育まれてるはず。カウントダウンの時も家にラジオがないから車の中に座って聴いた人も居ましたし、ラジオを聴く場としても車は優秀かも。特にクラシックだと弱音部分が聞こえないことも多いですが、なんとなく聞き流すうちに特定のフレーズにふと心惹かれたり、予期せぬ出会い方をすることも。
おすすめ曲:ムソルグスキーの展覧会の絵、ストラヴィンスキーの三大バレエ、などなど。序曲集とかコンピレーション的なCDも楽しいのが色々あります。ピアノ曲とかよりもオケ曲の方が聞こえやすいし聴いてて楽しい。

(3)映像とともに聴く
最近では音楽演奏がCDだけでなくDVDや動画でも味わえるようになってて、オペラやバレエからリサイタル、コンサートまで奏者が弾く姿を見ながら音楽を聴くことも普通にできるようになっています。特にオケ演奏の映像は生で聴くときと違って注目奏者にその都度ズームしてくれたりカメラアングルもちゃんとしてて至れり尽くせり。それから音楽に後から映像をつけたり、特に関連がなくても音楽と映像を組み合わせて楽しんだり、多彩な楽しみ方があるわけです。
おすすめ曲:バレエやオペラは言わずもがな。リムスキー=コルサコフのシェヘラザードはコンサート演奏の映像もちょっと面白いかも。自分との戦い的なピアノリサイタル、細やかなコミュニケーションが見れる室内楽コンサートも良い。

(4)食べ物・飲み物をお供に聴く
好きに動き回れる自分の家でくつろぎながら音楽を聴くのももちろん大好きです。(ステレオがあるといいのですがそうでなくてもポータブル音楽機+そこそこのスピーカー・イヤフォンとかPCとかでも十分聴ける事が多い)音楽を聴きながらご飯は最近はないですが、お茶を飲みながらとかお酒を飲みながら(宅飲み少ないですが)音楽を楽しむことが多いです。家で聴いてる時は音楽と一緒に盛り上がったり歌ったり踊ったりしながら楽しんだり、はたまたごろごろ何もしないお供に音楽もいい。カウントダウンの時も自宅で食べたり飲んだりお供にラジオ、という話が色々。メルボルンの冬、家で過ごすには暖かいお茶・コーヒーと甘いものに音楽を合わせたいです。
おすすめ曲:ドヴォルザークのピアノ五重奏曲第2番(若干季節に合わせて)など室内楽曲をBGMにくつろぐもよし、マーラー7番とかショスタコ5番とかがんがん盛り上がる曲で一緒に盛り上がるもよし。曲の国籍(作曲家ではなく)と料理の国籍は合わせるのが良いです。お酒に合う曲はまた別の機会にまとめてみたい。


(5)外で聴く
iPodとイヤフォンをお供に外で音楽を聴くことも多いです。もちろん安全面はちゃんと考えなくちゃいけないですが、外の音や景色を音楽と合わせてみるのもまた趣があります。その組み合わせることにより景色にも音楽にも新しい発見や見方、魅力を見つけたり。今の季節はあんまりあれですが公園とかでしばし座って音楽を聴くとかいいですよー。場所がメルボルンなのでイギリス系の音楽がしっくりくる事も多いですが、意外に国籍関係なく環境と音楽がしっくりくる場合も。
おすすめ曲:メシアンの鳥のカタログを実際の鳥に合わせてみたり、クラムの夏の夜の音楽の最終楽章を星空に合わせてみたり、自然を題材にした曲は一度外に持っていってみると面白いかも。都会は都会でまた合う曲があるのですが、ゆっくり楽しめるのはやっぱり自然の中でかな。

その他にも自分は仕事するときは常に音楽かけてますし、料理の友にも音楽だったり(イタリア系とか食欲を刺激します)、他にも色々音楽を楽しんでるはずなんですがこんなにもう書いてしまったので今回はおしまい。
お酒に合う曲、さっきも書きましたが考えると面白いかもしれないですね。宅飲みの機会は少ないですが一つ課題として考えておこう。


今日の一曲: ガブリエル・フォーレ エレジー ハ短調



メルボルンのほど寒い秋冬の季節に自宅で毛布膝にかけてあったかいミルクティー(またはチャイ)を入れてゆっくり何を聴きたいっていうとフォーレの音楽はかなりトップに来ると思うのですよね。レクイエムもピアノ曲も(弾くのはなかなか食指が動かないのに)室内楽曲も歌曲もとにかくほっこりするシチュエーションで聴きたい音楽。

そんなフォーレのこの曲はチェロとピアノ(またはチェロとオケ)のために書かれた、チェロのレパートリーでは有名でチェリストにとっては避けて通れない曲だったりします。私も弾きました。チェロパートを。(あれ、ピアノパートは弾いたっけ)
ほんとフォーレのチェロ曲ってロマンチックで程よい流れがあって。どれもチェロの美しさが存分に味わえるおいしくておいしい音楽なんです。(間違いではないですよ)

その中だとエレジーは比較的大きめの分類に入るかな。エレジー=哀歌のタイトルの通り悲痛な曲で、重さとシリアスさが心臓を鷲掴みにする音楽。特にABA形式のAセクションの重さは同じフォーレのレクイエムにも匹敵する厳粛さ。
ただその悲痛さの中で思い出にひたるような暖かくて柔らかくて甘さのあるBセクションの美しさが際だって、弾いてたときからあのセクションが大好きです。チェロがメロディー弾いてないところまで全部愛しい。そこからクライマックスに上り詰めるのもたまらん!

この曲については自分が弾いたことより記憶に残る思い出があって。
始めて精神病院に入院したときピアノが弾けないもんだからチェロを持ち込ませてもらったのですが、それを見て一緒に入院してた患者仲間の男の子も両親にチェロをちょっとだけ持ってきてもらって。その子の部屋から夜に聞こえてきたのがこの曲でした。場所とこの曲の性質が相まって今でもその時のことは忘れられないです。これもまた一つの音楽と聴くシチュエーションの組み合わせの魔法ですね。

今回は前述「ほっこり聴きたい」をテーマとしてSteven Isserlisによるフォーレのチェロ音楽集のCDを。(エレジーはチェロとピアノ版)他にもデュ・プレの演奏も手元にあります(こちらは色んな作曲家のチェロ小曲集)。

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メル響「Mahler 4」コンサート感想
今年も寒さに食道がやられているのか息苦しさが出てきました。
今日は屋内が(ヒーターつけても)寒いのがいけなかったのか家事しながら息切れしてしまったり。とりあえずダイソーで買ったフリースのネックウォーマーが手放せません。

そんな中昨日は久しぶりにアイリッシュパブで食べたアイリッシュシチューがおいしかった!やっぱり冬はアイリッシュシチューですね!気候もありますがこんなにテンションが上がる食べものが他にあるだろうかというくらい幸せです。

で、もちろん外に出たのはご飯を食べるだけでなくコンサート行き。マーラーサイクル第4弾、マーラー交響曲第4番でした。
4番はマーラーの交響曲では短い方なのでもう一曲プログラムに入ってました。

メル響「Mahler 4」
指揮:Sir Andrew Davis
セルゲイ・プロコフィエフ Sinfonie Concertante(チェロ:Pieter Wispelwey)
(休憩)
グスタフ・マーラー 交響曲第4番(ソプラノ:Jacqueline Porter)

前回(いつだったっけ)Pieter Wispelweyがメル響と共演したときにこのSinfonie Concertanteを演奏する予定だったのがプログラム変更でハイドンになって、その時の演奏からも20世紀レパートリーが得意そうだなと思ったのですが、確かにこっちの方が曲と演奏スタイルがうまく合う感じ。
(ちなみに手元にある彼の録音はブリテンの無伴奏組曲。これもまたいいです。)

Sinfonie Concertanteはチェロのレパートリーの中で最も難しい曲とも言われてますが、技巧の難しさはもちろん、音楽的な難しさもあり。比較的聴く曲ではあるのですが未だにうまく掴めない。盛り上がり方とか曲のつながり方とかがちょっと難解なイメージ。好きな曲なんですがね。

そんなSinfonie Concertanteの今回の演奏は素晴らしかったと思います。堅実だけど重くはなく、神経質とも軽妙とも奇をてらったのとも違う不思議な繊細さがある演奏で。ハイドンの時も思ったのですが良い意味で変というか変わってるんだろうな。あと曲に現れるプロコフィエフの様々なスタイルのメリハリがあって、新古典的・ロマン派的・20世紀的なプロコフィエフとチェロの魅力が多彩で。曲に新たな魅力を感じました。

今回マーラー4番の最終楽章のソプラノソロを歌ったJacquerine Porterは私と同じ高校出身の先輩で、在学中に学校のオケ(というか先生中心のオケ)とドヴォルザークの「ルサルカ」から「月に寄せる歌」を歌ったのが忘れられなくて。学校の合唱団のCDでも彼女の歌声が聞けるのですがやっぱりルサルカなんだよなー。

そんな彼女の歌声はものすごく力強いとか太い声じゃないのですが(そのためバルコニーの後ろの方だと低音がちょっと聞こえにくかった)、慎ましさが美しい声で。素朴なところがあるこの最終楽章にぴったりなのです。(あとドイツレクイエムとかも聴きたいし、もっと近いセッティングで色々聞きたい)

マーラー4番全体の演奏はとてもマーラー4番らしい、牧歌的な美しさが存分味わえる演奏でした。王道というか、とにかくほどよいマーラー4番。ちょこちょこ「あれれ」と思った箇所もありましたが、特に第3楽章の美しさは至福の時でした。やっぱ4番も素晴らしいと改めて。

そして第2楽章ではチューニングを変えた「死神のバイオリン」を使うのですが、メロディーの強弱の起伏や音程の微妙な加減で「友ハイン」を演じるのは面白かったです。演奏によってその演じ方って色々あって自分の中でも理想の「友ハイン」がまだ固まってないので、今回の演奏を聴いて興味深かったですし、もっとこれから色々なマーラー4番聴きたくなりました。

マーラーの交響曲といえばホルンが活躍することでも有名ですが4番も例外ではありません。ただセクション(4人編成、平均的ではあるけどマーラーとしては少ない)揃っての活躍より第1ホルンのソロの活躍が目立ちましたね。昨日の演奏もかっこよかった。

マーラー4番はマーラーの交響曲としては割と軽め明るめなところがあるのですが、牧歌的で平和な美しさの中にも死が隣り合わせでいるみたいなテーマがあります。第2楽章しかり、第4楽章の歌詞しかり。プログラムでそこらの解説読んでると同じマーラーの交響曲で一つ前の第3番(そもそも第4楽章は第3番の最後に付くはずだった、入らなくてよかった)や第7番のファンタジー的な部分とも繋がるところがあって色々面白いです。マーラーの交響曲って単一楽章で楽しめるものも多く、1つでもお腹いっぱいに存分楽しめるのですが、複数の交響曲のつながり、そして全部の流れもまた別のストーリーとして興味深い。こうやってサイクルとしてやってくれてありがたいです。

さあマーラーサイクルも次は5番、6番、7番と私の特に好きな3つが続きます。ちょっと先のことになりますが言うまでもなく楽しみです。

そして冬の間にアイリッシュシチューをまた食べるのも楽しみにしています(笑)
一人パブにひるまず挑戦したいです。


今日の一曲はお休み。次回今日のコンサートから選びます。プロコフィエフにしようかマーラーにしようか迷うところ(なので今日書けない)。


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まなざし語りふたたび
仕事一段落で平日のウィークエンドですなう。
ありがたいことにまたいくつか仕事が来るようなので休めるときは休んで、そして仕事も無理なくスケジュール立てていかないとですね。冬ですし。

休日といっても仕事をしないというだけでもちろんピアノはできるときは機会を逃さず練習してます。今日も2時間半練習できて満足ですが成果についてはまだまだ。
(そもそもここ数ヶ月メシアンしか、しかも20のまなざししか弾いてこなくて他の曲を弾きたくならないってのもある意味ちょっと心配だったり。例えば単純に練習量が足りないとか。)

以前も書いたように20のまなざしとも10年の付き合いで、もう少しで全曲演奏も見えてくるかという段階なのですが、そろそろ各曲だけじゃなくて曲集全体として考え始めなきゃいけない頃合いでもあり。
もう聴いたり弾いたり(全部揃って聴いた経験もあり)して良く知ってる20曲ではありますが、全体像を見るのは難しい。

ただ一つ分かったのは20のまなざしってメシアンが数年後に書いたオケ曲「トゥーランガリラ交響曲」と構成が似てるなと。20のまなざしは20曲、トゥーランガリラは10楽章からなる作品ですが、全体のテンションのアップダウン(というか曲の性質の流れ)がちょっと似てるような。
特にまなざしの10番20番とトゥーの5楽章10楽章のポジションと関係性はどんぴしゃとも言えるんじゃないかと(最後よりも中間点の曲の方が盛り上がるし曲として良い曲ってところも含め)。

あとは20のまなざしに近い曲といえば同時期でちょっと前に書かれた「時の終わりの四重奏曲」だったり「アーメンの幻影」だったり。音楽言語や使う音型のパターン、それから宗教的テーマの表現の仕方(タイトルの感じも合わせて)もここら辺3作品は近い。改めてそちらもきちんと聴いて勉強しなきゃ。

ところで1つの曲集に20曲っていうとクラシック音楽のジャンルのなかでもかなり多い方だと思います。決して珍しいわけではないですが(24曲セットも結構ありますしね)、それでトータル2時間は結構長い分類に入るのでとにかくでっかい印象になります。(ちなみに同じくメシアンの鳥のカタログは13曲編成ですが2時間半超え)
ただ20のまなざしの場合演奏時間が長くなってる原因の多くはゆっくりな曲がとにかく遅くて長くなることなので弾く方としてはある意味楽だったり。
例外が6番で、速い・長い・音の密度が高い・音量高いという(特に20曲全部弾くには)困難がぎゅっと凝縮されてる曲。

この曲集を弾き始めて「これ全部弾くな」と思ったとき、自分が最初にしたのは20曲を大中小に分けることでした。難易度と長さのコンビネーションによる感覚的な分類で。確か:
小:1,2,3,4,7,8,9,16,19
中:5,11,12,14,17,18
大:6,10,13,15,20
みたいな感じだったかな。後で「これ違うな」ってのもありましたがこの分類を目安に小さい方から弾き進めてました。おかげで大を弾いてる頃にはメシアンの音楽言語や技巧が身についたのですが、でも20曲全部弾くんじゃなけりゃ中とか大から好きな曲を選んで必要に応じて小を足したりするのがいいんじゃないかな?となぜかアドバイスになってしまいました。
メシアンの作品全般、20のまなざしも「難しいんじゃない?」とよく言われますが難しいもん(上記「大」とか)はすごい難しいですがちょっと慣れが必要なだけど実際はそんなでもない良い曲が「中」あたりにあるのでオススメです。「小」は難しくないですし。

前も書いたと思うのですが20のまなざしで一番難しい曲は、というと6番と10番、その中でも10番と言う人に何人か出会ってるのですが、自分にとっては第6番が一番難しいです。というか「習得するのが難しい」が主なのかな。ものすごく音が多くて頭も指も苦労しながら全然最後にたどり着かないという。その掘り進めていく過程ものすごく楽しいんですけどね、大変です。
10番はでも「喜びの精霊のまなざし」というタイトルと曲の性質からして弾くときに「喜び」を爆発させる余裕を備えてないといけないってのはあるかな。

意外に苦戦してるのが8番15番。8番はもうまなざし始めて最初の年に弾き始めたし最短の曲でそんなに難しくない曲なのですが(鳥の鳴き声的なパッセージほとんどなんで特に鳥カタ弾いてると難しくないはず)どうも自分にとってはすごくビビりやすい曲だったり。明らかな不得意曲。
そして15番もそこそこ難しい曲だけどそれほどではないのに全然美しく聞こえてくれないのが悩み。静かな部分も喜びの部分も愛の表現もこの曲こそがメシアンの(20のまなざしの)真髄!みたいな音楽なので余計に悔しいんですよね。

曲集に20曲も入ってると好みや合う合わない、得意不得意もかなり出てくるのが面白い(なので全部弾かないにしても各々に合うの見つけてもっと弾かれるべきだと思いますし、色んな人の選曲をもっと見てみたい聴いてみたいです)。
私にとっての不得意は上記の通り8番と15番ですが得意は4,5,11,14,17,18,19番あたりかな。17番はなんだか特別な曲で得意って言っちゃうのはなんだかおこがましい気もするのですが、得意の意味でも好きの意味でも17,18,19番をセットで自分の十八番と言いたいです。本当に特別な曲。

そして第6番も難しい難しい言ってますが好きな曲で自分に合う曲で、脳の作業面では得意な曲だと思うのです。だから弾けるようになったら本当に自分に身につく、自分にとって大事なレパートリーの一部になるような気がして、というかほぼ確信になってます。なかなか音がごちゃごちゃ精度が上がらないのですが、自分の物にできるようになるのが楽しみです。

ということで20のまなざしに関する色々を止めどなく語ってしまいましたが、とにかくこの曲集を弾くこと、完成させることが今でも楽しみで。自分の弾く20のまなざしってどんな演奏になるんだろう。
もうちょっと他のレパートリーも考えて思い詰めすぎないようにしたいですが、今の演奏頻度だとなかなか・・・という面もあり。
なのでまだまだこれからもしばらくピアノといえばまなざしの話が続くと思いますが次回はもうちょっと進歩した段階から書けるよう弾く方も考えるほうも引き続き頑張りますぜー。


今日の一曲: オリヴィエ・メシアン 「幼子イエスに注ぐ20のまなざし」 第18曲「恐るべき塗油のまなざし」



第18番は前紹介したっけ?表記が曖昧だったりしたら検索しようがないので確認してないのですが。
第17番もものすごく特別な曲(自分にとって、そして音楽全般で)なのですが、18番にも同じくらい特別な物を感じます。前後の3曲セットとしての話はまた後でするのですが。

メシアンの音楽はいくつか性格・性質で分類できるのですがこの18番のまなざしは6番、10番、12番と似たようなパワー系。中でも「神の全能の力」を表す12番に似ています。
第18番が表すのは戦う神、雷を落とす神、神とその力に対する「畏れ」の表現。12番と比べて「畏れ」の要素が強いような気がします。

題材というかインスピレーションに新約聖書の「黙示録」があるというイメージから自分にとってはずっとfire and brimstones的なイメージがあって、実際降下する音型は雷よりももっと重い実体と硬さを持ったものが落ちてくるような感じ。ずっとff以上キープですから大変ですが(家ではちょっと力抜いてますが)どっかんどっかん弾くのはとっても楽しいですよ。

そしてこの曲の何が凄いってその無機質さ。最初と最後のリズムの逆行(とそのシンメトリー)や、繰り返されるトライトーン(=減五度の音程、オクターブの半分)の音型、全く同じに別の音から繰り返されるセクション、とにかく公式があってそれに違わず音楽が作られている。それがメシアンが人間ではなく「神」を表現するときの様式で(12番も似たような手法で書かれてる)、その完璧さにまた畏怖を感じます。

持論なのですが、先ほど書いた通りこの18番は神の畏れるべき「力」を、そして17番「沈黙のまなざし」は抽象的にしか表現し得ない神の「神秘」を、そして19番「我は眠っているが、私の魂はめざめている」では神の「愛」と三つの違った側面を描いていて、どれもちょっと抽象的なアングルから捕らえているのがまたバランスが良いと思うのです。ということで私にとってはこの3曲は揺るぎなきセットです(ついでながらセンターピースの18番の冒頭と最後がシンメトリーになってるのもちょうどいい)。

ということでいつかこの3曲も自分の演奏でお届けしたいのですがリンクはもちろんamazonから。このJoanna MacGregorってピアニスト、以前こっちで行った友人のコンサートで友人に紹介してもらってちょっとだけお話したのですがこの人も10番が一番難しいって言ってました。手もそんなに大きくなさそうでしたしやっぱ大変だよなー。


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メル響コンサート「Britten's War Requiem」感想。
祝!1000エントリー目!(あくまでも数字の上ですが)
今回のエントリーは昨日行ったコンサートの感想ですが、今回聴きに行ったブリテンの「戦争レクイエム」はこのブログを始めた5年前にも聴きに行って感想書いてるんですよね。そんなに経ってるのか。実際前回聴きにいったのもうちょっと最近だと思ってたんですが。

さて、今回のメル響のブリテン「戦争レクイエム」の演奏は首席指揮者Sir Andrew Davisの指揮で、ブリテンが当初指示したようにソプラノがロシア人、テノールがイギリス人、バリトンがドイツ人の歌手による演奏でした。前回も書いてると思うのですが(もちろん歌ってて言語に訛りとかが出るわけではないのに)それぞれの国の歌手のスタイルにパートがぴったり合うように書かれてるのが不思議。

プログラム詳細は以下の通り。
Britten's War Requiem
指揮者:Sir Andrew Davis
フレデリック・シプティマス・ケリー 弦楽のためのエレジー(ルパート・ブルックの思い出に)
ベンジャミン・ブリテン 戦争レクイエム
(ソプラノ:Tatiana Pavlovskaya、テノール:Ian Bostridge、バリトン:Dietrich Henschel、Melbourne Symphony Orchestra Chorus、National Boys Choir of Australia)

そうなんです。今回演奏されたのは戦争レクイエムだけではなくもう一曲第一次世界大戦に縁の深い曲を。ケリーのエレジーは去年弾いたコンサートでも演奏された曲なのですがちゃんと聴くのは初めて。ケリーはオーストラリア生まれの作曲家ですが、イギリスに渡って1908年のオリンピックではイギリス代表としてボート競技でメダルを獲った人(なので豪・英どっちもで表記されることが多いです)。第一次世界大戦に際しガリポリ作戦(オーストラリア軍によるトルコ上陸)に向けてギリシャに滞在した時に詩人ルパート・ブルックの葬儀に参加したのをきっかけに書かれたそうです。

プログラムにも説明があったようにこの曲はどことなくギリシャの雰囲気がするのがとても美しいです。ヴォーン=ウィリアムズに似た、でももっと素朴なまごうことないイギリス音楽のスタイルの中で最初のメロディーの音階とか平行和音の使い方とか(ドビュッシーの前奏曲にあるような)や、ギリシャの海を思わせるような音型だったり。ありふれたようでありふれてない、特別な場所にひっそりと咲いてる曲でした。メル響の弦の音も美しかったですしやっぱハープの存在感素敵すぎる。

さてメインディッシュの戦争レクイエム。曲自体も難しく、オケ(大オケ+小オケ)・ソリスト・合唱・児童合唱(小オルガン付)という大きく複雑な編成のため実際に演奏するのがとても大変そう。
今回はHamer Hallでのコンサートでしたが、オケ・小オケ・ソリスト3人はステージ上、合唱はステージ上+ステージ両脇の席、そして児童合唱と小オルガンはなんと(私が座ってた)上バルコニーの後ろ側にいました。もちろん指揮者が見えるようステージを映したモニター使用です。

そんなわけでバランスとかアンサンブルの細かいずれとかはどうしても避けることができないのですが、全体的にとてもパワフルで素晴らしい演奏でした。
各クライマックス部分でのスケールはほんと生で聴いてよかった!と思いましたね。合唱の声の圧みたいなものがこの曲で存分に味わえて。
(ただ合唱に関してはConfutatis Maledictisの所で最初のCが聞こえなかったり(今日のラジオ放送でも同じく)発音関係でのふわふわしてた部分があったのがちと残念。)

今回一番すごい!とおもったのが児童合唱でした。この曲の児童合唱のパート(特に入り!)ってかなり難しいはずなのですが果敢に入り綺麗に歌っていました。特に最後のParadisumの部分は明るすぎない絶妙な色彩でよかった-。

演奏全体としては比較的ざくざく進む感じで、Agnus Deiがちょっと落ち着かない感じだったのですが(今日のラジオ放送の演奏はよかったです)、Libera Meの最後のクライマックスをかなり引き延ばしたのがものすごく効果的でした。ああいうクライマックスがもっと聴きたい。

ブリテンの戦争レクイエムは生できくとかなりがっつりメンタルにくるのですが、それでもやっぱり好きな曲です。全楽章あますことなく、全ての音が好き。昨日のコンサートではDies Iraeのクライマックスの和音の変化一つ一つがもう愛しくてたまりませんでした。
そして自分の気持ちとはまた別に戦争レクイエムは20世紀の偉大な音楽の一つだと思うのです。・・・と思ってたら今日のラジオ放送でショスタコーヴィチも同じことを言ってたと説明がありました。ショスタコもこの曲を聴いたってこともなんか嬉しいですね。

次にこの曲を生で聴くのはまた5年先になるかな。また聴きに行くのを楽しみにしています。
そしてメル響は来週マーラー4。曲自体も楽しみですが母校の先輩Jacqui Porterの歌声を聴くのも楽しみ。そしてさらにチェロレパートリーの中で最難と言われるプロコフィエフのSinfonie-Concertanteも聴けるとはわくわくですよ。

さて、メンタルにも本格的に冬が来ていますが無理せずぼちぼち行きたいと思います。


今日の一曲はお休み。戦争レクイエム・・・はどの楽章紹介したかな。とにかく一つ選んで次回に。


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豪ABC Classic FMカウントダウン「Swoon」聴了!
前回のエントリーに拍手ありがとうございます。

メルボルンは今週末は連休で(女王様の誕生日なのです)隣に住んでる人もずっと家にいたようでピアノが出来ず。仕事も何日も続く規模の案件なのでなかなか頭が落ち着かなく。

そんな中で楽しみだったのが毎年恒例の豪ABC Classic FMによるカウントダウンの放送。金曜日から今日まで100曲(単一楽章だったり全曲だったり)を4日にわたって放送されました。
今年のテーマは「Swoon」。心をここではないどこかに持って行く、時が止まるような感覚に陥る恍惚の音楽。とはいえどう説明してもどっか違う感は否めないのでとりあえず投票時のエントリーであーでもないこーでもないした痕跡にリンクしておきます。ついでに私が投票した10曲もそちらに。

さて、全体の結果は豪ABCのこちらにありますが10位までここに引用します。
10位 トマゾ・アルビノーニ アダージョ ト短調
9位 ガブリエル・フォーレ レクイエム
8位 エンニオ・モリコーネ 映画「ミッション」のサウンドトラック
7位 エドワード・エルガー エニグマ変奏曲
6位 ジュール・マスネ 「タイス」 
5位 グレゴリオ・アレグリ 「ミゼレーレ」
4位 アルヴォ・ペルト 「Spiegel im Spiegel」
3位 サミュエル・バーバー 弦楽のためのアダージョ(アニュス・デイ)
2位 ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト クラリネット協奏曲
1位 レイフ・ヴォーン=ウィリアムズ 「揚げひばり」

毎年カウントダウンのトップ10は賛否両論なのですが今回は自分の中だけでもなんだか複雑な気持ちになるラインアップでした。わかるにはわかるけどトップ10!?みたいな。入ってこなかった曲を思ってうーんと頭をひねる感はあります。ラフマニノフとかショパンとかどこいったー。
でもやっぱりすごく美しいし確かにswoonだもんなあ、と納得せざるを得ない。

ちなみにミニデータ(なんちゃって)。
私が投票したうちで100位以内に入ったのはアルヴォ・ペルト 「Cantus in Memoriam Benjamin Britten」(57位)と リヒャルト・ワーグナー 「トリスタンとイゾルデ」より「前奏曲と愛の死」(50位)のみ。
オーストラリアの作品はSculthorpeのSmall Townと小組曲、ロス・エドワーズのDawn Mantras、Kats-Cherninの「Wild Swans」組曲、Westlakeの南極組曲、と概ねおなじみのラインアップ。
ジャンルで言うと声楽、特にオペラが多かったですね。合唱曲・歌曲も合わせるとかなりの数になるはず。

今回のカウントダウンのテーマは時代・国・楽器など特定の要素でくくるのではなく「Swoon」という割とふわっとした、個人の主観がかなり強く作用するようなテーマでしたが、それが投票やカウントダウンの納得にちょっと難儀するところもありながら結果面白い展開にもなりました。
カウントダウン放送中のTwitterハッシュタグをちょっと覗いてみると「これは自分にとってはswoonとは違うなー」とか「swoonの意味をもう一度考えさせられた」とか、一人一人の音楽の感じ方と思いの違いをこのテーマを通じて知り考えるきっかけになったり。
音楽の美しさの様々な形を味わったような気がします。

それから同じくTwitterのハッシュタグで面白かったのがリスナーさんたちの「Swoonのお供」。子供と聞いたり、温かい飲み物を入れたり、料理を作ったり、家にラジオがなくて車の中で聞いたり、好きな曲が続くからトイレ休憩にも立てなかったり。病気で療養中の人も居たり、犬猫も一緒にswoonを味わったり。「音楽に聴き惚れて週末の家事とかが全然片付かない!」というツイートも多かったです。みんながそれぞれ音楽の楽しみ方を共有してたのが興味深くて見て楽しかったです。
そういう音楽の聴き方、楽しみ方を引き出すのにもこういうテーマはよかったのかな。美しい音楽だからこそ味わい方にもこだわりが出てくる。

さらにラジオ放送の解説を見たりツイートの感想を見たりしてると音楽の美しさを表すボキャブラリーの多彩さも面白いです。Bliss(ful)、Heaven(ly)、Delight(ful)、Ecstatic、Divine、Orgasmic、などなど。こういう言葉が引き出されるのもこのテーマの音楽がなせる技。私もボキャブラリーを広げて磨かなければ。

ということでこんな曲ももっと上に入ってほしいなーと際限なく重いながら来年のテーマはなにかなーと早すぎる期待に胸をちょっとふくらませ。
あと101位から200位のリストも発表されないかな?毎年リストがざっと出るし、あと豪ABC Classic FMの朝のプログラムで小出ししていくようなことも言ってたのですが。

カウントダウン自体はABCのサイト(ここが最終日で下の方にいくつかに分かれてて、他の日へのリンクもあり)でもう一度聴けるようですし、ABC Classic 2(ネットラジオ)でも何回か再放送される様子です。

今日の一曲はトップ10からチョイス。


今日の一曲: サミュエル・バーバー 弦楽のためのアダージョ



正直この曲が3位になるとは思ってませんでした。確かに有名だし美しいけどあんな曲を押しのけてそんな曲と肩を並べるとは。

映画「プラトーン」に使われて有名になったこの曲。映画に使われた、ということだけでなくその使い方があまりにもツボにはまってて映画のシーンも音楽のシーンも相乗効果で強烈な印象になった例。こんなに強烈なケースって珍しいんじゃないかな。

以前書いたかな、私はこの曲あんまり好きじゃないんですよね。あれな理由ですが、とにかく悲痛すぎる音楽なので。あとその悲痛さがゆっくりのテンポで引き延ばされて一種の拷問に感じるので。
(ただこのゆっくりのテンポでの悲痛に耐えられないといいながらこの曲の合唱版である「アニュス・デイ」を聴くと息の都合上しょうがないとはいえ「速いなあ」と思ったりするんでもう理不尽なのは重々承知なのですが)

あと弾くにしても大変な曲です。弦楽器にとってフラットが多い曲は音程・和音の調整が難しく、長い音は弓のコントロールが難しく、弱音のコントロールもなかなかしんどい。最初の方はひたすら音量を抑えないとクライマックスが盛り上がらないですからね。そしてクライマックスで一旦静寂を挟んでからのエントリーのしんどさったら。

なので自分にとってはいろんな意味で鬼門な感がぬぐえない曲なのですが、弦楽オケのための作品ではトップクラス、そしてその悲愴な美しさは聴く人を別世界に突き落とし、時間と空間を止める正にswoon。
弱音まで聞こえる静かな場所でゆったりとした姿勢でその美しさと悲しさをがっつりかぶるような聴き方でどうぞ。

リンクはバーンスタインの指揮。なぜか惑星と威風堂々第1番のイギリス音楽との謎カップリング。どんなになってるんだろう。


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