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~名もない蛾と虹の錯乱~ 内の思いと外の色彩をつらつらと。
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今年の豪ABCカウントダウン放送中&最近海を渡った豪音楽
こないだメルボルンの冬を過ごす話をしておきながら冬の初めになぜか到来した寒波に音を上げている流 星姫です。このタイミングでこの寒さはちょっと異常。
さすがに今のメルボルンは旅行するにはちょっとはずれかなー・・・

そんなメルボルンですが今年もこの時期がやってきました。豪ABC Classic FMによるカウントダウン100の放送が今日から始まりました。
以前も紹介しましたが今回のテーマはSwoon。投票時に書いたこちらのエントリーにあるように恍惚の音楽、時が止まるような音楽のコレクションです。
今日から4日間、ABC Classic FM(ネットではこちら)にて日本時間午前8時から午後3時まで放送。今日は100位から75位まで放送、カウントダウンはこちらのページに発表されています。

バッハのG線上のアリアやシューベルトのアヴェマリアなど有名どころが並んでますね。ここからさらに上位を予想するという観点でみるとサティの「Gnossienne」(ジムノペディやJe te veuxがさらに上に来る?)とかモーツァルトのランクイン曲はちょっと気になるところ。正直モーツァルトに関してクラリネット協奏曲はもっと上位に入ると思ってました。他にどんな曲が上に入ってくるんだろう。

それから全く知らない曲も入ってました。第86位のコルンゴルト「死の都」からのアリア。ちょっと聴いた限りいい曲だったんで要フォローアップ。コルンゴルトは全く知ってる曲がないのですがバイオリン協奏曲をおすすめされたこともあります。
そしてオーストラリアの作曲家の作品もランクイン。第91位のSculthorpeの小組曲、聴いてて楽しかったです。こういう手のひらサイズのミニチュア世界は愛せずにはいられない。そしてオーストラリアからさらにランクインするかな?ロス・エドワーズかWestlakeあたり入ってきそうな気がするのですが。というか入ってきてくれ。

話は変わって、そのロス・エドワーズの話。
地球の裏側アメリカのヒューストン・バレエが今Stanton Welch(オーストラリアのダンサー・振り付け師だそうです)のもと「Zodiac」という作品を世界初演したそうなのですが、この作品にロス・エドワーズの音楽が使われてると聞いてものすごく興味津々です。
ようつべにインタビュー動画プレビュー動画がありました。音楽はプレビュー動画で主に聞こえます。
現代のバレエ!というのとオーストラリアの音楽がまた一つ海を渡った!という喜びもありますが興味ポイントは他にも。

この「Zodiac」、インタビュー動画によると十二星座のそれぞれをイメージした12つの踊りから構成されているそうで。それぞれの星座がどんな踊りになってるか、そしてロス・エドワーズがどんな音楽を書いてるか、そういうところが気になります。
だって十二星座ということはつまり構成としてはクラムのマクロコスモス第1巻・第2巻と同じなわけで。さらに踊りまでついてくるとなればこちらがどんな作品になってるか興味がわかずにいられない。

そしてリズムが強く特徴的なオーストラリアの音楽の中でもロス・エドワーズの音楽は特にバレエに向いてる音楽だと個人的に常日頃から思ってるのです。弧を描くような、跳ねるような音の形・流れが他のダンススタイルよりも描く線が丸いバレエ(モダン寄りな感じで)に似合っているような。
ただインタビューで言ってたように拍子が常に変わるのは難しそう。踊るのにも振り付けを考えるのにもこういう拍子の変わり方に体の動きが自然に合うようにできるのかな。

ということでなんか動画とか録画とか、はたまたCDで音楽だけでも味わってみたい作品です。
さらなる情報求む!

さあ明日も朝からカウントダウン聴きながら仕事だ。面白い曲入ってますように。


今日の一曲: ロス・エドワーズ バイオリン協奏曲「Maninyas」 第1楽章



絶対紹介してるだろうなーと思ってブログ内検索したら20エントリー目とかで紹介していたのでまあいいやと再び紹介。
ロス・エドワーズの音楽を広めるならまずこれを紹介したい!というオススメナンバーワンな曲です。

ロス・エドワーズの音楽は虫の声や大地など自然のエレメント、神秘や儀式的なエレメントを取り入れた作品が多いです。雰囲気だったりタイトルだったり、決して何を指してるかはっきり言うことはありませんがそういう雰囲気が漂っていて。(それが新神話主義でいうmythicalということなんですね、きっと)
だからくるくる変わる拍子に合わせた踊りは人間のそれというよりは精霊だったり自然だったり、人間とそれらのつながりだったり、そういった不思議な儀式における踊りのイメージが強いです。

中でも「Maninyas」の第1楽章は一つの曲で様々なキャラクターが楽しめる、ロス・エドワーズの楽しいところが全部聴けるような曲です。大海原のようにゆったりした音楽や、飛び跳ねるような音楽、そしてバイオリンの機動力と回転の速さが生きる素早い踊り、どれもが魅力的。そしてどれもがオーストラリアらしい。

バイオリン協奏曲なのでバイオリンはもちろんかっこいいのですが、後半でのボンゴのスーパー活躍も聞き逃せません。原始的な雰囲気に拍車がかかる、エキサイティングなセクションです。

ロス・エドワーズはオケ作品、室内楽など結構広く作品書いてて、聞きやすい作品が多いので気軽に聞いてみてください~と言いたいです。
他にも木管楽器独奏のUlpirraとかバイオリンorビオラのためのEnyato IIの第2楽章「White Cockatoo Spirit Dance」、それから「The Heart of Night」をはじめとした尺八を使った作品も面白いですよ。

リンクしたのは手持ちの録音。録音も少ないみたいだけど豪内外で増えるといいな。

拍手[1回]

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Watched, played, danced
前回のエントリーに拍手ありがとうございます。
前回更新したときにエントリーの番号を見たらもう1000目前でぶったまげました。(実際は番号登録されてから消してるのがほんの数個あるので厳密ではないですが)
書くことに詰まってる場合じゃないですよほんとに。

昨日はバレエのレッスン3回目、まだまだ自分にとってフレッシュな楽しみがありながら慣れつつもある、ということでバレエの話です。
ちなみに先週は筋肉痛なしだったのですが今日はふくらはぎあたりちょっと堅い&微妙に痛いです。昨日のレッスンは跳躍系統が多かったのでちょうどばねになる筋肉が痛いみたい。特に基本ポジションから両足で踏み切って跳ぶ「シソンヌ」は直前動きがないところから跳ぶ=勢いがつきにくいので自分含めみんな苦戦してました。
あ、それから昨日は特に寒かったのでそれも筋肉痛に影響したかな。

以前バレエは6歳から10年ほどやってたと書きましたが、その間もその後も色々とバレエに縁はありました。
ずっと通してみるとバレエを踊ったことも(発表会ですが)ありますし、見たことも(実はそんなに回数ないですが)ありますし、ユースオケでバレエ団と共演した(=弾いた)こともありますし。(ついでにバレエ関連漫画も読んでます)
色々な形でバレエに関わってきたなあ、と改めて思います。すごい好き!と思ったことは少ないのかもしれないけどなんだかんだでずっとバレエ好きではあったんだな。

昔から家にバレエの物語の本や写真・レッスン的な内容の本もあってよく読んでいて。
物語で好きなのはコッペリアかな。誰も不幸せにならないってのもポイントかもしれないけど日常的非日常というか、ちょうどいい物語。
他にもくるみ割り人形とかペトルーシュカとか火の鳥とかもストーリーが好きなバレエ作品。

衣装で言うとジゼルが常にダントツです。後半で(照明ももちろんですが)ステージに白いロマンチック・チュチュを着た精霊ウィリたちがずらっとそろう圧巻。羽が生えてることも多くてそこも好き。あこがれでした。(なので長いロマンチックタイプのチュチュの方が好きなのです、今でも)

実際の踊りとなると男性キャラクターの踊りの方が好きです。ただしバレエ作品の物語の性質上ヒロインの相手となる男性キャラクターは大変ふがいないキャラなことが多く、本当にかっこいいのは悪役の方だと確信してます。白鳥の湖のロットバルトとか、くるみ割り人形のネズミの王とか、同じくくるみ割り人形の(悪役じゃないけど)ドロッセルマイヤーとか。
女性だと火の鳥とかジゼルのウィリの女王ミルタとか春の祭典の生け贄の子とかかなあ。

前先生とも話してたのですが、バレエで踊り手にとって素晴らしい作品は必ずしもオケで弾いてて楽しい作品とは限らない問題がありまして。
白鳥の湖やくるみ割り人形、ロミオとジュリエットやストラヴィンスキーの三大バレエなどオケのコンサートでも組曲として演奏される作品も数あるながら、コッペリアやジゼルみたいにオケとしては音楽が空気みたいな作品もあり。
ユースオケで白鳥の湖やロミオとジュリエットなどをバレエ団と共演した時は舞台の上の踊りと弾いてる音楽がちゃんとリンクしてる感があって、コンサートはまた違う次元での楽しみがありました。ストラヴィンスキーもバレエ団とやってみたかったなー。

さっきも書いた通りバレエの公演自体を見に行ったことはほとんどないのですが、小さい頃に(自分がどっかで出た?)発表会だか公演だかで、天安門事件を題材にしたモダンバレエ作品を見たのをぼんやり覚えてるのです。詳細どっかでわからないかなー。
モダンバレエとの出会いはここからだったのですが、それが地味に伏線としてずっと残るとは自分でもびっくり。
モダンバレエ、挑戦したいのもあるのですがとにかく今はもっと見てみたい。

ついでになっちゃいますがバレエ題材漫画で読んだ作品では萩尾望都「フラワー・フェスティバル」と山岸凉子「牧神の午後」がお気に入り。どの単行本か覚えてないけど萩尾望都のバレエ題材作品の巻末には大人としてバレエを始めてみる体験実録漫画もあったはず。
(萩尾望都の漫画は母のコレクションなので読み返すことも確認することもできない。残念。)

さて、今日の一曲もバレエ関連にしてしまおう。


今日の一曲: セルゲイ・プロコフィエフ バレエ「ロミオとジュリエット」よりバルコニーシーン



自分がバレエ作品を紹介するとどうも春の祭典に偏ってしまうので、今回は実際コンサートだけでなくバレエ団と公演した作品をチョイス。
考えてみれば「ロミオとジュリエット」はイギリスの作家シェイクスピアによるイタリアを舞台にした作品、それをロシア(ソヴィエト)の作曲家プロコフィエフが音楽を書いたっていうんだからちょっとした多文化作品ですね。

プロコフィエフといえば重かったり機械的な感じだったり不協和音多かったり冷たかったりそういうちょっと人間離れしたソヴィエト風味の作曲スタイルが特徴的で、自分もそんなプロコフィエフが好きなのですが、ちゃんとバレエもロマンチックもできるのがプロコフィエフ。
しかもロシア音楽のいいとこ含んだまま登場人物と環境がちゃんとイタリアな感じがするのもいい。

当時のユースオケの指揮者さんがプロコのロミジュリは舞台で起こっていることとオケが弾く音楽がものすごくマッチしているということ、それから踊り手だけでなく弾き手にとってもものすごく充実した作品だということを強調していたのですが全くその通りで。
舞台上がドラマチックなら音楽もドラマチック、舞台上が軽快なら音楽も軽快。
(ただプロコフィエフの音楽なんでみんなそこそこに難しい部分あるんです)

そんな中で元々の劇でも盛り上がるバルコニーのシーン。運命を出会いをしたパーティーの後でロミオがジュリエットの家(代々敵である)の庭でジュリエットの部屋のバルコニーに向かってモノローグのちジュリエットと愛を誓う場面。
つまりロミオの最大の見せ場です。

バレエでは男性の踊りは大きな跳躍などダイナミックな動きが多いのですが、プロコフィエフの音楽に特徴的な音の大きな跳躍とアップダウンが激しいメロディーはそれにぴったり。それを支える幅の広い弦のアルペジオも音楽・踊り共に大事な役割を果たしているはず。

そしてプロコフィエフがバルコニーシーンのみならずこのバレエを通してロミオとジュリエットの愛を表すのにハ長調をよく使ってるのも印象的。シャープもフラットもない純粋なイメージかな。
そもそもバレエのほとんどで伝統的な調性が使われていて、ロマン派や古典派のような音楽スタイルが見られるながらも、20世紀の大胆さで彩っていて聴き応え・弾きごたえが半端ないです。

ここは手持ちのバレエ全曲版をリンク。ロマンチックといえばマゼールの指揮ですよ。ロミジュリは組曲も複数あるのですが、組曲に入らない小さめの曲まで魅力的な音楽いっぱいなので全曲版推奨。
そしてどこのがいいかとか全くわからないのですがバレエ公演のDVDも色々あります。見てみたい。

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「Plexus Squared: The Launch」コンサート感想
前回のエントリーに拍手ありがとうございます。

今日は新しいPCを買いました。半月くらい悩んでたのでなんとかなってよかったー。
HPのEnvy(15インチ)なのですが、無双もAoW3もきれいに動くし赤壁・白帝城もストレスフリー。(ただしSacrificeはそれでもだめだったー・・・これはゲームが古いからなのか)
新旧PCまだまだ調整が色々必要ですがとりあえずゲームできるのでよかったです。安心。

さて、昨日はまたもやコンサートに行って来ました。友人のトリオPlexusの新シリーズ始まりのコンサート。これまでとは場所も変わって、ちょっと規模が大きいFederation SquareのDeakin Edge(旧:BMW Edge)でのコンサート。ここはホールの大部分がモザイク的なガラス張りになっていて、特に夜は雰囲気が素敵なホールです。こういう感じ
そして休憩には同じくFederation Squareにあるガラス作品ギャラリーKirraでreceptionもあったり。

ホールが少し大きいということでお客さんの入りも満員とはいかなかったですが、聴衆と奏者の間に距離があることがむしろよかったコンサートでした。

おっとプログラムを書き忘れた。
Plexus Squared: The Launch
バイオリン:Monica Curro、クラリネット:Philip Arkinstall、ピアノ:Stefan Cassomenos
Charles Hoag 「SweetMelancholy(lostyourdolly)SlowDragRag
フランシス・プーランク 「城への招待」(俳優:Helen Morse)
(休憩)
Jonathan Dreyfus 「Half-formed thoughts」(世界初演)
Samuel Dickenson 「Nightmares」(世界初演)
イーゴリ・ストラヴィンスキー 「兵士の物語」(俳優:Paul English)

以前のコンサートで聴いた曲、俳優がナレーションをつとめる作品、そして今活動中の作曲家の作品の初演と様々なレパートリーが楽しめました。

俳優さんとの共演だったプーランクとストラヴィンスキーではプーランクが面白かったですね。プーランクが題材に選ぶ作品ってなんだかよくセンスがわからなくて、この上流階級を皮肉ったコメディもなんだかなあと思ったのですが、実際の台本の言葉の美しさ、楽しさ(比喩が色々面白かった)に聞き入ってしまいました。
ナレーションをつとめた方はちっちゃいおばちゃんだったのですが劇中で完全に舞い上がってはしゃいでるおばちゃんの役は見てて楽しかった!さらにバイオリン奏者の方ももう一人のおばちゃんになってはしゃいだり歌ったりのシーンはびっくりしながらかなり笑いました。

ストラヴィンスキーは「作曲家によるトリオバージョン(一部のみ編曲)に英語の現代要素有りのナレーションをつけたもの」でした。つまり原曲とは物語もかなり違います。
演奏はものすごくよかったです。バイオリン奏者さんの音色の七変化、特にタンゴの部分がかっこよかった。そして俳優さんも素晴らしかったです。ちょっとオーストラリア訛りがあるしゃべりがこの版にはしっくりきたというか。なんかそれらしいというか、元の雰囲気に囚われすぎない物語と景色。(あともっと訛りがすごい人がやるとそれはそれでまた面白いかも)

そして初演の2曲はどちらも後期ロマン派の香りが強い作品ですが。前衛的な曲もオーストラリア味が強い曲も好きですが、こういう音楽ももちろん好き。(もちろんロマン派そのままじゃなくて現代ならではの洗練やロジックとかで磨き上げているのがいいのです)というか多様な音楽があふれているのが20世紀21世紀ですからね。
Dreyfusのタイトル通りの固まりきらない中を縫うような、実験していくような構成が室内楽の掛け合いと上手く絡む魅力も面白かったのですが、Dickensonのロマン派の三重奏曲みたいながっつりピアノパートもかっこよかったし、そういうピアノの役割にちょっと安心感を覚えたり。うーんもっと聴きたいなー。

いつもの1時間コンサートの世界とはちょっと違う構成がこれからのシリーズでどう展開していくのか楽しみです。
そして1時間コンサートのシリーズももちろん楽しみです。次は7月に。


今日の一曲はお休み。パソコン2台いじってきます。



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メル響Metropolisコンサート「There Will Be Blood」感想
前回のエントリーに拍手どうもでーす。
なんか最近ブログとスパムアクセスが戦っててカウンターが回ってる様子。解析のほうには現れるけどブログの方でIPブロックしてるので私がどうすることもなく勝手に繰り広げられているようです。頑張れブログ。

さて昨日はMetropolisのメル響コンサート、ラストでした。
Jonny Greenwoodのあれなのかホール(ちなみにMelbourne Recital Centreの大きいホール)はほぼ満員。現代音楽でこんなにホールが埋まるとはなんだか嬉しい。
さて感想の前にプログラムを。
メル響Metropolisコンサート「There Wil Be Blood」
指揮者:André de Ridder
Jonny Greenwood 映画「There Will Be Blood」組曲
ジョン・コリリアーノ 映画「レッド・バイオリン」よりバイオリンとオーケストラのためのシャコンヌ(バイオリン:Sophie Rowell)
(休憩)
クシシュトフ・ペンデレツキ 「ポリモルフィア」
エドガール・ヴァレーズ 「砂漠」

Jonny GreenwoodはRadioheadのミュージシャンとして有名だそうですが、「ノルウェイの森」など映画音楽も手がけていて、メシアンやペンデレツキの影響を受けているそうです(ペンデレツキとは共演など奇妙な友情な関係だとか)。
そう、メシアン。プログラムに書いてあったオンド・マルトノはここ(最初の楽章など)で使われてた!でもそんなに目立ってなかった!重要な役割ではありましたけどね。マルトノさんも電子楽器としては珍しく古い分類に入ってるので使ってもらえるとなんだか嬉しいです。

Greenwoodは以前The Guardianの記事に(どれだけステレオにお金をかけても手に入れることができない)生でオケを聴く体験の素晴らしさについて書いていたそうですが、この映画音楽の組曲の中では「Proven Lands」がもろそれでした。弦楽器ならではのノイズとその迫力は生だから味わえるもの。ステージに近いところだとなおさらです。楽しかったよー。
たまにイギリスっぽいところがあるながらも独特のスタイルで、もっと彼のクラシックサイドの作品を聴きたくなる音楽でした。

レッド・バイオリンのシャコンヌもこれまた名曲。バイオリンという楽器の音と魅力と、シャコンヌという形式と、あと新しい音とロマン派にも近い音が融合した、それ一つで聴き応えのある曲でした。バイオリンって小さい楽器で音量も限られてはいるのですが、そこで遠慮することなく例えばショスタコやアダムズみたいにフルオケをぶつけることでバイオリンの一番情熱的なところが出るというか、そういう感じの音楽でした。ソロパートとしてはかなりのスタミナ勝負だったんじゃないかな。でもかっこよかった!

ペンデレツキの「ポリモルフィア」は映画「シャイニング」で有名な曲だそう。ちなみにペンデレツキも「聴くと好きなのに全然フォローアップできてない作曲家」リストに仲間入り。というか好きなのは知ってたけど聴いてて自分がこんなに安心して聴けるもんだとは思わなかった。いつからペンデレツキの音楽に心預けられるようになってるんだろう。
48人の弦楽器による曲のに様々な特殊奏法を含めた「弦楽器ならではの音」がぎっしり詰まってて、この木製感がとにかくたまらない。またペンデレツキの弦音楽に出会いたい。

そして最後のヴァレーズ。大学入学したてのときに青天の霹靂的に出会ってから、ある意味自分にとってオケピアノと現代音楽の始まりになった思い出の曲。とにかくわけのわからない曲で、11年ぶりに出会ってちょっとは分かるようになった・・・とは思っているけどどうかな。分からなくてもやっぱり好きな曲。未だにヴァレーズは人類のはるか先を行ってるなあ。
この曲には後に(1994年)に映像が作られて、その映像も演奏時に上映されたのですがこれがなかなかいい映像でした。(この曲に映像つけるなんてチャレンジャーだな)

3つセットで行っちゃいましたが最後のコンサートが一番よかったな。なんか粒が揃ってる、いい構成のコンサートで(グラスと違って)すっきり終わった感があり。
そしてこの3つ目のコンサートがMetropolisのテーマである「映像と音楽」に一番直接アプローチしてたのも面白い。

こうやってみてみると映画の音楽を書く作曲家、映画を作る監督などが20世紀以降の音楽に濃く影響を受けてるケースって色々あって、つまりは現代音楽なんてものも実はそんなに疎遠なものでない、どこか身近なところにあるんだよ、ということが言いたくなります。
Greenwoodやキューブリック、DessnerやWestlake、クロノス・カルテットなど色んなところで現代音楽を色んなジャンルとつなげている人達がいて。嬉しいです。そして密かに応援したいです。

そうそう、今回ペンデレツキの終わりで拍手のとき口笛吹いてた人いましたよ。これも現代音楽でちょっと珍しくてなんだか嬉しくなりました。メルボルンの聴衆はいいなあ。

さて、Metropolisは終わりですが水曜日にまたコンサート行きの予定があります。
ついでに次回はちょっとささやかなお知らせができるはず。
最近今回のコンサートや他の諸々でちょっとブログにまとめたい事もできましたがいつ手が回るやら。


今日の一曲はお休みです。

あ、「There Will Be Blood」のサントラはNonesuch RecordsのNonesuch Radioの全体ミックスorサントラミックスで一部たまに回ってきますよ。「Proven Lands」も入ってます。ついでに言えば「ノルウェイの森」のサントラもここから出ててそれも何曲か入ってる様子。

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メル響Metropolisコンサート「The Light」感想
前回のエントリー&過去のエントリーに拍手ありがとうございます。
(最新以外はたまにしかチェックしないのですがなんとなく把握しています)

今回もまたMetropolisシリーズよりメル響コンサート2つ目。
なかなか聴くにタフなプログラムでしたが(自分にとってそうなので聞き慣れてない人にはもっと大変だっただろうな)、すごい音楽ばかりでした。
そして奏者、そして特に指揮者にとってはものすごく大変なプログラムだったかも。
メル響Metropolisコンサート「The Light」
指揮者:André de Ridder
Julia Wolfe 「Fuel」
Tan Dun 「Crouching Tiger Concerto」(チェロ:Oliver Coates)
(休憩)
Alexandar Garsden 「Faculties Intact (con tutta forza)」
フィリップ・グラス「The Light」

演奏順でなく今回の目玉から。中国の武侠映画の音楽で有名なTan Dun(譚盾)による作品。アカデミー賞受賞で彼を有名にした映画「Crouching Tiger, Hidden Dragon」(邦題:グリーン・デスティニー)の音楽を題材にしたチェロ協奏曲です。(二胡版もあるみたいですね)
いやあかっこよかった!

かっこよかったポイントその1、チェロのソロ。席の関係で前回のコンサートではチェロのソリストが聞こえなかったのですが今回はスピーカーありだったのではっきり聞こえますが。ありがたい!
チェロってほんとなんでもできる楽器ですね。音域が広いのはもちろん、二胡のような音もでますし、(ギターピック使って?)琵琶のようにざかざか弾くこともできる。メロディーもリズムもカウンターメロディーもサポートもなんでもできちゃう(&何やってもかっこいい)チェロの能力のがこの曲の中であまねく使われていて、楽器と奏者の能力と表現の幅を披露してるという意味でものすごく面白い協奏曲でした。
そしてチェロの音が骨太で渋みがあるのがまたかっこいい。二胡もいいんだろうけどチェロも素敵でっせ!

かっこよかったポイントその2、曲とオケ。メロディーとかリズムから中国の音楽、特に京劇の影響を受けてるってのはなんとなく分かったのですが、リズムの強さとrawさは西洋の20世紀以降の音楽、特にクラムの音楽の影響も見えたり。ほんとリズムがすごいんですよ。拍手や足踏みが入ったり、西洋でない打楽器を使ったり、打楽器以外の音楽も純粋に(音程なしの事も多い)リズムを担当したり。そしてこのオケ全体が強烈なリズムを演奏するのになんだかとにかく数で圧倒する中国的なものを感じました。独特の感覚じゃないかな。

最初の曲「Fuel」はその音楽が題材としている港のtime lapse映像が流れました。(今年のMetropolis映像・映画と音楽のつながりがテーマですしね)ただ映像の情報量もすごいし音楽もかなり情報量が多い。スタイルはミニマル・ミュージックににたパターンの繰り返し要素があって、しかもエネルギーとテンションがずっと高くてものすごく大変そう。決して聴いてて(多分弾いてても?)純粋に楽しいものではないのですが、すごい曲でした。弦楽オーケストラのための作品に一つものすごいレパートリーが生まれた。

そして今回もありました、若い作曲家による作品が「Faculties Intact (con tutta forza)」。これがまたものすごく難解な音楽だったのですが、とんでもないレベルの作品でした。ああいう音をイメージできて、表現できるってすごい。音楽自体はなかなか分かりにくいながらも「もしかしてこの1987年生まれは天才じゃないか!?」と思いました。(次のコンサートで聴く)ヴァレーズに似てるんですよね、ちょっと。指揮者の方はリゲティやクセナキスの影響を指摘してましたが。音楽を説明するのはできないのですが今でてきた面子の並びだけでそのすごさが分かる・・・かな。

そして最期のフィリップ・グラス。良くも悪くも超グラスな作品。オケの使い方は結構(伝統的な)交響的スタイルでもあるのですが、曲の構成はもうグラス以外の何物でもない。ものすごく繰り返す・焦らす、終わりがわかりにくい、曲が長い、しかもなんかものすごくヘ長調、のコンビ技で脳内から変な物質がコンサート終わってもしばらく出てました。音楽の構成とか展開って脳内のドーパミンが関わってる報酬システムと関連してるっていいますけどグラスの音楽ってそれをものすごく濫用してるんじゃないかな。

てなことで振り返っても聴くのにちょっと大変なところがあったプログラムですが、4曲とも出会ってよかったです。特にTan Dun。これは要フォローアップ。
・・・と思ってまずはようつべにチェロ協奏曲版があるか調べたらありました、動画
ちょっと打楽器のラインアップが違いますが(メル響の演奏では和太鼓みたいな太鼓もありましたし、前に出てくる手持ち太鼓もちょっと違った覚えが)こういう伝統的でない楽器を使う場合は入手しやすさなどで若干の差も出てくるのかな。

さて、Metropolisは明日で最後。しっかり楽しんできたいです。
仕事がちょっと渋滞しながら(どうも似たような納期のが来てしまってお断りする残念)のコンサート行きですが、実はその次の水曜もコンサートの予定があったり、あとまた数日田舎方面に行ったり。ちょっとばたばたしますががんばるぞー。


今日の一曲はお休み。

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