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~名もない蛾と虹の錯乱~ 内の思いと外の色彩をつらつらと。
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チェレスタ祭り終わりました
今年のオケ仕事、無事完了です。
(明日から小旅行で荷物まとめなきゃいけないので手早く)

<Zelman Symphony Orchestraコンサート>
12月6日午後8:00、12月7日午後2:30
Eldon Hogan Performing Arts Centre, Xavier College
ベンジャミン・ブリテン オペラ「ピーター・グライムズ」より四つの海の間奏曲
レイフ・ヴォーン=ウィリアムズ オーボエ協奏曲(オーボエ:Andrew Kawai)
グスタフ・ホルスト 「惑星」(女声合唱:Cloud9 Women's Choir)

2回公演はZelmanでは初めての試みだったそうですが日曜日はそんなにお客さん入らなかったですねー。でも日曜日はコンサート後も夜遅くじゃないので子供連れの家族がステージに来てチェレスタ見に来て修理した人にお話聞いてました。色々メリットもデメリットもあるようですが来年はどうなるか。

どっちの公演もまずまずの出来でしたね。土曜はちょっとみんな緊張してたようですが特に目立ったエラーもなく、日曜日は全体的に生き生きしてましたがどうも気が抜けたようなミスがそこここで聞こえたり。複数回公演での緊張と士気の色々バランスって難しい。

今回ちょっとコンサートの最初にチェレスタを新しく直した件に関してスピーチがあって、その後ソリストのように紹介されて金平糖の精を弾かせていただいたのですが自分としてはまあまあの出来でした。土曜日はオケ全体の傾向と同じく緊張でちょっと保守的というかおとなしめな演奏になったかな。今日はもちょっと表情つけられた手応えはあったのですがそれでも楽器の魅力を引き出せてるかどうかはわからなかったです。(その点に関しては海王星のほうが手応えがあったかも)

そして今回金平糖が終わったあとで楽屋に戻ったときに居る面々の関係で木管奏者と話す機会が多かったです。Zelman Symphonyはメンバーの年齢範囲が広くて高校生や大学生などもいるのですが(ハープ弾いた子が高校生だとはびっくり!あんなにきれいなハーモニクスがでるのか!)、特に木管は若くて意欲の高い奏者が結構多くて色々面白い話が聴けました。

特に「弦楽器や鍵盤楽器は教えたり説明するときに目で動きを見て分かって真似できるからうらやましい!」と言う話だったり(管楽器は口の中や唇の圧など目に見えない部分がテクニックのほとんどを占めます)、あとオーボエと同族のコールアングレよりもっと長いヘッケルフォーンを持たせてもらいました。一番下が木の固まりだから重かった!
ちなみにヘッケルフォーンはバスオーボエに近い楽器ですが前者はリヒャルト・シュトラウスなどドイツ音楽で、後者はフランスの音楽で主に使われるそうです。「惑星」は元々バスオーボエのパートとして書かれてますが初演はヘッケルフォーンを使ったそうです。要するにどっちでもいいらしい。

それからピッコロの音の出口の傍に第1バイオリンの人が一人座ってるのですがうるさくないのかな?と思ってたら(ピッコロとアルトフルートと持ち替えのフルートの人が聞いてみたところ)「補聴器を外すから大丈夫」とのこと。以前行ったレクチャーでは補聴器は会話はいいけど音域・音量の幅が広い音楽を楽しむにはまだまだ、と聞いたので補聴器をつけて音楽をやってる人がいるとはちょっとだけ驚き。普段の練習、リハーサル、コンサート聴きなど色んな音楽の楽しみ方で補聴器がどう助けになるのかちょっと気になります。

ヘッケルフォーンを吹くのが好き、という話を聞いたりフルートのテクニックの話を聞いてるとホント楽しいです。
ただこういうコミュニティオーケストラって奏者の年齢も様々ならこのオケに参加する目的や意義なども大分開きがあって。特に人数の多い弦が顕著なんですよね。なかなか弦を強くするにはプロとかユースとかみたいに個々の奏者としてもチームとしてもしっかりしなくちゃいけない。

そんな弦ではユースオケからの仲間が「惑星」でチェロのリーダーをつとめてました。金星のあの難しいソロもしっかりこなしてましたよー。これまで教える方に専念してて弾くことを再開し始めたばっかりとのことで、またオケでも室内楽でも一緒に弾きたいです。

さて明日は朝早く電車にのってグレート・オーシャン・ロードです。気温は20度台前半とちょっと残念な感じですが楽しんで来たいと思います。
・・・荷物詰めなければ。調子に乗って食物が多い。



今日の一曲: グスタフ・ホルスト 組曲「惑星」より「土星」



今回ヘッケルフォーン吹きやフルート吹きの皆さんといろいろおしゃべりさせてもらったので彼らが活躍する土星を。(私は残念ながら弾かない楽章ですが)
ちなみに土星はホルストのお気に入りの楽章ですしものすごくうまく書かれてるし美しいのでもっと有名になるべき。

ヘッケルフォーン(又はバスオーボエ)は初めのセクションでソロがあります。オーボエみたいなアヒル系の音で結構低くて太い音がそれ。ちょっと珍しい楽器ですので耳を澄ませてください。ここはコールアングレでもファゴットでも同じ音は出せない、ちょっと特別なソロです。

フルートが活躍するのはトロンボーンのコラール以後。惑星は4管編成、つまりフルートも4人います。なので2本ずつ別のパートを担当したり4人一緒に和音を合唱風に奏でたり、フルートだけでかなりできることの幅が広がります。こういうフルートの使い方はオケではちょっと珍しかったり。あとフルートとハープが似たような役割で絡むのも珍しいかも。

その4人体制のフルートを支えてるのがアルトフルート。ハーモニーの一番下を静かに支えてます。残念ながらその音自体を聞くのは難しいかもしれないですがそれがあるからこそのフルートの和音の美しさ。(アルトフルートの音が聞きたいならラヴェルの「ダフニスとクロエ」やストラヴィンスキーの「春の祭典」あたりがいいかも)

「土星」は他にもトロンボーンのコラールに惚れたり、2人のハープが奏でる難しくも一音一音が限りなく美しいパートだったり、実はチェロの最初のエントリーの高音が難しかったり、色々聞き所があります。曲が長いのと(特に最初のぱっと聴きあんまり面白くない部分が長く感じる)、あと曲の魅力を感じるには弱音やディテールにものすごく耳を澄ませなくちゃいけないようなところがあったり。
でもじわじわと染みいるように好きになったら虜になること間違い無しです。作曲家自身が好きなのにはそれだけの理由があるのですよ。

さっき書いたような理由もあり30秒とかの試聴にもとことん向いてない曲なのですが(汗)今回はカラヤン指揮のベルリンフィル演奏の録音をリンクしてみました。ベルリンフィルの金管に期待して。でも基本イギリスのオケがオススメです。

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イギリスの素晴らしき曲集2つ
前回のエントリーに拍手ありがとうございます~
昨日はこっちの日本映画祭の一環で上映してた「清須会議」を観に行きました。楽しかったです。
ただ今日のエントリーはその後のリハーサルから。実は「惑星」に関しては今週の土日のコンサート前最後のリハーサルでした。

とりあえずまずコンサートお知らせ。

<Zelman Symphony Orchestraコンサート>
12月6日午後8:00、12月7日午後2:30
Eldon Hogan Performing Arts Centre, Xavier College
ベンジャミン・ブリテン オペラ「ピーター・グライムズ」より四つの海の間奏曲
レイフ・ヴォーン=ウィリアムズ オーボエ協奏曲(オーボエ:Andrew Kawai)
グスタフ・ホルスト 「惑星」(女声合唱:Cloud9 Women's Choir)

で、プログラムに載ってないですが以前書いた通り修繕したチェレスタのお披露目ということでチャイコフスキーの「くるみ割り人形」から「金平糖の精の踊り」を(ほぼソリスト扱いで)弾きます。気合い入れて頑張ってきますよー。

今回演奏されるプログラム、協奏曲を除いたブリテン「四つの海の間奏曲」とホルスト「惑星」はどちらも好きな曲(ブリテンでパートがないのが悔やまれる!)。
なんといってもそれぞれの曲集を構成する楽章のとりあわせが秀逸だと思うのです。うまいことバランスが取れているというか。食事で例えるのも変ですが、栄養的にはわからないですが味とか色のバランスとしてはパーフェクト。

「惑星」は何回か弾いてますしブログでも前回の演奏で色々書いてますが、7つの惑星を(占星学的に)表す7つの楽章のキャラクターがそれそれ違って全部いい。
好戦的な火星、純粋に美しい金星、自由で軽快な水星、快活に踊り歌う木星、渋いけれど秘めた美しさがある土星、ひねくれた遊び心のある天王星、そして神秘的に誘惑する海王星。

これらがそれぞれ違う個性を持っているのも面白いけど、どの曲をとっても他に似たような曲がほとんど見つからない。(火星みたいな曲は結構あるけれど大部分火星が原点なんじゃないかなー)
あと木星以外はイギリスっぽさが薄いのもちょっと意外かな。海王星に関してはもうフランス音楽の域に限りなく近い。ラヴェルとかメシアンまで届・・・かないかな。
そういう意味での自由さが各曲の独特な魅力、そしてバラエティの広さにも繋がってるのかも。

10歳くらいで「木星」を好きになってから20年弱のうちにぐるっと一周すべての楽章にはまってきましたし、3~4回くらい弾いてもいますし、20年のうちに大分好みも偏屈になってきましたけどなかなか飽きないんですよね。弾いても聴いても楽しいですし、ディテールを分析してもすごいことが分かる。クラシック初心者にもひねくれ玄人にも楽しめる懐が深い音楽です。
話は変わって「四つの海の間奏曲」。こちらは曲数も少なく「惑星」ほど壮大なスケールでもないですが海の景色をしっかり濃く描いています。
以前も書いたと思いますがこの曲集(と元のオペラ)で描かれてるのは常に身近に、人間の営みの傍にある海。恩恵を受けたり被害を受けたりする海であり、なんといっても季節や天候とともに姿と性格を変える海。

日本の気候を4つの季節で表すように、ブリテンは海の表情を4つの顔で表します。穏やかな(イギリスなんで多分曇ってる)「夜明け」、太陽の光と人々の動きが見える「日曜の朝」、黄金を静かに映す「月光」、そして雲と風と波が荒れる「嵐」。一つの海を描いているのにそれぞれが全く違う曲になっています。
そしてどれも海の情景だけでなく天候まで感じられる、描写力がピカイチでイギリスの風土に根付いたのが魅力の音楽。

そんな2つの曲集がまとめて楽しめちゃうのが今週末のコンサート。
オーストラリアではみんな大好きイギリス音楽、といえるくらいイギリス音楽を弾いたり聴いたりする機会が多いですがこのプログラムはかなり私はツボってます。弾くのも楽しみですが弾かないところを聴くのもかなり楽しみ。

さて、コンサートももうすぐですし全部また紹介している暇はないので今日とコンサート感想のエントリーそれぞれで今日書いた2曲集から1楽章ずつ紹介したいと思います。



今日の一曲: ベンジャミン・ブリテン オペラ「ピーター・グライムズ」より四つの海の間奏曲 第4楽章「嵐」



昨日のリハーサルでチェロのリーダーやってる友達に聞いたのですがこの「四つの海の間奏曲」のチェロパートはなかなか難しいそうです。結構聴き込んでいると思ったけどそこまでは気づかなかったなー。でもチェロの作品を色々書いてる(そしてショスタコやロストロと交友関係にあった)ブリテンのことだから弾きごたえがあるチェロパートは当然のことかも。

そんな「四つの海の間奏曲」のフィナーレを飾るのがこの「嵐」。暗くてドラマチックな私好みの曲です。
マーラー5番の第2楽章と似たところが多い曲ですが、共通点の一つが弦のパワフルさ。やっぱり嵐を表す曲のごうごういった重く暗いうなりとうねりは上はバイオリンから下はコントラバスまで何十人もの音が集まってできるもの。

そしてそんな弦の波と風の上に(ずっと少ない人数で)乗る管楽器もまたすごい。この曲のピッコロとかフルートの音はショスタコーヴィチの交響曲とかにちょっと似てるパワフルさがあって圧巻です。

今かなりでっかい曲2つと比べちゃってちょっとあれですが、でも規模は小さくとも音楽的な質もパワーの濃さも負けちゃいないと思います。
あとなんたって海。海の曲としてとにかく好き。あと海が好きです。海が好きになる曲。

リンクしたのは手持ちの録音。ピーター・グライムズからは四つの海の間奏曲に加えてパッサカリアも収録されています。なかなか渋い曲ですがビオラやチェレスタの活躍が光る一曲です。

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ピアノ今と来年に向けて
前回のエントリーに拍手ありがとうございます。
3日連続の更新ラッシュもこれで終わりかな。
そして日本からの船便が着いてやっと一時帰国の諸々も完全に終わった感じです。三国志11が遊べるのはいつになるかな・・・(汗)

さて最近書きたかったピアノのソロレパートリーに関する重大なお知らせ。
来年2015年にメシアンの「幼子イエスに注ぐ20のまなざし」全曲演奏に向けてこれから集中的に取り組むことになりました。
もう30歳ですからね、腹をくくらないとということで。

そもそもメシアンの音楽に興味を持って「20のまなざし」を弾き始めたのが大学2年で20歳(のはず)。今使ってるスコアはその年のクリスマスに両親に買ってもらったもの(コンタクトカバー貼ってるので使用頻度と私のがさつさに反してものすごく良い状態で維持できてます)。
スコアを買ってもらったのも当時から全部、あるいは大部分を弾くつもりでいたからなのですが。
その頃ぼんやりと「20曲全部弾くとしたら10年くらいかかるかなー」と思っていて、途中で1年だかもっとだかピアノを休んだあと30歳までは無理かと思ったのですが最近どうやら思ってるよりゴールは遠くないことに気づき。

そういう訳で今ノータッチだった第6番と第20番を習得しています。どっちも当初のイメージほどは難しくなかった・・・とはいえかなりmassiveです。
特に第6番のラスボス感はんぱない!でもこれが弾ければメシアンに限らず色んな方面で恐れるものはほぼなくなるかも。それくらいの曲。

ただ第6番や第20番が思ったほど難しくは感じなくなったのもこれまで10年近くメシアンの曲、特に20のまなざしを色々弾いてきてメシアンの音楽に関する知識やノウハウ、そして勘を蓄積してきたから(別曲集間だとなかなか外挿しにくいですが)。
やっぱ慣れは大きいと思うんですよね。メシアンは難しそうという声をよく聞くのですが、長く弾き続けることでハードルはかなり低くなると思うのです。

ちなみに「20のまなざし」は全部演奏すると2時間くらいかかります。録音にすればかならずCD2枚かかる長さ・・・と書いたところでやっぱり2時間の方がインパクトが大きい。
とはいえ個々の演奏によって演奏時間がものすごく変わるのがメシアンのピアノ作品の特徴。主にスローな楽章をどれくらいのテンポで弾くかがキーですね。
色々そこんとこ直さなきゃいけないとはいえ根がせっかちですのでどっちかといえば短めの演奏になるかなーとは思っていますがどうなるかな。

演奏するときはとりあえず10曲+10曲で間に休憩を挟むかな。そしてさらにそれぞれ10曲の真ん中でも気持ち息をつきたいところ(音楽的にも必要です)。
ただそうやって4つのブロックに分けても第6番と第10番のモンスター2つは一緒のブロックに入ってしまうという理不尽さ。第2ブロックは単純に体力的な面ではかなりハードになりそう。
ただ実は後半の方が1つ1つの曲の長さは長く、より抽象的で複雑な音楽になるので必ずしも後半が楽とは限らない。
20曲全部弾く体力精神力もそうですが、まだ20曲全体の流れ、全体の中での曲の役割やポジションも考えてないのでそういうところにも手を回していかないと。

まだ来年のいつ演奏するかはまだ決まってないのですが仕事の一年のアップダウンとか一時帰国とか考えると7月から9月の間が合理的かなー。となるともちろんメンタルの方の調子もしっかり維持せねば。

そんなわけで今月からだんだんレパートリーを調整して20のまなざしを増やしていく予定です。
ほとんど再習得ですし人前で弾いたのも少なくない(&必ず暗譜だった)のですがそれなりに手を入れなくちゃいけない曲も結構ある。
ただ全部弾くことを意識しはじめてから心と頭が自然とまなざしの方を向いてきたのでそればっかり弾くのももしかしたらそんなに苦にはならないかも。(あと少なくとも今は鳥カタは「別腹」として認識されているようで不思議な話です)

それにかなり恐れてた(?)第6番第20番、やっぱり難しいながらも攻略するのがものすごく楽しいです。特に第6番を頭でしっかり捉えて身についていく感じ、この巨大な力を物にしていく感覚はものすごいです。
あとメシアンの音楽の高揚って若干躁に近いところにあるハイな感じがあって、それを味わうのが楽しみ。

とりあえず弾くことばかり話しましたが裏方のプランニングはとある人に手伝ってもらったりなんだりするのでまたそちらも固まったら。今回はなるべく演奏(の心配)に専念したいのでお手を借りることになっています。

続報をお届けできるのがいつになるかわかりませんがその時にはこちらでもお届けします。
そのうち20のまなざし特化エントリーも書きたいです。あと今日の一曲でも案外紹介してないのでぼちぼち。それに関してはとりあえず今日始めます。


今日の一曲: オリヴィエ・メシアン 「幼子イエスに注ぐ20のまなざし」より第6番「それに全ては成されたり」



20のまなざしのラスボス、第6番です。タイトルに「それ」とあるのがなんか不思議ですが前書きによるとそれが示す物は「(神の)言葉」らしいです。光よ、と言ったその言葉から全てが創られた、ということですね。
そんな神の言葉と世界の創造を表す巨大な音楽。しかもオケじゃなくてピアノ1台で。

普通に弾くと10分はかかるこの曲、速く弾くのも難しいけどあんまり遅くても長くなって困ります。
そしてもちろん一続きでなく前半と後半に分かれています。前半はかなり独特なフーガで、後半は「20のまなざし」を通じて何度も現れる「神の主題」の力強い展開と繰り返し。
(ちなみにまだ後半まで私はたどり着いていません)

で、前半のフーガがすごいのは途中で一音一音逆行するところ!
冒頭から複雑に絡み合い盛り上がってたのがだんだんと折りたたまれ無に帰していく、なんだか逆行映像を見ているようでもあり、手品を見ているようでもあり。
特にメシアンがよく使う「非シンメトリックな拡大」によって音楽の展開が線形ではなく(擬)指数関数的に拡大していくのが逆行するときも効果的。

そんな展開の仕方も圧巻ですが、突っ走る細かい音を彩るメシアン得意のリズムも魅力的。不規則なリズムが規則的に繰り返される絶妙なバランス。弾いていてリズミカルなところが一番楽しいです。

さらに後半の執拗だけれど壮大な「神の主題」。これは神の力強く激しい面を全面表現した音楽。
(人間でなく)地球とか宇宙とか創造物全てが歌い上げる、というか咆哮のイメージです。
メシアンの「激」な部分がフルに発揮される、ピアノ1台じゃ気持ち的に足りないくらいの巨大さ。

・・・でもこの後短い楽章3つはさんで今度また第10番で狂喜の乱舞をしなきゃいけないんですよ。大変な話です。

色々音楽のnitty-grittyな部分を抜いて説明した結果振り返ったらかなり空回りした感満載ですが詳しいことを知りたいなら分析してる文献もサイトもありますし、詳しいことを知らなくてもとりあえずこの曲のパワフルさを聞いて感じてもらいたいと強く思います。
いつか私の演奏でもお届けしたいですがそういう演奏ができるかはまだ分からないです。楽しく弾けるくらいの余裕があればいいいんですが。

日本のAmazonにマイケルの録音があったのでリンク。他にもベロフの演奏も素晴らしいですし、エマールもまた違う方向に行ってたり、とにかく「20のまなざし」は複数の録音を比べて聴くのも楽しみです。

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ロンドン交響楽団コンサート感想!
前回のエントリーに拍手ありがとうございます~

今朝は田舎から友達が来ているのでBrighton Beachで集まってきました。ちびさん&ちびちびさんももちろん一緒です。ちびちびさんは10ヶ月、しっかり歩いてます。ちびさんは3歳でバレエを始めポケモンデビューまで果たした様子。(ちゃんと捕まえられるらしいですよ)
今日は天気もよくてこれから夏が来る感じがまたよかったー。

さて昨日はロンドン交響楽団のコンサートに行って来ました。どうもオーストラリアを何カ所かちょっとずつ違うプログラムで回ってるみたいですね。ABC Classic FMがブリスベンでの公演を放送してましたが生で聴くのが楽しみなので聴かずにおきました。

場所はいつものHamer Hallでプログラムはこんな感じでした。
演奏:ロンドン交響楽団(London Symphony Orchestra)
指揮:ヴァレリー・ゲルギエフ
セルゲイ・プロコフィエフ 交響曲第1番「古典的」
イーゴリ・ストラヴィンスキー 「ペトルーシュカ」(1947年版)
(休憩)
ドミトリ・ショスタコーヴィチ 交響曲第10番
(アンコールもあったのですが知ってる曲なのに題名が分からない!)

オールロシアンプログラム、聴いててどれも楽しかったです。
最初に思ったのはものすごく上品!ということ。(もちろんいつも聴いてるオケ諸々がそうでないわけではないですが・・・)
上品もそうなんですがオケという機械のギアに隅々まで油が差してあってものすごくスムーズに動いている感じ。プロコフィエフで一番わかりやすくそうだったのですが最小の摩擦で効率良く進んでいくというか。なんかちょっとプリウス感がありました(笑)スマートでノイズ少なくてすーっとストレスなく走る。弦の音のアタックとかアンサンブルとかとにかく摩擦がなくてピュアな音。

で、聴いて考えてるとこのスムーズさってオケのそれぞれの楽器が各々の役割をきっちり果たしてることで全体としてうまくいってるのかなーという印象がありました。
第1バイオリンはほぼ常に引っ張る役目ですし、コントラバスは控えめ気味に下から支えてる、みたいな。メルボルンの(特に若い人の)オケだと役割を破ることでもっとダイナミックに音楽を動かすようなところがあると思います。

なので例えばショスタコ一つとってもものすごく爆発的に葛藤的に盛り上がるところでは血が沸くほどエキサイティングではなかったのですが、微妙な緊張で流れる部分や色彩が感情を作り出すところはものすごく美しい。いつもは速い第2楽章ばっかり聴くこの曲の第3楽章や第4楽章に惚れ直したのもそういう演奏だからこそかな。

個々の奏者でいうと常に首席フルートがいいところ持ってきましたねー。見せ場はショスタコでも多かったのですが一番はペトルーシュカで人形使いが吹く笛。オケでたった一人、スポットライトが当たっているかのような感覚がするほどの独擅場。あのソロであんなにテンポを自由に動かすのは初めて聴いた!限界に挑戦してる感満載でした。
それからちょっと気になったのがショスタコでのシンバル奏者のクラッシュシンバルの叩き方。一歩足を踏み出すようにして両手でアンダーアームで投げるみたいに全身で叩くスタイル。気づくと目が離せない。体の負担ってどうなんだろうなー。
(あと奏者じゃなくて気になったのがバスドラムが薄かった!幅が違うと音がどう変わるんだろう)

ということでいつもメルボルンで聴けるのと違う性質のオケが聴けて面白かったですし楽しかったですし、勉強にもなりましたし。なにより素晴らしい演奏でした。
あとショスタコの交響曲って意外と生で聴く機会が少ないので(5番以外となるとかなり少ないような)最近聞いた気もしますが10番を楽しめてよかったです。
もっと世界にショスタコを!(ついでにもっと世界にメシアンも!クラムも!)


今日の一曲: イーゴリ・ストラヴィンスキー バレエ「ペトルーシュカ」(1947年版)より「ペトルーシュカの部屋」



ストラヴィンスキーの三大バレエ=「火の鳥」、「ペトルーシュカ」、「春の祭典」の一つです。
そういえば日本ではクイズなどでクラシック関連の三大なんとかとか色々あるんですけど本当は三大とはっきり言えるのってストラヴィンスキーくらいしかないですよ。他はなんか便宜上のくくくりなような印象。ほんとうにはっきり目立って3つ、といえばこれとチャイコフスキーの三大バレエくらい。
(ちなみにストラヴィンスキーのバレエって短い場面が続いてたりなんだりで区切るのが難しくてここであんまり紹介してないんですよね。今回機会ができたので逃さず書きたいと思います)

ペトルーシュカはロシアのカーニバルの片隅で繰り広げられる心を持った人形の悲劇。人形にも貧富やモテ非モテなど格差がある世界。それは正に人間の社会のミニチュアでカリカチュア。
この楽章はそんなペトルーシュカの惨めな世界を体現したような自室でのモノローグとソロの踊りの場面です。
(この作品もバレエ・リュスによって世に出されたのですが主役のペトルーシュカはもちろんニジンスキーが演じたそうです。まるで本当に人形のような奇怪な動きだったそうですよ)

ペトルーシュカはオケ作品としては協奏曲のソロにも匹敵する巨大なピアノパートがあることでも有名。(実際作曲家自身によるピアノ独奏のために切り貼りアレンジした版もあります)
特にこの「ペトルーシュカの部屋」はピアノ独奏が多いセクション。
頭もそんな良くなくてみすぼらしくただただ自分の惨めさを呪うペトルーシュカのソロとその殺風景な部屋を描くのにはピアノって整いすぎてないかなーとも思わないことないんですが、なんというかしっくりくる音の風景。

この部分は伝統的な見方でいえば「不協和音」的なハーモニーを多用することでも知られています。2本のクラリネットが奏でるのはハ長調の分散和音+嬰ヘ長調の分散和音(トライトーンの衝突!)。他にもこうやって意図的に、計算して音が衝突するようなハーモニーを選んでいる箇所がたくさん。
とはいえここに限らず曲の至るところが、そしてストラヴィンスキーの作品の至る所が彼の緻密な計算の賜物なんですけどね。生涯を通じて様々な作風で曲を書いたストラヴィンスキーですが(知り合い同士だったピカソに似てますね)、どの作風でもストラヴィンスキー独特のスタイルで、どの音楽もしっかり計算されていて。とにかく完璧に近い音楽を書く人だと思います。

ストラヴィンスキーの三大バレエのうちだと一番気軽に楽しく聴けて情景が想像しやすいのが「ペトルーシュカ」だと思います。
(ちなみにストラヴィンスキーの魔法のような音楽を感じられるのが「火の鳥」で、色んな意味でMAXストラヴィンスキー&MAXオーケストラな音楽が「春の祭典」・・・かな)
ロシアの作曲家って謝肉祭のようなお祭りを描くことが結構好きで、そういう作品も色々あるのですが描写のわかりやすさはペトルーシュカが一番だと思います。
(あとペトルーシュカはエンディングがものすごい好き。あのトランペットのソロは格好いい)

今Amazonをざっとみてみるとストラヴィンスキーの三大バレエはそのうち2つをコンビで収録してるのが多いですね。あとは三大以外の作品と合わせたり、バルトークなど同時代の作曲家の作品と組み合わせてる録音も。ただ今回聴いたロンドン交響楽団の演奏(指揮は違いますが)で3つ揃ってるの+αの2枚組をみつけたのでそちらをリンク。3つ一緒だとお手軽だなー。

あとペトルーシュカは1911年版(原版)と後に色々直したりなんだりした1947年版があります。違いはざっと聴いてるだけじゃあんまり目立ちはしないかな、でも1947年版の方がドライで洗練した感じに楽器使いなどが仕上がってる気がします。

やっぱり曲の区切りが難しいのですがストラヴィンスキーの作品、もっとこっちで紹介したいです。


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今年最後の仕事になります
前回のエントリーに拍手どうもですー

明日はまたコンサートに行くので火曜日の話を手早く。
今年最後のオケ仕事、Zelman Symphony Orchestraのコンサートです。

<Zelman Symphony Orchestraコンサート>
12月6日午後8:00、12月7日午後2:30
Eldon Hogan Performing Arts Centre, Xavier College
ベンジャミン・ブリテン オペラ「ピーター・グライムズ」より四つの海の間奏曲
レイフ・ヴォーン=ウィリアムズ オーボエ協奏曲(オーボエ:Andrew Kawai)
グスタフ・ホルスト 「惑星」(女声合唱:Cloud9 Women's Choir)

見事にオール英国プログラム。私は「惑星」でチェレスタを弾くために呼ばれたのですが、このチェレスタが(大変なお金をかけて)最近修理されたものらしく、そのお披露目としてチャイコフスキーの「くるみ割り人形」から「金平糖の精の踊り」でソロを弾かせてもらえることになりました。ちょっとだけソリスト扱いです。

で、そのチェレスタで火曜日に弾いてきたわけです。ちっさかった!!(笑)チェレスタが発明された当時の楽器と一緒のミュステル製(だったはず)の4オクターブきっかりのチェレスタさんです。実は惑星を弾くにはちょっと鍵の数が足りない(なんとかやりくりしてます)。あと音量もちょっと足りない。海王星の細かいアルペジオの音一つ一つを響かせるにはかなり力が要ります。
ただ金平糖の精は(元々そういう楽器で弾くよう書かれてるため)なんとかいい感じになりそう。
あとリハーサルは1回+サウンドチェックのみなのでなんとか楽器からいい音を引き出せるといいんだけど。

そんなこんなで火曜日はリハーサルに行った途端指揮者さんやらマネージャーさんやらオケのdirectorやらチェレスタの修繕をおおかたやった人(!)やら色んな人に話しかけられましたし休憩後にご紹介いただいたりちょろっと音を聞かせたりもしました。
ちなみにチェレスタの修繕をおおかたやった人はオルガンも作ったらしくて(!!)、今回のコンサートの「惑星」でそのオルガンを自ら弾くそうです。詳しい話は来週のリハーサルで聞けるかも。

「惑星」って誰にとっても簡単な曲ではないこともあってオケの演奏はただ今(天王星・海王星・水星を聴いた限り)ちょっと心許ないですがさてどうなるか。
ただチェロのリーダーはユースオケ時代に長く一緒だった仲間。会うの久しぶりだったー。「惑星」も一緒にチェロセクションで弾きましたよ。頼もしいです。

ちなみにこのオケの現在のリハーサル場所はLeo Baeck Centreというのですがここは普段シナゴグ(ユダヤ教の礼拝場所)なんです。シナゴグは学校の授業とかで見たことありますが中に入るのは初めて。蝋燭立てのマークでそれとわかる内装。そしてシナゴグでもオルガンあるところあるんですね。あと前側がステンドグラス風になってて真っ暗になってから着いてもすぐ分かる。(ステンドグラスもあるんですねー)

オーストラリアはキリスト教が主な国ですし、クラシックのコンサートやリハーサルなどでは教会で弾くことも多いのですが本当に色々な信仰の場所があります。
シナゴグ(ユダヤ教)やモスク(イスラム教)もある地域にはありますし、仏教の施設も1つ見たことがあります。さらにフリーメーソン系のホールも数多くありますし(さびれてる外観のも多いですがコンサート場所にもなります)、エホバの証人のホールもいくつか見たことがありますし、あと今日自宅近くに薔薇十字団の施設があるのを初めて知りました。こういう施設はIngressのポータルとしてその存在を知ることが多いですね(ただLeo Baeck Centreはまだポータル登録されてなかったしリハーサルがあるので申請できてない)。

ということで短期間ですがチェレスタ祭り密かに開催中です。
そして明日はロンドン交響楽団のコンサートを聴きに行きます。ゲルギエフ指揮。プロコの1番にペトルーシュカにショスタコ10番のオールロシアンプログラム。楽しみです。


今日の一曲: ピョートル・チャイコフスキー バレエ「くるみ割り人形」より「金平糖の精の踊り」



実は田舎に住んでる友達のところのちびさん(3歳)がバレエを最近始めて、こんど初めての発表会で「くるみ割り人形」をやるそうです。3歳ちびさんだったら何役なんだろう。とりあえずちょっとおそろい。(土曜の朝にこっちで会う時見せてもらえるかしらん)

昔も今もチェレスタといえばこれ!という曲。とはいえ今はハリーポッターの「ヘドウィグのテーマ」もかなり有名になっていますが。ただほぼ単旋律なハリーポッターと違って金平糖の精は鍵盤があるからこそ奏でられるソロになっています。

演奏時間2分と短く小さい曲ですが(もともとくるみ割り人形全体一つ一つの楽章がこじんまりとしています)、曲とチェレスタの音のインパクトは抜群。暗いバックグラウンドにきらきらと慎ましさも備えて光る音はチェレスタの背骨(!?)とも言える基本中の基本。全てはここから始まっている。(もちろんこれが全てではなく、チェレスタはパートも楽器も20世紀以降進化しているわけですが)

しかもちょっとしたカデンツァ、とはいかなくても指揮者が振らなくて奏者の自由に弾いていい部分までくれちゃうのがまた嬉しいところ。今回コンサートで踊り手がいないですし自分ももうちょっとテンポを自由に弾いてもいいかなーと思ってるところです。

もうこの曲について多く書く必要はないですね(下手したら以前にも紹介してる可能性もありますし)。適当な録音をリンクします。明日聴くロンドン交響楽団なんかどうでしょう。チャイコフスキーの3大バレエ全部という便利なセットです(金平糖の精はディスク4のトラック12です)
チェレスタも色々あることはありますが本当にチェレスタが輝いてる録音ピンポイント、ってのはなかなかミクロの差の世界に入ってきてしまうので。

でもやっぱり弾き手としては常に表現豊かでチェレスタの巷のイメージ以上のチェレスタ演奏がしたいなと思ってます。たとえそれがベストな楽器でなくても。(それでもキーボードよりはタッチと音の関係の自由がききますからね)
そこをしっかり心がけて今回も弾いてこようと思います。

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