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~名もない蛾と虹の錯乱~ 内の思いと外の色彩をつらつらと。
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オケでピアノを弾くことについての話(その3)
引き続きオケでピアノを弾く話です。
前回書いた通り教材的レパートリーを紹介するのですがその前に案の定書き忘れたことがあったのでそっちから。

まずは指揮者・周りの奏者と一緒に息をすること。特に弾き始めるときとか指揮者の動きに合わせて息をすると弾き始めも他の楽器とぴたっと来ますし、音楽の流れを自然に感じられます。
演奏している間は指揮者と他の奏者とのコミュニケーション方法は常に目で見て、耳で聞いて、そして息を合わせること。色々考えること捉えることあって難しいですが、オケの一部として一体になるには呼吸を合わせることから始めるのが良いかな、と思います。

あと家でCDを聴きながら練習すると色々ついていけないところも出てくると思いますが、実地で弾く方が楽です。なぜなら指揮者がちゃんと1拍目を示してくれますし、あと音が辺りに満ちているので他のパートを耳で拾いやすいので。リハーサル前に書いたキューを実地で消すこともしばしばあります。なので心配すぎない方がいいです。

それから最近(リハーサルで使う原本でなく)練習用に使うパート譜のコピーを事前に奏者に渡す際にスキャンしてダウンロードする形式をとるオケもあるみたいです。
メリットは郵送するコストと時間が省けること。デメリットは前パートを使った人の書き込みまで(元より濃い色で)スキャンされてしまってさらに消せないこと。
今回もらったパート譜のコピーではどうやら前使ってた人がオーボエの音を知らないのかキューの楽器名を間違えていることが判明。
次パートを使う人のためにも不要な書き込みはせず、なるべく正確な書き込みを心がけましょう。私もですが。

さて、オケでのピアノ弾きの立ち回りを教えてくれる人、というのは現状あんまりいません。大抵環境に放り込まれてリハーサルや演奏から経験を重ねてスキルを身につけていく感じが多いと思います。
オケでのピアノパートにもいろいろあります。20世紀以来ピアノがオケの楽器として演奏する機会はどんどん増えています。そんな拡大しているオケピアノ・チェレスタのレパートリーの中から今回奏者にとって勉強になる、オケにおける立ち回りやスキルを身につけられるような曲を選んでみました。
もしかしたら実際に演奏に出会うことはなかなかない曲も入ってますが、是非録音とスコア・パート譜を入手してさらってみてください。

1)ロス・エドワーズ バイオリン協奏曲「Maninyas」
オーストラリアを代表するバイオリン協奏曲。打楽器が充実したオケパートにピアノも参戦します。大きなパートではないのですがちょこちょこ弾くところがあり、第3楽章ではちょっとしたソロもあります。
この曲の特徴はころころ変わる拍子とテンポ。特に速いテンポで5/8、6/8などトリッキーな移り変わりが続くのはかなり難易度高いです(しかもそこでピアノが弾くんだな)。
数えなくて良いところも多いのですが数える練習、そして前回のエントリーで紹介した|とか△などのシンボルの使い方にもいい教材だと思います。

2)モーリス・ラヴェル 「ダフニスとクロエ」(バレエ全曲)
こちらはチェレスタがいます。ものすごく難しいパートではなく、弾く頻度はチェレスタとすればまあまあ。ただ上記の曲と似た拍子やテンポの変化がポイントになってきます。
こちらはどっちかというと楽譜にはちょこっとしか書いていない、指揮者が適宜テンポを動かす(ルバートと呼ばれる)についていく事が重要。そこはとにかく指揮者の動きと呼吸を読まなくちゃいけない部分です。
あとこの曲でチェレスタは目立つことは少ないもののオケの音に重要な彩りを添えることが多いです。そこをどう表現するかというのもワンステップ上の演奏には大事。
あと私がこの曲を弾いたときはパート譜に数々間違いがありました。この曲に限らないことですがリハーサル前の予習は大切です。

3)ドミトリ・ショスタコーヴィチ 交響曲第5番
ピアノとチェレスタ、1人で両刀使いのこの曲。弾く箇所は少ないですが楽器を印象づけるソロがいくつかあります。ピアノは第1楽章の最初のエントリー、そしてチェレスタは第1楽章の終わりと第3楽章の終わり。それぞれの楽器の音色を引き出すいい機会です。
チェレスタのソロの時は他の楽器があんまり弾いてないのでちょっとびびります。特に第3楽章の終わりはハープと2人っきりで同じパッセージを弾きます。指揮者だけでなくお隣さんの動き(ちょっと独特)にも注意して音を合わせなくちゃいけない、かなり難しいパート。

4)セルゲイ・プロコフィエフ バレエ「ロミオとジュリエット」
数あるオケピアノ・チェレスタパートのなかでも一番ピアノ・チェレスタがオケと一体化しているパートではないかと思います。弾く頻度もパートの内容もなかなか手応えあり。色んな意味でちょうどいい印象のある、なんだか納得のいくパートです。
プロコフィエフなので地味に弾きにくいパッセージもあったりします。

5)アーロン・コープランド 「アパラチアの春」
今弾いてる曲です。曲の長さの割にはピアノが弾く箇所はそこそこ多く、さらにテンポ・拍子の変化も多い。さらにちょっとだけ普段ピアノを弾くのとは勝手が違う指運びもあり。
ただこの曲は前述「録音で練習するよりリハーサルで弾く方が楽」な曲に当てはまると思います。指揮者がしっかり1拍目とテンポ変化を示してくれて、それに集中すればなんとかなるタイプ。今回は指揮者の卵達が振るので頼んだぞーと指をクロスしています。

6)オットリーノ・レスピーギ 「ローマの松」
意外と短い曲ですが(30分もしないはず)、ピアノパートは結構でかい。第1楽章と第4楽章はほぼ弾きっぱなし、第3楽章では何度もソロがあります。
第3楽章のソロは普段のソロピアノや協奏曲に似た感覚である程度自由もあるのが特徴。最初のソロなどは指揮者が振らない場合もあります。
第1楽章は速い音がずーっと続きますが、高音楽器がきらめいてピアノが常に聞こえてるわけではないのでここでもしかしたら「音を犠牲にする」可能性がでてくるかも。
さらにこの曲はオケの中での音量のバランスを色々考えさせられます。各楽章でそれぞれ違ったバランスの取り方が現れるのが面白い。

7)グスタフ・ホルスト 「惑星」
金星・水星・海王星にかなり目立つ、そして個性的なチェレスタのパートがあります。私の好きなチェレスタパートの一つ。
オケで弾くテクニック的には水星の速いテンポについていくこと、海王星のちょっとわかりにくいエントリーとハーモニーがちょっと曲者ですが、それよりもこの曲ではチェレスタで最大限に表現することに焦点を当てたいです。この曲でのチェレスタパートはそこまで突き詰める自由があると思うので。この曲でチェレスタの美しさを知らしめてやる、くらいで(笑)

8)セルゲイ・ラフマニノフ 「鐘」
この曲には2人ピアニストが弾きます。チェレスタ(第1,2,4楽章)とピアノ(第1,3,4楽章)が1人ずつ。どちらも結構大きいパートですが、特にチェレスタのパートは巨大とも言えます。しかもかなり前に出ることが多い。
第1楽章の最初は木管に耳を傾けながら指揮者とぴったり息を合わせることが必要だったり、音の粒をしっかり聴かせる工夫だったり、音色をちょっと変えてみたり、この曲はオケで弾くこと・チェレスタという楽器を弾くことの奥深さと楽しさを試行錯誤を通じて教えてくれました。
今でもチェレスタ弾きにとって最高峰の曲だと思っています。

探してみるとピアノやチェレスタが入ってるオケ曲って結構あって、その充実さや求められるスキルはピンからキリまでいろいろあります。でもそのどちらの要素も時代を経るにつれて確実に高まってて、さらにオケ曲自体が複雑化するとともにソロで弾くスキルだけじゃ難しくなってきているようなところはあるのでは。
音楽系の大学でオケ演奏に特化したコースはちらほらあって、その中にピアノも含まれてるケースも少数ありますが、そういうトレーニングを受けられるまえにオケで弾くことになる場合の方が多く。

私の場合はオケでピアノを弾く前にチェロで弾いていて、その時点で身につけたことも多かったと思うのですが、身につけたことを具体的に意識するのはオケピアノ・チェレスタを弾き始めてから。今回3回にわたって書いてみましたが、なかなかこういう経験を理論付けて形にするのは難しいな、と思いました。

まず自分が忘れないため、そしてなにかあったときに自分がある程度わかりやすく説明できるための最初のステップ・・・くらいにはなったかな。本当にしっかり説明してメソッドにするとしたらこんなもんじゃだめですね。本当にそれをやろうとしたら私自身ももっと頻繁にオケで弾く機会を作らなきゃいけませんし。

ということで今回書き残したエントリー3つをベースにして自分も忘れず今後また展開できるようにできたら、と思います。
そして来週のリハーサルで久しぶりにオケピアノを弾くのが楽しみです。指揮者の卵が学ぶためのプログラムですがきっと奏者としても学ぶことがでてくるはず。腕を取り戻せるようにもう数日がんばって練習します。


何曲か紹介したので今日の一曲はお休み。


拍手[2回]

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オケでピアノを弾くことについての話(その2)
前回のエントリーに拍手ありがとうございます。
最近仕事休みが続いてピアノもソロの方は進歩を感じながらもうまく掴めず。恒例「進むのはゲームだけ」にちょっと近い状態になっています。
(そうそう、ポケモンYでクリア後サブストーリー(通称「ハンサムイベント」)をクリアしました。本編とは進め方もテイストもちょっと違ってああいうのもいいですね。そしてストーリーにちょっとほろっと来ましたよ)

さて、昨日の続き。
前回書きましたようにオーケストラの中でピアノを弾くというのはとにかく周りの環境が大きく違います。なので弾いてないとき、弾いてるときどっちも周りで起こっていることにある程度集中しなくちゃいけません。
そのためオケでピアノを弾く時に最重要なことは「常に周りに思考を割くためになるべく考える事を減らす、集中する情報を常に取捨選択する」ということです。

オケで弾くことになって最初にすることは弾く予定の曲の録音を聴くこと。知らない曲なら何回も聴いて全体の流れを把握する、というのはもちろんですが知ってる曲でも改めて聴いて頭の中で分析分解してみる。
パート譜を読みながら聴いてみるのも大切。どこで弾くか、入ってくる前に他の楽器が何を弾いているか、などなど。スコアを見ながら聴くのも有効です。(リハーサルでスコア読みながら弾くこともよくあります)
まえダフニスとクロエを弾いたときにパート譜がちょこちょこ間違ってたのですが、録音とスコアと照合することでリハーサル前にそこをばっちり修正することもできるのです。

パート譜には基本書き込み入れます。まず録音を聴いてるときある程度入れて、それを練習やリハーサルで調整したり書き換えたり消したり。
私は特に休みなど小節を数えるのが苦手なのでそこを軽減するために工夫します。
例えば25小節の休みをフレーズ毎に区切ったり(8+8+7とか)、弾いたり休んだりが入り組んでるところをフレーズ毎にまとめたり。

あとはキューも大事。キューとは自分が弾き始める前に他の楽器が弾いてるメロディーなどを合図にすること。合図にしやすい楽器は特にメロディー他特徴的なパッセージを弾く楽器、音の大きい楽器、近くに座ってる楽器(ホルンとか)など。意外と座ってる場所によって音の聞こえ方変わるのでそこは実際のリハーサルで体感するところですね。昨日も書きましたがケースバイケースで自分にとってわかりやすい様に選択するのがベストです。
キューを書き入れるといってもピッチまで書くことは少ないです。大体楽器の名前(略称)だけ、または楽器略称+リズム、または楽器略称+リズム+メロディーの形、くらいかな。
パート譜にキューがすでに印刷されてる場合もありますが、使えたり使えなかったり色々です。

パート譜に書き込みする時に良くつかうシンボルはキューの他にも色々あります。ページを速くめくる必要があるときには「V.S.」と頁末に(大きめに)書いたり、指揮者を見ろ!という箇所にはメガネを描いたり、テンポがゆっくりになるところは波線を描いたり。
指揮者が4拍子で振るところに「In 4」と描いたり、あと拍子が変わる曲は2拍子のところに「|」、3拍子のところに「△」と描いたり。
書き込みすぎは禁物ですがシンボルで見て分かりやすくするとやっぱり違います。

実際のリハーサルでは(特に初めの方は)正確に音を弾くよりも周りと(指揮者と)合わせて弾く方が優先なので一時的にいくらか音を犠牲にすることもあります。(そもそもオケのピアノのパートが弾き手にとって理不尽に書かれてることがあったり、そういう場合は恒常的に音を犠牲にするよう調整することもあります)
とにかく周りの音と指揮者の動きを追ってそれに自分の動きを合わせるのがリハーサルですること。音は家で練習する。

とにかく指揮者が1拍目を示してくれるだけでだいぶ楽になります。指揮者は他にもオケの中でソロを弾く楽器が入ってくるとことか他重要なエントリーを示してくれる(これもキューという)ことがありますがピアノに関してはそこあんまり多く望めません。どうしてもキューが欲しい部分はちょっとリハーサル終わりとか示談してみるといいかも。
指揮者でもピアノやハープなど半分ゲストな周辺楽器をいたわってくれる人もいますしほったらかしの人もいるので、リハーサルの外を含めてちょっとでもコミュニケーションをとって曲の中でこっちにもっと目を向けてくれるように促すことも時には必要です。
ある程度信頼関係が築けると演奏の中での安定感も増しますからね。

オケで弾く上で気づいて欲しい事として「ピアノは結構デフォルトで音がでかい楽器」ということがあります。楽器がでかくてその気になればオケ全体を超える音も出せる、というのもありますが感覚として強弱の幅がちょっと違うんですよね。弦楽器やクラリネットのppはピアノのソロのppよりもさらに繊細。(音をだす機序がまず違うんですが)
必ずしも前にでるパートばかりではないですが、それでもピアノの独特の音色を通さなくちゃいけなかったりでそこは周りとのバランスを考えたり、指揮者さんにフィードバックもらったり。
(チェレスタ弾くときは指揮者さんによくちゃんと聞こえてるか、はたまたうるさすぎないか細かくチェックします)

↑を含めて周りの音を聞く、というのは大事です。役割がリズムセクションな時もメロディーな時も(チェレスタはたまにある)他の楽器とぴったり合ってなくちゃいけないし、音を出す機序が違うことで音のアタックのタイミングの違いとかそういう細かい実地で経験してくことがたくさん。常に学んで常に取捨選択していくためには自分の耳で聞いて頭で考えることが必要です。
(周りの音についてちょっと違う話になりますが、特にリハーサル室内で周りの音が大きすぎることがあります。そういうときは他の楽器の奏者と同じく耳栓を使うと耳に優しいです。私は使うときはホルン、打楽器などがいる左側だけ入れます)

で、そういうことを全部踏まえた上で音楽を作る、表現することももちろん求められます。そこはソロと何も違うことはないです(たぶん)。

他になにかあったかな、大体こんな感じでやってる(やってた)はず。
まだ今の時点でオケご無沙汰なのですがやっぱり楽しいですし思い入れありますし得意だと思ってるのでたまーに弾く機会ができたらなあ、と思っています。(もちょっと動くべきなのかな、何か)

さて、前回予告通りオケピアノの教材として使えそうな曲を集めているのを紹介したいと思います。自分が弾いた曲もそうでないのも。
そして同じく予告通り今日の一曲。


今日の一曲: アーロン・コープランド 「アパラチアの春」



今度弾きに行く曲です。アメリカを代表する作曲家コープランドの作品で、今は器楽曲として演奏される機会が多いですが元々はバレエ曲なんです(パート譜にも「マーサのためのバレエ」とあります)。
30分くらいのコンパクトな曲ですが、何回も書いてるようにピアノが弾く箇所は多いです。ピアノパートについてはまた次回に。

このバレエが描いているのはアメリカの開拓民の祝いと祭りの情景なのですが、その春の雰囲気、素朴な暮らし、ささやかな喜びなどが音楽にも含まれていて聴いててpleasantです。
最後の方に現れるメロディーは「シンプル・ギフト」といってキリスト教のシェーカー派の聖歌。この作品だけでなくクラシック・ポピュラーの作品で色々使われてたりします。
(ちなみにアパラチア地方で育ったジョージ・クラムも「シンプル・ギフト」をアメリカ歌曲集の一つで使ってます)

この曲は久しぶりに弾くアメリカ音楽なのですが、弾いてみたら「アメリカだなー」って思いました(笑)アメリカの田舎っぽい雰囲気ものすごくしみ出ているんですよ。
それがどこかというと説明が難しいのですが、特に中程で伴奏が繰り返しになってる部分(複数あります)とか、ガーシュインの「パリのアメリカ人」とかミュージカル「オクラホマ!」に出てくるような、そういうリフの典型的なあれ。

シンプルで田舎のような雰囲気がありますが、決して野暮ったい音楽ではないと思います。きれいにまとまってて、明るさがあって楽しさもあって親しみやすく。そしてちゃんとディテールが(さりげなく)作りこんである。各楽器も役割とキャラクターが生かされていて、大規模ではないですが完成度の高い曲です。

とはいえコープランドの作品は他にほとんど知らない私。歌曲もちょっと弾いたのですが面白かったのでまたフォローアップするべきですね。もっと難解な曲とか聴いてみたいです。
ということでリンクしたのはコープランドの作品を色々集めた2枚CDセット。「市民のためのファンファーレ」(おそらく一番有名)とか「エル・サロン・メヒコ」とか「ロデオ」の「ホーダウン」くらいならなんとか知ってる。

拍手[1回]

オケでピアノを弾くことについての話(その1)
前回のエントリーに拍手ありがとうございます。
そして最近楽器と性格のチェロの回にアクセス多くて嬉しいやら微妙な気持ちやら(あれが一番いろいろなバイアスかかってると思うので)。
あくまでもネタとしてお楽しみいただけたらと思います。

さて、以前ちょろっと書いたと思いますがもうすぐMelbourne Youth Musicのサマーキャンプの指揮者育成プログラムで助っ人参戦してピアノを弾くことになってます。曲目はコープランドの「アパラチアの春」。
曲としてはそんなに大規模ではないですがピアノが弾く箇所は多いですし、テンポの変化、拍子の変化がとても多く一筋縄ではいかない曲。
朝だけ2日間の間でコンサートはなしですが、しばらく弾いてないオケピアノの勘とかをなんとか取り戻したいと思います。

大学のときにオーケストラでピアノやチェレスタを弾いて、ソロでピアノを弾くのとは勝手が違うなと思いながら自分でやり方立ち回り方を試行錯誤していたのですが、それが指揮者さんなどから評価されるときもあり。
でもなかなかそうやって経験を重ねて編み出してきた色々を(例えば同じくオケで弾いてみたいと思ってるピアノ弾きに)メソッド的な物として説明できるか、と考えるとかなり難しい。
それをなんとか説明しようと思って今日エントリーを立ち上げたのですがこの時点で書いてる量と時間を考えるとこれ一回で済ませるのは不可能です。
なのでどうなるか分かりませんがとりあえず書き始めてみます。

ソロでピアノを弾くこととオケの中でピアノを弾くこと(つまりコンチェルトのソリストではない、ちょっと通じるところもありますが)の違い。
まずは単純に弾く音が少ない。そして周りに人がたくさんいる。他のもっと詳細な違いは大体この2点の派生です。
ピアノはそれ一台(1人)でオケに匹敵する規模と複雑さの音楽が奏でられて、一人で音楽の全体を把握しているのがデフォルトですが(室内楽でもピアノのパートは他のパートが書き込まれたフルスコアになってます)、オケではあくまでも全体の一部。しかもオケ曲ではピアノは常に弾く楽器ではなく特定のところで特定の音が求められるときに弾く、ということが多く、弾かないときの方が多いです。
ソロでは自分が音楽の世界の全てですが、オケではでっかい世界のちっぽけな一部。その中で自分の役割とか動き方とかを曲によって改めて考える必要があります。

オーケストラでピアノは(ペトルーシュカなど例外もありますが)大抵オケの端っこにいて、そこから他の奏者や指揮者の動向をうかがったり(目・耳両方で)、人間観察をしたり。
自分のパートを全体にあてはめてみたり、スコアで全体像を見てみたり、他の楽器の奏者の演奏っぷりや解釈など学ぶことは色々。
そういうところも含めてオケに場所があるというのは面白いなと思います。

端っことはいえオケの中にいると周りに色んな音が溢れています。それに加えて指揮者も色んな事を指示したり伝えたりしていて、そういう様々な情報をキャッチして取捨選択していくことが重要になってきます。
どの音・情報が重要か、というのは一概に言えなくて本当にケースバイケース(曲により、人により、オケにより、など)なので実際にリハーサルを重ねて自分の耳で積み重ねていくしかないです。
音が自分の出しているものでないのでオケで求められる情報処理能力はソロ演奏よりも高いはず。

そういうことなのでオケでピアノを弾く、ということはソロでピアノを弾くということとは何よりも環境が違って、それによって求められるスキルも違ってくる、ということを今回ぐるぐる回りながら書いてみました。
次回はもちょっとそこの詳細のところ、自分が気をつけていること、工夫してることなどを書きたいなあ、と思ってます。そしてその次くらいにはオケピアノの教材みたいに使える(必ずしもオケでピアノが大々的に活躍する、ではなく)曲をまとめてみたいな、と。
ピアノに関してはプロとは言えない私が偉そうにだらだら書き続ける予定ですがそれなりに思い入れと経験は持ってると自負しています。どうか気軽におつきあいいただければ嬉しいです。

さて、ぐるぐるやってたらこんな時間。アパラチアの春を今日の一曲で紹介したかったのですがまた次回あたり。今日はお休み。


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Cathexis「Shatter Me」コンサート感想+α
引き続き不調です。
今日ちょっと精神科医に話しにいったら一連の変化はやっぱり(季節におそらく関連してる)双極性障害の範囲内の不調とのこと。
話したり文章にしたりが難しかったり、諸々頭で処理が難しかったりというのはその一部としてちょっと認知機能が低下しているらしいです。その中でも例えばピアノを弾くこと全体としてだったり、道を歩いて渡ったりとかが難しいのは各機能を統轄する「実行機能」が衰えているみたいです。
ちょっと認知機能が低下しただけでピアノ始め色々しんどくなりますがそのうちまた良くなるはずなので今は無理せず、生活リズムを崩さないようにしてやり過ごすしかなさそうです。
あ、それから血液検査は精神科医が頼んだリチウム関連は問題なかったのですが、GPが頼んだ鉄関連検査では鉄分ちょっと低めだったのでそっちもなんとかせねば。

さて、昨日は外に出るのがしんどいのを押してコンサートに行ってきました。こんな時期ですし今年最後のコンサートになるかな。少なくとも今後予定はない。
行ってきたのは以前行ったことあるシティのForty-Five Downstairsというギャラリー。
Cathexisというアンサンブルのデビューコンサートでした。大分会ってなかったピーターがピアノを弾いていて、あと打楽器奏者がユースオケで昔弾いてた人で。
編成はフルート、トランペット、打楽器、ピアノなのですが、常に4人が一緒に弾いてるわけではなく様々な組み合わせで弾いたり、音楽だけでなく他の芸術形態からゲストアーティストを招いてパフォーマンスを行うとのこと。
今回はダンサーが映像出演した他、照明デザインなどにも重きを置いていました。

基本彼らが演奏するのは新しい音楽で、初演作品だったり彼らのために作曲された作品もあり。
そして最後に演奏された曲は即興演奏で、そのベースをピーターが作ったという作品でした。
コンサートを通じて難解な曲揃いでこんな頭の状態で行かなくちゃいけなかったのが本当に悔やまれる。

タイミングをちょっと失ってましたがここでプログラム。
「Shatter Me」 演奏:Cathexis
Stephen Feigenbaum「Angel」(4人)
Cecilia Arditto 「Musica Invisible para flauta y bailarina」(フルート+映像)
James Rushford 「Glorious Union」(トランペット)
バッハ「シチリアーノ」BWV 1035 ~ Salvatore Sciarrino 「Siciliano」(ピアノ+フルート)
Liza Lim 「Ehwaz」(トランペット+打楽器)
Peter de Jager 「Helical Fractures」(4人+映像・即興)

今回特にすごいと思ったのがフルート奏者のソロ。フルートって低音がほぼない楽器で一度に一つしか音を奏でられなくて、わりとできることが限られてる楽器なのですが、それがフルート一本であれだけ世界を構築できるとは。単純に特殊奏法で音色の幅が広がったから、ということでもないんですよね。(20世紀のフルートってその前の時代とほんと別物です。ここらへんクラムが開拓したエリアなんじゃないかなー・・・)
全く同じことはトランペットのソロについても言えるのですが、今回の演奏で「世界を感じる」という意味ではフルートに軍配だと思います。

あと最初の「Angel」も良かったです。終始ppp以下の音量で作りあげるのは世界を包む「天使のように」柔らかい光。全体的なエフェクト、そして照明が素晴らしかった。

普段クラシックを知らない人、知ってる人で結構打楽器を過小評価する傾向が広くあるように思うのですが打楽器ってオケでの働きとソロ・アンサンブルでの働きは全く別です。後者のそれはほんとうに超人的です。
今回の「Ehwaz」の演奏でもメインで前にあるのはビブラフォーンなのですが、その周り至る所にぐるっと楽器(金属のチューブやボトルなど含む)がおいてあって、異種の楽器を同時に叩くことが本当に多くて。注意して見てるつもりでも叩いたところを見てない銅鑼が揺れていたり、どうやって演奏してるのかわからない(汗)
で、その異種の楽器を組み合わせることによって生まれる新しい音もまた面白かったです。

コンサート後はピーターと久しぶりに話したかったのですがなんせ調子が悪いので日本のお土産(白雲神社の御守り含む)を渡して挨拶して帰りました。今度またゆっくり。
そして今後Cathexisの音楽以外の表現形態も巻き込んだパフォーマンスを楽しみにしています。


今日の一曲: トーマス・アデス オペラ「Powder Her Face」のピアノ版パラフレーズ 第4楽章

いつものフォーマットのAmazonリンクの表示がうまくいかなかったのでこちらからリンク

今日ちょっと大学の図書館でワーグナーのリスト編曲のCD・楽譜(愛の死)、それからアデスの「Powder Her Face」のオペラスコア・オペラ全曲のCDを借りてきました。
CDはまだ聴いていないのですがリブレット(台本)・スコアは一通り目を通しました。オケ版の舞踏組曲、ピアノのパラフレーズがオペラのどこらへん、というのはだいたい分かったかな。

あらすじは大体読んでいて、題材となったアーガイル公爵夫人マーガレットの話はちょろっと読んだのですが、改めてスコアを通してみるとこのオペラ、ただの貴婦人のスキャンダルを描いた作品ではないです。男と女、上流階級とその他の人々など2つの対照的なエレメントのぶつかりだったり、そして貴族の時代から現代までの時の流れが連続的になるよう書かれていたり。
最後のシーンは晩年の1990年(最近!)が舞台で、夫人の時代の流れに取り残された化石のようなモノローグを読んでいるだけでなんともいえないもの悲しい気持ちになります。

スコアを見て面白いのは(英語だから歌詞もさくさく読めるってのもありますが)作曲家が発音などこだわりどころに細かい指示を入れてたり。「Because」のところを「Whores(売春婦達)」と韻を踏むように発音する、とか。Oftenを登場人物の一人には「オフン」、もう一人には「オフトゥン」と発音させたり(どっちも正解ですが、違いはある)。
あとスコア見ただけでどの歌のパートも難しいのがものすごーく分かります。

で、今ピアノ版で練習してるこの第4楽章はオペラのエピローグに当たるところなのですが、夫人が借金まみれでホテルを追い出されてから彼女にとって「下々の人間」にあたる電気工とメイドがベッドの下から出てきてベッドを片付けながらお互いにちょっかいを出す、ほぼ歌のないシーン。困ったことに今スコアを読んでこの部分の意味が私よくわからないんですよね。
ちょっと思ったのは昔図鑑を読んでて見た、恐竜が滅びて小さなほ乳類たちが小躍りして台頭する話と絵なんですけどもしかしてそういうこと???

そうそう、スコアを見て分かったんですけどこのオペラ、おそらく18禁です(笑)。
結構生々しいあれがあれで。今まででも性的な色々扱ったクラシック音楽ってありますがぶっちぎりで一番直接的でした。色んな意味ですごい。
ですがオケの舞踏組曲、ピアノ版のパラフレーズはそこら抜きで楽しめますのでお気軽にどうぞ。私も結構合う音楽なのでそのうち弾きたいです。

拍手[1回]

Fatigued
前回のエントリーに拍手ありがとうございます。

軽躁関連再びぶり返して大変しんどいです。思考の巻き上がりに関する諸々を抑制するためインプット・アウトプットをかなりシャットアウトしています。
なのですがちょっと今日メモというか記録に残しておかないといけないことができたので書きすぎない・疲れない程度にちょっと。

今日はシティ(Little Bourke Streetからいくつか伸びてる小径の一つにあるCaptains of Industryというカフェ。なんか手作りのアクセサリーとかも売ってた)で大学以来の友達とお茶しました。以前行ったこのリサイタルの子です。
彼女はちょうど先週末で国立アカデミーを卒業。師走の諸々で忙しくてまだ全然自覚がないみたいですが何はともあれめでたいです。

外を歩いたので結構調子が悪かったのですがもうそのことはあんまり話さなくて(説明しようとすると難しいし説明できなくてぐるぐるするので)、主に音楽のことを話しました。カフェも落ち着いたところでしたし相手も相手だったのでしばし楽になりました。大変ありがたいです。

前々からその子とは一緒に弾きたいな、と思ってたのでちょっとそのことも話しました。
さっきリンクした先でも書きましたが彼女は割とモーツァルトからロマン派あたりがホームグラウンドでショーピース的な曲は嫌い、真面目なレパートリーが得意。
私は20世紀以降レパートリーが専門なのですが、割と重なってる部分は多かったりします。

ただ今日「2人で弾けるかも」と話に出たバイオリンとピアノのためのレパートリーは私寄りのがほとんどでしたね。もっと早い時代の作品を私が知ってればそっちも積極的にsuggestできたのかな。要勉強。
有力候補としてはまずショスタコーヴィチのバイオリンソナタ。かなり難しい(そして改めてチェックしてみたら長い)けどがんばってみる価値はあります。なんといっても私が愛してやまない、ピアノ一人では弾けないショスタコーヴィチの晩年の作品。
そしてこないだスコアを入手したメシアンの「時の終わりのための四重奏曲」の最終楽章。
さらにペルトの「Fratres」も(スコアは二人とも見たことないのですが)いけるんじゃないかな、という話になり。

それからシマノフスキは難しいかな、という話もしてたんですよね。「神話」はとんでもないのですがシマノフスキのパガニーニのあれ(正式な名前知らない)とか「夜想曲とタランテラ」とか。
難易度がよく分からない、といえばフランス4大バイオリンソナタ(?)=ドビュッシー、ラヴェル、プーランクとフランク。フランクはあの子は素敵な演奏をしそうだけど私がだめそう。

あとは何度聞いても身につかないショーソンの詩曲とか、まだ出会っていないエルガーのソナタ、プロコフィエフのソナタとかもちょっと要フォローアップですし、そもそもベートーヴェンとかモーツァルトとかも知っておかないと。

そうやってまた(自分のレパートリーに加えて)目移りする・めまいがするほど考えるレパートリーが増えてしまったのですが実は3つ上の段落の3曲だけで1時間くらいレパートリーがあったり(汗)
来年始動するべくそこら中心に絞っていきたいです。

ちょっと思考が空回り始めてるのでここら辺で。
夜はゲームでほどよく意識を集中させてるのですがポケモンソウルシルバーのバトルフロンティア、バトルステージに挑戦しています。
1匹対1匹の勝負で、毎回こちらが相手(レベルはこちらより少し低い)のタイプを指定して挑戦する形式。各タイプにはランクがあって、該当タイプに1回勝つ毎にタイプのランクが上がっていくシステム。
今回ストーリーで使ってるアーボックで挑戦してるのですがただ今65連勝くらい。特性いかく・技の構成上割と強めに出られる相手が多く苦手タイプに強い技も持ってて、全タイプ4ランクまで来ましたがそろそろ苦手タイプのエスパー・じめんは敬遠したほうが良い雰囲気も。
元々アーボックの守備範囲の広さを単純に試すために始めましたが上々の出来です。後世代での育成にも生かせるかな。


今日の一曲はお休みです。

拍手[1回]