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~名もない蛾と虹の錯乱~ 内の思いと外の色彩をつらつらと。
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メル響「A Spectacular Return - Act 1: Mahler's Third」感想
 前回のエントリーに拍手ありがとございますー♪

行って来ました昨日!メルボルンの最大コンサートホールにして音楽・文化の中心であるHamer Hallが改装後再開され、それとともにメル響の本拠がHamer Hallに戻ったことを祝うコンサートシリーズの第1弾!
このシリーズは1998年から2004年までメル響の首席指揮者を務めメルボルンの人々に愛された指揮者Markus Stenzがを迎えての特別なプログラム。ダブルの意味でWelcome back & Welcome homeですね。

割と現代音楽も積極的に振るMarkusですが(wikipeにはヘンツェの作品の指揮で知られているとあります)、メルボルンにおいてはマーラーのイメージが強く、メル響での最後のコンサートはマーラーの交響曲第2番「復活」を振った印象も強いです。なので今回 最初のコンサートでマーラーを振る、とあっては行かないわけにはいかない。

・・・とわくわくして行った昨日のコンサートのプログラムはこんな感じ:
ロス・エドワーズ 「Water Spirit Song」(チェロ独奏のための曲。チェロ: David Berlin)
トーマス・アデス 「Polaris」
(休憩)
グスタフ・マーラー 交響曲第3番
(第1楽章の後に休憩あり)

結構長い(3時間弱)プログラムで、中身もしっかりがっつり、割となんといいますか聴くにも上級者向けのプログラムですね。ただこの機会でこの指揮者だったこともあってお客さんはかなり入ってました。

改装されたホールなんですが、もとの面影も多々ありながら色々びっくりするような変化も。まず全部の階のfoyerにバーが装備されている!(コンサート前とか休憩中とか後とかに飲むんですよね、結構みんな。雇用も目に見えて増えてます)新しいレストランやちょっとしたお集まりスペースだったり(昨日は色々使われてました)。
ホールの中も色々変わってましたね。ホールの一番下の階(バルコニーは3層だったっけ?)の前の隅に座ってたため音響の違いはよく分からないのですが、オルガンが無くなってたり(新しいのをそのうち入れるかも、とラジオで言ってました)、壁の形とかステージの高さ?とか目に見えて変わったところがちょこちょこ。

そんな新しいホールで一番最初に聴いたのがオーストラリアの作曲家、ロス・エドワーズによるチェロ独奏のための「Water Spirit  Song」。彼の作品の中でもバイオリン(or ビオラ)独奏のための「White Cockatoo Spirit Dance」とどうしてもイメージが対になりますね、楽器とか歌と踊りとかで。
ものすごく神話的というか、即興的で儀式的のようでもあって、不思議な音階の成す神秘的な色彩がもうツボです。美しい。どこか東洋的でもあるんですよね(エドワーズは尺八とか琴とか日本の楽器を使うこともあって、その音楽的な親和性が分かるような気がしました)。

そしてこれまた存命中の作曲家、トーマス・アデス(表記は日本語だとこうのようなので以降こちらで)による「Polaris」。この曲はオーストラリア初演だそうです。Tal Rosnerによる映像とのコラボとして演奏されました・・・が、正直音楽聴いてる時って映像見ている余裕がないのです(特に複雑な音楽とか初めて聴く曲のときは)。
曲は本当に良かったです。アデスの曲で好きじゃない曲なんてないんですよね。今41歳だそうですが、20代の作品から本当に驚くようなことをやってのけて。新古典派っぽい曲やテクノ・ダンスミュージックを取り入れた曲(Asyla)とか、でもどれも独特の透明度と表現があって。
このPolarisはちょっとミニマルミュージックのエレメントを取り入れたようなところがあって、そしてどこかホルストの「惑星」を思わせるような響きもあって、複雑だけどとてつもない音楽、美しい音楽に心を掴まれる感が凄い。
アデズの音楽って全部が全部聴きやすい音ではないんだけれど、聴きやすいと聴きにくいのバランスが自分にとって絶妙だと思います。これくらい聴きにくいエレメントが入った方が聴き応えがあるというか。もう大好き。来年のMetropolisシリーズでのアデス祭りがさらに楽しみになりました。

さて、マーラー3番。先ほど第1楽章の後で休憩が入った、と書きましたがこの交響曲の長さ!第1楽章だけで30分超、全体で90分超というのは(長いでかい交響曲を書くことで有名なマーラーにしても)破格のスケール。
なんか第1楽章を最後に書いたらしく、「頭から書いてたら絶対終わりまでたどり着かなかった」と自分で言ってたらしく。長さもそうですが濃さ・厚さ・複雑さも合わせて「この人(天才ならではの)ものすごい馬鹿なんじゃないか」と思うほどです。この全6楽章を(休憩をはさんで)一つの交響曲として理解・消化するのは至難の業ですよ・・・

でも音楽は本当に素晴らしい。最初のホルン軍団(9人!)のソロから始まり、トロンボーンやチューバの活躍、第3楽章のちょっとユダヤ風な雰囲気とポストホルンのソロや第4楽章のメゾソプラノ(急遽歌手が交替したそうで誰かわからないので上に名前書いてません)の楽章の闇とか、そして最終楽章の純粋な美しさ。座ってるとこから第1バイオリンの楽譜が見えるのですがもう3時間くらいホールにいるのに最後のページになるのが見えると「もう終わっちゃうの!?」と心から残念に思うくらい。

やっぱりステージの近くにいると弦のアンサンブルの崩れとかやっぱり耳に入っちゃうんですが、でも全体としては本当に素晴らしい演奏でした。 Markusがメル響を振ってたころってあんまり覚えてないんですが、でもこうやって彼のマーラーを聴いてると解釈に一つも違和感がないというか、自分にとってのマーラーってこういうものだな、というのが感じられて。やっぱりこれで育ってる(笑)
あとオーボエの第3楽章だったかな?でのグリッサンドすごかったです。あんなグリッサンドする楽器じゃないですもん、あれは。毎回ほとんどパーフェクトにスライドしてたのもすごい(完璧じゃないときの音でどうやってるのか、というのもちょっと解るのでそれもありがたかったり)。

マーラーもアデスもオケをオケ以上のものに、音楽を音楽以上のものにする魔法をもってる作曲家で、その「世界」の作り方が最高に愛しくて、憧れです。
余談ですがクラムはマーラーに影響を受けていると語っているのですが、それもやっぱり「音楽で世界を創る」ところじゃないかと私は思います。それを主にピアノでどうやるか、となると特殊奏法を使ったり、曲の組み合わせなんかも合わせて創りだしていかなくちゃいけないのかな、と。目指すところというか表現したいものというか、そういうところにクラムもマーラーへの憧れみたいなものを私は見ます。

今回のコンサート、長かったのもそうですし、ホールが新しくなったわくわくもそうですが、なによりも音楽を通じてとてつもない体験をしました。ものすごい濃い経験。だからダメージも0じゃないけれど、得る物はかけがえないものでしたね。こんなコンサート今後あるかどうか、と思われるほど。
あ、あとコンサート終わりにピアノの先生に会いました。先生この手の音楽苦手じゃないか(長い・遅い)?と心の中でつっこみたかったですが先生も楽しんでたといいな。

で、このコンサート(Act 1)は今日の公演もあって、ラジオの生放送で今これを書きながらちょうどマーラー3番が流れているところです。まだ今月はAct 2が2公演(ベートーヴェンの田園とワーグナーのワルキューレ第1幕)、秘密のAct 3が1公演あるのでメル響も指揮者さんも大変です!
でも本当にいいプロジェクトで、最初のコンサートも大盛況で本当になにより。たくさんのただいまとおかえりでHamer Hallが満たされてよかった。


今日の一曲: トーマス・アデス 「Polaris」

iTunes Storeでの録音

マーラーも良いんですけど(それでもやっぱり3番は自分の好みだとそう上位には・・・なんですよね)やっぱりこの曲に出会えたのがこのコンサートで一番幸せでした。
アデスが2010年に作曲したこの曲は(プログラムの記述によると)2000年に作曲された「Asyla」、2007年に作曲された「Tevot」という2つのオケ作品と同じようなくくりというか方向性をもった作品だそうで。調べてみると確かに「とてつもなく巨大で複雑な世界のなかでどこかを目指し向かっている」共通点はちょっと見でも見えますね。
(ちなみにAsylaは2004年にメル響・Markusの指揮で生で聴きました。Tevotは来年のアデス祭りでやるそうなので楽しみ!)

先ほどミニマルミュージックの影響が見える、と書きましたがプログラムを読み込んでみると12音技法を独自の方法で応用してたりもするみたいで、先ほど書きました新古典やダンスミュージックなどの取り入れも含めてなんて器用な人なんだ、と。過去も現在も未来も音楽を通して見据えて抱くような作曲家はどんな時代でも希有な存在だと思います。

海を表すような音型の複雑さ(四重奏曲Arcadianaでの水の描写とはひと味違いますね)や音楽のうねりもそうですが、アデスに独特なテューバの超低音の使い方とか、不思議な透明感、不協和音のぶつけ方とか、意外でユニークで天才的で、だけど抵抗がそんなにないというか。そんなアデスの楽器での表現が大好きです。

この曲の最後はものすごい不協和音で終わるんですが、ホールで生で聴くとこの和音の余韻の最後にこの曲を通して主音となっている「ラ」の音の響きがかすか残るのがすごかったです。これもまさか計算済?ラジオだと味わえなくて残念。

Polarisは今のところニューヨークフィルで一つ録音がでているそうです。カップリング曲はなんとマーラー9番。昨日のコンサートもそうでしたがなかなかの大物にぶつけてきますね。なにかとマーラーと相性がいいところあるのかも。

拍手[1回]

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筋肉の話
前回の記事に拍手どうもですー♪
明日は久しぶりのピアノレッスンを控えています。なんとか練習も進んでいる中まだ(ちょこちょこですが)懸念材料もあり。一番得意なはずのメシアン4曲が実は比較的不安かも・・・

そんななか一昨日、ちょっと腕に痛みがあって。
楽器、特にピアノを練習しているときに腕や指が痛くなったらまずは練習を止めて、前腕の筋肉にもう一つの手を添えながら指を一本ずつ動かしてどの指が原因か調べてみるのが大事。それぞれの指は前腕の様々な場所を走る筋のどれかにつながってて、痛みの箇所から原因の指を特定して、自分の弾いてる曲やパッセージと照らし合わせてどこで指を不自然に酷使しているかを突き止めるわけです。

痛みがでることって(私の練習量だと)ほとんどないんですが今回は左手の小指が原因。メシアンの「天使のまなざし」を中心に左手でオクターブを掴むパッセージの弾き方が悪かったかな・・・・元々手のサイズの都合で親指・小指の外側の角の皮が厚くなったり負担がかかりやすいのですが、一昨日はいつもよりも若干つかみにくかった覚えが。
とりあえず当該箇所に湿布(日本で買った)貼っておいて、昨日は練習休みだったのもあってすぐ治りました。

ピアノを再開してから、というか特にここ一年でピアノ関連の筋肉が戻ってきたような気がします。
気がするだけかもしれないのですが、例えば手のひらの両サイドの肉の厚さとか密度も違うような気がしますし、なんといっても最近前腕の筋肉が。
ちょっと見普通なんですが、例えば日本で買ったユニクロのヒートテック長袖Tとか(=タイトでもないですがそんなにゆるゆるでもない)を普通に着てると前腕が若干きつい。ぱんぱんするような。ちょっと袖をまくるとちょっと血流危ない、くらいは。ちちょくちょく袖がひっかかる程度には。

巷で腕フェチというと二の腕の話をよく聞くような気がします。男性の二頭筋だったり、女性のぷにっとした二の腕だったり(昔見てた連続ドラマAlly McBealで女性の「揺れる」二の腕フェチの話があったんですがあれは強烈だったなあ・・・今でも覚えているスロー映像・・・)。
自分はそんなに筋肉フェチではないのですが、腕の中でも前腕の筋肉が好きです。やっぱり音楽家で演奏中だったりそれ以外で特徴的で美しい筋肉といったら前腕なんじゃないかなあ・・・
ということを前々から思っていたのですがこないだ日本から届いたface to aceのPROMISED MELODIESのCDジャケットの写真を見て改めて噛みしめましたよ(笑)

といってもクラシック音楽家だと男性は長袖シャツ(+上着の場合も)を来ているので腕の筋肉とかは見えないのが普通ですがね。例えば大学の授業での演奏とか一緒にリハーサルとか、音楽家同士だからこそ見ているものなのかな。
でも女性はドレスだから前腕から二の腕から肩の動きまで見れる。

こないだの脳の話と同様に、筋肉も弾く楽器によって使う箇所・使いかたが違うので、つまりは発達も違うはず。
私はピアノで割と両腕・両手が同じようなことをしているけれど、例えばバイオリンとかだと左手は指をバラバラに使い、右手は(同じくらい繊細なコントロールながらも)指は別々には使わなかったり、腕の動きもまた違ったり。
前に久しぶりにチェロを弾いたときに「ピアノで使っていてもチェロでは使う」筋肉の多さにびっくりしましたね。肩とか背筋とか、なかなか後でしんどかったです(たまには弾いてやれ!)。
なかなか色んな楽器の人の全身の筋肉を詳細に観察できることなんてないですが絶対面白いですよ。

筋肉の発達もそうですが、人が楽器を弾いている姿における筋肉の見栄えというのもいいですよね。
目立ってこう力こぶができるとかそういうのではないんですが、例えばバイオリンを弾いていて弓を引いているときの右前腕とか。トランペットを持っている人の両前腕(特に右)とか。フルートを構える・支える両腕とか。
ああいう筋肉の緊張具合が地味かもしれないけどいいなあ、と思うんです。

筋肉フェチでは必ずしもない、と先ほど書きましたが私は確実に「手フェチ」ですね(笑)
どんな手が好き、といえばやっぱり「楽器を弾く手」が好きなようで(あ、あとオペラ歌手とかで「演技をする手」も)。
弦楽器(ギター含む)の弓の手や左手とかもいいですが、なんといってもハープの両手とか最高ですね!(なかなか近くで見る機会は少ないですがチェレスタ奏者は美味しいです)
楽器を弾く手って割と普段しないような形・動きをすることが多いですが、それがまた絵になるというか美しいというか。
(そういうところが実は絵画とかだとあんまり描写されてなくてちょっとむなしかったり)

・・・ということで最初の話に戻りますが、一昨日の腕の筋肉痛はなんとか治ったものの、今日もまた筋肉痛になってしまいました。今度は腕ではなく脚。脚は脚でも右すねの前側の筋肉=ペダルを踏む筋肉です(汗)
地味!そこにそんなに筋肉があるとか、そんなに使ってるとか今日の今日まで気づかなかった!(でも思ってみれば運転でこれからもっと使うようになりますね)
これが地味に結構痛いんですよね。とりあえずこっちも湿布貼ったんで明日にはちょっとでも良くなってるといいな。


今日の一曲: セザール・フランク バイオリンソナタ(ビオラ版) 第3楽章



こないだピアノパートを初見で弾きました。やっぱり「ソロ楽器のパートに比べてピアノのパートが格段に難しい」と言われるだけのことはありますね!
最初は「楽勝じゃん」と思わせておいて急に左手が細かい&スパンが広いアルペジオになったり、独特のハーモニー言語だったり(初見ではびっくりします)、でもなによりも第4楽章のあのごついピアノパートなんですか!肩に来る!

そんなフランクのバイオリンソナタをビオラで(なのでここからはソロ楽器を「ビオラ」と参照します)。やっぱりビオラの暖かさが私は好きなんです。
特に第2楽章がビオラが光ると思いますし、第2楽章を聞くのが楽しくてよく聞いているのですが、でもバージョン関係なく一番好きで美しいと思うのが第3楽章。

「レチタティーヴォ―ファンタジア」とありますこの楽章、レチタティーヴォとは主にオペラなどで歌い手がミニマム伴奏でキャラクターの心情を即興風に(テンポ自由に)歌い上げる形式のことを指します。シェークスピアの劇のモノローグとか、一旦物語の進行が止まってスポットライトが当たったりするような演出とか、そういうのに似てますね。
そんなビオラのモノローグ(ピアノもちょこちょこ伴奏します)から切れ目なく自然に、シンプルなバイオリンのメロディーと分散和音のピアノパートのファンタジア=幻想曲に移行します。

20世紀のフランス音楽もそうですが、フランクやサン=サーンス、フォーレなどの後期ロマン派のフランス作曲家も本当に美しいハーモニーを書きますね。とっても色彩が豊かでユニークで。
完全に明るくも絶望的に暗くもない、完全に一つのキーにおさまらない色彩が、揺れ動くように、うつろうように変わっていきながら、不思議な調和を営んでいるのがたまらない魅力。
それも和音を専門に(?)弾くピアノだけじゃなくてビオラのモノローグでもその移り変わりが味わえるのが良い。

感情、色彩、暖かさ、全てが美しい、愛しい曲。バイオリンももちろんいいですが、ビオラバージョンもものすごくお薦めです。

リンクしたのもビオラ版。ちなみにジャケットでちょっと一歩下がって立っている向かって右側の男性がビオリストの方です(前に立っちゃいなよ!)。外見はちょっと色男風ですが音は結構堅実な感じでちょっとびっくりしました。ごめんなさい。

拍手[1回]

恐怖と音楽セレクション
前回のエントリーに拍手ありがとうございます~
昨日のエントリー以来もう「face to ace」の検索キーワードでアクセスがあってちょっと焦っています(汗)
なんか恐れ多いというかなんというか、次face to aceの話が出るのいつになるかわかりませんし(買ったCDからの「今日の一曲」シリーズも前回で終わりましたので・・・)

今日はなんか一日微妙に調子がダウン気味・・・というほどでもないですけどフラット気味で。そこまで心配することもない程度ですし、おそらく原因も気候によるものなのですが・・・
たまーにこういう微妙な不調の時って自分をいたわるような音楽を聞いたり、自分に優しいことをするのではなく自分に若干悪いことをしたがる癖が少しありまして。(要するに調子が悪いなら調子が悪いでちゃんと形にしてしっかり感じたい、と悪い方に心を傾けたがるみたいな・・・)
なのでそのついでに今日は「恐怖」を感じる音楽について書こうと思います。

ここんとこしばらくちょくちょく「音楽の持つネガティブな力」に言及していますが、例えば映画で映像に音楽を合わせて恐怖を煽るとか、そういう意味でも音楽ってものすごいパワーを持っていて。
聴き手の心が弱っていたり無防備だったり、題材に関して思い入れがあったり、それから弾き手の演奏がまたパワフルだったり、条件がそろうと心に突き刺さってトラウマになることもあるんですよね。

今回ちょっと自分にとって特に強く「恐怖」を感じた曲を5つチョイスしてみました。もちろん音楽の感じ方は人それぞれ、そして演奏や聴くタイミングによっても変わりますので同じ体験はできないかもしれないです。でもこの5曲は確かに恐怖を感じさせるエレメントをはらんでると思いますよ~

1) スティーヴ・ライヒ 「WTC 9/11」
ライヒが2001年の同時多発テロを題材に作曲し、同事件から10年となる去年に発表した曲です。まだ初演から1年ちょっとしか経っていないにもかかわらず世界各地で演奏されているようです。
同時多発テロに関する音声の録音(後のインタビューなども含め)を音楽の一部として使っているのが強烈です。
私がこの曲を聴いたのはラジオ(オーストラリアでの演奏を生放送していた)で、ちょうど夕飯の準備をしながら聴いていたのですがこれは初めて聴くのがコンサートとか音楽とがっつり向き合うようなセッティングだったらかなりダメージが大きかったと改めて思いました。
(でも一回ながら聴きで触れ合っておいたのでもうコンサートで聴いても大丈夫かな、とは思いますよ)

2) たま 「星を食べる」
クラシック以外で唯一のノミネート。滝本さんの曲はたまーにとんでもなく暗い怖いものがありますがこれもその中の一つ(もうひとつ思いつくのは「さよならおひさま」ですね。どっちも出会うのが大人になってからでよかったー)。
曲の暗さももちろんですが歌詞ですよ。普通に歌詞をたどっていくととんでもない展開に。(「首をそっとしめたくなる」は比喩的なもんだと思ったんですよ、最初。そういう表現結構あるんで。でも・・・嗚呼)
で、曲が美しいのもまた余計に怖いですし、「ららららんららんらら♪」も怖いですし。歌詞の怖さが音楽全体を恐怖に染めるがすごい。

3) ベンジャミン・ブリテン 「戦争レクイエム」
最初の音から怖い雰囲気の曲で、Offertoriumの後半でイサクが息子を殺すくだりのあっさりさも怖いのですが、なんといっても最後のLibera Meからの一連の流れがすごい。
Libera Meってホント天才的に書かれてますね、破滅への行進が。どんどんテンポが速くなってくるのといい、阿鼻叫喚のクライマックスといい(生で聴いた時ちょっと気が遠くなったのは曲への思い入れもあってのことですが)。
ある意味それ以上にすごいのが音楽が静まったあとの闇の中のくだり。まるで時が止まったような、どこの世界でもない空間のなかで、死んだ兵士が自分が殺した敵兵と向かい合う会話。元々の詩(Wilfred OwenのStrange meeting)もですがその空間・時間・緊張の音楽による表現も・・・ただただ恐いですね。

4) ドミトリ・ショスタコーヴィチ 交響曲第13番 第3,4楽章
死と闇と隣り合わせ、どころかどっぷりそれらに浸かってるのがショスタコの音楽で、本人も様々な恐怖にさらされた生涯を送りましたが、中でも私にとって恐かったたはこの2つの楽章かなあ・・・(他にももちろんたくさん恐怖にまつわる曲はあります、弦楽四重奏でとか)
この交響曲って合唱が男声のみで、ソロもバスで、しかもロシア語で歌ってるのが相まってまずそれが恐かったりします(汗)オケも低音楽器が強くて、割と盛り上がらないまま緊張を保ったまま暗ーく低ーく続いていく感じが。晩年のショスタコーヴィチってほんと出口のない、方向が分からない闇を書くのがたまりません。
歌詞もソヴィエトの圧政下の苦しみとかにまつわるので歌詞を知ると余計に闇が深まるシステム。
あと第3楽章、途中でちょくちょく入ってくるカスタネットの音が半端なく恐いですね、カスタネットなのに!(ちょっと日本の怪談の雰囲気に通じるものがあると思います)

5) ジョージ・クラム アメリカ歌曲集第4巻「Winds of Destiny」 第1楽章「Mine Eyes Have Seen the Glory」
いやあ、やっぱり自分にとっての「恐怖」はこの曲ですね。これを越える曲はあったとしてもこれを越える恐怖の体験は音楽とはいえどあんまり味わいたくないです。
前もちょろっと書いたと思いますがクラムがこの歌を曲に仕立てた結果作られた風景の凄惨さ、ビビッドさ、そして響く歌の虚しさとクラムの思いの強さが全て強烈に。
(ついでに次の第2楽章もクラムの皮肉を読み取るとかなり痛々しいんですよね、第1楽章のダメージと合わせると心が大変に折れます・・・)

他にも「恐怖」を感じさせる曲、いっぱいありますよ。ショスタコやクラムはほんと得意ですし、マーラー(交響曲第6番第2楽章ラスト)やバルトーク(「夜の音楽」の類い、「中国の不思議な役人」)なんかもそういう曲を書きますし。メシアンだったら「モリフクロウ」もそうですし。
色々こういう曲を探してみたりその心への影響だったり恐怖の性質とかを考えてみたりすると面白いは面白いんですが、前述5曲のような曲はやっぱり聴くの恐いです(笑)特にクラムはもう容易に聴けるようなあれじゃない・・・

今日は強烈な曲ばっかり5曲も紹介してしまったので今日の一曲はおやすみ。
face to aceのCDからの曲の紹介はひとまず終わり、と書きましたが購入した録音シリーズはまだ続いてますのでまた次回。(下手すりゃまた増えそう・・・まだアルバム2枚は買える計算ですので)

拍手[0回]

5枚、揃いましたところで。
前回のエントリーに拍手どうもですー♪
最近ちょこちょこ検索キーワードでこないだのタトゥーについてのエントリーに(ジェイル)大橋さん関連のキーワードでたどり着く方がちらほら。基本ファンブログではないですすみません(汗)
ちなみに大橋さんのタトゥーに関しては公式サイトのQ&Aのコーナーにも何回か話が出てるみたいですし(妹情報)、私はJAP工房の聖飢魔IIドールのページの動画でお話を聴きました(ドールに反映されてるんですって、タトゥーが全部)。

さて、ファンブログではないのですが今日はこないだの3枚のCDが来てしばらくしましたしそろそろ書こうかな、と思っていたところで・・・
face to aceのアルバム、手元に「FIESTA」、「fuse」、「風と貝がら」、「PEAKS」、そして「PROMISED MELODIES」と5枚揃いました。まだまだ聞き込みたい曲もありますがすっかり自分の中に落ち着いてきた感じ。
思えば前回の一時帰国の時点ではまだ聖飢魔IIにもはまってなかったんですよね。聖飢魔IIにはまってからface to aceに出会ってぐっとはまるまでが速かったのですが、それでもファン歴半年ちょっとくらい?でCD5枚は自分でもびっくりのペース。メシアンやクラムを好きになったときもこんなには借りたり買ったりしていないような。

face to ace(ギター&ボーカルのACEさん、キーボードの本田海月さん)を好きになったきっかけがmyspaceで試聴した「風と貝がら」と「ヒグラシ」(どちらもミニアルバム「風と貝がら」収録)で。そこからインターネットラジオの「碓氷峠音楽堂本舗」を聴くようになり(アーカイブ全部突破→毎回楽しみにしながらちょこちょこお便りを書いたり)、そこでもっと楽曲を知って、お二人の活動やバンドのサポートメンバーの皆さんやユニット外の活動なんかも知って。
まだまだファン歴は短くて色々知らないことたくさんですがぼちぼちと。

新しい曲に出会うのは本当にわくわくしますね。曲に恋に落ちる瞬間が本当に大好き。「碓氷峠~」を通じて好きになった「wing archiver II」(「PEAKS」収録)や「荒野」(「PROMISED MELODIES」収録)は正にそういうはまり方でした。
そしてじわじわ来るのを今楽しんでるのが「INTO THE BLUE」とか「ON THE WING」とか(どっちも「FIESTA」収録)。

face to aceの音楽は最初の食いつきがどうであれ聞き込むプロセスが本当に楽しい。でもがつがつ日常で聴いていくのがなんか勿体なくなるような、大事に聴きたくなるような音楽なので自分の気持ちや周りの景色なんかで選んで聴いています。
前も書きましたがface to aceの音楽のコンセプトは「景色の見える音楽」、なのですがメルボルンの景色でface to aceの曲に合う景色を見つけたいな、と思ってたり(ただCD3枚買い足したことで曲数が格段に増えちゃいましたが)。

私はface to aceの音楽の「色」(ハーモニーもそうですがそれに限らず)がまず好きです。そしてものすごく空間が広がる、そのspaceが好きで。
自分で弾くときも色彩・空間・時間をもっと大切にしたいと思っていますし、自分の心にも求めることですし。
楽曲の中だと最近はロックテイストが強くなってるとお二人がおっしゃってましたがその方が私の好みに合ってますね。「fuse」に入ってる初期の曲よりも今のほうが好き。

ちなみに最初好きになった曲は(最初CD買った時に見てびっくりしたんですけど)ほとんど海月さんの曲が多かったです。でも聞き込むとACEさんの曲も結構ぐいぐい来るのですよ。2回目に買ったCDはそこまではっきり傾向が分かれてなかったです(おそらく慣れ)。しみこんでくるとみんな好き(笑)

こんど一時帰国したとき是非ライブに行って生で演奏を聴きたいなーと思ってます。
face to aceのライブは2topといってお二人だけのライブと、サポートメンバーの皆さんと一緒のバンドライブもありますし、ACEさんのアコースティックライブ、他ユニットとのライブもあり、といろんな形式があるのでさすがに全部は味わえないんですがなんとかお二人揃ってるライブを・・・と。
録音とはまた違いますし、やっぱり音楽は生演奏を味わわなきゃ!

えーっと、ここまで来ても好きなのにまだ言及がない曲がいくつか。「今日の一曲」コーナーではものすごい好きな曲を避ける癖があるのでこの機会にちょっと。
FIESTA:
「KALEIDO-PARADE」(説明ができない魅力です)、「流星雨」(夏に聴くのが楽しみ!)
fuse:
「オルフェウスの朝」(初期の名曲ですねー)、「The Riddle」(カバー曲ですが弦アレンジが効いてる)。
PEAKS:
「月華抄」(ACEさんの歌声がものすごく映える曲)、「COYOTE」(かっこいい!ベストを挙げるならこれかwing archiver II じゃないかな・・・)
PROMISED MELODIES:
「荒野」(海月さん歌ってる!というだけでなくほっとする、心に染みいる曲です)

face to aceの音楽についてはまた今度・・・書くかしらん。以前も書いたんですがものすごく思ってる事感じることを文にするのが難しいしどうしてもこうまとめて詰め込むんですよね。(このエントリーも2日がかりでした)
次回があればもちょっと気楽に、を目指して。


今日の一曲: face to ace 「約束の旋律」



「PROMISED MELODIES」収録の一曲です。(face to aceの10thアルバムで10周年を記念するアルバムでもあります)
碓氷峠音楽堂本舗でもアルバムのリリースに向けて結構早い段階で聴いていた印象のある曲ですね。

「約束の旋律」はACEさん作詩、 海月さんが作曲・編曲。
最初と比べると大分私も曲を聴いてACEさんの曲か海月さんの曲か、ちょっと分かるようになってきたかも・・・?(かも、程度ですが)海月さんが編曲を全部担当してらっしゃるので当てるのが難しくなるところはちょっとあるかも。
でもACEさんの曲はメロディーが先に心に響いて、海月さんの曲はリズム(+ハーモニーも)が先に心を掴む、みたいな印象があります。(だから海月さんの曲に速く食いつくのかも、私)

この曲もまたリズムが特徴的な曲。ここち良いスイングと、誘うようなリズムに乗って音楽がはばたく感じ。
リズムもハーモニーも、優しく自由で、オープンで。落ち着いた色彩に風が吹いているような。
いいこと心が音楽に乗るんですよね。波にうまく乗ったときのような感覚(それを実際に私が経験したことがあるかは別として・・・)。
本文で書いた優しさとか空間とか、face to aceの音楽で好きなものがいっぱい詰まってますね♪

先ほど書きましたようにface to aceの音楽は最近のスタイルが好きで、あと以前のエントリー(若い頃の音楽と晩年の音楽について)で「若い人には書けない音楽」の話をしたときのようにやっぱり熟した音楽が好きで。
それを差し引いても「PROMISED MELODIES」は全体としても本当に素晴らしいアルバムだと思うので是非お薦めしたいです。(「PEAKS」も良いですよ!)

拍手[4回]

今年はフランス音楽カウントダウンだそうです!
前回のエントリーに拍手どうもです~

今日はfacebookからちょっとお知らせが入ってました。
去年の後半豪ABC Classic FMでやっていたClassic 100 Countdown、今年はフランス音楽がテーマだそうです~
さすがに時代くくりではこないだろうな、と思っていたのですがなんと国括り。
投票は8月22日からなのですが、投票用のリストには去年の20世紀カウントダウンである程度ランクインしたフランス音楽を中心にかなりの曲が入っています。今回は楽曲追加は投票の時じゃなくて事前に行う(今できる)とのことなのでちゃんと考えとかなきゃなー・・・

フランス音楽、もちろん自分でもよく弾きますがそれはほぼ全部20世紀のフランス音楽で。
バロック時代にもオペラ、器楽(クラヴサンなど)でドイツ、イタリアなどとはまた違った文化が花開いていましたし、ベルリオーズはオーケストラの発展に多大な貢献をしていますし、サン=サーンス、フォーレ、ビゼーなどももちろん居ます。
ただフランス音楽史の授業で最初の方に習ったのは、クラシック音楽においての主流はどの時代も別のところにあって、独特の文化ながらもフランスが中心となって他の文化に大きな影響を及ぼすようなことが20世紀前はそんなになかった、みたいな事情で。
フランスの国としてのアイデンティティ、音楽文化のアイデンティティというものもいろいろ模索していた時期が長いそうで(ナポレオンの台頭とかとは関連性はあるんですかね)、同時にスペインに憧れてみたりパリ万博以降の東洋傾倒だったり、外の文化をよく取り入れるのも特徴的。

ジャンルで言うとバロック時代のオペラは大きいですし、あとバレエも結構そちらの分野では知られてる作品多いですし(コッペリア、ジゼルなど)、ピアノ音楽は印象派がメジャーですし、あとは20世紀はフランス音楽では木管が大活躍していたり・・・なので投票する人のバックグラウンドで結構票は分かれると思います。そういう意味では今回のカウントダウンはちょっと読めないところもあるかな?

ということでフランス音楽にはそういうおもしろさがあるので今回のカウントダウンはバロックからモダンまでフランス音楽の様々な時代、ジャンル、スタイル、文化を反映するような100曲のリストになるといいな、と思っています。前回のカウントダウンは大分上位偏りましたからねー!

まだ自分が何に票を入れるか、は考えていません。なんらかのメシアン、おそらく複数は確定かな。何らかのドビュッシーとかラヴェルも入れたい。
前述のようにバロック時代が手薄になりがちなのでそちらにも入れたいのですが何せあんまり詳しくない。クラヴサンのための曲とかちょこちょこ聴くんですけどね-(そして将来的にちょっと弾きたいですけどねー)
あとヴァレーズとか、クープランとか、好きな作曲家というのは分かるけど特定の曲どうしよう、と迷うところもいろいろ。

そうやってどうしよう、と考えながら今現在の投票曲リストをスクロールしてると知らない曲も結構ありますね。デュティユーとかミヨーとかダンディとか、ちょこっとだけ聞いたことあるだけど詳しくは知らない作曲家もこうやってリストで(おそらく名曲、比較的ポピュラーと思われる)特定の曲が挙げられているので今後聴くときの参考にしたいです。

さて、投票の時、そしてカウントダウンの終わりにはまたこのトピックでエントリーを書きたいと思いますのでその時はまたよろしくお願いいたします。
前回、今回とカウントダウンのテーマが自分好みでそういう意味では楽しみですが、今回は最後までわくわくなカウントダウンになることを願っています。
続報に期待!


今日の一曲: ヨハン・セバスチャン・バッハ 無伴奏バイオリンのためのパルティータニ短調 シャコンヌ (セゴビアによるギター版)



フランス音楽はまたカウントダウンに近づいた時に改めて。(それでなくても普段からちょこちょこやってますが)
今回はこないだの日本からの荷物に父が入れてくれたCDから。
前々から父が退職したらこのシャコンヌを練習するんだ、という話をしていたのにCDを持っていなかったので早く買いなさいと催促していたらいつのまにか購入していた、という経緯で(きっとレコードでは持ってたと思われ)。

このCDには曲だけではなくバッハのチェロ、バイオリン、キーボードのため曲のギター版が入ってます。
バイオリン、チェロ曲はギターで弾くと比較的楽そうに、独特の間と空間を持って聞こえる反面、キーボード曲のアレンジはギターでは技巧がものすごく細かく大変そう。
でもどれもクラシカルギターの音色の美しさが引き立つアレンジになっています。

このシャコンヌ、タイトルの通りもとはバイオリンのための曲ですが、ピアノ編曲もいくつか(ブゾーニ版、ブラームスによる左手版)、オケ版もいくつかと様々な編曲があります。
バッハの名曲って一つの濃い空間、宇宙を作りだすような圧倒的な存在感があるんですが、このシャコンヌも間違いなくそんな曲の一つ。バイオリンで弾いても、オケで弾いても、ピアノで弾いてもものすごい迫力なのですが、圧倒的に音量の劣るクラシカルギターで弾いてもその存在感は出るのがまたすごい。

調べて見るとこのCDにて編曲・演奏しているギタリストのアンドレス・セゴビアは「現代クラシックギター奏法の父」と呼ばれ、クラシック音楽においてギターを確立したソロ楽器として地位を築いた人物だそうです。(そういえばヴィラ=ロボスについて読んでたら当時ギターは「浮浪者の楽器」とみなされてたって書いてあったもんなー)
今クラシカルギターとしてリサイタルやコンサートがホールで行われるようになったのも彼が演奏技巧を確立し、演奏において楽器・奏者の音楽性を実際に示し、楽器を改善し、そしてこういう編曲でレパートリーを広げた賜物ということだそうです。

セゴビアのギターの音は本当に暖かみがあって最初にCDを通して聴いた時から心を掴まれました。
オリジナルとは違うバッハの世界に是非~
(今回はオールバッハアレンジのCDを紹介しましたがセゴビアはスペインのギター楽曲なども弾いていますのでそちらもお薦めです)

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