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~名もない蛾と虹の錯乱~ 内の思いと外の色彩をつらつらと。
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遅れながら年末のQ2 Music Countdown
さて諸々あったので遅れましたがちょっとはフォローしてた年末のあれ。
米現代音楽専門ネットラジオチャンネルQ2 Musicの2015年末カウントダウン。
過去20年に作曲された曲限定で一般自由投票によりトップ50曲を決定されるという現代音楽のなかでも最高に現代なラインアップ。

結果はリンク先の通り。
案の定知らない作曲家・曲ばっかり!でも知ってるのもあった!
一つ一つ調べてはないのですがぱっと見て分かる傾向もいくつか。

まず、Q2 MusicのMeet the Composer(現在活躍中の作曲家から毎回1人フィーチャーするPodcastシリーズ)に登場した作曲家はやっぱりここでも強い。そのくくりだとJohn Luther Adams、Meredith Monk、Nico Muhlyなどがランクインしてますね。
これは現代音楽のトレンドというだけでなくMeet the Composerシリーズの立ち位置とか役割とか需要とか、そういうものにも繋がってくるのかな。こないだ最後のボーナストラックが来て(あっまた聴いてなかった)シーズン2が終了したのですがこの分だと来年も続くかも・・・?

そしてクラシック音楽も(20世紀と比べてもさらに)ワールドワイドになってきてるとはいえ、お国の音楽が強いのはどこでも健在。
このカウントダウンでもやっぱりアメリカの作曲家が多く見られます。Philip GlassやSteve Reichなど大御所からAndrew NormanやJonny Greenwoodなど若手まで、多彩な音楽模様が垣間見れます。

ただアメリカ以外だと北欧系の名前もかなり挙がってますね。Kaija SaariahoとかRautavaaraとか。たしかMeet the Composerかどこかで北欧に現代音楽の拠点があるとかいう話もあったような気がしましたが、実際どういう環境になってるのか気になるところ。オーストラリアにも届かない分けじゃないけと、全体像は見えないなあ。

そしてそんな中大健闘したのはイギリスのトーマス・アデス。さすがというかなんというか、やっぱりすごいんだな。アデスの作品の中で自分が三大と思ってる(というか実際3つでセットらしい)「Asyla」(8位)、「Tevot」(15位)、「Polaris」(44位)が全部ランクインしてます(あと他に1曲)。
縛りが縛りなんで同じ作曲家の複数作品がランクインしてるケースも少なくないですがこれはかなり多い方じゃないんでしょうか。これからもぶいぶい言わせて欲しいです。

過去20年ということでちょっと注目したいのは女性作曲家の活躍。ざっと数えてみたとこ9人くらいかな?やっぱりKaija Saariahoが強いみたいですね。時代も世紀またいで活躍してるし女性の大御所的ポジションなのかな。そしてここでもやっぱりアメリカと北欧が強いようにも見えますが、実際どうなのかな。

さらに最近音楽界隈で話題になったのがJohn Luther Adams。今回2位に輝いた「Become Ocean」、ピューリッツァー賞受賞でも有名になりましたが11月だったか12月だったかにシンガーソングライターのテイラー・スウィフトがこの曲を絶賛して演奏したシアトル交響楽団に多額の寄付をしたことでも話題になりましたね。それ抜きでもJohn Luther Adamsの名は知られて、このカウントダウンでも上位に食い込むことが予想されてたと思いますが、現代音楽・クラシック音楽界隈以外でも言及があったのはすごいこと。

ちなみに私が投票した5曲はこんな感じ・・・だったはず。リストをなくしてしまって所々覚えてない。
(1) トーマス・アデス 「Polaris」
(2) Brett Dean 「ソクラテスの最後の日々」
(3) ジョン・アダムズ 「City Noir」
(4) ジョージ・クラム アメリカ歌曲集第5集「Voices from the Heartland」
(5) オスバルド・ゴリホフ 「Oceana」

そしてフォローアップしてきたい作曲家は概ね変わらずかな。Kaija SaariahoとかJonny Greenwoodとか、Andrew Normanあたりかな?なかなか好奇心の広がりに合わせて聴き広げるのは難しい。

今回のカウントダウンは過去20年、つまり1996年以来に作曲された作品でしたが、1996年は私にとってはメルボルンに来た年でもあり。まだ音楽というものにそんなにはまってない間にも現代音楽の世界は色々動いてたんだなってのは歴史を探るというには新しい感じもしますが面白いです。クラシック音楽全体でも思いますが一番見落とされやすいのは「そこそこ最近の音楽」だと思うので、もっとそういうくくりの音楽が知られるようになるといいな。


今日の一曲: トーマス・アデス 「Asyla」 第3楽章



アデスを紹介せな、と思ったらどうしてもぶっつけだとこれになってしまった。(Polarisはさすがにたくさん言及しすぎてるからなー)
最近Crypt of the Necrodancerやってたりサントラ聴いてたりですっかり頭の中がディスコなのでこれもまた一つの偶然か。

巨匠というには若いし、若手というには音楽スタイルと名声が確立してる気がする、中堅の大物アデス。(なんだそりゃ)
モダンで複雑で硬派な音楽が一つの魅力のアデスの音楽ですが(他にも新古典のクリアなクラシックな感じなどそれは数々あり)、それがディスコ音楽とどう繋がるか。それがなんだかうまいこと組み合わさるんですよ。

こないだブーレーズが亡くなって追悼代わりに彼が指揮してるバルトークの管弦楽のための協奏曲(パリ管演奏)を聞いて、やっぱり音楽の正確さと精密さが作り出す爆発的なエネルギーってすごいなと思ったのです。それがアデスのこの曲にも当てはまることで。
特にリズムがそうなのかな。精密さを突き詰めるごとにエネルギーが凝縮される感じ。

Crypt of the Necromancerではビートを表すのにスクリーンの中心に拍動する心臓のイラストが描かれるのですが、ダンス音楽のビートって特に心臓の拍動に近い音の質があるようで。
Asylaの第3楽章のクライマックスで出てくるベースラインの拍動も心臓(と腹)にがんがん響くのが好きです。

Asylaが作曲されたのは1997年。ダンス音楽が時代を経て移り変わり、今の現代音楽が過去の物になってからこの音楽がどういう風に見られるようになるか気になります。
ヒンデミットの1922年組曲とか、当時流行の音楽を組み入れる音楽って貴重だけどそれでちょっと軽く見られるような印象はあるからなあ。自分がひねくれてるだけかな。

とにかく抽象的で難しくも思えるアデスの音楽ですが、その中でも異質に本能と心臓に訴えかける第3楽章は素直に楽しむのが一番なのかもしれない。そこからアデスの音楽に入ってくのもいいと思います。

ということで過去一番他の事項に言及が多くて、色々何を言ってるか分からない今日の一曲でした。
そういえばそろそろ「Asyla」「Tevot」「Polaris」のアデス三大がCD一枚で楽しめる録音って出ないかなー。できればラトルとかStenz指揮で

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