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~名もない蛾と虹の錯乱~ 内の思いと外の色彩をつらつらと。
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お試し企画:チェロの鬼門
ピアニストは音楽を聴くと自然と指が動くと言いますがそれよりも自然に舌が動いてしまう流 星姫です。こんにちは。
滑舌は全然ですが管楽器奏者でもないのにそういった人と(家族も併せて)つるみまくった結果ダブルタンギングもトリプルタンギングもできるようになってしまった次第であります。

それはさておき本題へ。
いつもオケの様々な楽器のことを知っておきたいと思う中で、どんな楽器が何を得意としていてなにが苦手か、ということをそういった知識の一つとして頭に入れていたいと思います。
ちょっとそういうことを自分なりにまとめてみたいな~と思ったので、お試し企画として、自分で一番経験があるチェロで、「管弦楽におけるチェロの苦手・鬼門」をテーマにちょっと書いてみます。よろしくお願いします。

チェロのソロのなかでもリーダーのみが弾くソロ、前から何人かが弾くソロ、そしてチェロがセクションとして目立つセクションソロがあります。

リーダーのみのソロの鬼門を二つ。(この2つが一番難しい、というわけではないです。あしからず。)
まずはホルストの「惑星」から「金星」。2カ所ほどソロがあるのですが、一つ(後のほう)は音域・音程のコンビネーションがかなり難しいのですが、問題はむしろ前のソロ。
私の元のチェロの先生がいってたのですが、難易度こそもう一つのソロほどではないものの、件のソロの数小節前にオーボエのソロが全く同じフレーズを弾いてて、彼らにとってはお茶の子さいさいのソロなので相当ハードルが上がるんです!聞いている方はあんまり意識しなくともチェロのリーダーにはかなり!プレッシャーがかかる1フレーズです。
もう一つはスッペの「詩人と農夫」序曲からの長いソロ。これもまあ難しい、というわけじゃないんですけど実際弾いたことが良い思い出になっていないんで・・・高校の時のオケだったんですが、あとで録音したのを聞いてみたらものっそ音程が外れてて。自分の演奏でこんなにトラウマになるとは・・・そのMDは一生封印です。

チェロの集団的ソロではもっと顕著に難しいものがあります。
たとえばプロコフィエフのロミジュリの「ロレンス神父とロミオ」でのソロ。チェロのセクションがいくつものパートにも別れてソロを弾くのですが、ちょっと音域的に苦しいこともあり、とりあえずアンサンブルとしてまとめ、美しくするのがものすごーく難しいパートなのです。
似たようなソロにドビュッシーの「海」の第1楽章、あの有名なロッシーニの「ウィリアム・テル序曲」の冒頭(これは前から5人のソロ)も同じくチェロ同士でそこそこ難しいパートを会わせるのがものすごく難しい、チェロにとっての鬼門です。

あとチェリストの間ではショスタコーヴィチの「祝典序曲」の第2主題(?)のメロディーの難しさは有名です。
曲が速いのもありますが、たとえゆっくりだったって「(真ん中のドのすぐ下の)シ→ミ→ド#(上)」の音程はなかなかとりづらいです。
ここを練習するためにとあるチェリストがチェロと指の間に糸を張って体で覚えるようしてたら、チェリストがいない間に誰かが糸を短くしてしまった、という逸話まであるほどです(ただこれはチャイコの5番の第2楽章、という説もありますが)。

チャイコフスキーのバレエ「白鳥の湖」の緊張感あふれるフィナーレセクションの始めは弦楽器全体にとって鬼門です。
なぜなら調が変ホ短調、つまり6つもフラットがあるから!
弦楽器っていうのは(特にバイオリン)楽器の構造上(難しく言えば開放弦の音程上)、シャープの調の方がフラットの調より弾きやすい仕組みになってるのです。
変ホ短調は特に弾きにくい、音程がとりにくく。早いパッセージは苦戦します。
そんななかチェロのパートはまたチェロの広い音域のなかでも高音域に入るちょっと手前の「弾きにくい」セクションで書かれてて。
もどかしいったらありゃしないんですよ(汗)

あと曲が始まっていきなり高音域でぱっと入らなくちゃいけないストラヴィンスキーの「ペトルーシュカ」も本当に胃に悪いです。是非聞いてみて下さい。
音程以外で難しいのはマーラー5番の第2楽章。嵐の中の本当に不気味な静けさを表す延々としたスローでソフトなソロで、弓をゆっくり動かすのでとにかく腕が痛くなりますし、長い間無表情といってもいいくらいの弾き方なので精神的にもけっこうきついです。

そしてこれは全体的な印象なんですがチェリストはいわゆる「後打ち」(Off-beats)が他の楽器の奏者と比べて下手な傾向がある気がするんですよ。
例えばそういった感じのパートが多いホルン奏者やビオリストにとってはSecond Nature、ごく自然なものですが、チェリストはリズム&伴奏よりはメロディー&副メロディーが多く、それを好むためたまーに後打ちに出くわすと多少ならずとも苦戦するみたいです。

こうやってみるとチェロは必ずしも器用な楽器ではないような印象を受けるかもしれませんが、この楽器はもともと許容範囲がかなり広い楽器なので得意なことも一杯あります。
表現力の豊かさはもちろん、ベースラインとしてのしっかりさなどもあり・・・次回この企画ではチェロの得意、そしてチェロという楽器が輝くソロの例を挙げてみたいと思います。(ただそれは思いつくのが難しいんじゃなくて絞り込むのが難しいのでまだまだ時間がかかるかも!)

今回・次回は自分の(一応)専門分野のチェロですが、これが演奏経験なしの楽器となるとどうまとまるでしょうか。楽しみ?です。


今日の一曲: フランツ・リスト ピアノ協奏曲第1番 第3楽章



誤解を招かない様に一応:「第3楽章」は最終楽章ではなく緩徐楽章とフィナーレの間にあるあの短いやつです。

ピアニストとして自分が邪道だと思う主な理由の一つにリストとショパンがそう好きではないことがあります。
決して嫌いでもないんですが、作曲家としてひっくるめてはちょっと・・・例えばショパンだとバラード第4番とか、そういう風に個々の曲で好きなのはちらほらあるんですがね。

そしてリストの曲で数少ない好きな曲が今日の一曲。これも協奏曲全体としてはそう好きじゃないんですけどこの楽章は本当に愛らしいです。

リストは特に日本ではピアノ得意な作曲家として知られていますが(実際スーパーコンサートピアニストでしたしね!)、オーケストラもできるんだぞ!ということがこの楽章の最初のささやかなトライアングルのソロにすべて表れているような気がしてたまらないんです!
この楽章の随所に現れるトライアングルの尖ったキラキラと、ピアノの踊る音符の丸いキラキラの最高の共演で。
降り踊る雨を表すような軽やかなワルツは、同じくリストの「ラ・カンパネラ」をちょっとおとなしくしたような曲想でものすごーく好きです。

ピアノやリストの魅力、そしてそれよりもトライアングルの魅力が知りたいという方(いるんですか!?)、是非是非おすすめです。

追記: リストのピアノ協奏曲が2つあるということは意外と知られていませんが、結構2番は好みが分かれて、この第1番があんまり好きでない人が第2番を好きだということは結構あるみたいなのでそちらも併せて推薦します。(ただし私はまだ第2番とはお近づきになっていませんので詳しいことは知りません・・・すみません)

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