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~名もない蛾と虹の錯乱~ 内の思いと外の色彩をつらつらと。
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Mano Dextra e Sinistra
(なんだかいろんな言語をごっちゃに今してしまった気がしてたまらない・・・ちゃんと調べなくてすみません(汗))

5月6月の更新停滞が嘘のようにブログに書きたいことがでてくるこの頃。
冬にしちゃあ上等だと思いますが創作のほうも進めようよ、という・・・
今日も二つ候補があったのですが、結果こちらに。

最近、ここ数ヶ月ひどい乾燥で恐ろしい状態になっていた右人差し指がだんだん治ってきた様子です。
ピアニストにとって手は商売道具と言われますがこの年になるまで手をいたわるということをしてこなかったもんでちょっぴり焦りましたがとりあえずハンドクリーム、そして皿洗いの時には手袋、ということで改善途中です。

自分の手・・・にはコンプレックスとまではいきませんが多少不便さを感じることは多いです。
ピアニストとしてはやっぱり手が大きい、指が長い方が有利なもの。
例えばブラームス、ラフマニノフ、リストあたりのピアノ音楽は大きな和音をパワフルに弾いたり、広く分散されたアルペジオ(分散和音)を弾いたりということが多いので。(ラフマニノフやリストは自身の曲を多く弾いた演奏家で、大きな手を持っていたことで知られています)
それもまたピアノ音楽の華やかさには欠かせないテクニック、なのですが・・・

私の手は指の長さはそこそこですがやっぱり手のサイズが・・・
(それでもやっぱり体の大きさと比較すれば良い方でとは言われますが)
鍵盤でドから次のドまで、つまり1オクターブは楽に届きますが、それ以上はちょっときついですね。
オクターブにしても届くものの、ずっとオクターブばっかりだと手が痛みます。
先ほど行ったようなパッセージは弾けない、または弾けてもうまく弾けない、または手を痛めたり・・・
同じく手の小さめの(体型はごく普通なんですが)先生はそういうのが多い曲はとりあえず弾かないようにいいます。で、曲の中でそういったパッセージがあれば多少ずるをしなさいとも言ってました。

実際手の小さい名ピアニストもたくさんいます。
スクリャービンも手を痛める前はそうでしたし、アリシア・デ・ラローチャやヴラディミール・アシュケナージなども手が小さいと言われています。
ラヴェルも手が小さかったらしく、彼のピアノ曲はものすごく複雑な小回りを必要とするパッセージがたくさんあります。(実際私の手はラヴェルの書く音型などと比較的相性がいいように思えます)

小さい手であんまり広げるのを無理したり、オクターブばっかりのパッセージを続けたり、手の大きさにかかわらず反復練習をやりすぎたりでとにかく手を無理に酷使し続けるともちろん怪我に繋がります。
腱鞘炎、筋肉痛、ほかにもいろいろ。脳への影響としてフォーカル・ジストニア(職業性の局所ジストニア)もあるんだとか。
腱鞘炎はピアノが原因でなったことはないんですが(病院での退屈→鍵編みのやりすぎが原因ではあります)、手が疲れたら休むこと、そして腕が痛くなったらどの指に繋がっている筋肉や腱が痛んでいるのかを書く指を動かして調べ、原因を突き止めることが大切らしいです。そういうときはその指の動かし方、使い方に問題がある場合が多い、と聞きます。
大体こういった怪我はなんらかの形での手の間違った使い方が原因らしいので(弾きすぎ、ではなく)、一番先に先生にレッスンで相談するのがいいんだそうです(大学仲間情報)。

ピアニストは両手を同じように、同じくらいの頻度で使いますが、他の楽器ではそうでないものもあります。
片手で楽器を支えながら片手で音程をとったり、片手で弓を動かしながら片手で音程をとったり。

バイオリンなどの弦楽器は右手で弓を動かし、左手で音程をとります。
なぜ左手で音程をとったりビブラートをかけたりと細かい動きを?と思われる方もいるかもしれませんがむしろ音質や音量などのかなり繊細な調整は弓、つまり右手でするものなので、実際そっちのほうが利き手のほうが都合がいいのでは、と最近(最近かよ!)思うようになりました。
有名なバイオリニスト、パガニーニはぎっちょといって左右をひっくり返して(=左手で弓、etc)バイオリンを弾いたそうですがなんせ昔のことなのでどこまで本当なのかは分かっていないそうです。

弦楽器の人は左手の指で弦を押さえますので長いことやっているとだんだん指紋が消えてきます。
バイオリンの人は細い弦を押さえるので指の先端、チェロなんかだと弦が比較的太くビブラートもまた幅広くなるので指の腹に近い方が硬くなり指紋が消えます。
チェロに限っては高音域になると親指の外側で弦を押さえることが多いので左親指の第1関節の外側くらいに胼胝ができます。
バイオリンはチェロよりドからレなどの音の間が狭いので、基本指先が細い方が向いてる・・・はず。
でも指が太いとチェロでも高音域は音の間が狭いので大変そう。私の前のチェロの先生ソーセージみたいな指してたけどどうやって弾けてたのかしら。

金管楽器は色々と一緒くたに扱われることが多いですが(じっさい大学でも。基本の音の出し方や呼吸が同じなので)、手の使い方は全く違います。
トランペットは右手でピストンを操り音程をとります。左手は楽器を支えますが、これはなしでも吹けないことはない、片手で演奏できる数少ない楽器の一つです。
ホルンは実は逆。左手で音程を操り、右手は後ろ向きに開いたベルのなかに突っ込んで音色の調整などをします。あんまり手が太ってるとそこの調整は厳しいのかしら・・・
トロンボーンはスライドによる音程の調整に腕の筋肉を使う唯一の楽器。指の筋肉の細かさと比べて大きい筋肉なのでさぞ細かい動きは難しいかと思いきや名手は本当にそんなことを感じさせませんね!

人間というのは手を使って本当にいろんな素晴らしいことをやり遂げてきましたが、音楽を奏でることもまたその一つ。
今回は手の話に絞ってしまったのですが声楽での声帯の働き、特にピアノでの脳の働き、そして金管楽器における唇の働きなど音楽と人体の関わりというのはものすごく素晴らしい、そして特別なものがあります。
音楽ってあんまりそう思われませんが物理や解剖学とものすごーく近いんですよね。
せっかく理系のお仕事してるのでそういう面にも目をどんどん向けていきたいです。


今日の一曲: マイケル・キーラン・ハーヴィー 「ピンク・ノーチラス」

録音はこちら

マイケルもまた(体格が小さいので)そんなに手は大きくない方なのですがリストとか自分の曲とか平気ででっかいのを弾きますね。
それもすごいですし、指の回りもすごいのですが一番すごいのはやっぱり彼の表現したいエネルギーに手が耐えているそのタフさなのかも・・・?

ピンク・ノーチラスはマイケルの生徒である友人Pがメルボルン大学在学中、彼と仲良くさせてもらってるときにPが弾いてた、初めて私が作曲家としてのマイケルを知った曲です。
実際何回かPが演奏するのを生で聴いてますし、彼が練習室でこれを練習するのを聴きながら私はぐっすり昼寝した思い出も・・・(笑)

といっても決して子守歌にできる曲ではありません。本来なら。
マイケルの曲に共通する複雑なリズムや巨大なエネルギー、ジャズなど多くの他ジャンルの影響、幾何学的な音型が3分半に詰まっています。

ピンク・ノーチラスというのは音響で言う「ピンク・ノイズ」(私も父の仕事の関係上聞いたことはあるのですが物理が壊滅的にまだ苦手なためwikipediaにリンク」の波長のパターンと、あとオウムガイの螺旋構造(これも昔ニュートンかなんかで読んだ記憶がぼんやり)のパターンを元にした曲だ・・・という風にPから一回聴いたことがあります。
正確なことはPのリサイタルのプログラムをどっかにやってしまったため説明できないのですが、でも音型やリズムの幾何学的な性格の説明はこれでつきます。

マイケルが演奏するとこの曲は本当に幾何学的で。
でもPが演奏するともっと人間的。(笑)先生から学ぶということは影響を受けるということで、特にマイケルが先生だと(そして特にPが望んでマイケルの生徒になったため)影響のポテンシャルは限りないのですが・・・
それでもPの演奏が彼自身の演奏で何よりも嬉しかった記憶があります。
作曲家自身の演奏より好きだ、というのもなんですが私はPの演奏が好きでした。

マイケルの音楽については数日前のエントリーを見ていただければ幸いです。
そしてそこでもいいましたように彼の演奏、そして作曲に初めましてをする方はこの曲がお奨めです。

もっと彼の演奏や作曲を知ってもらいたいという気持ちは在るものの空回りで。
もともと音楽を言葉で説明するのはどうかと思いますし、不完全燃焼に終わるのは見えてるのですが・・・
自分のためにも他のもろもろのためにも(そんなものがあれば)できる限り紹介していこうと思います。


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