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~名もない蛾と虹の錯乱~ 内の思いと外の色彩をつらつらと。
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コンサート「Celebrating Brett Dean」感想
昨日はシティで事件もあり少しショックを受けてはいましたが電車も通常運転でその後もシティの中を通らずコンサート場所までいけたので何ら予定を変えることなく久しぶりのコンサートに行って来ました。改めて見てみると一時帰国から戻ってきて初コンサート。相当久しぶりだなあ。

今回行ってきたのは国立音楽アカデミー(ANAM)によるBrett Deanの作品をフィーチャーしたコンサートでした。
国立アカデミーといえばサウスメルボルン・タウンホールを拠点に授業、レッスン、一部コンサートなどもそこで完結していますが2週間ほど前にその建物の天井が崩壊したり水漏れがしたり、リサイタルなどの試験を含め学業に多大な影響が出たそうで。今回のコンサートもリハーサル期間が短い上にゲスト含めかなり大きい編成のオケだったのでリハーサル場所を確保するのも苦労だったはず。ただそんな事情は演奏には全然出てませんでした。

コンサートの詳細は以下の通り。
Celebrating Brett Dean
国立音楽アカデミーのオーケストラ
指揮:Brett Dean
Richard Meale 「Clouds Now and Then」
Brett Dean  「From Melodious Lay」(ソプラノ:Lorina Gore、テノール:Topi Lehtipuu)
(休憩)
Lisa Illean 「Land's End」
Georges Lentz 「Jerusalem (after Blake)」

4曲とも作曲家はオーストラリア人(しかもDean以外これまで聞いたことなかった作曲家)、そのうち3人は現在活動中、そしておそらく全曲メルボルン初演という超がつくほどフレッシュなプログラム。Brett Deanというおそらく世界で一番すごい(ものさしはまあそれぞれですが)作曲家が選ぶオーストラリアのオケ作品というのもいいですね。

Mealeの曲はなんと松尾芭蕉の俳句「雲をりをり人をやすめる月見かな」が題材となっています。それを感じ取るかどうかは聴き手次第と思いますがオケが作り出す様々のtextureが月の前を通り過ぎる色々な雲の質感にも通じるものがあるなと私は思いました。打楽器とか金管楽器とかその組み合わせ方がオーストラリアの作曲家ちょこちょこ面白いことしてる印象がありますねー。

Brett Deanの新しい曲を聴くのはソクラテス以来になるのかなあ、ソクラテス再演ももちろんですが新しい作品ももっと聞きたい!と思ってていろんなメルボルンじゃない都市で新作オペラ「ハムレット」上演の話を聞いては転がり回っていたので今回のハムレット題材の「From Melodious Lay」は聴けてほんと嬉しかったです。もう聴いてこの複雑さ、ドラマチックさ、これを望んでいたんだ!という気持ちでいっぱいに。難しいけど爽快さがあるんですよね。あくまでも声楽付きのオケ曲というフォーマットですが円熟したtheatre作品という雰囲気があって素晴らしい。テノールの方の声とあとその歌うパートもブリテンの作品を連想したり、あとソプラノの方の声がちゃんと現代オペラな感じなんだけど可憐さもあってすごいオフィーリア。

Illeanの作品は打って変わってぐっと編成を小さく絞った作品。弦を中心としていろんな楽器の組み合わせや音の繊細なバランスが絶妙な音楽でした。休憩後のトークで後半の作品は「水」のイメージが強いと言及がありましたが固体でもなく気体でもない存在感と流れ方の表現が好き。他の曲が思考の頭をがんがん使う曲だったのですがこの曲はフィーリングで聞くのを大事にしたくなります。

そして今回のフィナーレ「Jerusalem」。面白い曲でした。Deanの曲と肩を並べるくらい、というか同じプログラムである意味正解ですがよく並び立たせたなという。なにより大編成のオケ(ホールの後ろにも打楽器+エレクトロニクスあり)でのパワフルなというか爆発的なサウンドが真っ先に印象的。もっとでかいホールでやった方がよかったかもと思うくらい。でも最初がフーガになってたり複雑なようでシンプルな要素もあったり、なんか明確に響いてくることも多かったり。そしてそんな巨大な世界観から最後「携帯電話を使ったエレクトロニクス」といういわば手のひらにおさまる音楽に変化するというアイディア&結果のエフェクト。ものすごく魅力的な曲だし圧倒されて掴みきれないこともあったのでまたじっくり聞きたいです。

ということでガチなシリアスの曲4つを立て続けに聴いて思考もフル回転でしたが心の方も色々衝撃を受けるコンサートでした。でもなんか知らない曲ばっかり聴く新鮮な感じやっぱりすごく好きです。(今年はPlexusのコンサートあんまり行けてないので・・・)
自分もそういう刺激をちょくちょく受けたいですし、同時にオーストラリアの音楽を支え続けたいと改めて思いました。まずはもっと国内でBrett Deanの音楽を!特にtheatre作品は難しいけどかなり受けが良いんじゃないかと思うので個人的に推したいです。


今日の一曲: Brett Dean 「From Melodious Lay」

(録音はまだない!)

普段はここでは手元に録音がある作品を主に紹介してますがとにかくBrett Deanは録音が出ないので待たずにどんどん紹介せねば。

今年中にシェイクスピアを新しく読む、という目標は「十二夜」読んで達成しましたがまだまだシェイクスピア読みたい!ということでEmilie Autumn「Opheliac」とこの曲経由で次はハムレットになりそうです。

ハムレットはなんかwikipeで調べたらシェイクスピアの戯曲の中で最長だそうですがこの作品に使われてるのは何らかの原典の部分だそうで。(読むときはもちろん全部読む予定)
それでその部分を抜き出してハムレットとオフィーリアの関係に焦点を当てた作品に仕立てた結果色んなものがものすごい濃縮液になった気がするのは私だけでしょうか。

なんかオケが歌い手を伴奏しているという感じが全然なくてむしろ歌い手がオケをまとって歌い手から放出されたオケの音が渦巻いているみたいな。あと戯曲によくある大げさな自己陶酔的な演出がこの作品ではガチリアルな狂気方面にシフトしていて聴いててずっとすごい。たまに忘れるけどハムレットもオフィーリアもどっちも狂ってるんですよね。

作風としてはオケに前のソクラテスと似たような表現が見られたほかブリテンの戦争レクイエムとかそっちに似た感じもあり、でもさらに歌と楽器の表現のオーバーラップが進化してる印象があって面白かったです。オペラ・・・は実際この作品とどれだけ関連してるのかよくわからないのですがそっちも聴いてみたいです。

オーストラリアの音楽ってかなり幅が広くてなかなか単純に説明できないところもありますが、今回のコンサートで思ったのは意外と(=国民性と比較して)「どシリアス」が得意な作曲家多いなと。アメリカやヨーロッパの作曲家にひけをとらないパワフルな作品が生まれてるのはもっと国内でも海外でも知られて欲しいです。

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