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~名もない蛾と虹の錯乱~ 内の思いと外の色彩をつらつらと。
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アルトでブラッチェな我が心の友
今日の練習ででめでたく今まで弾いてきた曲にさよならしました♪
ピアノ弾きの新しいフェーズを就職と共に始めたときに弾き始めた曲たち。こないだのレッスン後少しがんばりまして今やっと前に進める、と判断しまして・・・レッスンで指摘されたことをもっと練習するにもここでその指摘分野を一層磨ける曲を選んで気持ち新たに頑張りたいと思ってます。

一応プログラムは今のところこんな感じ:
リゲティ・ジェルジュ 練習曲第11番 "En Suspens"
モーリス・ラヴェル 前奏曲
ヨハネス・ブラームス 2つのラプソディー
クロード・ドビュッシー 映像第1集から「ラモー礼賛」
オリヴィエ・メシアン 練習曲「火の島I」

気持ち新たに、といいましたが今すでに弾いてるリゲティ、さらにラヴェル以外は以前弾いたもの。そしてラヴェルは1分ほどの短い曲。なのであと一つまっさらに新しい曲を弾こうかなーと。
ラヴェルとメシアンは常に弾く、という方針は固まってますが他の方針(曲集を全曲制覇するか、など)もこの時期に決めていきたいと思います。

さてさて。
ピアノは今でも弾いてますし、チェロもまた少し戻ってみようかなあ、と思ったり。
一日打楽器奏者(デジタルパッド)もなりゆきでやったことがありますし、小学校から中学校にかけて2年間ほどオーボエも吹いていました。小学校で一学期ごとローテーションでトランペット、クラリネット、オーボエを吹いたのの延長線上の活動でして。

自分が実際に弾いていない楽器でも本当に心に近く感じるものがいくつかあります。
その一つがホルンで、そしてもう一つはビオラ。
ホルンは友好関係と育ちからの親しみでしたが、ビオラはどっちかというと自分の性格が親しみを呼んだような気がします。

そもそもビオラは妹がバイオリンを始めてから数年後バイオリンの先生に「ビオラに転向しない?」と呼びかけられたのが縁の始まり。
妹を「出世が早いよ!」といって家族みんなで唆したのですが、実際7年生でビオラを始めて同じ年の年末にあったSpeech Night(卒業式を兼ねた全校のセレモニー)ではそれぞれの楽器の最前列が私の学年(10年生)で占められてる中に一人ビオラのリーダーの隣に座ってたほどです。

それから同じような時期にピアノの発表かなんかの為にユースオケの休憩中にピアノ(ラフマニノフの前奏曲ニ長調でした)を練習してたところとある先輩の男の子がいきなりページをめくってくれたばかりかものっそほめてくれまして。彼はユースオケでビオラを弾いていて、後にアメリカ留学してそちらに移住したとにかく凄いビオラ奏者だってことが後に判明するのですが。
(プラスほとんどのビオラ奏者が妹のようにバイオリン奏者からの転向者なのですが、彼は私の知っている唯一の「純粋な」ビオリストなのです)

大学に進学した後国立アカデミー在学の彼に再会し、おそれ多くも伴奏を頼まれちゃったりしまして。
その伴奏を頼まれたコンペが9曲ほど最初のラウンドで弾かなくちゃいけないもので、みっちりリハーサルした期間ビオラのレパートリーや楽器自体のことなど、たくさんたくさん学び、近しさと親しさをこの楽器に抱くようになりました。

そのコンペでわかったのですが、同じ弦楽器でも実際にビオラのことを本当に分かってる人は少ないです(これはチェロに対してもいえることですが)。審査員の曲のチョイスときたらなかなか首をかしげるものでしたし。
ビオラは何かと前に出ない、内向的で自分たち同士で理解し合ってれば幸せな、縁の下の力持ち。
なにかと馬鹿にされたり(ビオラジョークの多さ!)、ないがしろにされたりすることも少なくないけれど、特に気にすることなくもくもくと伴奏と内声を担当してオケを支えているのです。

実際深く厚みがあって暖かく、時には凶暴でダークな音色も披露できるビオラ。
実際バイオリニストで(バイオリンにはない)低音のC弦が羨ましい!っていう人は大学でもたくさんいました。
でもビオラ弾き自体はとってもマイノリティで、レパートリーもごくごく小さいものです。
モーツァルト、ドボルザーク、レスピーギ、ヒンデミットとかなりメジャーどころの作曲家もビオラを弾いたのですが、実際に奏者兼作曲家としてたくさんの曲を残したヒンデミット以外はほとんどビオラ曲を書いてません。
(ただオケ曲の中でものっそビオラの使い方がうまい!っていう作曲はたまにいます。それを感じるとぞくぞくしますし嬉しいです!)
あとピアノ三重奏(ピアノ+バイオリン+チェロ)と比べてビオラを足したピアノ四重奏の響き、そしてチームワークは一段違うものがありますね♪

ビオラの本当のキャパシティ、潜在能力みたいなものをもっとも教えてくれたのはヒンデミットとブラームスでしょうか。
ヒンデミットの多くの無伴奏・伴奏付きソナタ、それからブラームスの晩年のもとはクラリネットのために書かれた(ただ大半がビオラのほうがナチュラルに聞こえる)2つのソナタ。
ビオラならではの音色、表現、テクニック、パワーがピアノを弾いていてもひしひしと感じられます。
詳細は私がなにを言うよりもまずヒンデミットのビオラソナタop.11-4、そして2つのブラームスのビオラソナタを聴いてもらえれば、と思います。

そして伴奏したうちでこれは運命か!とおもった曲が一つ。
ショスタコーヴィチの生涯最後の作品、ビオラソナタ。
20世紀になってヴィオラのステータスはちょっぴり上がったような気がしますが、同時にバルトーク、ブラームス、ショスタコなど晩年にビオラを活躍させたがった音楽家は多いです。一通りいろいろやってたどり着いたのがビオラなのか、はたまた死に近づいてくるとビオラの音色に魅せられるなにかがあるのか・・・
ショスタコのソナタはそういった作品の中でも最たるもの。
自分にとってこんなに弾くのが自然だった、曲に自然に入って行けた曲は他にありません。

実際技巧的な問題を除けばビオラ音楽のピアノパートってものすごく自分の内面と相性がいいように思えます。ビオラ奏者と共に音楽を奏でる、というのも(何人か伴奏する機会がありましたが)結構落ち着きます。

ただショスタコのビオラソナタは・・・これこそ自分が死ぬときに聴いていたい、生きている間も心の拠り所としたい曲だな-と思いました。
いつでもここに戻ってきたい、一緒にいて・・・と思い、たまに自分の一部のように感じることもあります。

そんなこんなでビオラにすっかりぞっこんになり、ビオラを弾かない人としてはかなりビオラのレパートリーを知るようになり(知識メインですが)。心の中で一種の友として愛しながら今に至ります。

ただこないだ日本から送られてきた録画に入ってた「のだめカンタービレ」の映画で千秋君が「ビオラに頼らない!」と言ったあの台詞には一人で20分ぐらい笑ってましたね(笑)ジョークを読んでも分かると思いますが誰もビオラに頼ろうとは思いません!ビオラに頼ったらあの人達困りますよ!頼られたらおそらくは一番おろおろする人種です(笑)
母と私曰く、どっちかというとオタク気質で自分の興味あること・好きなことはちゃんとこなしますしのめりこんだりして内輪で盛り上がるけれど責任がある立場というものが苦手で、主流とは別のところでひっそり楽しむ人たち、というのがビオラという楽器の見解です。

自分はチェロ気質だな、と思うことも多々あるのですが(とくに短所では・・・)、上記の理由も結構あてはまるがゆえにビオラ奏者やビオラ音楽と妙に馬が合うのかな・・・?

卒業して、さらに妹もビオラを弾かなくなって久しいですが、ビオラ音楽を愛し、探し続け、とりあえずいつかショスタコのヴィオラソナタは一緒に弾く人がいなくても買うつもりですがこの心の友とひっそりと付き合っていきたいと思います。


今日の一曲: ニーノ・ロータ 間奏曲



ビオラレパートリーというあまり使われない物置の、その奥の箱に入った、あまり知られていない大切なtokenを今回は引っ張り出してみたいと思います。

ニーノ・ロータはイタリアの作曲家で、本人は純音楽の作曲家だと主張しているのですが、映画音楽で有名な人。有名な作品にはゼフィレッリ監督の「ロミオとジュリエット」(学校の英語の授業でロミジュリをやるときかならず見ます!)、ゴッドファーザーの愛のテーマ、太陽がいっぱい、などなど。

そんな中彼が書いたビオラ作品。
ロミオとジュリエットのTime for usと似たテイストの美しいメロディーから始まって表現に富んだ、さらに技巧も尽くして、ビオラの良いところをみーんな盛り込んだ、ビオラが弾くにふさわしい曲になっています。

もともとビオラはバイオリンのように音が派手でなく、どこかpathosを含んだ音色。
それが悲しげなこの曲にぴったりで。
ビオラって女性的な音というか性格をしてますが、それもまたぴったり。
(余談ですがビオラは実際にイタリア語だと女性詞をとるマイノリティ楽器の一つです。他にはテューバ、トランペットなど。)

内側へ、内側へと向くビオラの音がどこかなつかしく、豊かに、ときに激しく、哀しく・・・ロータには申し訳ないですが映画音楽と似たエレメントがあって、目の前には無いはずの映像が見えるような錯覚に陥ります。
日本人ビオラ奏者、今井信子演奏のCDは全てビオラのために書かれた(=アレンジではない)ビオラ曲が集められていますが、わりとモダンな感じのも結構ある中でちょっと独特な光を放つ一曲です♪



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