忍者ブログ
~名もない蛾と虹の錯乱~ 内の思いと外の色彩をつらつらと。
[PR]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

ミステリアスなお隣さん(楽器と性格その3)
恒例のおことわり:
1)これらの性格分析は私個人の観察と楽器の特性から導き出したものです。
2)あんまり真剣にとらないでいただけると嬉しいです。それなりに分析はしてますが、とりあえずネタということで。
3)メルボルン発データなので環境要因があると思われ日本人の場合どうなっているかは未知です。
4)個人攻撃、誹謗中傷は全く意図していません

疲れ気味が続いていますが仕事も忙しい!週末はピアノがちょっとでもできたらいいなあ、と思いながらくたくたしています。

ソロで舞台に立つよりもオケの一員としてピアノやチェレスタを演奏した方がずーっと経験としては私は多いのですが、なんといってもオーケストラのピアノやチェレスタのパートは休みが多い。弾いてるより待ってる方が断然多い。
数えることももはや諦めてしまうほどの休符の中でやっぱり辺りを見回したとき一番気になるのはお隣さん。
なんせそのお隣さんがハープなんですから。

ハープ、というのはピアノやチェレスタよりは頻繁にオーケストラで用いられますが、それでもフルタイムメンバーではないので必要とされているときにリハーサルに来て、単独で動いている感が強い楽器です。
やっぱりバレエなどで特に見られる優雅なイメージはありますが、47本も弦があるので太くお腹に響くような低音も出ますし、特殊な弾き方ではsinisterなイメージの音まで出します。
なのでやっぱりよくある「ハープはお嬢さん」的なイメージだけではない!とかねがね思っていたのです。

大学のオケなどで何人かのハープ奏者と隣になっていろいろお話を聞きましたが、何よりもメル響のハープ奏者の方にはいろんなことを学びました。今日のハープについてのちょっとした紹介と性格分析は彼女から学んだことが主な出典です。
どんなことが難しいか、とかはもちろん、周辺楽器(ピアノ、ハープ、チェレスタをオケの端っこにいるためPeripheral Instrumentsと勝手に私が呼んでるのの訳語)の存在をちゃんと認識して、的確な指示を与えてくれてさらにいたわってくれる指揮者が本当に良い指揮者ですよね、なんて話とかで盛り上がったり・・・(笑)

ハープはやっぱり楽器も(メンテナンスも)、常に車運搬なのでガソリン代も、そのほか諸々出費が多い楽器ではあるので確かにある程度経済的に恵まれている人が弾く事がやっぱり多いらしい楽器です。
ただオケはフルタイムでなくてもそれに加えて例えば結婚式で演奏するなどして結構需要が多い楽器ではあるので収入もわりとある・・・んだとか。

でもやっぱりハープ奏者のエレガントなイメージはその演奏する姿が多いですね。
翼のような形をした楽器の半透明な弦の上をしなやかな腕と指が縦横無尽に、でも優雅に駆け巡る。
ただ優雅さの下のすさまじいほどの努力もまたハープを知るのにものすごく大事なことです。
素手であれだけの張力と数の弦を、あの音量で弾くには手の方にも相当のダメージが来ます。本当に練習や演奏でぼろぼろになったりで、手を柔らかく保つためにケアが欠かせません。

そしてハープはペダルを足で操ってキーを変えたりします。ハープ奏者の足下を見る事って少ないですけど結構せわしくがっこんがっこん踏んでいますよ。特に現代音楽だと足の忙しさが本当に大変だという話もハープ奏者さんたちから聞きましたし、実際見てても本当に目は下に向けられないのに足の感覚だけでもはやどうやってるかわからない!

さらにすごいと思うのはハープ奏者としての仕事をこなすために本当にさまざまな工夫をしていること。
先ほどの手のケアもそうですが、楽譜はかならずコピーで、なんといっても複雑なパートなのでいろいろと弾く時に役立つ・効率の良いように書き込みがたくさんしてあったり。
あとメル響のハープ奏者さんは手に特にダメージが大きいグリッサンド(手を弦の上にぽろろろろと滑らせる奏法)が続くときはなるべく手の代わりにちょうど良い堅さの消しゴムで代用しているそうです。

古のハープと比べてオーケストラのハープは奏法も、そしてパートとして求められることも現代にむけてどんどん複雑になっています。
にもかかわらず、ハープ奏者の演奏時のたたずまいはいつだって優雅なまま。
ハープが2台いる曲でも、特に二人で息を合わせる風もなくごく自然に音を一体にして。
先ほど書きましたような複雑な操作だったり、たくさんの努力だったり工夫だったり・・・そういったものを演奏時はほとんど表面に見せないような人達なのです。

ベタなたとえなんですが、本当に白鳥のようなんです。
水の上の優雅さも、水面下の努力も、それを見せないのも。
とにかく演奏上では弱みを見せないのがデフォルト。(ただやっぱり先ほどの工夫の話とか難しいことの話でも聞けば快く教えてくれますけどね)
ストレートですが、それこそがハープ奏者の性格を作っているのかな、と思います。

もう一つハープ奏者の性格的特徴があるとしたら・・・こだわりとその裏返しの神経質さがあるかな、と思います。
楽器はいつだって(女性が圧倒的に多い楽器なのですが)自分の手と自分の車で運搬。プロの楽器運搬のトラックにも入れません。
リハーサル、コンサート時は必ず誰もいないときにホールに入って決まったポジションにハープをセットした後無音の空間でチューニング。47本の弦を一つ一つ綿密にチューニング。この間はホールに誰もいれちゃいけません。
オケの一員とはいえやっぱり独自の規律と信念で動いていて、そのこだわりは邪魔しない方がいいんだな、と隣に座ってて(そしてマネージャーとして)無言ですがそこらへんは伝わってきました。

でもそのこだわりとか神経質さ、そして弱みを見せなく「優雅なハープ奏者」として演奏しているところもみんな
本当にリスペクトしています。隣に座ってて軽く畏怖に近い思いを抱きますもん。
たゆまぬ努力を積み重ねて、ステージの上では凛々しい奏者で居たいなあ、と彼女たちの姿を見て切実に思いました。今も憧れています。

ちなみに創作でオーケストラの話をいくつか書いたり書かなかったり(???)していますが、もちろんそんな彼女たちにインスパイアされて主人公の一人はハープ奏者です。
なるべく「お嬢さん」風がない、中性的な雰囲気をまとった子を一応目指していまして(体格は割と中性的ではありますが)。ステーションワゴンでハープを運んでたり、父がアイルランド系で母がフランス人だったり(関係ないですか)。
芯の強さ、努力そして不思議なエレガントさとしてのハープ奏者のクオリティを出せて行けたらなあ、と思ってます。


今日の一曲: マイケル・ティペット 組曲「The Tempest」より「Dreaming」

CD Wowでの録音リンク

ハープの「典型的」ではない音を聞かせたいなあ、とも思いながらそもそもハープってオーケストラでもちらほら聴くだけだしそもそもオケ以外のレパートリーもほとんど知られていないなあ、なんて思って結局素直に自分が一番愛しいなあと思う曲を選んでみました。

ティペットは作曲家であり指揮者でもあった人で・・・自分の中では彼についてのデータは少なく、ちらほらピアノソナタを聴いたり、授業で「われらの時代の子」を聴いたり(録音欲しいなあ!割と高いんですよ!)してはいるのですが全体像とはほど遠いのです。

でもこのDreamingに関してはただ単に素直に美しい曲だな、と思います。イギリス音楽の良いところがみんな詰まっているけれど使い古された感じがなく。
なんといってもビオラとハープというコンビがいい!トリオとしてはドビュッシーがフルート&ビオラ&ハープのために曲を書いていますが2人でも全然いけます。
何というか・・・ものすごくintimateなんですよね。ビオラの楽器としての性格とハープの音がそうさせるのですが、例えば楽器+ピアノのときみたいにソロ+伴奏、ではなく対等で近しい二人のデュエット、という感じ。

タイトルのように本当に夢の中にいるみたいで。
心地良い夢のような音楽に身も心も任せたくなりますね。
ビオラは個人的に心臓に一番近い、そして母性の強い音をしていると思いますし、ハープもまた懐が広くて、アルデンテ(丸くて適度に芯があるんです)な音が心地良くて。

ちなみにリンクした、そして私の持ってるこの曲の録音はMarshall McGuireというオーストラリアの男性ハープ奏者が演奏しています。珍しいですよね、男性ハープ奏者。彼はおそらくオーストラリアで一番のハープ奏者じゃないかしら。

ハープのソロ曲(またはプラスワン)って意外と知られていないんですよね。確かに数は少なめなんですけど、他の楽器では味わえないような音楽がいっぱいありますし・・・20世紀の作曲家による曲でも比較的聞きやすい、ささやかな名曲がいっぱいあるので「ハープのCD」といった形で幅広く聴いてみるのをお奨めします。

拍手[0回]

PR
コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Comment:
Pass:
トラックバック
この記事のトラックバックURL

この記事へのトラックバック