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~名もない蛾と虹の錯乱~ 内の思いと外の色彩をつらつらと。
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"Musicophilia" 感想
“Musicophilia” by Oliver Sacks


どうして人間という動物は社会的に、生存的に必要だとはいえない音楽というものにこんなに心を注ぐものなのか、という疑問から始まるこの本は音楽が人間の脳にどんなに不思議で特別な影響をもたらすか、そして人間の脳が音楽にどんなに不思議で特別な影響をもたらすかをさまざまな人の実体験とさまざまな研究を交えて探る・・・学術書ほどはかしこまっていなく、伝記的に偏ることももちろんなく、それでも専門知識をふんだんに含んだ本です。

人間に音楽は必要不可欠じゃないもののはずなのに人間の脳は音楽に対してとても特別に反応する、というようなことがいろんな病気や現象などの例を通じて書かれています。 たとえばパーキンソン病の患者のぎこちない動きを音楽がなめらかなものに変えること、音楽の特定のエレメントに不感応になるケース、脳の障害によって音楽性が芽生えたり、消失してしまうことから健常な人に見られる音楽的幻聴の病的幻聴との違い、絶対音感や共感覚、そして誰でも経験したことがあるでしょうメロディーが頭から離れなくなるメカニズム・・・脳と音楽に関することが何でも載っている、といっても過言でないかもしれません。

読んでいると脳がいかに不思議な物体(!)なのか、そして音楽がいかに脳と強いつながりを持つか、そしてそれなのに脳と音楽についての研究がどれだけされていなく、どれだけこの分野がミステリーに満ちているかを一つ一つのケースごとに思い知らされます。脳の奇跡的ともいえる常識を超えた力、というものが多くのケースで見てもうそれには驚くばっかりで。 むしろ本を読み進めるごとに「なんで脳はこんなに音楽を特別に扱うんだろう?」と上記の最初の疑問は深まるばかりですね。

個人的に興味深かったのは音楽によって引き起こされるてんかん発作のセクション、共感覚のセクション(共感覚保持者として)、そして奇妙な知能の低下パターンを持つウィリアムズ症候群の患者たちのセクションでした。

この本でまた面白いのは紹介されているエピソードの多くが音楽においてのさまざまなプロフェッショナルの体験談であることです。音楽は音楽家にとってどれだけ大切で、音楽家が持っている知識でどれだけ体験が変わるかというのもありますし、なんといっても本の中で言われている「音楽家の脳はそうでない人の脳と違う」ということも、音楽家特有の障害なども扱われている珍しい書籍だとおもいます。(なんといっても作者のコネがすごいんですけどね)

おそらく邦訳されてはいないと思いますが、それがなんであれ音楽を愛する人も、脳の不思議について知ってみたい人も是非読んでほしい本です。 こんなに専門知識がわかりやすく正確に著されている本も、芸術と科学がこれだけ近い場所で扱われている本は他にはきっとないでしょうから。


今日の一曲: たま 「サーカスの日」

たまのことはまたゆっくり話したいのですが、あんまり言葉でたまの音楽の魅力を語るのが得意ではないのとあと今日はちょっと出かけて疲れているので簡単に。

たまの音楽を昔から聴いてきて、そのころからこの歌を書き歌った滝本さんことGさんの容貌、声、作風、そして言葉にぞっこんで・・・今の私にもいろいろと影響があるんじゃないかと思います。
その中でも最近特に心を貫くなあと思うのがこの「サーカスの日」。一人さびしい夜にスピーカーではなくイヤホンで一人の世界にこもってきくとどんなに切ないものか。

音に対して言葉の数の多さが目立つこの曲、カラオケだと(入ってればの話ですが)大変そうですがその分思いが音楽にどれだけ詰まってるかが胸を締め付けるほど伝わってきます。
そしてスイングのリズムが心地よく、ジャズ風のピアノがちょろっと聞こえてくるのがまたよくて。昔小さいころ聞いてた時代のたまの音楽にはなかったエフェクトなども私にとっては斬新で。

あなたの向こう背中の向こうの この世の果てみたいな色をしている風景はなに?
僕らは何をしてどこへ消えてゆくんだろう どこからきたの 今目の前いっぱいに広がる星たちよ ねえ暑くないの? 寒くないの? 悲しくならないの? ざわめきにふるえが止まらなくて こわくないの?」

このサビの部分が好きで好きで。言葉とフレーズの切りどころがずれてるところも好きだし、知久さんの1オクターブ上のコーラスがまた切なさをあおってもうどうしようもないくらい切なくて好きです。

難しいけど好きな人に歌ってほしいものですなあ(笑)


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