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~名もない蛾と虹の錯乱~ 内の思いと外の色彩をつらつらと。
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色んな意味でナチュラル?(楽器と性格:ファゴット)
今お金が厳しいのにまた本を買ってしまった流 星姫です。
今日は久しぶり?の楽器と性格シリーズ。今回から木管楽器です。
木管楽器はその名の通り木でできた管楽器ですが、音の出し方や音の質などがそれぞれちがって。
なので楽器それぞれのキャラもかなり違いますし、みんな結構個人プレーな人々です。
木管五重奏といってフルート、オーボエ、クラリネット、ホルン(金管だけどいます)、ファゴット1人ずつのアンサンブルがありますが、みんなめいめいの声でめいめいのことをやっていて、それがなんだか弦楽四重奏のように一つになったのとは違う魅力をかもしだします。

ファゴット、またはバスーンという楽器をご存じでしょうか。
どこに行ってもわりと影の薄い、木管楽器の中でひっそりベースをつとめてる楽器です。
ルックスは木でできた長い筒(ファゴット=木の束という意味があります)に金具がついたようで、ひょろっと伸びた管から息を吹き込み上から音が出るようになっています。楽器の下部は管がUターンするところで木が分厚くなっていて、ずっしり重いです。(楽器が重いためたまに首にストラップをつけてぶら下げて弾くことも)
音の出し方は2つのリードを重ね合わせたマウスピースを用いる、オーボエの弟分みたいな存在です。
音が一番オクターブ下のひっそりヘビーベースであるコントラファゴット(そしてメル響でよく使ってるその改良版のコントラフォルテ)も仲間です。

ファゴットは不思議な楽器で。
ダブルリードなので音を出すのは難しいですし、音量は出ませんし、しかも音が出る口を前にして担ぐとバズーカみたいになるのに人畜無害の楽器ですし(爆)
音域はチェロ、ホルンと同じくらい広いのですが、あんまりそんなに使ってないような・・・

普通木管楽器はオーボエ・フルートはソプラノリコーダーのような、クラリネットはアルトリコーダーのような(もちろん違いはありますが)指使いで、ある音の一つ上の音を出すには一つ指を離すなどパターンが理論的なのですが、ファゴットは途中なんか指使いが変な音域があるそうです。
ちょっと変わっていて、そして非合理なことを気にしない、ちょっと不器用な特徴の暗示。

ファゴットは音楽史の中で長い間ひっそりと暮らしてきました。
バロック・古典派の時代にもあんまりスポットライトは当てられなく、同じ音域担当のチェロがロマン派で急成長したのにもおいてけぼり。
ファゴットのあの間の抜けたような音はロマン派の情熱、感情、緊張感、壮大さとはちょっと違うところにありますからね。

そんなファゴットを私は努力型で神経質な長男オーボエ、天才型で感性が豊かな次男コール・アングレと比べて天然でちいさなことを気にしない、目立たなくてもいいし、不器用で怒られようが笑われようがにこにことのんびり、もくもく自分の仕事をする末っ子に例えるのが好きです。

そして20世紀を迎える前、そして20世紀になってからすぐ、ファゴットがなぜか突然ちやほやされ出します。
リムスキー=コルサコフの「シェヘラザードの」第2楽章、ストラヴィンスキーの「火の鳥」の「子守歌」、ラヴェルの「ボレロ」、オルフの「カルミナ・ブラーナ」の焼かれた白鳥の歌、そしてストラヴィンスキーの「春の祭典」の冒頭。
どれも今までのファゴットのソロ、パートとは違い長く、ファゴットの音色の美しさを引き出しながら楽器の限界を挑戦するもの。(特に春の祭典、聴いて見てください。)
ファゴット自身は多少戸惑いながらそれでも快くその役割を担って今に至ります。(ちなみにこの同じ時代にオーボエの時代が終わり始めてるので長男としてはちょっと悔しいところもありそうですが)

今までも出ました天然でやさしく、ちょっと不器用で引っ込み思案でマイペースな特徴もそうですが、ファゴットという楽器とその奏者にはあんまり前に出たり、先進を追っかけたり見栄をはったりすることがない傾向があると思います。
思って見れば木管楽器の中で実際に木の色が出ているのはファゴットだけ。
木管楽器のパートはソロが多く、その時は目立って、自分の音を聞かせなくちゃいけないし、本当に失敗できないシチュエーションが多いのですが、ファゴットだけはそういう機会が少なくそだってきたせいかありのままの自分で自然体、という印象が強いです。
あと、私の知ってるファゴット奏者の女の子にはヒッピー的な路線のファッションの人が気持ち多い気がします。とにかく周りの人に懸命に合わせたり、とか流行に敏感、というのとはみんな違いますね。

なにはともあれ、オケを、特に木管楽器を和ませる存在ではあります。
その音だけでももう・・・あの独特の音はがんがん攻めるお笑い、というよりも本人も意図しない(楽器も好きであんな音じゃないんですよ(笑))天然なボケとその雰囲気に笑顔になってしまう、という感じ。

実は私の親友も中学・高校と学校でたった一人ファゴットを吹いてました。なので楽器のことも奏者たちのこともわりと身近に知っています。
決して簡単でも安くもない、相当なのんびり加減でゆるーく長く付き合っていくことが必要な楽器なのが祟ってかマイナーな楽器ですが、オケにファゴットが、そしてファゴット奏者がないとやっぱり違うな、と思います。
音量も小さいですが、是非是非オケやアンサンブルで彼らに心を向けてくださいね♪


今日の一曲: イーゴリ・ストラヴィンスキー 「火の鳥」より「子守歌」



本当は春の祭典を出したかったのですが、ちょっと区分の仕方で迷ってるので・・・

以前紹介しました「火の鳥」。
火の鳥を探しに来た王子イワンが火の鳥を一度捕らえ放したあと、魔王に囚われのお姫様にであって魔王カッチェイに立ち向かうことになり、魔王カッチェイとその手下に苦戦して火の鳥が援護にかけつけ、魔王カッチェイの手下を踊り狂わせたあと子守歌で眠らせ、王子イワンをカッチェイの弱点があるところへ導く・・・という駆け足の物語説明。

とぼけた音で知られるファゴットですが、中高音域のちょっと余裕がなくなったくらいの緊張感のなかで、さすがオーボエの弟といえばいいのか、メランコリーを含んだ感情の豊かさでシリアスも全然行けるんですよ。

火の鳥は本当にバレエ(およびその組曲)を通じて本当にファンタジックな雰囲気にあふれています。
序曲の不気味な森の雰囲気から王女達が金色のリンゴとたわむれるさま(組曲には未収録)、魑魅魍魎の騒ぎ、そしてまるで花火が打ち上がるような華やかなフィナーレ。
ストラヴィンスキーにとってデビュー作とも言える作品で若い頃に書かれた作品ですが、その描写、楽器使い、ハーモニー、メロディー全てが魅力的です。

おとぎ話を題材にした音楽は数ありますが、そのどれもがおとぎ話をおとぎ話以上のものにしてくれます。
オーケストラの魅力、ストラヴィンスキーの魅力、そして今日はなによりもファゴットの本当の魅力を「火の鳥」で味わってみてください♪


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