忍者ブログ
~名もない蛾と虹の錯乱~ 内の思いと外の色彩をつらつらと。
[PR]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

林直樹「リストカット」感想
まず・・・「闇を力に」のエントリーに拍手ありがとうございます♪

以前日本に行った時に「リストカット 自傷行為をのりこえる」(林直樹 著)という本に出会いまして。
いつでもメンタルヘルスの本で良い本がないか探してはいるんですけど、実際こういう的確な本を具体的に「どう」探してるか覚えてないんですよね。
この本もそうやってどうにか出会った良い本です。

リストカットを初めとする自傷行為は気軽、ではありませんがフィクション・ノンフィクション、メディアを問わずいろんなところで取り上げられるメンタルヘルスの一部分です。
この本でも説明があるように周りにインパクトが大きく、ショッキングに映ることもあり、メッセージ性がある行為だということが理由でしょうか。
ただいろんなところで見ながら、その扱われ方にいろんな違和感を覚えずにはいられず・・・

この本はそんな自傷行為について様々な側面を取り扱い、自傷行為についての理解を深める本です。
例えば自傷行為という行動の裏の様々な心理・意図だったり、文化的な背景だったり、自殺未遂・自殺企図との関連性、自傷に関する傾向、自傷が症状として表れる精神疾患、自傷に対しての対応・治療だったり・・・
あと自傷を行っていた有名人だったり、若い人だったりの体験からケーススタディもあります。

ケーススタディが大切だな、と私が思う理由はやはりその行為のインパクトだったりショッキングさで目をそらしたくなるのは自然だけれど、だからといってセオリーだったり研究結果だったりばかりではやはりなんというか・・・実際の問題だったり辛さだったりを感じにくいと思うの依。

精神疾患自体もそうですけど、自傷行為をしている、というその症状・病気の現れのみでやいのやいの言ったり、レッテルを貼ったり、人を判断することが多すぎる、と思ってます。
ここから自傷行為を例として絞って話しますが、自傷を行っている、という一見一つの行為でも様々な思いだったり、問題だったり・・・
例えば自傷が症状として表れる疾患によって自傷にたどり着くまでの苦しみの経緯・それを引き起こす感情なども様々ですし、もちろん個人個人の経緯によっても変わります。
自傷をしている、という表面的なことでなく「どうして自傷をしているか」「どうしてそういった方法をとってしまうのか」という・・・行動の裏にある苦しんでいる人の思い、彼らが「できないでいること」などに目を向けることがどれだけ重要か、ということがこの本には記されています。

この本で扱われていたことで興味深かったことの一つは、自傷行為が周りにどうとられるか、ということ。
驚き動転してオーバーに心配してしまうか、「どうせ注目を集めたいんじゃないか」と軽くあしらうかの二極に分かれてしまうらしく。
心配しすぎるのもいけないけれど、いろいろなリスクをはらむ行動である、ということをちゃんと説明しているところがやっぱりこの本が凄いところ。(そしてだからこそ上記「思いを汲む」のが大切!)

物凄く理論的に説明しているところもこの本で良い!と思ったところの一つです。
もちろん感情的になると何も解決しないトピックではあるのですが・・・文体というか、まとめられている感じがものすごくすとーんと来ます。(ただやっぱり個人的に理論的な語り口で冷静に順序立てて、というのが心に響きやすいし理解しやすい性質ではあります、私)
きちんと理解できる、というのは共感できる、というのと同じくらい大切ですから。

ただだからといって冷たい文面では全然ないんです。
わかりやすく優しく説明してもらっている、という感が強いですし、なんといっても巻末の自傷を行っている人とその周りの人のために、全般的なまとめをメッセージとして綴っている部分は本当に心に訴えかけるように書かれています。(例えばうつなどの精神疾患で理解力、読解力が低下している場合この部分だけ読んでも大切なことを得て理解することができそうです)

あとはリラクゼーションだったり認知行動療法だったり、自傷に対して自分でもとれる対処法や、精神疾患のいろんな方面にも応用される基本的な治療のセオリーだったりが書いてあるのもありがたいです。自分で何かできる、ということは安心しますし、治療の内容も知っておくと安心しますしね。
欲を言えばメディアの報道の仕方にちらっと触れて欲しかったかも・・・多少適用外なのは承知ですが、「自傷行為」の取り扱われ方って最初にも言いましたように大切だと思うので。

実はこの本わりと薄い本で。なのに大切なことが多くカバーされていて、しかも解りやすい説明です。
いろんな人に読んで理解を深めて欲しいですが、自傷をしている人とその周りの人には本当にハンドブックとしてオススメです。
(ちなみにAmazonで検索すると同じ著者でもっとわかりやすそうな雰囲気のイラスト付き本もあるみたいです)

今日の一曲: ドミトリ・ショスタコーヴィチ 弦楽八重奏のための2つの小品より「スケルツォ」



ショスタコーヴィチが実際してたという記録はどこにもありませんが、彼の楽曲のうちのいくつかから自傷を連想する人は音楽家の知り合いにもちらほらいます。(ちらほら、というのはあんまり口にしないというか、暗黙の感覚みたいな側面もあるから・・・かも?)
その激しいエネルギーはなにかと自分に向いているような印象があって・・・どうして音楽だけでそう感じるのか、というメカニズムは謎ですねえ。

ショスタコーヴィチの曲もいろいろありますが、このスケルツォはまた不思議な感じの曲。
やってることはショスタコーヴィチなんですけど・・・

なんというかまず落ち着きがない。それも彼の音楽には珍しくないところなんですけど地に足がついていない、というか。
そしてものすごくあらゆる方向に無駄に攻撃的。過敏というか、八つ当たり的、というか、見境なく無差別攻撃というか・・・ついでにものすごく鋭く尖ってて。
割と初期の作品だということを考慮しても楽器(バイオリン4、ビオラ2、チェロ2)の使い方になんだかわからない隙があったり、音楽的にちょっと迷走しているようで(特にチェロのパート)・・・
全てひっくるめて「ちょっと落ち着け」といいたくなりますね。

この曲が何に支配されているか、やはりなにか本能的に怖く感じるものはあるんですが・・・
それでもやはり知らなきゃなあ、と思います。

拍手[0回]

PR
コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Comment:
Pass:
トラックバック
この記事のトラックバックURL

この記事へのトラックバック