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~名もない蛾と虹の錯乱~ 内の思いと外の色彩をつらつらと。
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「生きるための自殺学」感想
昨日のサンキャッチャー更新エントリーに拍手ありがとうございます。
これからもたまに更新してきます~♪

さて、今日も本の感想です。


ケイ・ジャミソン著「生きるための自殺学」(改題前は「早すぎる夜の訪れ」、原題「Night Falls Fast」)。
私が日本で買ってきた本ですが、まだ原語では読んでいません。

今リンクを貼ったときにちょっとAmazonのレビューも読んでみましたがイマイチみたいですねえ(苦笑)
でも言ってることものすごくわかります。それについてはまた後ほど。

簡潔に説明しますと、この本は「自殺」についてさまざまな方面から考察を展開している本です。
自殺の歴史、定義、精神医学的な考察、さまざまな研究結果に加えて実際の自殺のケースのエピソードや自殺者の遺書などによる自殺に至るプロセスや心理、自殺の手段、あとスティグマについての話も多いですし、自殺予防策、そして自殺が遺された人に及ぼす影響・・・それから自殺の縁で苦しんだ作家などによるその状態の心理の表現、著者の実体験の話もあります。

↑でわかると思うのですが、とにかく内容が多いです。
レビューのネガティブな部分もその点についてが多いのですが・・・
ただやっぱり自殺について偏った見方をしてはいけないから、なるべく広い範囲をカバーしようとしたんだ、という見方を私はしています。
資料とか専門知識が多いのも確かで、その分取っつきにくくなってるのも確かにそうです。
(ついでにいえば1990年代に書かれた本なのでちょっぴりデータが古かったりもしますし、欧米中心ではあります)

ただやっぱり自分にとっては勉強になる本でもありますし、自殺に際した人の心をしっかと感じる、思い出すための本でもありますし、自分の目指す道を確認して見据えるための本でもあって、なんだかとっても心強い本なんです。

歯に衣着せぬ、というのとはちょっと違いますが、この本は自殺の「現実」の一部を容赦なくつきつけてきます。
たとえば自殺した子供の遺書、自殺に実際に使われた手段など・・・検死側の話などのなかなか普通はアクセスできない、目に入らないような話や資料も出てきます。
本当に色んな意味でしんどい本だと思います。
自殺者の心理を知って理解し、向き合うことがまず1種類。自殺の手段について生々しい記述が出てくるのがもう1種類。また医学的・薬学的な情報やデータが多いのがもう1種類。

でもできたら敬遠して欲しくないな、と思うのです。
私がこの本で一番頼りにしていることはデータなどの海の中で、著者がスティグマと戦っている、ということ。
特に「自殺は自分勝手な行為ではない」という部分に関して著者の思いが直接語られていることもそうですが、自殺者の心理にフォーカスしている部分は他人からしたら想像することしかできない(しかも実際に「それ」が起こってから、パニック状態になって想像できない場合が多い)、想像もつかない、さらに想像したくもないとされる部分に関してクローズアップしてくれるので。

自殺の危機にいる人の辛さとか、自殺で身近な人を亡くした人の思いを知ったフリをしないためにも(残された人にはそれが辛いそうです)こういった「リアル」な、患者さんや遺族の主観的な情報は大切です。
そして自殺は自分勝手な行動でも、その人が自分の行動にコントロールを持ってすることでは必ずしもないという、自殺は何によって引き起こされているかというのを分かるにも医学的な考察は必要で。

この本で私個人が心に残ったと思うトピックをちょっとリストします:
1) 「II 自殺の心理と精神病理」の章(自殺者の心理についてクローズアップ、主観的な感情など)
2) 作家や詩人などの自殺とその周りにまつわる状態の表現 (人は一般的に鬱状態などに陥ると表現・思考・自分の状態を見る事が難しくなるので。あとやっぱり「闇の表現」は音楽やる人としても興味深いです)
3) 遺された人の話。特に、子供が小さいときに親が自殺した場合、その事をどう伝えるか、など。
4) スティグマ。先ほどちょっと言及した分、それから社会的に地位がある人の自殺に対する社会の反応、遺された人が恐れ、苦しめられるもの、などなど。
5) 歴史的な話の中で、昔々には自殺が文化社会的に容認されていた時代があったということ

この本を読み終わった上で私が今したいと思ってるのは上記1)の部分を読み返したいということ、それからこの本で引用されている詩や作品をちょっと追っかけてみたりしたいな、ということ・・・ですかね。
もっと共感したい、表現を知りたい、と。

先ほどこの本は割としんどい本だと言いましたが、ある意味この「しんどさ」こそこの本で向き合ってもらいたいものなんだと思います。
自殺に際している人は実際どういう思いでその行為に及ぶのか、遺された人の気持ちはどういったものなのか・・・と。

自殺を考えている人向けの本ではありません。内容がうつなどで弱った頭・心には難しすぎることもありますし、自殺の手段について具体的な話があるので。

私は一応心理学も精神医学関連の知識も少しずつあるのと、学術的なアプローチとそちらの好奇心が強いので物凄く好きな本なのですが・・・でもそうでない人にも得る物はある、と思います。強く。

またメンタルヘルス関係で良い本に出会えることを祈っています。この本よりももっと自信をもって薦められる自殺についての本、それから他の分野の本。


今日の一曲はお休みです。

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