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~名もない蛾と虹の錯乱~ 内の思いと外の色彩をつらつらと。
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楽器と姿勢と体の問題?
昨日は友達の誕生日でLygon Streetに夜ご飯食べに行きました。
まあまあ美味しかったです。天気がちょっと残念でしたね、なによりも。

今日のエントリーはこないだのから派生したような話です。
以前パズルブックで楽器を構えてるポーズ、パントマイムのような絵から弾いてる楽器を当てる、という問題がありまして。
それでもはっきりと分かるくらいオーケストラでのそれぞれの楽器ってものすごく独特な姿勢やジェスチャーで弾くんですよね。

特にバイオリンは冷静に考えてみると結構不思議な姿勢で演奏します。
よくよく分析してみると普通に首を掴んで楽器を持った状態からそのまま持ち替えず楽器を顎に挟んだ状態・・・なんですよね。
なぜ顎に挟んだか、というと例えば関連楽器である馬頭琴なんかは膝の間に挟みますがバイオリンは幅が狭く腰がくびれてるものですから膝ではさむには難しい。じゃあ何処に挟んで楽器を弾いてるときに安定させるか、ということで顎にはさむようになった・・・と私は考えています。

理論的にかなってるような気はしますがなんといっても不自然な体勢。
特に左手のねじれが目立ちますし、背中にも負担がかかります。習っている間にちょっと変な癖がついて直されずにいると後に怪我につながったりすることがあって・・・なので大学で徹底的にAlexander techniqueなどによる姿勢矯正などを行う場合も多いです。

バイオリンはあのサイズの楽器にものすごく、溢れるほどの感情を詰め込まなくちゃいけません。そして同じくその楽器のサイズも影響してそれぞれの奏者のジェスチャーのスタイルは本当に十人十色。
前後ろに動く動作がメインだったり、ちょっとロボットダンスみたいな感じだったり。足の開き方も色々。

同じくジェスチャーが大きい傾向があるのがクラリネット。オーボエのような吹いたときの大きい抵抗がなく音がすっと抜けるような感覚があるからなのか、感情をこめようこめようとしてジェスチャーが大きくなるようです。

オーボエは(私の吹き方の悪さもあるとは思いますが)体のいろんなところに力が入ると思います。
口はもちろん、指や、そして目にも力はいってるのではないかと。こう、下から見上げる印象があります。

チェロとコントラバスはどちらも前屈みになって弾く楽器。
特にチェロは楽器を「構える」というよりは座ってるところに楽器をフィットさせる感がある、わりと自然な姿勢ではあるのですが、高音を弾いて左手が下の方へいくとものすごく猫背になってしまう。
チェロもコントラバスも楽器が前方にあってスパイクで固定されてるためにある程度動くのは限られていますが基本右腕と一緒に横に動くことが多いように思われます。
猫背気味+どちらも運ぶに重いがっきとあって結構肩こりが多そうですがそこのところどうなんでしょう。

横に動くと言えばフルートもちょっと横に動き気味かな。フルートの持ち方もよく間違われますが実はリコーダーなどの縦笛を構えたまま右腕を上げた形になります。吹き口に気持ちをこめるよう前に動くのが楽器が横に伸びていることによって少し右側にベクトルが向く、という印象です。

猫背になりがちなチェロ・コントラバスとは反対に弾いているとき常に胸を張るのが金管楽器。
もちろん肺のキャパシティを最大限にするには胸を張るのは必要ですね。
特にトロンボーンは前に伸びている楽器が重いものですからそれを支えるためによけいに背中が反っているような気がします。
例えて言うならオードリーの春日さんの姿勢。独特ともいえる姿勢ですが、あの姿勢にトロンボーン持たせたらものすごく自然ですよ。

そして打楽器もまた見てて姿勢が良いなあ、と思う楽器です。
膜が水平に張られているティンパニやスネアドラムなんかは膜面が結構下にあるのにみんな背筋を伸ばして弾いている。(クラッシュシンバルはちなみに演奏エリアを最大限にするために背は伸ばしますね)
そしてもちろんバスドラム、銅鑼なんかは背をかがめて・・・中腰?
打楽器軍団は姿勢と言うよりも動きが面白いので見てて飽きませんしまた別の話として話したいですね。

ハープもまた楽器を体の方に傾けてフィットさせる楽器ですが、未だにバランスが分からないです。
楽器も傾いていますし、奏者の両足も(ピアノ以上に断然に)忙しく動いているので一体支点は決まったところにあるのかなあ、とか・・・

最後にピアノ。ピアノのマエストロは猫背でピアノを叩くイメージがありますがやっぱりそうなっちゃう・・・というか・・・
いわば指に全体重、心の全てを叩き込むわけですし、音楽やそのセクションの性質によってはそういうこともあります。でもいつもそうではないです。

(そして指揮者については本当に長くなりそうで・・・個人差があるのと打楽器と一緒で「動き」の話になるので割愛。)

どんな楽器でも姿勢やジェスチャーは自分の求めている表現を達成するための手段。楽器を弾くためにしなくてはいけない動作、感情をこめると自然とそうなってしまう動作、そしてある意味「楽器を弾いている」ことを忘れさせるため、より表現を自然に、自分の心から音までがなるべくスムーズな道になるようする動作で・・・
だからジェスチャー大げさだなあ、と思っても多くの場合は理由があってそうだということが多いです。

でもなんだかんだいってもやっぱり体一つではないですのでどう自然にと頑張ってもちょっと体に負担はかかります。
そして悪い癖が染みついたり、知らないうちに体に力が入ってたり、客観的にジェスチャーや姿勢を見てくれる人がいなかったりで体に負担がかかる音楽家は多いと思います。
そこで昨日の提案です。音楽家のためのマッサージだったりPhysiotherapyだったり、音楽家に特化した気軽に行けるアドバイザーだったり、授業でそういうケアの仕方や注意点を習ったり。
もちろん先述Alexander Techniqueも現在広く知られていますし、メルボルン大学の音楽科では弦楽器のクラスで取り入れられたりもしてますが、それに限らず多くの音楽家が体をケアしながら演奏できるなんらかの(ささやかな)体制ができるといいなあーと思います。


今日の一曲: バルトーク・ベーラ 「中国の不思議な役人」



今日スコアを見ながら聴きました!といっても半分ぐらいフォローできてなかったかも・・・
ミニスコアでページ見開きごとの小節数が少ないので(たまに90度回転プリントで見開き1ページに1小節とかあるので)めくる頻度が半端ないのがまずあって。
その上速いところは容赦なくがんがん進むので・・・もともとの音楽の複雑さもあって本当に難しかったです。

中国の不思議な役人。
バルトークはバレエ、オペラ、パントマイムを一つずつ書いているのですが、順に「かかしの王子」、「青ひげ公の城」、そして「中国の不思議な役人」となっています。
本作のあらすじは持ち金が尽きた3人の流れ者とその仲間となっている少女が追いはぎを行おうとする話で。
少女が窓で男を誘惑して部屋に上がってきたところを隙を突いて男達が取り押さえ金品を奪う、という策。
最初の二人は金目の物を持ってなく蹴り出されたのですが3番目に来たのは不気味な中国の役人。全員(とくに少女は)気味悪がるのですがどうかんがえてもお金をもってる風貌なので男達は少女に彼を誘惑するよう命令する。
でもその誘惑に役人がものすごく本気になってしまって逃げる少女、襲いかかって役人から金目のものを奪う男達。
少女の安全のためにも(?)この中国の役人を殺そうと図る流れ者達。ただ枕で窒息させても剣で刺しても吊しても死なない。(真っ先にラスプーチンを思い浮かべました。私だけじゃないと思います。)
そこで少女が彼は彼女への思いを遂げていないから死ねないのだ、と悟りその身を彼に預ける。思いを遂げた中国の役人は息絶える。

・・・なかなか刺激的、というかちょっと「う~ん」と思う人が多いストーリーラインですが、音楽自体はバルトークの真骨頂ともいえるものだと思います。
暗さだったり、凶暴なワイルドさと緻密で完璧な計算、数学的であり爆発的なエネルギーと音型の展開。
さらに見事な楽器使い。分配したり、重ねたり、とにかく構成の仕方とその効果が絶大です。

そしてどの楽器にも難しい!
とくにトロンボーンのパート(細かい動き)、ホルンのパート(音の高低)、ビオラのパート(技巧的な難しさ、パワー、そして目立つ頻度)が目立って凄い。
そしてハープも無調やそれに近い音楽は難しいといいますし、ピアノパートもオケではなかなかないほどの難易度。
まるでハープのようにグリッサンドが続く箇所もあって聴いてるだけで手が痛くなります!

一番エキサイティングなのは中国の役人が少女を追い回すシーンです。本当に血が熱くなって。ここだけで聴くこともしばしば。(ホルンのパートkillerだな!と思うのも特にここ。トロンボーン、トランペットも大活躍!)
でも今日聴いて一番感銘を受けたのが中国の役人を天井の明かりに吊すシーン。
トロンボーン、ピアノ、ティンパニ、チェロの低音の深く暗いグリッサンドがものすごく不気味で、その上に乗せるスローな和音もまた不思議な緊張感を煽って。
その後で役人が生き返るときの合唱の使い方も思わず「うわあ」となりますね。

19世紀末からこういうエログロ交えた系統の音楽もかなり出てくるのですが(シュトラウス「サロメ」、ベルク「ルル」、シェーンベルク「月に憑かれたピアノ」などなど)、そういうダークサイドも含めて本当に素晴らしい音楽で。
そしてエログロ無しでは語れない音楽ですよね。

ルルもなあ、まだちゃんと聴いてないなあ。青ひげも。
もっとどっぷり浸りたい、闇の音楽。

(そしてこの「中国の不思議な役人」、ブーレーズの指揮で聴きたい!彼のバルトークは頭脳&論理派のクールかつ情熱のホットで本当に気持ちが良いので!)

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