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~名もない蛾と虹の錯乱~ 内の思いと外の色彩をつらつらと。
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「統合失調症は人間の脳の進化の代償か?」レクチャー感想
前回のエントリーに拍手二つありがとうございます!
Twitterでもフィードバックいただいて感極まって調子に乗ってしまったのでそのうちまたやります!
やっぱり人に聞いてもらうのいいなあ、と・・・
腕も磨いて、ピアノも調律してもらって、レパートリーそろえて再挑戦したいです。
本当にありがとうございます♪

3月17日木曜日、メル大の医学部の建物でBrain Awareness Weekのレクチャーに行ってきました。
トピックは「統合失調症は人間の脳の進化の代償か?」というもので。
(ちなみにメル大はAustin Healthと合同でMelbourne Brain Centreという、完成したら南半球一の規模になる脳の研究施設を作っているそうです。これは将来楽しみ!)
集まった人の年齢は割と二極化してましたね。大学在学中くらいの若い人達と、あと定年後の年配の方達と。
でも年配の方達も今の研究内容に興味があるだけでなく知識をしっかり持ってて、レクチャーの後の質問タイムでがんがん質問してました。
すごいなあーと。私もあれくらいの年になっても学ぶ姿勢と知識をあれだけしっかりしたいな、と思いました。
ちなみに統合失調症の発症は10代後半から20代半ばに多いのでそれくらいの人の親世代がくるかなーと思ったのですが5時半スタートはちょっと時間が厳しかったのかも・・・

さて、内容ですが。
レクチャーはまず「統合失調症は人間のみが発症する疾患である」という話から始まり。
もっともよく知られている症状の一つである幻聴には「言語」が深く関わっていますし、声が自分の中から聞こえるか、自分の外から聞こえるかの区別という高度な認知能力が関わってたり。
割とこのレクチャーでは他の動物、特に霊長類との比較が出てきますがその小さいようで大きな差が統合失調症に関係があることがいろいろ言われています。

このレクチャーでキーとなっている点その1。
それは高度な認知能力を司る前頭前野の働き。
統合失調症にはいくつかの症状グループがありますが、そのなかでも認知障害(記憶力、計算能力など)のグループには前頭前野の機能障害が関わっていると言われています。
この前頭前野は脳全体においての割合でいうと他の動物と比べて人間がずばぬけて大きい領域です。この独自の進化が人間に独自の統合失調症を起こしたと考えられている、ということで。

キーその2。それは脳内のシナプスの数の年齢による移り変わり。
脳内のシナプス(脳内情報を伝えるニューロンとニューロンの繋がり)の数は脳ができたときから増え、5歳でピークを迎えその後減っていく、という傾向がありまして。
それはなぜか、というとシナプスを生かしておくためにはエネルギーが必要で、ピークのシナプス数を維持するためには莫大なエネルギーが必要になります。そのため最初の何年間で必要事項を猛スピードで学習した後にはシナプスを減らしてエネルギー量的にちゃんと維持できる状態にする、かつ必要最大限の数を保つ、ということらしいです。
(シナプスの数が本格的に減ってくる10代後半~20代半ばに統合失調症の発症が多いのもこれに関係しているとかいないとか)

つまりこのレクチャーによると統合失調症は脳のシナプスにエネルギーを送ってやること(量的・効率的)に問題がある疾患らしいです。

で、シナプスでの情報伝達に関わってる受容体の問題でエネルギーの伝達がうまく行われない、ということ、そしてその受容体には遺伝的な関連があって・・・
ここら辺はまだ日本語でうまく説明できないので割愛させてもらいますが・・・

要するに結論としては人間の脳(特に前頭前野)が複雑に進化したため膨大なエネルギーが必要になり、そのエネルギーの伝達に問題が生じる場合があり、それが統合失調症(特にその認知症状)につながる、ということです。

今回のレクチャーだけに限りませんが統合失調症についての話をするときは基本的な神経伝達・薬理学の知識、そしてなによりも遺伝学の知識が必要になってきますね。
統合失調症に関わる遺伝子を特定する話とかはいろいろ出てきますし、逆に遺伝学の話でも遺伝子特定の例として統合失調症を使う例が結構あるみたいで。
神経伝達のメカニズム、そして薬理学は仕事柄少し勉強していて十分わかるのですが遺伝学はまだちょっと・・・10年生の理科でやったっきりですからね~
いずれはカバーしないといけない分野だと思います。

統合失調症自体自分でもちゃんと理解できてるのかまだ自信ないんですよね-。
自分で患ったわけでもないし、病院でも間近でみたケースは少ないですし。
疾患の性質のいろいろが気分障害・不安障害あたりとは随分違うような気もするんですよ(考え過ぎなのかな~)
これまで行ってきたレクチャーも認知症状グループに焦点を当てた物が多くて、陽性・陰性症状のことはあまりまだ知識が身についてないかも・・・

苦手意識じゃないですけど、これからなんとか克服してきたいです。

これからまたコンサート・レクチャーラッシュなので外出が多くなりそうです。メルボルンも気温が下がりつつありますが元気に勉強・鑑賞したいと思います。


今日の一曲: トマス・アデズ Arcadiana四重奏より「O Albion」



今日は散歩に出たらipodの電池がきれてたのでiphoneに機能お試しで入れてたArcadianaを聞きました。
やっぱ好きですね~アデズは小編成の音楽でも本当にそれ以上のサウンドにしてくれる。
さらに類のない透明感。病みつきになります。

そのなかでも第6楽章「O Albion」はちょっとだけ異色?な気もします。
例えばエルガーのエニグマ変奏曲の「Nimrod」だったり、そういう「典型的イギリス」「イギリスの第2の国歌に似ている」性格の曲です。
知らない人にアデズの音楽を聞かせてどこの作曲家か、と聞いてもイギリスだとは返ってこないと思います。ブリテンに似てもいますがそれでもイギリスに繋げるのはちょっと難しい。
でもO Albionを聞くと彼はイギリス人以外の何者でもないな、と納得します。
(この曲のそんな性格が「ステレオタイプのイギリス」をわざと書いた結果か、それとも素直にそうしたのかはわかりませんが・・・)

Albion、というのはグレートブリテン島の一番古い名前だそうです。
とある神話ではAlbionは遠い楽園とされていたり。この四重奏曲の名前Arcadianaというのもそうですが、いろんな楽章に繰り返し出てくるコンセプトで。
Albionに関してはWikipedia(日本語もありますが英語の方が詳しい)を参照。

Arcadianaの諸楽章はなにか本当に大切で、儚いものを抱えています。
(以前紹介しました第4楽章「Et...」でさえも)
まだこう、しっかりとした形にはなっていないのですが、何回も聞いているうちになんとなーくこの四重奏曲の意味みたいなものが、鍵みたいなものが感じられるようになってきます。
それに先ほどの「遠い楽園」だったり、「死」が関わっていることは確かなのですが・・・

まだ紹介したのはこれで2楽章目。今後他の楽章を紹介するにあたって少しずつでも形にできたらな、と思います。


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