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~名もない蛾と虹の錯乱~ 内の思いと外の色彩をつらつらと。
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the muses
今日はこんなものを買ってしまいました。
vivaldi mug日本スーパーの近くのお店で$10で売ってました。ヴィヴァルディのオーボエソナタ(コンティニュオ付)の自筆楽譜の柄です。白黒反転のバージョンも売ってました。

けっこうヴィヴァルディはきれいに楽譜を書きますね。音符、そして文字の書体もあのころの流行だったんですかね、スタイルは。どことなく時代と文化を感じるところがいいです。

自筆譜はもうちょっとお目にかかれるといいなあ・・・面白そうです。

話は変わりまして。
芸術に携わる人もそうでない人も、「インスピレーション」というものに憧れる部分はある・・・かもしれません。
そんなインスピレーションの訪れを昔のギリシャの芸術の女神たちにたとえてミューズが訪れる、みたいな言い回しをする人も少なくなく。

作曲家の中には具体的なミューズが居た人も居ました。
まあ例えば恋人のために曲を書くとかは今でもよくありますし。昔も良くありましたし。

例えばマーラー。彼の有名な「アダージェット」は妻のアルマのために書かれたもの。愛がこんなに美しい音楽を生むんだというのの典型的な例です。

シューマンも似たようなものですね。クララとの結婚までこぎつけるまでの大恋愛、そして結婚後精神の健康を損なうまでの幸せな生活はきっと彼に音楽を創り出す源になったに違いません。

そして前述のブリテンとそのパートナー、ピーター・ピアーズ。ブリテンのテノールのための曲はピアーズの声の一番いいところ(声域・声質)を一番美しく聞かせるために書かれてます。ピアーズの歌唱力に関して批判的な人はピアーズは3つの音しか歌えないといいますがそれがほんとうに3つの音だとしてもブリテンはその3つの音で美しい音楽を奏でます。

私がやっぱり贔屓なのはメシアンとユヴォンヌ・ロリオ女史の話でしょうか。
メシアンの生徒で素晴らしいピアニストだったロリオ女史。メシアンはピアノの曲・ピアノのパートを彼女に会ってからことごとくささげてます。彼女が弾くことをいつでも想定して。
いまロリオ女史は国際メシアン・コンクール(メシアンと他現代音楽のコンクールで、プログラムがみんな現代音楽)の審査員長を務めたりしています。そして彼女は一番のメシアン弾きでもあり・・・なんか、演奏を聴いたり文献で読んだりする限り本当にミューズだったんだなあ、と思います。

人じゃなかったら例えば特定の詩人の作品(クラム→ロルカ)、民俗音楽(ショスタコーヴィチ→ユダヤ音楽)、文化(フランス人作曲家→スペイン)に惹かれたり。そういうものも「ミューズ」に入ったりするんでしょうか。何かに出会って、それによって創作のスイッチが入ったり・・・
そうすると多作な作曲家はよりミューズとの出会いがあるんでしょうか、それともそれは関係なしに創ってるのか、そこが気になりますね。

私にミューズがいるとしたらそれは音楽でも書き物でも自分の想像したキャラクターや世界などですね。かっこつけたいわけではないんですけど、自分が創りだしたものがもっと創造への扉を開けるみたいで。
だから逆に何にも思い浮かばないときはviscious cycle、つまり悪循環に陥りやすいですねー(笑)
そういうときの気分転換法とかちゃんと考えてみるといいかもしれません。


今日の一曲: ジョージ・クラム 「Vox Balaenae」(鯨の声)


この録音新しいし面白そう!・・・じゃなくて曲のほうです。
フルート、チェロ、ピアノのちょっと珍しいトリオで、クラムの得意なextended technique (楽器をちょっと変わった方法で演奏する)もふんだんに入ってます。
例えばフルートを吹きながら声もフルートに通したり、チェロの弦のチューニングを変えたり、ピアノの(グランドピアノでは)なかの弦を直接弾いたり(これは私もやったことあります)。
そしてピアノのなかに異物(!?)を入れたりして音を変えたり。

音の種類を広げれば、世界も広がる・・・と私は思ってますが。
じっさい様々なテクニックの使用で大海の古代から始まるさまざまな時代をあらわす各楽章でさまざまな表情をした海が広がります。例えばチェロの音でほんとうに鯨の鳴き声みたいな音があって、本当にそれだけでも情景がばっと脳内をかけめぐったり。

現代音楽だけれどどこか民族フレーバーがあったりしてそれもまたなんかある種の親近感があったり(私だけですか?)。よく神話や古代のエレメントやテーマを使った曲をクラムはよく書きますが、現代感ばりばりなのにどこかこう懐かしいような、そしてもっともっと前の文明などを思うような・・・そんな不思議な、謎的な音楽です。

クラムの音楽はとっつきがたいイメージがありますがこのさまざまな音のカオス(ってほどでもないですけど)に抵抗を持たずまず聴いてみてほしいです。
最初は音楽とは思えないような、耳障りな音と思ってもその向こうには時を越えた不思議な、謎に満ちた無言のメッセージがあります。


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