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~名もない蛾と虹の錯乱~ 内の思いと外の色彩をつらつらと。
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The Mediator? (楽器と性格: ビオラ)
前回のエントリーに拍手ありがとうございます♪

そろそろやらなければ、と思い。いつもなら楽器と性格は抜けがないようにメモ書いてからやるのですが今回はいきなりいってみます。
恒例のおことわり:
1)これらの性格分析は私個人の観察と楽器の特性から導き出したものです。
2)あんまり真剣にとらないでいただけると嬉しいです。それなりに分析はしてますが、とりあえずネタということで。
3)メルボルン発データなので環境要因があると思われ日本人の場合どうなっているかは未知です。
4)個人攻撃、誹謗中傷は全く意図していません。

ビオラ、というとバイオリンと同じ形でちょっと大きい、というイメージしか一般にはないと思われます。
もう一歩踏み込むと「バイオリンと似てるけど地味なイメージ」とか「メロディーがもらえない」「目立たない」「バイオリニストが定員オーバーでビオラに転向」なんていうイメージもありますね。
形こそ似ていますがビオラは求められる役割、クオリティがバイオリンと全く異なり、もちろん向いている人も違うタイプの人ですし、さらにバイオリンもうらやむような魅力があるのです。

弦楽器においてビオラはバイオリンより低い音で、チェロより高い音を奏でます。
ビオラの4本の弦の内3つの弦(上からA, D, G)はバイオリンと一緒ですが、バイオリンのトップのE弦がない代わりに下側にC弦がついています。
このC弦のがっつりした深い暖かい響き(もちろん胴体の大きさにもありますが)がビオラのアイデンティティといえるものだと思います(笑)
バイオリンを弾いてる人の間にはバイオリンの一番下のG弦とは違ったおおらかさのある響きをうらやましい、という、いわゆるC弦コンプレックスともいえるものがたまーに見られます。バイオリンにはまね出来ない、バイオリンとは違うクオリティの片鱗(もっとありますよ)がこのC弦にはあるのです。

私もビオリストを多く知っていますが、ビオラ奏者でバイオリンから入らなかった人、というのは1人しかいません。
こちらだと大抵お稽古的なものとして子供のころバイオリンを始め、小学校のオーケストラだったり、その他先生のすすめでビオラに転向する、というのがスタンダードな流れでしょうか。
うちの妹も「出世早いよ!」(人数が少ない、競争がゆるめなので)といってビオラにそそのかしました(笑)
バイオリン・ビオラを「弾く」ほうだったり「教える」ほうだったりで掛け持ちすることは多いみたいです。もしも町中(?)でバイオリンケースのような(四角い)ケースだけどちょっとでかくないか?と思うようなケースが担がれているのを見たら、それはバイオリン・ビオラが互い違いに入るようにしているケースかもしれません。

弦楽四重奏でもピアノ四重奏でもオーケストラでも、バイオリンとチェロの間にビオラがいることが多いです。(今年お世話になってる指揮者さんはビオラをステージ前側に位置するのが好きみたいです。そこはやっぱり指揮者のバランス・音の好み、音響などで動かす自由はある程度あるようです)
ビオラは音域もバイオリン・チェロの真ん中に位置しますが、役割としてもこの2つの楽器の間を仲介する、というような役割があります。
バイオリン、チェロとも結構主張の強い、自分の色をがんがんだしてくる、さらに必ずしも意思が一致しない楽器群で、音楽をharmonizeさせるのではなく「ソリスト同士の絡み」みたいになってしまうことがあります。
それをビオラがハーモニーラインを提供したり、暖かい音色でうまく解け合わせることによってアンサンブルができあがる、といっても過言ではないと思います。

だからビオラは自分が前に出るよりは人と人の間の関係やコミュニケーションをスムーズにする、仲人や交渉人のような役割を好みます。自分が輝くことよりも、周りが平和で仲良く、みんなで楽しく美しい音楽を作っていることを大事だと思うタイプ。だからやっぱりバイオリンとはまた根本的に求められるもの、向いている性格が違いますし、好みが分かれるところだと思います。
(似たような役割の楽器は木管だとクラリネット、金管だとホルンが居ます。が、クラリネットはバイオリン的な役もしますし、ホルンはチェロと似たようなパートも担いますので、ミドルのミドルな楽器だったらやっぱりビオラ、だと思います)
むしろビオラは目立つことをあまりよしとしない、というかちょっと引っ込み思案で控えめな性格があると思います。弦楽器で人数がある程度いることをいいことにみんなでそろってこそこそ隅に隠れてしまう傾向が(笑)
19世紀以降だとその音色の暖かい美しさなどを買われてソロのメロディーとかももらえちゃうんですが、ちょっとおどおどしながら頑張らなくちゃと責任感を感じてしまうタイプです。
あと規律は基本従いますが自分から作ることはなく。人の和を大事にする&控えめ=文句などは言わずに我慢してしまう、という傾向も。
例えば自分の意思ではなくお稽古としてバイオリンを始めた中で一定人数こういう「ビオラに変えて良かったなー」と思う人がいるんではないでしょうか(笑)

ビオラ、というのは聞いて分かるとおりイタリア語では女性形で表される楽器です。
ソロレパートリーや室内楽でもなにかと「女性的な」イメージの音楽が多いです。ブラームスとか、ヒンデミットのop.11-4とか。バイオリンとは違い内向的な繊細さが求められるので弾き手にも似たような感性が必要とされています。だから男性でもものすごく男性的、というよりは感情だったり性格だったり趣味だったりに細やかな女性みたいな側面があったり・・・するのではないでしょうか?

ビオラ、というのは今でも所謂「マイナー」な楽器で、室内楽などでは需要が高いもののソロのレパートリーはものすごく少数です。結構チェロやバイオリンの編曲などでつないでいます。
さらにあんまりその魅力というか良さというか、世界の深さが一般には分かってもらえない楽器でもあり。
なのでビオラ奏者というのは平たく言えば「オタク」な傾向が少なからずあります。狭い深い世界を他がなんといおうとも気にせずもくもくと一人で掘り進んでいくタイプ。
ビオラのレパートリーだと結構20世紀の音楽とかも多く、さらにはオーケストラのパートでツボったりしてるのも聞いただけじゃわからないような(=メロディーじゃない)部分だったり、とにかく他人に分かってもらえなかったりします(笑)
基本ビオラの集団は似たもの同士、という次元以上で平和主義&「オタク同士」という仲の良さが特徴的だと思います。(実力主義プロ気質集団のチェロと比べるとゆるーい、趣味の集まりというか、なあなあなところ多そうですね)

あとここまでに絡められなかったビオラ知識2つ。
ビオラは「後打ち」職人です(ホルンと並んで)。1,2,3,4拍ある内、弱拍である2,4を担当します。地味です。でも淡々とこなします。文句言わずむしろ密かに楽しんでる節もないことないです。
あとビオラはバイオリン・チェロとは違って楽器に3/4、1/2など決まったサイズがなくてわりとゆるーく何インチ、幅はこれくらい、とかいう決め方をします。

私はビオラ奏者の友達を通してそんなビオラの魅力にぞっこんです(笑)なんでしょうね、やっぱり自分のチェロ奏者である部分とは別の部分で響くものがあります。第2のふるさと(第1がチェロとピアノとチェレスタ・・・あれ?)ビオラの曲ってこう全体に「タイプだな-」と思う曲が多いですしね。
あくまでも私の想像ですが、バイオリンは天を翔け、チェロは地に腰を据えるけれどビオラは地上からちょっと離れてふわふわ浮いているイメージもあり、バイオリンは脳と、チェロは腹と、ビオラは心臓と関連させたくなるイメージもあります。
さらにピアノ・バイオリン・チェロ編成でソリストが3人集まったみたいなピアノ三重奏よりも、もっとアンサンブルとして調和しているピアノ・バイオリン・ビオラ・チェロのピアノ四重奏の編成が好きです。

この記事に心当たりのあるバイオリン奏者のみなさん、今でも遅くないです!(笑)
というのは冗談としてももっともっとオケにおいて、室内楽において、そしてソロのレパートリーでもビオラを聴いてあげて下さい。
引っ込み思案ではありますがなんせオタク気質なので一度アプローチすればその深い世界を(音楽・言葉で)多く語ってくれるでしょう。


今日の一曲: パウル・ヒンデミット ビオラとピアノのためのソナタop.11-4



これ、ずーっと前紹介したと思うんですがあえてもう一回。
ビオラの魅力を知って欲しい、と思ったらこの曲が一番強く自分の心のドアを叩きます。

ヒンデミットはオケの楽器のみならず本当にたくさんの楽器それぞれのために1つ以上ソナタを残しています。
そんななかでもビオラに関してはピアノ付きが3つ、無伴奏が4つ(そして協奏曲タイプの曲も複数)残しています。
それもそのはず、ヒンデミットは自身ビオリストでもあったのです。

ちょっと聴きあんまり「美しくない」と思われるような曲も書く中、今回のこのビオラソナタはヒンデミットらしい独特の苦み(?)を失わないままものすごく美しい音楽でもあります。
ヒンデミットはドイツ人ながらもイギリス音楽と酷似した息の長く透明な、「牧歌的な」スタイルで書くことが多く、最初の楽章「幻想曲」ではそんなヒンデミットの一面が濃く現れています。
第2,3楽章に渡って続くバリエーションではとってもシンプルなテーマが様々な形に姿を変えながら、ビオラの魅力が色々見れるのが良いですね~力強かったり、暗かったり、風に乗るようだったり優しかったり。
ピアノとの絡みもまあ気持ちいいです♪

この曲を聴くとどうしても「これはバイオリンでもチェロでも、他のどの楽器でもまね出来ないな」と確信を得るんですよね。
ヒンデミットも(さすが自分の楽器、ということで)この楽器の本質、本当の魅力を知っていて、豊かに表現していて。
全部ひっくるめてやっぱりこれだなーと思います。

数あるビオラ奏者の演奏のなかでも是非ともリンクしたキム・カシュカシアンの録音を聞いてもらいたいと思います。彼女の音のぶれない強さと繊細さはすごいの一言です。ピアニストの演奏も素晴らしいですしね~

拍手[6回]

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