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~名もない蛾と虹の錯乱~ 内の思いと外の色彩をつらつらと。
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双つの極の狭間より
今日はメンタルヘルスの話を少し。

精神関係の、つまり心の病気といってもいろいろ種類があって。
今一番メジャーな精神疾患のリストははDSM-IVでしょうか。あの本にはたいていの精神の障害がリストされています。(大学時代に図書室で借りて読んだことは私もあります。臨床心理士や精神医の部屋に置いてあったりもしますね)
その中でもまた「不安障害」「摂食障害」などの分類があって・・・
ただやっぱり難しいんですよね。結構多数の疾患に(上記分類の境界を越えて)共通の症状があったりなんてことは珍しくないそうですから。

そんななか「気分障害」という分類のなかに鬱は分類されます・・・が、その分類にあてはまる病気はうつだけではありません。中には最近分類が別になった疾患などもあり、やはり症状の種類で分類しているだけあって素人目にも玄人目にも紛らわしい疾患が多いです(それはどの分類でも一緒ですが)。

そのなかでもよく混同されやすいのがうつと双極性障害ですね。それはどちらも今では珍しい病気ではないということと、その症状の類似が主な理由らしいです。

双極性障害は一昔は躁うつ病と呼ばれていた病気で、うつが気分の沈みを症状として主に経験するのに対してうつ状態と躁状態、つまり気分の高揚を両方症状として経験する病気です。
ちなみに双極性障害も今は何タイプかに分かれていて・・・いわば100%うつと100%躁を経験する病状が1型、症状が主にうつで軽い躁(軽躁)をたまに経験するのが2型、そのほかにも躁と鬱を急速に入れ替わりに経験する病状、躁と鬱の複雑に絡み合ったような症状を体験するの、いろいろあります。
(ちなみに躁だけ、という病状もあるようですが双極性障害に含まれるらしいです)

躁状態は異常な気分の高揚、誇大妄想、多動、多弁、睡眠が不必要だと感じるなどの症状が含まれますが・・・
一言で言えば躁状態はちっとも楽しくありません。
躁=多幸感(Euphoria)ではないので。
私の経験したのはいわゆる軽躁(診断は一応双極性障害の2型です)なんですが、これはこれで結構しんどいです。しゃべったらとまらなかったり、頭の中が常に高速でスピンしていたり・・・
気持ちが高揚している、というよりは無理やり吊り上げられているみたいな感じで、いろんなものがその吊り上げられた心についていけず、エネルギーが自分のコントロール外で無駄にどんどん流出していく・・・という感じだった記憶が多いです。

あとこの病気が「双極性」、つまりうつと躁を両極のように扱っていますが(実際文面で見ればうつと躁の症状は正反対に見えます)、実際に体験してみると躁と鬱はとっても似たような感じがします。
特に軽躁状態から鬱になるときにその印象は強いです。それはジェットコースターで頂上から急降下する感じではなく、例えて言うならば時計で59分から00分になるような、それだけ二つの正反対と思われる心の状態にはものすごく近い何かがあるような・・・学術などで説明できるものではありませんが、患者としてぼんやりと、でも確かに感じることです。

1型に見られるような躁は本人にも周りの人にも見て何かが異常だとわかり易く、しかもその症状は他の疾患ではあまり見られない特徴的なものですが、2型で見られるようなそれが弱まったバージョンだとちょっと難しいです。
まず患者本人が「あ、調子がいいな」と思いがちで、周りも同じことを感じがちで・・・本人や周りがそれを「異常」と見なさなければ精神医にももちろん伝わりません。それに・・・やっぱり患者の立場からいうと「調子がいい」んだと思いたいんですよ。あんなに苦しかったのに気持ちが少しでも楽になって、それをまた別の「異常」とは思いたくないじゃないですか。

そんなこんなで見落とされがちな2型の双極性障害。ただ、それが単極性のうつと診断されてしまうことには危険があります。
今第一にうつの治療薬としてつかわれるSSRIという種類の抗うつ剤。これは双極性障害に対して使われると躁の症状を悪化させてしまう恐れがあります。
なので双極性障害はたいていの場合リチウムのような気分安定剤で治療されることが望ましいです。

うつと双極性障害の誤診はかなり多いです。
でもそれは症状がとても似通っていること、そして精神疾患は定期的なアポのセッションで行われる患者の自己申告や周りからの報告、そしてその短い時間での精神医の判断によるものであることが主な理由で、たとえ持続的に日常を観察したとしても、どんなに経験を積んだ医師でもこの2つの病気を識別するのは難しいという話です。
だからこの誤診、そして精神疾患の誤診全般に関しては誰が悪いということもないことが多い、という事情です。

最初はSSRIで、それで悪化したらリチウムを・・・このことに限らず行き当たりばったりのような治療で不安を感じている患者さんも多いかもしれませんが、人間の心を医学として扱うにはまだまだこの時代はトライアル・アンド・エラーで行かなくてはならないのです。
でも薬によって異常などが起きた場合には普段からの医師とのコミュニケーションがものを言います。
たとえばSSRIの投与により躁状態が現れたりした場合は医師に患者自身や周りの人が連絡を取れば理想的にはすぐ薬を投与、そしてこまめにアポをとって様子を見たり別の治療法を考えたりして患者さんになるべく負担をかけない対応ができる、はずですので。

以上えらそうに聞こえたらすみません。まだまだどうやって伝えるか模索中なもので。
そしてここで述べたことは私の経験を基にしています。精神疾患の症状や感じ方、病気の経験、薬への反応などはすべて個々の患者さんによって違います(なので難しいんですが!)。


今日の一曲: レナード・バーンスタイン 「ウェスト・サイド物語」より「Gee, Officer Krupke」



ウェスト・サイド物語はいろんな意味で何度も楽しめるミュージカルでものすごく好きです。
音楽もダンスも良いし、ストーリーもなかなか。「ロミオとジュリエット」のリメイクとしてみるとかなり優れたもののように思われます。

そしてそれが身についたころにその社会的側面がまた奥深い。
ストーリー全体のテーマでもある白人とプエルトリコ人の対立、「America」に見られるアメリカとプエルトリコの当時の状況、そしてこの「Gee, Officer Krupke」にてみられる若者たちの社会的ポジションなど・・・

なんか騒ぎを起こしちゃ裁判所、精神医、ソーシャルワーカーとたらいまわしにされ、どこでも無責任な大人がいい加減なことを言って無駄なレッテルを若者たちに貼っていく・・・まあ、今と通じるところは多いですが。

それをコミカルに(音楽としてはオーバーにコミカルに)歌い上げる若者たち、でもそのメッセージは痛烈です。
歌詞のコミカルでcatchyな感じでつい楽しくなっちゃうけれどはっとさせられますね。

ちなみにウェスト・サイド物語はバーンスタイン自身が「交響的舞曲」としてメドレーのようにひとつのオケ曲にまとめてます。これもいいとこたくさんでお勧め。


ミュージカルも交響的舞曲も私は「スケルツォ」の部分が一番好きです。トニーが見た自由になる夢(だったかな?)の音楽です。
あとミュージカルでは「Tonight」のアンサンブルが作曲的にも舞台的にも秀逸ですね。それから「Boy Like That」やもちろん「マンボ」(これは交響的舞曲でも奏者が「マンボ!」といって盛り上がる!)も好きです。
要するに好きなものばっかりです!

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