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~名もない蛾と虹の錯乱~ 内の思いと外の色彩をつらつらと。
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celesta
今日2度目になりますが、ロザンが京都のオケとのオーケストラディスカバリーのレポをいくつかこっそり読ませてもらって、そしてナビゲーターを今年も続けることを知ってうれしかったので(笑)
本当にうれしいですよ。自分のすごく好きな人が自分の専門(といまだに言い張る)となんらかの形でかかわっているのは。
それに偏屈な類の玄人からみてもなかなか良いプログラムでそれもうれしいです。日本のクラシックのコンサートは何かとポピュラー路線が多いので・・・(N響は例外ですが。N響アワーも送ってもらってます)

今回のコンサートでチェレスタが出てきたらしくてそれもまたうれしく。
私にもしも天職というものがあるとしたらそれはチェレスタ弾きだと信じてるんですよ。
誇れる仕事でした。チェレスタを専門でやる人はほとんどいなくとも実力は認めてもらえてたし、楽しかったし、オケのみんなも私がチェレスタを弾くと顔や心を向けたりしてくれて。それにサイズ的にものすごく親しみがわくサイズなんですよ(笑)

天職が天職となりえないのはなによりも職になるほど出番が少ないからもあって。
チャイコフスキーの「くるみ割り人形」のお披露目から楽器の歴史が始まる(結構遅いほうですよ)のもあり、そしてその後の作曲家もなんかこだわりがないとチェレスタは使わないし。あったとしても出番はかなり少ないし。ソロレパートリーなんてものはほとんど皆無だってことも痛いですね(笑)
あとメカニズムはピアノとだいたい一緒なので普段はオケにいないピアニストが弾くこともあってあんまりメインとしては扱われない楽器なんですよ。
ピアノと比べて音色とかテクニックとか音域に深みがなくてできることが限られてる・・・というので(もっとざっくりいえば可愛い音色を出すだけだと思われてるので)あんまり真剣に取られないというか。

大学にあったチェレスタの楽器も古くてなんかホコリがたまってるしタッチはへぼろいし音は出にくいしで。
でもなぜかそれを極めたくなったんです。どうしてかは覚えていないんですけどこの楽器にはもっとできることがある、と。不思議と惹かれたその楽器をもっと活躍させてあげたくて。

ついでに言えばピアノもオーケストラの一員として(つまりはコンチェルト=協奏曲ではなく)弾く事も少ないんですよね。私はオケにいるのが、オケで弾くのが楽しかったのとチェロをオケで弾いたことで身に着けた指揮者とのコミュニケーションのとりかた、オケでの自分の居場所の探し方、オケの一員として弾くこと、ついでに磨き上げたオケ演奏の勘(オケでは結構なんでも勘に頼ってたところがあります(笑))、それをそのころ知り合った指揮者の人に買われてオケでよく弾くようになり、専門っぽい扱いをしたんですけど(あと自分がマネージャーだと多少は融通が利きます)。

チェレスタってまず音量がそうないんですよね。特に低音域は本当にテクスチャだけ、って感じがしないでもなく。でも弾き方しだいでは「鉄琴かと思った」といわれたり指揮者に多少やりすぎだといわれる(どちらも実体験)音量もだせます。
音域の狭さは・・・まあしょうがないと思いますね。ないのは主に低音、楽器にある以上に増やしたらきっと聞こえません。

あと何しても間違いなくそれなりの質の音が出ますから(笑)そこから成長する余地もほかの楽器ほどはなくて、それはそれで残念なんですけど。
成長しないことはないんですよ。でもやっぱり「可愛い音」「ちりんちりん」っていうイメージが抜けない、つまりは人間で言えば「可愛いだけで中身が無い」みたいなイメージが付きまとってるんですよ。
その元凶は名曲ながらもデビュー曲「くるみ割り人形」の「金平糖の精の踊り」のイメージなんでしょうかねえ。

でも大学で作曲科の生徒がオケで曲を弾いてもらうセッションのときはチェレスタの新境地が開けたと本当に思いました。作曲科の先生が私のために(本当ですよ!)「チェレスタがいるからパートを入れて欲しい」とリクエストしたらしく、6曲中4曲にチェレスタが入ってました。それだけでもありがたいのにそのチェレスタの使い方がまた斬新で。
なんというか・・・精神的な危うさとか幻覚、病的な心の不安定さとか闇の属性でいっぱい使っていただいたんです。そういうのが私はまた好きな人で(笑)
21世紀の新しいチェレスタの形だな、と本気で思いましたよ。世界でもそうなることを今でも願ってます。

そんなことがいろいろ積み重なってチェレスタは私の楽器というような気持ちになっていったんです。
プロのオケとかの舞台裏やってる友達からも「メルボルンで一番のチェレスタ弾きだ」といってもらえて。
上達するっていう実感がほとんど涌かない楽器だけれど、やっぱり上達すると愛着も深まり。
音質の範囲が広くなるのが一番愛着が深まりますね。低音域のくぐもった、でもふかふかであったかい(ただたまに「カビが生えてるみたいな」って形容するけど)音、高音域は鋭くなりすぎないように(それは鉄琴に任せ)、ほかの音とちゃんと混ざるように。
ペダルは(ちょっと高い位置にあるので足は組んだまま弾かないと操作できないけれど)ピアノでのペダル以上に音の質と表情に影響して。
言葉で言い表せないほど好きなんです。

・・・とチェレスタの話をしてしまったのでチェレスタ活躍オケ曲を「今日の一曲」第2弾目に。

今日の一曲:セルゲイ・ラフマニノフ「鐘」

ポーの同名の詩を歌詞としたカンタータっぽいもの。第1楽章と第4楽章(第2楽章も弾いてるけど目だってない)のチェレスタの鐘・鈴の音は本当にいいとこどりで魅力振りまきまくりです。
第1楽章は銀の鈴。中高音域がきらきら銀色に輝いて。第4楽章は死を表す鉄の鐘。ところどころで中低音域の深さとあったかさがにじみ出てきます。
ラフマニノフはなにかとピアノ曲が有名ですが(自身もピアノの巨匠でしたし)、オケの書き方も本当にうまいです。そしてロマン派と思われがちだけれどちょっと20世紀的なところもあったりして。
ベタなようで奥が深くて幅広い人に末永く楽しめる作曲家です。

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