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前回のエントリーに拍手どうもです~
昨日の夜にface to aceのアルバム2つ、「風と貝がら」と「peaks」を日本で注文して今日発送されたばかり(こちらに来るのは両親がこっちに来るときかな)なのにすでに浮かれております。自分という生き物は常に単純きわまりないです。いやあ楽しみ。両親がこっちにいる間いろいろ観光行くので車移動で聴けるじゃないか!
そしていまあるCDももっと聞き込まなければ。
特にクラムはまだまだじっくりなじませないといけないですねえ。結構弱音部分が多いので外でだと聞きにくいですし。
新しく買った曲でスコアがあるものは借りないと耳だけでいろいろキャッチできてない部分もあるので。
こないだ買ったのはクラムの「アメリカ歌曲集」シリーズから2作が収録されてるCDで。
そのときも書きましたがすでに「アメリカ歌曲集」は一つ持ってたのです。
アメリカ歌曲集の構成はこんな感じ(持ってる曲は*で):
1) The River of Life (2003)
2) A Journey Beyond Time (2003)*
3) Unto the Hills (2001)
4) Winds of Destiny (2004)*
5) Voices from a Forgotten World (2007)*
6) Voices from the Morning of the Earth (2008)
7) Voices from the Heartland (2010)
元は4部作だったらしいですが一昨年の時点で7作。8番目が書かれてるという話もどこかで見たような。それにしても2001年~だから全曲21世紀の音楽ですね、完全に。最近だなあ。
この「アメリカ歌曲集」は南北戦争の際に歌われた歌や民謡、古い大陸から歌い継がれた歌、黒人霊歌(Afro-American Spirituals。第2集は全部これです)、原住民の歌などのメロディーと歌詞をアレンジしたり、はたまた必要とした場合は歌詞だけとってオリジナルのメロディーに乗せたり、あと完全オリジナルの曲もあります(後述)。
この中には民謡として知られているもの、フォークミュージックのアーティストによりカバーされてるものなど結構聴いたことのあるメロディーもありますが、クラムは全く新しいセッティングでこれらのメロディーを音楽に仕立てています。
(プラス第2集、第4集は楽器のみの間奏もあって、特殊な形の楽譜になってたりするそうです)
元々これはクラムの娘さんの提案により実現したサイクルみたいです。
娘さんは歌手で、先ほどのうちの第1集、第3集の初演を手がけています(もちろん録音は出てます)し、それから第4集の第8楽章のオリジナル「民謡」の歌詞を書いています。
いいなあそういうの。憧れます、誰かのミューズになるの。もうちょっとできた人間にならなきゃですが(汗)
このアメリカ歌曲集は歌手(1人or後の方の曲集では複数)+ピアノ+打楽器4人という編成で書かれています。
(同じく最近書かれ始めた「スペイン歌曲集」(2009年に第1集「Ghosts of Alhambra」、こちらはロルカの詩を音楽に乗せて)はピアノでなくてギターがフィーチャーされます)
で、この打楽器がすごいらしいです。なんと『各曲集』100種類以上の打楽器、しかも5つの大陸の様々な国からの打楽器が使われてます。(ここですよ、スコアでチェックしないといけないの!)
民族音楽でしか聴いたことない楽器や全く聴いたことのない楽器もちょこちょこ聞こえますし、耳なじみある楽器もクラムの手にかかると聴いたことのないような使い方をされたり。
以前からクラシック音楽で打楽器が音楽のキャラクターだったりお国柄を表すのにものすごく重要だと書いてますが、こうやってマルチカルチュアルな打楽器の集まりでそれぞれのお国柄を主張するかと思えばそうでもないんですよね。クラムの使い方がいいのもありますがなんというか、案外溶けあうんですよ。
メロディーはアメリカの歴史の中で生まれた歌ですが、音楽全体としてはどこか多国籍であり同時に無国籍である、そんな感覚に迫っているところがあります。
アメリカ歌曲集の面白いのはクラムの思い、特に彼が何を嫌っているかとかネガティブな感情がものすごく伝わってくるところです。
例えば第4集第1楽章「Mine Eyes Have Seen the Glory」では(歌から察するに神の名においての)戦いの後に広がる廃墟と破壊の跡と屍の山と、というのがまざまざと見えます。クラムはそういう(アメリカという国とよく関連される)「正義」の名においての暴挙をものすごく嫌ってるんだな、というのが他のいろんな作品においても、そしてこの曲でものすごく感じられます。それはマーラー1番の第3楽章のパロディが入ってる第4集第2楽章「When Johnn Comes Marching Home」の皮肉の辛辣さにも見えることです。
他には過酷な状況下において一縷の希望に弱った手でしがみつく奴隷の図(第2集第9楽章「Sometimes I feel like a Motherless Child」、第4集第6楽章「All My Trials (Death's Lullaby)」)とかもありますし。
もはや絶望を通り越したあきらめ(第5集第3楽章「House of the Rising Sun」)とかも本当にひしひしと。
それがまた全て美しいのですが。
今持ってる曲集のうち特に気に入ってるのを挙げると(順不同):
1) 第5集第9楽章 「Firefly Song (Ojibwa)」
2) 第5集第10楽章 「The Demon Lover」
3) 第2集第8楽章 「Go Down Moses」
4) 第5集第8楽章 「Beautiful Dreamer」
5) 第4集第1楽章 「Mine Eyes Have Seen the Glory」
他にもあるんですが絞れない。ちょこちょこ今日の一曲でも追々。
5)はさっき書いた通り。あまりにも強烈な恐怖のイメージが怖い、怖いけれどだからこそ好きなんですよ。あとフクロウの鳴き真似とかオーストラリア原住民の楽器とか、歌い手の距離感とかいろいろピンポイントにツボるところが多い。
1)はもう最初聴いたときから揺るぎない第1位ですね。元々はアメリカの原住民のうちの民族の歌だそうですが、五音音階で成ってるのをクラムは上手く使ってるな、と。木琴とか木でできた打楽器の音がすてき。
2)はアメリカというよりは古い言語や船乗りとかイギリスっぽい雰囲気なんですよね。全体的に生と死の間の闇の空間を表しているようなビブラフォーンが絶妙だと思うのですよ。
3)についてもほぼ一目惚れ。元のメロディーの最初の4音がグレゴリア聖歌のDies iraeと同じということを利用してつなげたアイディアと、あとピアノとidiophone族(木琴とか鉄琴とか調音してある打楽器)のタッグが素晴らしい。弾いてて絶対気持ち良いよピアノパート!
4)が面白いのはメロディーが口笛により担当されてて、歌詞が歌い手の囁きによって担当されていること。口に指をたてて「しーっ」てしているようなものすごく繊細な音楽。これはじわじわと最近来てます。(ちなみに原曲はフォスターの有名なメロディー「夢路より」です)
全体的に見るとこのシリーズには4つの曲集に収まらなかったクラムのアメリカという国の根本のところに対する愛(白人以外も含めたアメリカの歴史、地理、文化など全部ひっくるめて)があると思います。その愛が深いからこそ前述のようなアメリカに関連する性質を嫌うところがあるんだと思います。
そして同時にアメリカの音楽を通してもっと広く世界を全体としてカバーするような音楽を書くこともしてるのかな、と。Lux Aeternaで西と東の音楽をつなぐようなところもありましたし、クラムの音楽のスタイルって特定の文化をはっきり指し示さないようなところがあったりするので。それに加えて上述打楽器の使い方だったり。
あんまりアメリカの歴史はこっちの学校でもそんなに習わないですし、文化全般もそうですが音楽に関してもあんまりアメリカのものってクラムの音楽に出会うまでは魅力を覚える事って本当に少なかったです。
でもクラムの音楽、特に「アメリカ歌曲集」を聞き始めてなんとなくそれが変わってきているようで。クラムが多角的にその文化や歴史を捉える(都合の良いように、ではなく!)のも手伝ってちょっとずつ奥深さを感じるようになってきたと思います。
そして(まず原住民の音楽や一部spiritualのように表記する文化がない音楽をなんらかの方法で残すのもそうですが)、民族音楽をまた別のやり方で作り替える、歴史や文化を表現するためにオリジナルのセッティングから新しい意味を創り上げる、というプロセスが本当に面白くて。(オーストラリアだとまだまだこういうのは無理かなあ、歴史と文化の深さ、長さからして)
これからもっとクラムのそういった音楽に出会うのが楽しみです。早く他のも手に入れたいですね!
今日の一曲: ジョージ・クラム アメリカ歌曲集「A Journey Beyond Time」より第8楽章「Go Down, Moses」
今日言及してないのも含めて迷った結果これに。
やっぱり初印象からかなり強烈な印象があったんですよ、この曲は。もうDies Iraeを聞き取ってしまう、そしてそのメロディーから死や最後の審判をほぼ自動的に連想してしまうのはクラシック音楽家の性だと思います。
先ほど第2集「A Journey Beyond Time」は全て黒人霊歌を題材にしていると書きましたが、これもまたモーゼがヘブライ人をエジプトから解放した聖書のくだりを自分たちの民族になぞらえて自由を求める気持ち、モーゼのように解き放つ人物を願う気持ちを歌った歌・・・という解釈でいいんでしょうか。
同じくクラムの「Apparition」でもあるのですが、クラムはたまに歌のパートの中で「死」にあたる言葉を強調することがあるんですよね。実際楽譜でどうなってるか分かりませんが(要チェック)。この曲でも「Or I will smite your first-born dead」(さもなければ貴方方の長子が死ぬことになる」という歌詞の「Dead」の部分だけ歌うのではなく「言う」=宣告する(テンションとしては「呪う」に近いんですよね、モーゼですが)ように差別化してあるんですよね。これもまた初めて聴くと、そして何回聴いても突き刺さる。
楽器のパートも面白い。先ほど言及があったDies Iraeの引用だけでなく、フラクタルみたいに速さを2倍、4倍にしたりカノンのようにメロディーのはじめをずらしたりしながら弾かせるidiophoneたち。最高のタッグです。
ピアノの存在がまた良いですね。歌い手にしっかりしたピッチを提供するのはもちろん、idiophoneに属する楽器は低音が強くないので(打楽器ファミリーでは大きいドラムとかが担当する部分です)、ベースラインを担当する、という役割もあり。
そして4度のハーモニーが独特の響きと緊張を醸し出して、例えばベルリオーズの「幻想交響曲」の鐘の音(Dies Iraeがここでもありますね)みたいなultimatum感がある鐘の音を奏でるのも良いです。
アメリカ歌曲集に入ってる曲って先ほども書きましたがネガティブな面、辛い面、必ずしも対面して心地良いものではない感情や側面を突きつける曲が結構ありますが、この曲もまたその向き合いづらい部分も合わせて良い音楽だな、美しいなと思える、そして愛せるのが凄いですね。リアリティも感じますし、音楽に込められたものの大切さもしかと受け止めなければいけないと感じます。
全部ひっくるめて、クラムの音楽がやっぱり大好きです。
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昨日の夜にface to aceのアルバム2つ、「風と貝がら」と「peaks」を日本で注文して今日発送されたばかり(こちらに来るのは両親がこっちに来るときかな)なのにすでに浮かれております。自分という生き物は常に単純きわまりないです。いやあ楽しみ。両親がこっちにいる間いろいろ観光行くので車移動で聴けるじゃないか!
そしていまあるCDももっと聞き込まなければ。
特にクラムはまだまだじっくりなじませないといけないですねえ。結構弱音部分が多いので外でだと聞きにくいですし。
新しく買った曲でスコアがあるものは借りないと耳だけでいろいろキャッチできてない部分もあるので。
こないだ買ったのはクラムの「アメリカ歌曲集」シリーズから2作が収録されてるCDで。
そのときも書きましたがすでに「アメリカ歌曲集」は一つ持ってたのです。
アメリカ歌曲集の構成はこんな感じ(持ってる曲は*で):
1) The River of Life (2003)
2) A Journey Beyond Time (2003)*
3) Unto the Hills (2001)
4) Winds of Destiny (2004)*
5) Voices from a Forgotten World (2007)*
6) Voices from the Morning of the Earth (2008)
7) Voices from the Heartland (2010)
元は4部作だったらしいですが一昨年の時点で7作。8番目が書かれてるという話もどこかで見たような。それにしても2001年~だから全曲21世紀の音楽ですね、完全に。最近だなあ。
この「アメリカ歌曲集」は南北戦争の際に歌われた歌や民謡、古い大陸から歌い継がれた歌、黒人霊歌(Afro-American Spirituals。第2集は全部これです)、原住民の歌などのメロディーと歌詞をアレンジしたり、はたまた必要とした場合は歌詞だけとってオリジナルのメロディーに乗せたり、あと完全オリジナルの曲もあります(後述)。
この中には民謡として知られているもの、フォークミュージックのアーティストによりカバーされてるものなど結構聴いたことのあるメロディーもありますが、クラムは全く新しいセッティングでこれらのメロディーを音楽に仕立てています。
(プラス第2集、第4集は楽器のみの間奏もあって、特殊な形の楽譜になってたりするそうです)
元々これはクラムの娘さんの提案により実現したサイクルみたいです。
娘さんは歌手で、先ほどのうちの第1集、第3集の初演を手がけています(もちろん録音は出てます)し、それから第4集の第8楽章のオリジナル「民謡」の歌詞を書いています。
いいなあそういうの。憧れます、誰かのミューズになるの。もうちょっとできた人間にならなきゃですが(汗)
このアメリカ歌曲集は歌手(1人or後の方の曲集では複数)+ピアノ+打楽器4人という編成で書かれています。
(同じく最近書かれ始めた「スペイン歌曲集」(2009年に第1集「Ghosts of Alhambra」、こちらはロルカの詩を音楽に乗せて)はピアノでなくてギターがフィーチャーされます)
で、この打楽器がすごいらしいです。なんと『各曲集』100種類以上の打楽器、しかも5つの大陸の様々な国からの打楽器が使われてます。(ここですよ、スコアでチェックしないといけないの!)
民族音楽でしか聴いたことない楽器や全く聴いたことのない楽器もちょこちょこ聞こえますし、耳なじみある楽器もクラムの手にかかると聴いたことのないような使い方をされたり。
以前からクラシック音楽で打楽器が音楽のキャラクターだったりお国柄を表すのにものすごく重要だと書いてますが、こうやってマルチカルチュアルな打楽器の集まりでそれぞれのお国柄を主張するかと思えばそうでもないんですよね。クラムの使い方がいいのもありますがなんというか、案外溶けあうんですよ。
メロディーはアメリカの歴史の中で生まれた歌ですが、音楽全体としてはどこか多国籍であり同時に無国籍である、そんな感覚に迫っているところがあります。
アメリカ歌曲集の面白いのはクラムの思い、特に彼が何を嫌っているかとかネガティブな感情がものすごく伝わってくるところです。
例えば第4集第1楽章「Mine Eyes Have Seen the Glory」では(歌から察するに神の名においての)戦いの後に広がる廃墟と破壊の跡と屍の山と、というのがまざまざと見えます。クラムはそういう(アメリカという国とよく関連される)「正義」の名においての暴挙をものすごく嫌ってるんだな、というのが他のいろんな作品においても、そしてこの曲でものすごく感じられます。それはマーラー1番の第3楽章のパロディが入ってる第4集第2楽章「When Johnn Comes Marching Home」の皮肉の辛辣さにも見えることです。
他には過酷な状況下において一縷の希望に弱った手でしがみつく奴隷の図(第2集第9楽章「Sometimes I feel like a Motherless Child」、第4集第6楽章「All My Trials (Death's Lullaby)」)とかもありますし。
もはや絶望を通り越したあきらめ(第5集第3楽章「House of the Rising Sun」)とかも本当にひしひしと。
それがまた全て美しいのですが。
今持ってる曲集のうち特に気に入ってるのを挙げると(順不同):
1) 第5集第9楽章 「Firefly Song (Ojibwa)」
2) 第5集第10楽章 「The Demon Lover」
3) 第2集第8楽章 「Go Down Moses」
4) 第5集第8楽章 「Beautiful Dreamer」
5) 第4集第1楽章 「Mine Eyes Have Seen the Glory」
他にもあるんですが絞れない。ちょこちょこ今日の一曲でも追々。
5)はさっき書いた通り。あまりにも強烈な恐怖のイメージが怖い、怖いけれどだからこそ好きなんですよ。あとフクロウの鳴き真似とかオーストラリア原住民の楽器とか、歌い手の距離感とかいろいろピンポイントにツボるところが多い。
1)はもう最初聴いたときから揺るぎない第1位ですね。元々はアメリカの原住民のうちの民族の歌だそうですが、五音音階で成ってるのをクラムは上手く使ってるな、と。木琴とか木でできた打楽器の音がすてき。
2)はアメリカというよりは古い言語や船乗りとかイギリスっぽい雰囲気なんですよね。全体的に生と死の間の闇の空間を表しているようなビブラフォーンが絶妙だと思うのですよ。
3)についてもほぼ一目惚れ。元のメロディーの最初の4音がグレゴリア聖歌のDies iraeと同じということを利用してつなげたアイディアと、あとピアノとidiophone族(木琴とか鉄琴とか調音してある打楽器)のタッグが素晴らしい。弾いてて絶対気持ち良いよピアノパート!
4)が面白いのはメロディーが口笛により担当されてて、歌詞が歌い手の囁きによって担当されていること。口に指をたてて「しーっ」てしているようなものすごく繊細な音楽。これはじわじわと最近来てます。(ちなみに原曲はフォスターの有名なメロディー「夢路より」です)
全体的に見るとこのシリーズには4つの曲集に収まらなかったクラムのアメリカという国の根本のところに対する愛(白人以外も含めたアメリカの歴史、地理、文化など全部ひっくるめて)があると思います。その愛が深いからこそ前述のようなアメリカに関連する性質を嫌うところがあるんだと思います。
そして同時にアメリカの音楽を通してもっと広く世界を全体としてカバーするような音楽を書くこともしてるのかな、と。Lux Aeternaで西と東の音楽をつなぐようなところもありましたし、クラムの音楽のスタイルって特定の文化をはっきり指し示さないようなところがあったりするので。それに加えて上述打楽器の使い方だったり。
あんまりアメリカの歴史はこっちの学校でもそんなに習わないですし、文化全般もそうですが音楽に関してもあんまりアメリカのものってクラムの音楽に出会うまでは魅力を覚える事って本当に少なかったです。
でもクラムの音楽、特に「アメリカ歌曲集」を聞き始めてなんとなくそれが変わってきているようで。クラムが多角的にその文化や歴史を捉える(都合の良いように、ではなく!)のも手伝ってちょっとずつ奥深さを感じるようになってきたと思います。
そして(まず原住民の音楽や一部spiritualのように表記する文化がない音楽をなんらかの方法で残すのもそうですが)、民族音楽をまた別のやり方で作り替える、歴史や文化を表現するためにオリジナルのセッティングから新しい意味を創り上げる、というプロセスが本当に面白くて。(オーストラリアだとまだまだこういうのは無理かなあ、歴史と文化の深さ、長さからして)
これからもっとクラムのそういった音楽に出会うのが楽しみです。早く他のも手に入れたいですね!
今日の一曲: ジョージ・クラム アメリカ歌曲集「A Journey Beyond Time」より第8楽章「Go Down, Moses」
今日言及してないのも含めて迷った結果これに。
やっぱり初印象からかなり強烈な印象があったんですよ、この曲は。もうDies Iraeを聞き取ってしまう、そしてそのメロディーから死や最後の審判をほぼ自動的に連想してしまうのはクラシック音楽家の性だと思います。
先ほど第2集「A Journey Beyond Time」は全て黒人霊歌を題材にしていると書きましたが、これもまたモーゼがヘブライ人をエジプトから解放した聖書のくだりを自分たちの民族になぞらえて自由を求める気持ち、モーゼのように解き放つ人物を願う気持ちを歌った歌・・・という解釈でいいんでしょうか。
同じくクラムの「Apparition」でもあるのですが、クラムはたまに歌のパートの中で「死」にあたる言葉を強調することがあるんですよね。実際楽譜でどうなってるか分かりませんが(要チェック)。この曲でも「Or I will smite your first-born dead」(さもなければ貴方方の長子が死ぬことになる」という歌詞の「Dead」の部分だけ歌うのではなく「言う」=宣告する(テンションとしては「呪う」に近いんですよね、モーゼですが)ように差別化してあるんですよね。これもまた初めて聴くと、そして何回聴いても突き刺さる。
楽器のパートも面白い。先ほど言及があったDies Iraeの引用だけでなく、フラクタルみたいに速さを2倍、4倍にしたりカノンのようにメロディーのはじめをずらしたりしながら弾かせるidiophoneたち。最高のタッグです。
ピアノの存在がまた良いですね。歌い手にしっかりしたピッチを提供するのはもちろん、idiophoneに属する楽器は低音が強くないので(打楽器ファミリーでは大きいドラムとかが担当する部分です)、ベースラインを担当する、という役割もあり。
そして4度のハーモニーが独特の響きと緊張を醸し出して、例えばベルリオーズの「幻想交響曲」の鐘の音(Dies Iraeがここでもありますね)みたいなultimatum感がある鐘の音を奏でるのも良いです。
アメリカ歌曲集に入ってる曲って先ほども書きましたがネガティブな面、辛い面、必ずしも対面して心地良いものではない感情や側面を突きつける曲が結構ありますが、この曲もまたその向き合いづらい部分も合わせて良い音楽だな、美しいなと思える、そして愛せるのが凄いですね。リアリティも感じますし、音楽に込められたものの大切さもしかと受け止めなければいけないと感じます。
全部ひっくるめて、クラムの音楽がやっぱり大好きです。