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~名もない蛾と虹の錯乱~ 内の思いと外の色彩をつらつらと。
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The Orchestra Project 「モーツァルト 『大ミサ曲』 ハ短調」 感想
前回のエントリーに拍手ありがとうございます!
なんだか秋が来たような感じのメルボルン。まだブドウが安く買える季節です。
今日もかなり涼しかったですが行って来ました、オーケストラプロジェクトの再始動初コンサート!
今回はサウスメルボルン・タウンホールにて合唱団The Consort of Melbourneを迎えてモーツァルト「大ミサ曲」ハ短調の演奏。
この「大ミサ曲」、未完成の作品なのですが世界の様々な方によって完成されたバージョンが複数あって、今回はBenjamin-Gunnar Cohrsによる完成版の世界初演、というコンサートでした。
(ソリストはソプラノ:Kathryn Zerk, Siobhan Stagg、テノール:Timothy Reynolds、バス:Nicholas Dinopolous)

そもそもモーツァルトを目当てにコンサートに行く、というのがまずないので生でモーツァルトの音楽を聴くのもちょっと久しぶり。たまにならモーツァルトもがっつりな宗教音楽もいいですね。
今回はオケプロジェクトがどんな感じで進んでるかな、というのを兼ねて行ったのですがモーツァルトなので比較的小さいサイズのオケで、思ったよりも若めの年齢層でした。私の上の世代(メルボルンの音楽で言うところの)はあんまり居ない。

オケといえば面白かったのは楽器構成。クラリネットなし(時代的には微妙なところですね)、フルートが1人。トロンボーンは3人。割と金管ヘヴィな感じ(でも合唱が釣り合う)。
今回一番後ろに座ってたので(ホールの外から椅子を持ってくるほど満員でした!モーツァルト、初演のキーワードとPRがよかったのかな)見えなかったのですが小さいオルガンを持ってきたみたいでした。
ちなみにオルガンは去年のユースオケのトゥーランガリラでオンド・マルトノを弾いた人が弾いてました。
(そういえば予定通りオケプロジェクトが4コンサート行われたらキーボード族全員、つまりオルガン、ピアノ、ハープシコード、チェレスタ全部使われるはずだったんですね)

それにしても行ってよかった聴いてよかった。
先ほども書きましたがたまにはこういうのもいいですね。ちょうどイースターサンデーでしたし。
この曲自体についてはどこまで原稿が残っているか(プログラムにはどこがモーツァルトの死後再構築された部分か書いてあったのですが)、とか他の版はどうなってるか、とか各楽章の調がどうなってるか、とかいろいろ分析したりしないと書けないようなところが多々ありますが・・・
再構築した部分については納得の再構築でした。こういう作業って賛否両論あるイメージはありますが、未完成のまま演奏しないでおくのも勿体ない曲ですし。

全体的にかなりのボリュームなのに短く感じるような、グルメレポート的に言えばがっつりだけどもたれない、みたいな(笑)そんな感じでした。ちょこちょこモーツァルトのオペラっぽい感じのところもあって。
モーツァルトの宗教曲というとレクイエムが有名ですが、大ミサ曲はとっても健全な音楽でした(笑)というかそもそもレクイエムがいかに特殊に病んでるか、ということだと思います。
モーツァルトが書いた部分だと第4部の繰り返される「Hosannah」コーラスがものすごく気持ちよかったです。合唱とオケが一つになる感じとか、響きとか。
再構築部分だと一番最後の「Agnus Dei」~「Dona Nobis Pacem」がすごかった。この最後のセクションでハ短調に戻り濃く暗くなって大丈夫か?と思ってたらDona Nobis Pacemまでその同じ暗さ・曲調で進んで(「われらに平安を与え給え」ですからここで長調に変わるのが自然かと思ったのですよ)、そして4人のソリストの最後の登場でハ長調になったのはなんだかびっくりでしたし興味深かったです。
あんなDona Nobis Pacemは聞いたことがなかったですわー。なんか嘆願みたいなところがあって。強烈でした。

残念ながら後ろの方に座ってるとソリストの歌ってるのがはっきりは聞こえず(とくに男声)そこに関しての感想は書けないのですがオケは木管がよかったです。フルートのソロもなるほどと思いましたし、あとオーボエの活躍、再構築部分ではいいファゴットソロもあったり。
あと何が凄かったってオルガンの最後の音!一番低いドのペダル音が最後の最後だけ響き渡るのはちょっと笑っちゃいそうにもなりながら凄い好きでした。

今回はオケも小さくて知ってる人も少なかったので少し挨拶しただけで帰ってきちゃいました(あと夕方にCANTAのustreamがあったので・・・)。
次回、マーラー6番ではオケも大幅に大きくなりますし(オケのレパートリーの中でも大きい部類に入ります)、こないだ来たメールによるとまた違うメンバーが呼ばれる可能性があるので楽しみです。
もちろん自分にお呼びがかかるといいな、という楽しみもありますが。なんたってマーラー6番。

今日の初コンサートが成功に終わり、オケプロジェクトにとって今年これからがあらゆる意味で素晴らしいものになるよう祈りながら次のお知らせを待つことにします。


今日の一曲: ベンジャミン・ブリテン 「青少年のための管弦楽入門」



今日のモーツァルトは紹介できそうにないですし、前回フーガやるっていったんでフーガです。
といってもフーガだけではない曲。ちょっと特殊な例になるかな。

その名の通りこのブリテンの「青少年のための管弦楽入門」は一般に向けてオーケストラにはこんな楽器があるよ、こんな音を出すよ、合わせるとこんな働きでこんな音楽を作るよ、という紹介のために書かれた曲。
音楽に合わせて語りを入れるバージョンが演奏されることもあり、去年のABCのカウントダウンではオーストラリアでは非常に有名なBarry Humphries扮するDame Edna Everageが語りを担当しているバージョンが放送されました。面白かったー!

オケの楽器について知りたい、音を覚えたい、という場合には私はいつもプロコフィエフの「ピーターと狼」とこの曲をおすすめしていますが、ピーターと狼がストーリーメインで進むのに対してこちらは「教える」のが主目的。
語りがあってもなくても詳しくわかりやすく教えてくれます。
最初の方ではパーセルによる主題のバリエーション、という形式で弦・木管・金管・打楽器とグループ分けして、そして個々の楽器をそれだけで聞かせるセクションに移行します。
で、この個々の楽器の紹介セクションのなにがにくいって楽器をただそれぞれ聞かせるだけでなくそれぞれの楽器の性格や得意を表すようなパッセージを作曲家が書いてくれてるところ。
ちょっとおどけたフットワークの軽いクラリネット、音を重ねて共に奏でるホルン、息の長いメロディーを歌わせるオーボエ・・・
いろんな楽器の音だけでなくどんな性格か、何が得意か、というのまで学べちゃう。(このブログで常々話していることにも通じるところがあります。ただキーボード族は居ないのが残念。)

で、一通り紹介が終わってフィナーレが全オケが駆け回るフーガとなっています。
ピアノで弾くフーガよりもかなりテンポが速く声部が多く複雑な構成となっていますが、主題が入ってくるところがものすごくはっきり示されてる(食い気味にみんな弾き始める・・・といったら大げさかな)ので入ってくるところはわかりやすいと思います。ただ速い!
で、最後の方でこの曲の元となったパーセルのメロディーがフーガの下に輝くように現れて音楽が「一つになる」感じがまたよいのですよ。
(ブリテンと同じイギリスの20世紀の作曲家、ウォルトンの「スピットファイア」の前奏曲とフーガでも似たような部分ありますね。イギリス的なもんなんでしょうか)

ちょっと長さはありますが、オケの「楽器」個々とオケ全体の音、オケがどんなことができるか、というのを聞くならやっぱりこの曲をおすすめしたいと思います。
フーガとしてもその「遁走」的な性格、さらには20世紀に進化したフーガの形、ちょっと変わった例ながらもいろいろ味わえると思いますよ~

リンクしたのはラトル指揮の録音。試聴はないのですがラトルが指揮している、ということと個々の楽器のところが別々のトラックになっている、というのが大きなポイントだと思います。
さらに同じCDに他のブリテンの作品がいろいろ収録されている中最後に「Sinfonia da Requiem」が入ってるのもオイシイですね!是非こちらも!

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