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~名もない蛾と虹の錯乱~ 内の思いと外の色彩をつらつらと。
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室内楽のなにがし
一人でソロを弾くのも、大人数でわいわいオケをやるのも楽しいですが、室内楽もなかなかたのしいですよ。

室内楽、それは少人数で音楽を作ること。
(余談ですが室内楽といっても屋外で弾くこともよくありますね。とくに結婚式なんかで弦楽四重奏などを手配する人も多く、大学生はそれで一部お金を稼いだりするらしいです。たまに海風吹く桟橋とかで弾かされるらしくて楽器やら楽譜やら傷むやら飛ぶやらで大変らしいです)

一番ポピュラーなのはバイオリン2人+ビオラ+チェロの弦楽四重奏とピアノ+バイオリン+チェロのピアノ三重奏ですかね。
他にもいろいろありますがWikipediaのこのページがずっと詳しいです。
探せばいろんなコンビネーションがありますが、いい曲があるとは限りません。

あと「バイオリン・ソナタ」とか言われるものも室内楽扱いするものも多くあります。ピアノとそのソロの楽器が対等な関係なら室内楽、っていう感じでしょうかね。
ブラームスとかのソナタは「伴奏」していると室内楽してる感じに近いです。

私が一番好きなのは前日話しましたピアノ四重奏。三重奏だと3人ソリストがいてそれぞれの負担が大きいですし、五重奏だとピアノ+弦楽四重奏と二つに分かれてまう。ですがピアノ四重奏だとみんなががっちり対等にしっかり組み合った感じでいいんですよ♪それにビオラの音があると厚みが違いますし、音楽や音の複雑さも変わってきます。

今一番弾きたいのはブラームスのピアノ四重奏第3番。
第1番が有名なんですけど第3番が個人的にしっくりきますし心に近いです。
そしてブラームスにしては技巧的に無理が少ないですしね。

リハーサルとか楽しいですよ。みんなでわいわい弾いたりあーだこーだ言ったり、たまにさぼりぎみだったり。
でも4人も集まるとなかなかスケジュール調整が難しくて、本当は週1でリハーサルしたいのになかなか・・・ってこともあります。

あと室内楽って少人数で音楽を創り合うのでものすごく個人的な感情のぶつかりあいなので、室内楽でメンバーの仲が悪くなったり、けんかになったりなんてこともよくあるそうです(大学での室内楽担当の先生談)。

私が友達とブラームスのホルン三重奏をやっていたとき大学のホルンの先生のコネでかの有名なホルン奏者バリー・タックウェルにチュートリアルを受けたとき、バリーが言うにはそのブラームスのホルン三重奏をアシュケナージとパールマンとやっているとき何もかもがうまくいかなくてみんないらいらして、どこもぴったり合うところがなくて、ぴったりだったのは第3楽章のオープニングだけ(ただそこはピアノが一人で弾いているというオチです(笑))、という話を聞きました。
室内楽は人と人、心と心がかなり密接に関わりあう音楽活動なんだなあ、と実感。

室内楽のいろんな種類によりその関係性もさまざまです。
私がすごいと思うのは木管五重奏ですね。
フルートは金属製で息を直接管に吹き込む楽器、オーボエは小さな二枚のリードを震わせる木の楽器、クラリネットはリード一枚の木の楽器、ホルンは金属製で唇を震わせることで音をだす楽器、そしてファゴットは大きめのリード二枚を使って音を出す木の塊のような楽器。
全部の楽器がそれぞれ違った仕組みの楽器で(オーボエとファゴットは音の出し方では親戚ですが)、音の質ももちろんぜんぜん違って。
なのに一緒に吹くと音楽としてしっかり成り立つんですよ。
みんなが好きなことをやっているようで個人主義のようだけれど、アンサンブルとしてしっかり一体化してて。
不思議で不思議で。

私がいま執筆しているオケストーリーの箇所でも「室内楽をやるといいわよ」的なことが言われてるんですけど本当にそうですよ。同じ音楽家同士触れ合うのに最高の形だと思います。
ストーリーでもいろいろ室内楽で人間関係をいろいろ表したりできたらなーとも思います。


今日の一曲: ヨハネス・ブラームス ピアノ四重奏曲第3番 第1楽章


ブラームスが彼の最初の交響曲を書くときに「ベートーベンの第9を超えなければ意味がない」といって21年費やしたのは有名な話ですが、その同じ21年間にこの曲は書かれ、しかも同じハ短調という調なんです。
(まあ21年といってもただ単に偶然で、その間未完成で放っておかれてたらしいです。)

なんでもブラームスはゲーテの「若きウェルテルの悩み」の一シーンを参考にしたとかで。この第1楽章のオープニングはウェルテルが頭にピストルを構えるところを想定しているらしく、ピアノの最初の音はまるで悲しい銃声のよう。

ブラームスのシリアスで重厚でシリアスな性格と、子守唄やワルツに見られるような母性本能的な部分と、ベートーベンの後継者として一番に名が挙がるのがわかるような激しい悲劇的な音楽性がみんな詰まってます。
そして私がブラームスで一番好きなエレメント、すさまじいまでの内向的さもこの曲は(どの楽章でも)強いです。

ブラームスって案外でも計算的なんですよね。
たとえばこの楽章で言うとクライマックスにかけてビオラがバイオリンのメロディーを追っかける部分があるんですけど、フレーズごとにバイオリンとビオラの距離を縮めていったり。
で、クライマックスから下るところと、最初のテーマの回帰をオーバーラップしてみたり。
そういう彼なりの考えのプロセスが見えるのもなんとなく作曲家に親しみを覚えますね。

そしてビオラの使い方がうまい。
サポートとしてのビオラ(でも結構目立ってます!)はもう文句なし。ピアニスト視点からしてもこういうパートだとビオラにいてもらって心強いです。

ブラームスはいいやつです。師シューマンが精神の病に倒れた後も彼の妻クララにプラトニックな思いを抱き続いたことでも見られる内向的な性格、最初の交響曲に21年費やしたまじめで努力家な面・・・そんなブラームスがみんなこの曲には詰まっています。
普通に音楽を聴くにも本当にはずれのない作曲家で、人間的で心にものすごく近い音楽を書いていつだって(夏は多少暑いですが)聴く人の心をしっかり抱きとめてくれます。
本当はエントリーのメインでしっかりじっくり語っても(今度やりたいですね)彼の魅力については語り足りないけれど・・・

なので知らない人も知っている人もぜひともヨハネス・ブラームスをよろしくお願いします。

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