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~名もない蛾と虹の錯乱~ 内の思いと外の色彩をつらつらと。
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国立アカデミー「Viola! Sound Bite」コンサート感想
前回のエントリーに拍手ありがとうございます~

今日はTwitterで面白い記事が回ってきました。英語ですがこちら
とある指揮者がプロジェクトの一部としてクラシックの偉大な作曲家10人を挙げたのですが、それに著名なビオリストを両親とする8歳の男の子が反論として自分が偉大だと思う10人の作曲家、そして自分が好きな10人の作曲家をのリストを挙げたその実際の手紙だそうで。挿絵入り(笑)
それがなかなかしっかりしてるんですよね。自分はこう思う、というのを8歳にしてちゃんと形にしてるところとか、実際の作曲家のチョイスとか、あと「偉大」と「好き」がちゃんと別物なとことか。(私が8歳のときはまだ「出会って」なかったもんなー)
実際の手紙自体は8歳の文で英語も分かりやすいため是非詠んでみてください。子供らしさにもほっこりします。

さて、今日は昼に国立アカデミーにコンサートを聴きに行ってきました。
今週はアカデミーで「Viola!」というビオラ奏者のゲストを迎えてのコンサートやマスタークラスなどが行われる、「ビオラ祭り」が行われていて、その中のコンサートでピーターの曲が演奏されるということで今回行ってきたわけです。
本当は火曜の夜のコンサートで演奏されるはずだったのですが予定変更となり、ついでに演奏されるはずだったBrett Deanの曲がプログラムから抜かれた結果、こういうプログラムになりました;

<Viola! Sound Bite>
モーツァルト バイオリンとビオラのための二重奏 ト長調 K.423
de Jager 7台のビオラのための「Metaphors」
ベートーヴェン 弦楽三重奏 ニ長調 op. 9-2

・・・ということでモーツァルトとベートーヴェンと名前が並ぶ、という。すごいですね(笑)

以前ベースパート抜きのバンド、アンサンブルについてちょっと話をした覚えがあるのですが(Twitterの方だったかな)、このモーツァルトは正にそういうアンサンブル。こないだのピアノ四重奏曲と同じくバイオリンとビオラが寄り添うような形でデュエットを奏でて、必ずしもベースラインを担当するわけがないんですよね。で、バンドで言うリズムセクションに該当するパートもないため、リズムが比較的弱くなって、でも即興的なパッセージがより自由になる(そこんとこ今回の演奏ではよく生きてたと思います)。
当時の宮廷で(例えば弾くスペースや設備の関係で)こういうセットアップが必要なこともあったのかな、というのは想像がつきますがとっても不思議なアンサンブルですね。

ピーターの曲「Metaphors」は元々9台のビオラのための曲になるはずだったのですが最終的には7台のビオラのために書かれたようです。第1楽章は1人、第2楽章は2人、と楽章ごとにビオラが増えていってビオラだけのアンサンブルの様々な形、ビオラの様々な音色が世界を創り出していくような印象。
前後がモーツァルトとベートーヴェンということでちょっとこの現代音楽の分かりにくい感じはどう聴衆に受け止められるかなあ・・・と前半を聴いていて思ったのですが最終楽章の美しさの前には全くの杞憂でしたね。
最後の第7楽章は揺れる水の中のような6つのビオラの色彩の中にアラビア風の即興的なメロディーが奏でられる、とんでもなく美しい曲で。今描いている絵の色塗り作業はこれを聴いてやりたい!と強く思いました。(録音をもらえるようお願いしておきました~)他にも第5楽章、第6楽章でのビオラの使い方と音、色彩は本当に驚くばかり。
弦楽器をそろえるのではなく、ビオラだけを重ね、一緒に弾かせるアンサンブルのすごさに圧倒されました。元々ビオラは他の音に合わせる楽器ですが、他のアンサンブルよりもよりいっそうお互いの音を注意して聴くことが必要とされる曲でしたしね。

それから今回第1ビオラを弾いた方、昔メル響で弾いてて今はACOで弾いている方なのですが(実は一緒にお仕事したこともあるのです、今でもネットに動画が残ってるMetallephonicのコンサートで)、久しぶりに演奏を聴きました。
とっても個性的な、金属味が強いようなビオラの音で、彼のようなビオラの音は他でも聴いたことがないのですが、第1楽章のソロでは今までビオラで聞いたことのないほどの多彩な音色、表現が聴けて。びっくりしました。書き手も弾き手もこの(何かと過小評価されがちな)楽器の魅力と能力をフルに、それ以上に発揮させているんですね。

ベートーヴェンのトリオ(バイオリン・ビオラ・チェロ)もまた一つの完全な世界でしたね。
これはチェロがベースとして下を支えてるためビオラが割と自由に動けるタイプのアンサンブル。モーツァルトほどバイオリンに近くはない、もうちょっとチェロ寄り?なパート。内声サポートとしてのビオラですね。
このアンサンブルではビオラの渋い音も好きでしたが、割と小柄なチェロの女の子の働きが凄かった!こんなにアクティブでしっかり安定してると他の2人も安心して弾けるだろうなあ。

ビオラ祭り、ということでこのコンサートではビオラの色んな働き、作曲家としてのビオラの使い方、そして楽器としてのビオラの魅力がそれぞれの曲で味わえました。
モーツァルトはビオラをバイオリンと同等の能力を持った、とっても似た楽器として扱うのですが(バイオリン弾きでビオラ弾きだからかな)、そのためビオラならではの渋さとか暖かみとか歌わせ方が味わえないところがあったりするんですよね。
ピーターの「Metaphors」は(それを言葉で特定するのは難しいですが)そこここに「ああ、これはビオラならではだな、バイオリンでもチェロでも真似できないな」というビオラの能力と魅力があふれて居ましたし。
そしてベートーヴェンの三重奏には「バイオリンとチェロの間に位置する楽器」としてのユニークな役割、そして今おそらく一番「ビオラの役割」と認識されているビオラのポジションがあって。
ビオラという楽器のファンを長らくやっていますが(笑)、やっぱりこの楽器は素晴らしいな、と改めて思いました。

ピーターとは近いうち(録音のあれも含めて)会えるといいな、と思ってます。向こうから「忙しくて会えなくてごめん」と言ってくれましたし。優しい子だなあ。
今年の私の鬱は「疑心暗鬼」が目立ってる中、どうしても悪い方に考えてしまう病気の思考を打ち破ってくれている友達の存在には本当に感謝しています。


遅くなってしまったので今日の一曲はお休みです。また次回。


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