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~名もない蛾と虹の錯乱~ 内の思いと外の色彩をつらつらと。
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メル響「Enigma Variations」感想
前回のエントリーに拍手ありがとうございます~
日本に行く前に、と色々外に出ることが多く、それからピアノも新しく曲を始めたりして書きたいことも色々ありますがまずはコンサートの感想から。

今年予約したメル響のコンサートではラスト、そして同時にメルボルン国際ブラスフェスティバルのラストでもあります。
ブラスフェスティバルについては以前のエントリーでも書きましたように今年は開催が最後の年、ラストのラストで。
いつもはバンドやソリスト集まって派手なでっかい音のコンサートという形だったのが最後の最後がこういう形で正直実感がなかったり。

そんなコンサートのプログラムがこちら:
指揮者: Christopher Seaman
コダーイ・ゾルターン 「くじゃく」による変奏曲
レイフ・ヴォーン=ウィリアムス テューバ協奏曲(テューバ:Oystein Baadsvik)
(休憩)
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト ホルン協奏曲第2番(ホルン:Rodovan Vlatkovic)
エドワード・エルガー エニグマ変奏曲
アンコール: ベンジャミン・ブリテン 「青少年のための管弦楽入門」のフーガ(フィナーレ)

最初と最後が変奏曲で全体的にイギリス色が強いプログラムでした。
コダーイのみ初めて聞く曲でしたが、出会って良かったです。同時代でハンガリー中心に民族音楽を専門としていたり何かとバルトークとコダーイは一緒の括りにされますが作風は違うな、と改めて。(もちろん今年弾いた「ハーリ・ヤーノシュ」もそうですが)
ハンガリーの景色や歴史を強く感じるような曲でしたね。あとちょっと中国っぽいところがあるパートもあって、フン族=匈奴説を思ってにやりしたり。あとコールアングレのソロとか、木管楽器の活躍がすごかったです。

ヴォーン=ウィリアムスのテューバ協奏曲では先日リサイタルで聞いたOysteinの素晴らしい演奏が聴けました。
第1,3楽章のテンポが持ってる録音よりも速いのはやっぱり彼の超人的な技巧だからなせる技で。彼の演奏は毎回「テューバってこんな器用な楽器だったか!?」と思わせるような、全てがびっくりするような表現の幅広さと自然さ。
ところどころのトリルとかビブラートとか、あと第2楽章で豊かに歌うテューバが美しかったです。

モーツァルトのホルン協奏曲は4つあるうち第2,3,4番はキーも同じで曲調も(奏者がこんがらがるほど)似ているのですが、そんな中どうやら第2番がメル響のプログラムからあぶれてしまったようで今回が初演とのこと(!)。
私にとっては大学で友達がソロやって親しみが深い曲なのでちょっと意外でした。
今回のソリストの方はクロアチアのホルン奏者で、初めて聞く方だったのですが(リサイタルが生配信されなかったのです!)、面白い音でした。前述ソロを弾いた友達と似た、爆発するようなエッジを持った音ながら暖かい柔らかさがあって、そのバランスが音楽に応じて変わるのがまた面白く。

ホルン奏者には有名な話だそうですが(母によると)、モーツァルトは友達にホルン奏者がいて、その友人のために協奏曲を書いたそうなのですが、モーツァルトは書き上げたスコアをばらばらにして拾わせたり、楽譜にいろんな変な書き込みをしたりして意地悪していたそうです。その意地悪は書かれた音楽(ホルンのソロパート)にも及んでいて、速い音階パッセージとか今の楽器でも難しいのに当時のナチュラルホルン(バルブなし)では本当に恐ろしかったものと思われます。

そしてエニグマ変奏曲。真ん中ほどに位置している第9変奏「ニムロッド」が有名なのもあってオーストラリアではやっぱり愛されている曲ですね。
オケ全体だとちょっとゆるいというか、ちょっと演奏やアンサンブルで納得いかなかったりするところはありましたがチェロがすごかったですね。歌わせるところ、主役になるところは大々的に前にでて歌わせるのが気持ち良かった!やっぱチェロは楽しいですね(笑)
それからなんといってもこの曲はティンパニが花形なんですね!ものすごくかっこよかったですよ!聴くのもそうですが奏者の姿を見るのもまた格好いい(ちなみにメル響のティンパニ奏者は女性です)。

このプログラムでまさかアンコールがあるとは思わなかったのですが上記のとおりあったんですよ。
エニグマの最後も盛り上がるのですが、このブリテンが入ったことでさらに爽快なエンディングになりましたし、後から振り返ってみるとコンサート全体のイギリス色の印象が強まるというか。
ただメインのプログラムよりもこのブリテンの方が演奏難易度が高いというか、リハーサルに労力を要するような・・・特にハープのパートに関して言うとメインのプログラムの10倍難しい、という点についてはつっこんでおかないといけないと思いまして。
このフーガではものすごいスピードの主題で各楽器が入ってくるのですがハープの登場のかっこよさはもちろん、コントラバスが入ってきたときがすごかったです。地響きを立てて疾走している!(笑)驚きであんぐりしそうだったり笑いそうになったり。

楽しいコンサートでした。特に金管のソリストの演奏は聴けて良かった!と思います。先ほども書きましたが、’なんだか普通にメル響のコンサートで「ブラスフェスティバルがこれで終わり」という感じは薄くて。
ブラスフェスティバルは10年続いてきましたが、金管友達ができてその存在を知ってからは毎年楽しみなイベントになっていました。毎年1つはコンサートに行って演奏を楽しむだけでなく、自分のルーツを確認したり友達と遊んだり、金管奏者ならではの場の雰囲気などを味わったりして。毎年楽しみでした。
奏者のみなさん、そして色々教えてくれたり一緒に遊んだりしてくれた友達にも感謝していますが、なによりも10年マスタークラスやコンサートなどのプログラム、コンクールなどを参加者にとって有意義なものにするため世界で一流の奏者を呼んだりフェスティバルの質を維持してくれた運営の皆さんには本当に感謝しています。
関係者・奏者・参加者などいろんなところから復活を望む声が上がっていて、何らかの形でなにか起こるのではないかとは思ってますが・・・とりあえずのところは指をクロスしています。それがコンサート一つだとしても再開したらまた行きたいです。


今日の一曲: エドワード・エルガー エニグマ変奏曲 第12・13変奏曲



これまで紹介してこなかったので今日はエニグマを。
自分自身そんなに思い入れも強くなく(弾いたことないんですよねー)、それからここで紹介するときにどこでくぎるのかが難しいので紹介してこなかった、という経緯なんですが。

そもそもこのエニグマ変奏曲には「エニグマ」=謎が2つあるんです。
一つは各変奏曲につけられている副題やイニシャル。これはエルガーの友人たちを指していて、それぞれの変奏曲が対象人物の特徴や性格などを表しているのです(クラムのマクロコスモス第1,2巻も似たようなシステム)。
もう一つはこの変奏曲のテーマ(主題)。エルガーはこの主題は「ある主題のバリエーションであるメロディー」と言っていたそうなのですが、実際の元ネタについては推測が飛び交うばかりで答えが出ていないそうです。

第12変奏曲はチェロ弾きの友人に捧げられ、チェロのソロ、そしてセクション全体がものすごく活躍します。ロマンチックで哀愁を帯びたメロディーを高らかに奏でる喜び!チェロ弾きとしてはyummyな瞬間ですよ。
(他にも主題とかちょこちょこチェロがメロディーだったりカウンターメロディーだったりを歌わせる部分があって、さすがはあのチェロ協奏曲を書いたエルガーだなと。結構イギリス音楽ってチェリストにはおいしいんですよ)

そして第13変奏曲を捧げられた相手はエルガーの友人(女性)で、なんとオーストラリアに渡った人なんだそう。
その船旅を表すのにこの変奏曲には「海」「船旅」を表す曲が引用されているとプログラムに書いてありました。
光と影のコントラスト、その表現のイギリス風味も好きですが、やっぱりイギリスの海関係音楽はとにかく愛しいです。どこか暗さがある、オーストラリアでの太陽にあふれた海とは違うイメージです。

先ほど書いたように第9変奏曲の「ニムロッド」が有名でそれだけで弾かれたり、それが終わったらちょっと聴き手の気が抜けるところが若干あるんではないかと思ってるのですが今回紹介したこの2つの変奏曲、そしてその後のフィナーレもまた素晴らしい音楽ですので是非最後までしっかり聴いてくださいね!

そしてやっぱりイギリス音楽はイギリスのオケで!エルガーの他の作品、さらにヴォーン=ウィリアムスの作品も一緒に楽しめる録音をリンク。同じ国の違う作曲家の音楽の似ているところ(=お国柄)、そして違うところ(個々の作曲家のスタイル)を聞き比べてみるのもおすすめの聴き方です。

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