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前回のエントリーに拍手ありがとうございます~
今回は一昨日の続き、ラフマニノフの後期の作品について。
前回から後期後期言ってますが私がラフマニノフの後期の作品というときは作品番号でいうとop.33以降、年で言えば1911年くらいからですね。
op.33=ピアノのための練習曲集「音の絵」の最初のセットなのですが、この曲集は作品番号一つ前の、同じくピアノのための前奏曲集とは(作曲時期が近いにもかかわらず)ちょっと趣旨や作曲スタイルが違うところがあったり。
そこから有名な「ヴォカリーズ」、合唱のための「徹夜祷(Vespers)」、合唱とオケのための大規模作品「鐘」(フィギュアで有名になったのとは別曲。でもこちらも素晴しい曲で、ラフマニノフの作品の中でも大好きな一曲です)など、主に歌曲・合唱曲を挟んで、ラフマニノフはop.39にピアノのための練習曲集「音の絵」の2つめのセットを書いています。作曲したのは1916年、最初のセットの5年後でロシア革命の1年前。
今私が弾いてるのもこのop.39の練習曲からなのです。さすがラフマニノフは巨大な手と超絶技巧の持ち主で演奏活動の割合も大きかっただけあって、「練習曲」は技巧的にかなり難しいです。
練習曲、というのは単純に技巧を鍛えるもの、技巧を披露するものではなく、これくらいの時代になると技巧をもってより深く鮮明な音楽の表現をすることに重きを置くようになっていて。
なので技巧の難しさはもっとさりげない形で現れるようになりましたし、色んなテクニックをさりげない形で組み込んでるため、練習曲をみて「これはこういうテクニックを磨くための曲だ」とはっきり言えないようになって。
ラフマニノフの練習曲もそんな感じです。
で、練習曲「音の絵」の中でもop.39のセットは前回書いたような、ラフマニノフの後期の作品の特徴が特に濃く現れているのが面白いと思うのです。
構成は以下の通り:
第1番 ヘ短調
第2番 イ短調 (海とカモメ)
第3番 嬰ヘ短調
第4番 ロ短調
第5番 変ホ短調
第6番 イ短調 (赤ずきんと狼)
第7番 ハ短調
第8番 ニ短調
第9番 ニ長調
・・・お気づきでしょうか、最後以外全部短調。ただし、だからといって全体的にものすごーく暗いわけでは無いですし、最後の唯一長調の曲も(色彩に関しては)底抜けて明るいわけでもなく。
それぞれの曲がユニークなキャラクターを持っていて、さらに独特の渋めの色彩を豊かに展開しています。
そしてもう一つ、一部カッコでタイトルが書いてある曲がありますが、「音の絵」というだけあってラフマニノフはそれぞれの曲に絵画のようなイメージを関連させているようです。その度合いは曲によって変わるようで、上記のようにはっきりイメージが語られているものもあれば、ちょこちょこっとヒントだけが語られているものもあり。
それからこの曲集を通じてグレゴリオ聖歌の「怒りの日(Dies Irae)のメロディー(最初の四音:ド・シ・ド・ラ)が繰り返し現れる、という話もあります。ラフマニノフはどうもこのメロディーが好きだった、というか若干取り憑かれてた感があって、オケ曲「死の島」を始め色んなところでこの音型を何度も何度も使ってるんですよね。なのでそれを探してみるのも面白いです。
このセットだと初期の作品を思わせる情熱とダイナミックさをたたえた第5番、そして逃げる赤ずきん・追う狼の描写が映像的な第6番が特に人気が高いですね。
私が弾いてるのは自分が特に好きな第4,7,8番。第4番はロシアらしい土臭さとちょっと機械的なメカニズム、フレーズに合わせて変わる拍子が魅力的。第7番はラフマニノフらしい暗さとロシアの教会の鐘、ちょっと地味ながらものすごく深く濃いものがあるのが良いです。第8番は全然ラフマニノフらしくない、むしろフランス音楽に近いハーモニーとサウンド。
(ちなみにレスピーギが第2,6,7,9番と最初のセットの1曲をオケ編曲してるのも面白いですよ-)
練習曲「音の絵」の後もラフマニノフは作曲活動を続けています。演奏用の編曲も多いのですが、有名なところだと「パガニーニの主題による狂詩曲」、それから交響曲第3番(隠れがちですが愛すべき曲です)、そしてラフマニノフ自身が「最後の閃光」と話した最後の作品「交響的舞曲」(大好き!)、と素晴らしい作品を残しています。
ラフマニノフは作品数が多くないのでつい扱うのを避けてしまうのですがこれからもちゃんと良い曲を紹介していきたいです。
今日の一曲: セルゲイ・ラフマニノフ 練習曲「音の絵」 op.39-7
今回のエントリー、メインの部分は昨日書き終えて「今日の一曲」の部分を今書いているのですが、今日は昼にこの曲を練習してて「あーなんか諸々この曲とか他の曲の魅力がちゃんと書けてないなー」とちょっともどかしく思うことがあり。
やっぱり好きな曲に関してはいくら言葉を費やしても足りないし、納得がいかないものだなあ、と。
ラフマニノフの練習曲の中でもちょっと遅れて好きになったこの曲。地味だ地味だと言ってるop.39のセットの中でも輪をかけて渋い曲です。
でも一度その中にラフマニノフらしさを見つけて、その魅力に取り憑かれたら一生ものです。(そういう意味でも、そして色彩や曲調もホルストの「惑星」の「土星」にかなり似てるところはありますね)
レスピーギのオケ編曲にはこの曲が入ってるんです(「葬送行進曲」というタイトルが付けられています)。イタリア人からみるとこの曲の色調ってもしかしたらものすごく異質なんじゃないかなあ・・・(実際の編曲の中だとどっちかというとうまくいかなかった感がなきにしもあらず)
とにかくこの土臭い陰鬱さ、そしてどことなく漂う宗教的なフレーバーがロシアらしくて素晴らしい。ハ短調→変ホ短調という闇の深まりは最高ですし、そこからクライマックスで変イ長調の鐘が響くのもまたロシアらしい。染み入ります。
同時期の合唱+オケのための「鐘」の第4楽章を思わせますね(あと光の現れ方はマーラーっぽいところもある)。なんかどこまでもピアノなんですが、オケの響きに通じるものもあり。
ものすごく、なによりもラフマニノフ。これこそがラフマニノフだと私は思うんです(あくまでも個人的な感想ですが)。
ちなみにこの曲も大学時代に借りたアシュケナージの演奏をずっと聞いてるのですがもっともっと渋ーい暗ーい演奏を見つけたいなーと思ってます。自分で自分が望むように弾けるようになるのも大切ですが、聴くための録音ももう一つ欲しいなー・・・
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今回は一昨日の続き、ラフマニノフの後期の作品について。
前回から後期後期言ってますが私がラフマニノフの後期の作品というときは作品番号でいうとop.33以降、年で言えば1911年くらいからですね。
op.33=ピアノのための練習曲集「音の絵」の最初のセットなのですが、この曲集は作品番号一つ前の、同じくピアノのための前奏曲集とは(作曲時期が近いにもかかわらず)ちょっと趣旨や作曲スタイルが違うところがあったり。
そこから有名な「ヴォカリーズ」、合唱のための「徹夜祷(Vespers)」、合唱とオケのための大規模作品「鐘」(フィギュアで有名になったのとは別曲。でもこちらも素晴しい曲で、ラフマニノフの作品の中でも大好きな一曲です)など、主に歌曲・合唱曲を挟んで、ラフマニノフはop.39にピアノのための練習曲集「音の絵」の2つめのセットを書いています。作曲したのは1916年、最初のセットの5年後でロシア革命の1年前。
今私が弾いてるのもこのop.39の練習曲からなのです。さすがラフマニノフは巨大な手と超絶技巧の持ち主で演奏活動の割合も大きかっただけあって、「練習曲」は技巧的にかなり難しいです。
練習曲、というのは単純に技巧を鍛えるもの、技巧を披露するものではなく、これくらいの時代になると技巧をもってより深く鮮明な音楽の表現をすることに重きを置くようになっていて。
なので技巧の難しさはもっとさりげない形で現れるようになりましたし、色んなテクニックをさりげない形で組み込んでるため、練習曲をみて「これはこういうテクニックを磨くための曲だ」とはっきり言えないようになって。
ラフマニノフの練習曲もそんな感じです。
で、練習曲「音の絵」の中でもop.39のセットは前回書いたような、ラフマニノフの後期の作品の特徴が特に濃く現れているのが面白いと思うのです。
構成は以下の通り:
第1番 ヘ短調
第2番 イ短調 (海とカモメ)
第3番 嬰ヘ短調
第4番 ロ短調
第5番 変ホ短調
第6番 イ短調 (赤ずきんと狼)
第7番 ハ短調
第8番 ニ短調
第9番 ニ長調
・・・お気づきでしょうか、最後以外全部短調。ただし、だからといって全体的にものすごーく暗いわけでは無いですし、最後の唯一長調の曲も(色彩に関しては)底抜けて明るいわけでもなく。
それぞれの曲がユニークなキャラクターを持っていて、さらに独特の渋めの色彩を豊かに展開しています。
そしてもう一つ、一部カッコでタイトルが書いてある曲がありますが、「音の絵」というだけあってラフマニノフはそれぞれの曲に絵画のようなイメージを関連させているようです。その度合いは曲によって変わるようで、上記のようにはっきりイメージが語られているものもあれば、ちょこちょこっとヒントだけが語られているものもあり。
それからこの曲集を通じてグレゴリオ聖歌の「怒りの日(Dies Irae)のメロディー(最初の四音:ド・シ・ド・ラ)が繰り返し現れる、という話もあります。ラフマニノフはどうもこのメロディーが好きだった、というか若干取り憑かれてた感があって、オケ曲「死の島」を始め色んなところでこの音型を何度も何度も使ってるんですよね。なのでそれを探してみるのも面白いです。
このセットだと初期の作品を思わせる情熱とダイナミックさをたたえた第5番、そして逃げる赤ずきん・追う狼の描写が映像的な第6番が特に人気が高いですね。
私が弾いてるのは自分が特に好きな第4,7,8番。第4番はロシアらしい土臭さとちょっと機械的なメカニズム、フレーズに合わせて変わる拍子が魅力的。第7番はラフマニノフらしい暗さとロシアの教会の鐘、ちょっと地味ながらものすごく深く濃いものがあるのが良いです。第8番は全然ラフマニノフらしくない、むしろフランス音楽に近いハーモニーとサウンド。
(ちなみにレスピーギが第2,6,7,9番と最初のセットの1曲をオケ編曲してるのも面白いですよ-)
練習曲「音の絵」の後もラフマニノフは作曲活動を続けています。演奏用の編曲も多いのですが、有名なところだと「パガニーニの主題による狂詩曲」、それから交響曲第3番(隠れがちですが愛すべき曲です)、そしてラフマニノフ自身が「最後の閃光」と話した最後の作品「交響的舞曲」(大好き!)、と素晴らしい作品を残しています。
ラフマニノフは作品数が多くないのでつい扱うのを避けてしまうのですがこれからもちゃんと良い曲を紹介していきたいです。
今日の一曲: セルゲイ・ラフマニノフ 練習曲「音の絵」 op.39-7
今回のエントリー、メインの部分は昨日書き終えて「今日の一曲」の部分を今書いているのですが、今日は昼にこの曲を練習してて「あーなんか諸々この曲とか他の曲の魅力がちゃんと書けてないなー」とちょっともどかしく思うことがあり。
やっぱり好きな曲に関してはいくら言葉を費やしても足りないし、納得がいかないものだなあ、と。
ラフマニノフの練習曲の中でもちょっと遅れて好きになったこの曲。地味だ地味だと言ってるop.39のセットの中でも輪をかけて渋い曲です。
でも一度その中にラフマニノフらしさを見つけて、その魅力に取り憑かれたら一生ものです。(そういう意味でも、そして色彩や曲調もホルストの「惑星」の「土星」にかなり似てるところはありますね)
レスピーギのオケ編曲にはこの曲が入ってるんです(「葬送行進曲」というタイトルが付けられています)。イタリア人からみるとこの曲の色調ってもしかしたらものすごく異質なんじゃないかなあ・・・(実際の編曲の中だとどっちかというとうまくいかなかった感がなきにしもあらず)
とにかくこの土臭い陰鬱さ、そしてどことなく漂う宗教的なフレーバーがロシアらしくて素晴らしい。ハ短調→変ホ短調という闇の深まりは最高ですし、そこからクライマックスで変イ長調の鐘が響くのもまたロシアらしい。染み入ります。
同時期の合唱+オケのための「鐘」の第4楽章を思わせますね(あと光の現れ方はマーラーっぽいところもある)。なんかどこまでもピアノなんですが、オケの響きに通じるものもあり。
ものすごく、なによりもラフマニノフ。これこそがラフマニノフだと私は思うんです(あくまでも個人的な感想ですが)。
ちなみにこの曲も大学時代に借りたアシュケナージの演奏をずっと聞いてるのですがもっともっと渋ーい暗ーい演奏を見つけたいなーと思ってます。自分で自分が望むように弾けるようになるのも大切ですが、聴くための録音ももう一つ欲しいなー・・・