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前回のエントリーに拍手どうもです~
3月になってから暑い日が続いて夕方も暖かい中Melbourne Recital Centreにコンサートを聴きに行ってきました。
聴きに行ったのがクロノス・カルテットというアンサンブルで。アメリカをベースとしている弦楽四重奏で、ジョージ・クラムの「Black Angels」を聴いたことがきっかけで結成された、現代音楽を中心に幅広いジャンルの音楽を演奏するグループです。
今回のコンサートも現代音楽から民族音楽から映画音楽、ロックまで様々な音楽が集まったプログラムで、電気で増幅した弦楽四重奏に加えて録音を流しながら弾いたり、照明、音響などを駆使したパフォーマンス。
プログラムは先ほどのリンク先に任せちゃいましたが、ほとんど知らない曲です。2曲のアンコールも合わせて知ってる曲ワーグナーだけですからね。全部の曲がメルボルン初演かオーストラリア初演、そしてすべての曲がクロノスのために作曲or編曲されています。それもすごいですよね。
(そういえばプログラムには作曲家・作品のことだけでなく編曲者の紹介にもかなり力が入っていました)
クロノス・カルテットのことは弦楽四重奏のレパートリーについての本でクラムのBlack Angelsと共に知って、大学1年くらい?まだ現代音楽にはまってない時に来豪したのを聴きに行って。その時はペンデレツキの四重奏曲を聴いたのが記憶に残ってます。
その前回聴いた演奏はHamer Hallという大きなホールだったのですが、今回はMelbourne Recital Centreの大きいホール、Elisabeth Murdoch Hallというもちょっと観客とステージが近い場所で、ちょろっと曲の紹介なんかも入ったりして奏者が近く感じたコンサートでしたね。
演奏はとにかくすごかった。独特の解釈、表現の幅や精密さ、パワーや繊細さ、アンサンブルのチームワーク・・・なんと行っても様々な国(民族音楽だとポーランド、ベトナム、アンコールのスウェーデンとか)の様々なスタイルの音楽に新しいエネルギーと新しい命を吹き込むのがすごい。弦楽四重奏だけどそれ以上、音楽だけどそれ以上のものがあるんですよね。
今回たくさん新しい曲と出会いましたが特に好きだったのが最初の「Aheym」、次の「Eremikophobia」、それからチェロのソロがどストライクだった「Sim Sholom」、そしてアンコール前のCafe Tacuba「12/12」、アンコール1曲目のスウェーデン民謡かな。
Eremikophobiaは新しくてまだ録音がないのが悔やまれる。(他の曲はいくつかYoutubeでも見つかりましたしiTunes storeでクロノスの録音色々ありますのでできるだけ入手したいです。さすがに一回聴いただけでは勿体ないしまだ色々把握できてないところががが)
「12/12」はメキシコのCafe Tacubaというメキシコのロックバンド(エスニックフレーバーが結構入ってるみたいです)の曲なのですが、クロノスのバージョンだけでなくCafe Tacubaの楽曲も気になります。
そういえばリンク先のプログラムとは曲順がちょっと違ってて、実際のプログラムを見たときに「Sim Shalom」がポーランドのユダヤ文化の歌のような祈りの曲なのに続いてワーグナーという曲順にものすごく驚いたのですが(ワーグナーとユダヤ民族との関連はここでは省略。きっと前書いてる)、第1バイオリンのおじさんが曲間MCで「今気づいたんだけど(こういう2曲が並ぶのは)世界初じゃないかな」と。確かに意識的にはなかなか・・・だよなあ。不思議な巡り合わせ。
それからチェロ奏者の方(今後のスケジュールを調べてたら5月でこの方は交代するとのことでした)の持ってるチェロがうちのチェロにそっくりでしたよ。胴が細めなところとか、色とか、あとD弦のかすれ具合とかC弦の深みとか。びっくり。
演奏のかっこよさももちろんなのですが(毎曲終わりに「かっこいい・・・」と口から出るほどです)、今回クロノス・カルテットの演奏を聴いて彼らの作る音楽が自分が今理想としている音楽作りにものすごく近いんじゃないかな、と思いました。
クラムを始め現代音楽、民族音楽周りとかの好きなジャンルを専門としているということだけじゃなくて、現代音楽を軸として新しい音楽にもオープンで、ゆるぎない独特の解釈と表現で演奏して、しかもクラシック(現代音楽)での技巧や表現をひとつも妥協することなく他のジャンルでも生かして、ジャンル関係なく音楽作りができたらな-・・・と。
前回彼らの演奏を聴いたときから自分も音楽家のはしくれとしてちょっとは成長した・・・というこ
とだといいな。
とにかく昨日の演奏を聴いて本当にその理想を実感して、音楽に打ち込む気持ちを新たにできて。そういう意味でも行って良かったです。なによりものすごい演奏だったし、素晴らしい体験をしました。最高のコンサートの一つに入りました。
クロノス・カルテット、また近いうちにメルボルンに演奏に来ると良いな。やっぱり生演奏ならではの楽しみもたくさんあるので。聴く機会があれば是非聴きに行ってみてください。
今日の一曲: JG Thirlwell 「Eremikophobia」
(録音はまだないです)
Eremikophobia=砂・砂漠に対する恐怖という意味です。これを調べたときからどうしても頭から離れてないイメージがあって。
藤崎竜版の「封神演義」で仙人達が全面戦争する場面があるのですが、その中で張天君が『紅砂陣』という空間を作り出して主人公サイドの天才道士・楊ゼンを苦しめるくだりがあって。
紅砂陣というのは一面砂漠の空間で、その主である張天君がその砂および空間を司るルールを自由にすることができる。外に出れない、というだけでなくその中で張天君以外の存在はすべて急速に風化してしまう一種の砂地獄。
広がる空間に砂ばかり、砂と張天君を相手にあがき、風化という緩慢な死に追われ、そして楊ゼンはここで内に押し込めた本当の自分の姿を張天君に見透かされ突きつけられる、という何層にもなる戦いが起こる場面なのですが。
その砂漠の中の孤独感とか、徐々に乾いて風化していく感とか、独特の時間の流れみたいなものはこのEremikophobiaにも現れています。
弦楽四重奏だけでなく実際の砂漠の音、ただの砂漠の音ではなく砂が砂丘の上を動くときに起こる低周波の音がスピーカーから聞こえてきます。
それに合わせてまずはビオラが入って弦楽四重奏が砂漠と共に人間のものではない音楽を奏でます。
この砂漠の音を録ったというのがオマーンの砂漠とのことなのですが、途中から音楽が中東風になります。このセクションがものすごく好きでした。4人ユニゾンで同じメロディーを奏でるのですが、力強くてエキゾチックな旋律は中東のスタイルなんだけれど、アーティキュレーションとかのスタイルが妙に西洋風なところもあって、それが逆にかっこいい。
最後の穏やかにうねるようなスローな和音のセクションも素敵でした。
録音の使い方とかだと割とオーソドックスな現代音楽といえばそうなのですが今の時代の弦楽四重奏曲のレパートリーとして光る一曲だと思います。是非クロノスには録音していただきたいです。絶対買う。
3月になってから暑い日が続いて夕方も暖かい中Melbourne Recital Centreにコンサートを聴きに行ってきました。
聴きに行ったのがクロノス・カルテットというアンサンブルで。アメリカをベースとしている弦楽四重奏で、ジョージ・クラムの「Black Angels」を聴いたことがきっかけで結成された、現代音楽を中心に幅広いジャンルの音楽を演奏するグループです。
今回のコンサートも現代音楽から民族音楽から映画音楽、ロックまで様々な音楽が集まったプログラムで、電気で増幅した弦楽四重奏に加えて録音を流しながら弾いたり、照明、音響などを駆使したパフォーマンス。
プログラムは先ほどのリンク先に任せちゃいましたが、ほとんど知らない曲です。2曲のアンコールも合わせて知ってる曲ワーグナーだけですからね。全部の曲がメルボルン初演かオーストラリア初演、そしてすべての曲がクロノスのために作曲or編曲されています。それもすごいですよね。
(そういえばプログラムには作曲家・作品のことだけでなく編曲者の紹介にもかなり力が入っていました)
クロノス・カルテットのことは弦楽四重奏のレパートリーについての本でクラムのBlack Angelsと共に知って、大学1年くらい?まだ現代音楽にはまってない時に来豪したのを聴きに行って。その時はペンデレツキの四重奏曲を聴いたのが記憶に残ってます。
その前回聴いた演奏はHamer Hallという大きなホールだったのですが、今回はMelbourne Recital Centreの大きいホール、Elisabeth Murdoch Hallというもちょっと観客とステージが近い場所で、ちょろっと曲の紹介なんかも入ったりして奏者が近く感じたコンサートでしたね。
演奏はとにかくすごかった。独特の解釈、表現の幅や精密さ、パワーや繊細さ、アンサンブルのチームワーク・・・なんと行っても様々な国(民族音楽だとポーランド、ベトナム、アンコールのスウェーデンとか)の様々なスタイルの音楽に新しいエネルギーと新しい命を吹き込むのがすごい。弦楽四重奏だけどそれ以上、音楽だけどそれ以上のものがあるんですよね。
今回たくさん新しい曲と出会いましたが特に好きだったのが最初の「Aheym」、次の「Eremikophobia」、それからチェロのソロがどストライクだった「Sim Sholom」、そしてアンコール前のCafe Tacuba「12/12」、アンコール1曲目のスウェーデン民謡かな。
Eremikophobiaは新しくてまだ録音がないのが悔やまれる。(他の曲はいくつかYoutubeでも見つかりましたしiTunes storeでクロノスの録音色々ありますのでできるだけ入手したいです。さすがに一回聴いただけでは勿体ないしまだ色々把握できてないところががが)
「12/12」はメキシコのCafe Tacubaというメキシコのロックバンド(エスニックフレーバーが結構入ってるみたいです)の曲なのですが、クロノスのバージョンだけでなくCafe Tacubaの楽曲も気になります。
そういえばリンク先のプログラムとは曲順がちょっと違ってて、実際のプログラムを見たときに「Sim Shalom」がポーランドのユダヤ文化の歌のような祈りの曲なのに続いてワーグナーという曲順にものすごく驚いたのですが(ワーグナーとユダヤ民族との関連はここでは省略。きっと前書いてる)、第1バイオリンのおじさんが曲間MCで「今気づいたんだけど(こういう2曲が並ぶのは)世界初じゃないかな」と。確かに意識的にはなかなか・・・だよなあ。不思議な巡り合わせ。
それからチェロ奏者の方(今後のスケジュールを調べてたら5月でこの方は交代するとのことでした)の持ってるチェロがうちのチェロにそっくりでしたよ。胴が細めなところとか、色とか、あとD弦のかすれ具合とかC弦の深みとか。びっくり。
演奏のかっこよさももちろんなのですが(毎曲終わりに「かっこいい・・・」と口から出るほどです)、今回クロノス・カルテットの演奏を聴いて彼らの作る音楽が自分が今理想としている音楽作りにものすごく近いんじゃないかな、と思いました。
クラムを始め現代音楽、民族音楽周りとかの好きなジャンルを専門としているということだけじゃなくて、現代音楽を軸として新しい音楽にもオープンで、ゆるぎない独特の解釈と表現で演奏して、しかもクラシック(現代音楽)での技巧や表現をひとつも妥協することなく他のジャンルでも生かして、ジャンル関係なく音楽作りができたらな-・・・と。
前回彼らの演奏を聴いたときから自分も音楽家のはしくれとしてちょっとは成長した・・・というこ
とだといいな。
とにかく昨日の演奏を聴いて本当にその理想を実感して、音楽に打ち込む気持ちを新たにできて。そういう意味でも行って良かったです。なによりものすごい演奏だったし、素晴らしい体験をしました。最高のコンサートの一つに入りました。
クロノス・カルテット、また近いうちにメルボルンに演奏に来ると良いな。やっぱり生演奏ならではの楽しみもたくさんあるので。聴く機会があれば是非聴きに行ってみてください。
今日の一曲: JG Thirlwell 「Eremikophobia」
(録音はまだないです)
Eremikophobia=砂・砂漠に対する恐怖という意味です。これを調べたときからどうしても頭から離れてないイメージがあって。
藤崎竜版の「封神演義」で仙人達が全面戦争する場面があるのですが、その中で張天君が『紅砂陣』という空間を作り出して主人公サイドの天才道士・楊ゼンを苦しめるくだりがあって。
紅砂陣というのは一面砂漠の空間で、その主である張天君がその砂および空間を司るルールを自由にすることができる。外に出れない、というだけでなくその中で張天君以外の存在はすべて急速に風化してしまう一種の砂地獄。
広がる空間に砂ばかり、砂と張天君を相手にあがき、風化という緩慢な死に追われ、そして楊ゼンはここで内に押し込めた本当の自分の姿を張天君に見透かされ突きつけられる、という何層にもなる戦いが起こる場面なのですが。
その砂漠の中の孤独感とか、徐々に乾いて風化していく感とか、独特の時間の流れみたいなものはこのEremikophobiaにも現れています。
弦楽四重奏だけでなく実際の砂漠の音、ただの砂漠の音ではなく砂が砂丘の上を動くときに起こる低周波の音がスピーカーから聞こえてきます。
それに合わせてまずはビオラが入って弦楽四重奏が砂漠と共に人間のものではない音楽を奏でます。
この砂漠の音を録ったというのがオマーンの砂漠とのことなのですが、途中から音楽が中東風になります。このセクションがものすごく好きでした。4人ユニゾンで同じメロディーを奏でるのですが、力強くてエキゾチックな旋律は中東のスタイルなんだけれど、アーティキュレーションとかのスタイルが妙に西洋風なところもあって、それが逆にかっこいい。
最後の穏やかにうねるようなスローな和音のセクションも素敵でした。
録音の使い方とかだと割とオーソドックスな現代音楽といえばそうなのですが今の時代の弦楽四重奏曲のレパートリーとして光る一曲だと思います。是非クロノスには録音していただきたいです。絶対買う。
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