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~名もない蛾と虹の錯乱~ 内の思いと外の色彩をつらつらと。
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コンサート「Simone Young Conducts Mahler 5」感想
前回のエントリーに拍手ありがとうございます。
ソウルシルバーすっかり止まっています(汗)今日辺り進めようかな。

昨日はメル響のコンサートに行ってきました。
マーラーの交響曲は一年に一度は生で聴きたいと思ってるのでこれははずせない!
しかもBrett Deanの新曲(オーストラリア初演)もある、ということでこれも楽しみでした。
プログラムは以下の通り:

指揮者:Simone Young
Brett Dean バリトン、合唱とオーケストラのための「Last Days of Socrates」(仮邦題:ソクラテスの最後の日々)
(Peter Coleman-Wright:バリトン、Timothy Reynolds:テノール、Melbourne Symphony Orchestra Chorus)
グスタフ・マーラー 交響曲第5番

「ソクラテスの最後の日々」、素晴らしかったです。
題の通りソクラテスの裁判から死までを描いた作品で、テキストはGraeme William Ellisの英語のリブレットを使っています。
前半がっつり使う大規模作品。女神アテナへの呼びかけ、ソクラテスの裁判、そして牢での処刑と3つのシーンに分かれています。ソクラテスはバリトン、処刑者としてテノールソロがちょろっと出てきて、あとは個々のキャラクターも集団も合唱が担当する、というちょっと変わった構成。
一人のキャラクターを合唱で表す、というのはなかなかないですよねえ。

ということで題材は(音楽より他の意味で)古典のなかの古典ですが、音楽はBrett Deanの現代的で複雑なスタイルそのまま。
裁判で人々が荒ぶる様子を表す不規則で熱狂的なリズムにはオーストラリア(となぜかダンスミュージック)を感じました。あれはすごかった。
ものすごく抽象的、と思いきや白鳥の歌の話が出てくるところでオーボエのソロがあったり(オーボエは裏声で吹くことも多かったです)、鳥の声を真似たピッコロソロがあったり。
一番そういう意味で凄かったのは採決をとるシーン。熱狂の中でコイン(有罪・無罪の票として使われた)が器に投げ入れられ、食い気味で人々のテンションがmaxになるのは正直恐ろしいほどでした。
正に「狂」の音楽。Frenzy, Craze, Madness。

それから判決から処刑までの間のチェロソロがかっこよかった。ソクラテスは前からチェロのイメージがあるのでそういう意味でも嬉しい。
あとビオラの超絶技巧な(でもちょっと目立たない)ソロもあったし、それにソクラテスが毒杯を飲むシーンで完全な静寂の中にコントラバスクラリネットのソロ!音に苦さと重さがあって最高のキャスティングでしたね。先ほどのコインのシーンと同じくらいえぐさのある描写でした。

そしてマーラー5番。弾いた経験もあり何回も聴いていてよく知った曲ですが新しい発見もちょこちょこあって、それに生で通してじっくり聴くのは素晴らしいです。改めてこの曲への愛を確認しました(笑)

演奏はというと第1楽章、第4楽章あたりは普通に良くて、あんまり特別に思ったとこはなかったかなあ・・・第3楽章、第5楽章はちょっと不思議な(あんまり聴かない)テンポの変化が多くてちょっとオケがずれるところも。
ただ第2楽章は今回よかったです。嵐の様な楽章がうまいこと勢いに乗って、それから音がとにかく濃かった。特に弦。

その反面金管はちょっとパワーが足りかったような、というかいつものぴたっと合ってぱっと音が輝くような気持ちよさはなかったかな。トランペットはかっこよかったですが。
そうそう、以前お仕事ご一緒したシンバル奏者の方がクラッシュシンバルでトリル(トレモロ?)をやっててびっくりしました。あれは職人技ですね。
Brett Deanでもマーラーでも打楽器セクションは大活躍でした。

今回のプログラムではスタンダード且つ偉大なマーラーの交響曲と、今生きて活躍している作曲家の新しい曲の組み合わせでした。同じように去年のアデス「Polaris」にマーラー3番の組み合わせ、そして手元にあるNYフィルのアデス「Polaris」にマーラー9番の組み合わせとか、そういうプログラム組みはうまくいってるようで。
つまりは今の時代にスタイルこそ違えどマーラーの交響曲と並べても遜色のない作品が生まれている、演奏されているというのは本当に凄いことだと思います。(弾く方は大変そうですが)

ただ現代音楽を生で初演として聴くのは貴重な経験ですが、一つ悩みがあります。
こういう音楽ってコンサートで聴いて「すごい!好き!もっと聴き込みたい!」と思ってもまだ録音が出てない場合がしばしばあるんですよね。
今回のソクラテスもそういうケース。現代音楽の複雑さを考えるとやっぱり1回聴いただけでは勿体ないだけじゃなくて足りないので。
(ただ Brett Deanの音楽に関しては録音よりも生でがっつり集中して、楽器が演奏しているのを見ながら聴くのが一番と思います)。

とにかくマーラー5番をまた聴けて、そしてソクラテスに出会えて良かったです。新しい音楽、聴いたことのない音楽に出会うのがとにかく楽しい!
今週は友達のリサイタルがありますが8月13日のメル響ストラヴィンスキー祭りでの春の祭典は聴きに行きたいです。チケット予約せな。


今日の一曲: グスタフ・マーラー 交響曲第5番 第2楽章



マーラーの交響曲の中で、楽章単位でダントツ知名度が高いのは第5番の第4楽章ですが、マーラー5番は交響曲としてもバランスが取れた、ちょうどいいスケールの交響曲で、各楽章違った魅力があって良い曲だと思います。CDとして持ってて損はないクラシック。

そんな中で私が好きなのは第1楽章と第2楽章。暗いやつです。
チェロで弾いてて特に楽しかったのもこの2つ。結構チェロのパートが粋で良いのです。

第2楽章は嵐のような楽章。それもかなり描写的。風だったり雨だったり、雲が立ちこめたまま何も動かない不穏さ、そして最後に晴れて雨露がきらめく(これがすごいです!)のとかとにかく風景・様子がはっきり見えやすい音楽です。

勇ましいホルンをを始め金管のパートも格好いいですが、この楽章を支えているのが弦楽器だとも思います。うねるような音型を弾いたり、そのパワーは昨日の演奏で改めて思い知りました。
かなり複雑に書かれているので一番最初に耳に入ってくる音以外もものすごく作り込んであって、ちょっと耳のフォーカスを変えてみると面白いパートが聞こえてきます。そういう手加減なしの作り込みもマーラーの音楽の魅力。
生で聴くときはオケの様々な楽器を見ながらフォーカスを移してみてください。打楽器とかも結構格好いいことしてますよ。

チェロでのこの楽章の思い出といえば前述雲が立ちこめたまま何も動かない不穏な箇所。
チェロセクション全員で、ものすごく抑えた音で(音量も感情も)、低い弦だけ使ってそのstillnessを表現します。腕の長さと弓の長さと音が出る最低限の弓の動きの折り合いが難しくて腕が痛くなるのですが、なかなかこういう効果ってなくて特別な箇所だったりします。

さらに第5楽章で出てくる輝かしくて勝利的な音楽がちょろっと一時的に出てくる箇所は素晴らしい!マーラーは闇の深さをよく知っているから光の描写がああもまばゆく、焦がれる感じになるんだと思う良い例です。さらに言えば光が弱くなってくところの描写の切なさ最高。

まるで一続きの映像(ドキュメンタリー的な)を見ているようなこの楽章。長さをあんまり感じさせなく聴けます。
5番はそれぞれの楽章に魅力があって、個別で聴いても素晴らしいですが、是非!交響曲全体を一続きに聴いてみて下さい。できたら生で。マーラーの音楽をあんまり聴いたことがない人にも自信を持ってすすめたい曲です。

マーラーの演奏でどこのオケ、誰の指揮がいいかというのはなかなか自信ないのですが手元のベルリンフィル演奏、ハイティンク指揮は割とオーソドックスで聞きやすい演奏だと思うのでリンク。このCDだと4番とセットになってますね。

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