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~名もない蛾と虹の錯乱~ 内の思いと外の色彩をつらつらと。
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Tan Dunのチャイニーズ・ニューイヤー(コンサートのラジオ放送ちょっと感想など)
前回のエントリーに拍手ありがとうございます~
そしてAge of Wondersのエントリーにアクセス多いですが3を楽しみにしている人が日本にも結構いるのでしょうか。最近Shadow Magicも遊んでないのですがちょっと余裕できたら戻りたいなー・・・

今日はメル響のChinese New YearコンサートがHamer Hallであったのですが、それが豪ABCにより生放送されるということで小躍りして聴きました。
今回の主役は映画音楽でも有名なTan Dun(譚盾)。作曲家としてではなく指揮者として自身の作品、他の中国の作曲家の作品、そして西洋のクラシック音楽のレパートリー(メンデルスゾーンのバイオリン協奏曲とプロコフィエフのロミオとジュリエット一部)を振りました。
ソリストもメルボルン、中国両方から参戦。中でも中国琵琶の演奏がよかったですねー。楽器が好きだってのもあるのですがオケともうまいこと合わせられてましたし。

クラシックでもお国柄というか国によって強い楽器があったりして、日本はピアノかな?韓国は声楽が強くて中国はバイオリンが強いんですよね。今回メンデルスゾーンのバイオリン協奏曲を弾いたLu Siqing(呂思清)というバイオリニストもパガニーニ国際コンクールで優勝した経歴があったり。今回そのメンデルスゾーンもアンコールのチャルダッシュ(モンティ作曲)も割とポピュラー中のポピュラーというか、気をつけないとちょっと薄っぺらくなりかねない曲ですが、表現がオーバーになることなくすっきりした演奏で、さらに粒が揃った精密な音の並びだったのが印象的。
日本含めアジアの方のバイオリン演奏って(伝統的な楽器や音楽の影響があるのかしら)どっちかというと音が甘い風味になる傾向(二胡的な)があるのでちょっとびっくりしました。

そしてTan Dunの新作、三重協奏曲「The Triple Resurrection」。ピアノとバイオリンとチェロがソリストとなる協奏曲だったのですが、協奏曲という枠にはまらない自由な作品でした。
Tan Dunはこの作品を彼の映画三部作に絡めているのですが、それらが「映画のための音楽」だったのと逆にこれは「映画に先立つ音楽」だそうです。なので映像が後から来るんですよ。出会う機会はあるかしらん。

Tan Dunはほんと面白い。The Triple Resurrectionは前述のとおり協奏曲という枠にはまらないのですが映画音楽の枠にはめるのももったいない。西洋の枠にも東洋の枠にもはまらず両方を取り入れて、伝統を大事にしながら現代の様々なスタイルの音楽を取り入れたり、それで自分のスタイルをしっかり確立していて(以前購入したクロノス・カルテット演奏「Ghost Opera」のスタイルとの一貫性)。中でもあのリズムの独特さは凄い。Primitiveだけれど新鮮。

そもそもあの人は生い立ちの独特さからして凄いです。
中国がものすごいことになっていた文化大革命(12年生の歴史で習ったりJung Changのワイルド・スワンズで読んだりでちょっと知ってるけど説明は大変なのでwikipeに丸投げ)の中で生まれ育ち、中国から海外に渡る間に様々な経験を蓄積して今世界中で活躍しているという。
文化大革命って文化面だけに限っても過去の色んな伝統とか少数文化を含む「古いもの」を徹底的に潰してきて、その前の時代の色々も含めて音楽をやる余裕がない人も多かったと思われ。
その他いろいろな要素があってこの時期が音楽に関してもブランクになって・・・いるのかな。今Tan Dunと同じくらいの年齢でクラシック界隈で活躍している中国人作曲家って聞かないですし。

そしてTan Dunが休憩中に流れたインタビューで「進歩する速さより速く伝統が消えている」という話をしていたのですが、中国のその時代生まれだからこそ痛感するんだろうなと思いました。他の国(日本やアメリカ、オーストラリア含む)でも進歩とともに伝統が消えていくのは深刻な問題ですが、中国の場合今の急速な進歩に伴い様々な少数民族のそれを含む伝統がすごい速さで消えて行くだけでなく、その両プロセスをぎゅっと凝縮した(+その他多々なる弊害)文化大革命がすでに起こっているのも大きい。

以前書いたように12年生の歴史「Revolutions!」でロシア革命・辛亥革命を勉強したのですが、どちらも帝政→共産主義への変化だったり時代が似ていたりで共通点も色々見られたのですが、中国の革命は(とくに大躍進以後)ものすごく変な感じというか異様さがあったというか。
文化大革命についても粛正のことだたったり紅衛兵の暴走だったり吊し上げの話だったり習ってて怖いなーと当時思ったのですが、今こうやって「その後々への影響」を考えるとまた別のぞっとする怖さがある。

今回のコンサートでTan Dunの作品や他の中国の音楽(3つアンコールがあって全部中国の曲でした)を聞くと小さいころ父が聞いてたラジオの中国語講座の記憶からか中国の音楽になんとなく親しみを覚えたりするのですが、反面そうやって歴史的な観点とそこから続く今現在を考えると中国がなんだかとても遠いものに感じたり。そんな相反的な「中国」を感じるコンサートでした。

メル響は今度は10月だったかな?にTan Dunのギター協奏曲を演奏する予定ですがもしかして私日本にいるかしらんその時。聞きたいんだけどなー。

さて最近音楽で書くことが多いのは嬉しいのですがたまにはメンタルヘルスの話もしたいよな、と思いながらアンテナをちょっと立ててるこの頃。基本的にそっち方向はちょっと慎重なのですが何か見つかるといいな。


今日の一曲: Tan Dun 「Ghost Opera」



以前購入したまま紹介してなかった。そして今も実は紹介できると思っていない(汗)だってプログラムノートとかが手元にないんです・・・ちょっと曲を理解するのに作曲家のヒントが欲しい。
でも今日のコンサートを聴いてこの作品はTan Dunのスタイルの「典型的な」範囲のうちなんだな、と分かってとりあえず安心です。やっぱり1曲聞いただけじゃ見当も付かないですから。

今回のコンサートでも中国琵琶が活躍しましたが、そちらは弦楽オーケストラをバックのソリストという位置。「Ghost Opera」では中国琵琶が弦楽四重奏と対等な位置で一つのアンサンブルを構成します。映像を見ていないので推測ですが琵琶がアンサンブルをリードするとこも少なくないんじゃないかな。

オペラという名ですが歌が入ってるわけではない不思議な曲。全体的に舞台っぽい雰囲気があって、同時に水墨画みたいな色彩もイメージします。
バッハの引用に始まり途中でシャウトがあったり「ものすごく中国っぽいぞー!」という場面もあり、かといってどこの音楽ともいいがたい場面もあったり。
その無国籍的な部分のスタイルがちょっとクラムの無国籍的な音楽部分に似ていたりするんですよね。あと引用のしかたも結構似てるし、水っぽい部分の表現も似ている。(水はTan Dunの音楽で重要なエレメントだとインタビューで言ってましたね)

音楽がよく分からなくともとにかく琵琶が格好いい音楽です。例えば日本の琵琶を語りに使うときのような多彩な描写的表現がいっぱい出てきて本当に表現豊かな楽器だなと。
そして西洋の弦楽器も負けてませんよ。なんせクロノスですからね。東西の弦楽器の掛け合いももちろん聞き所。

そのうちTan Dunの映画音楽も聴いてみたいですね。ヨーヨー・マが弾いてる「Crouching Tiger, Hidden Dragon(邦題:グリーン・デスティニー)」が特に楽しみ。

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