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~名もない蛾と虹の錯乱~ 内の思いと外の色彩をつらつらと。
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織田正吉「ジョークとトリック」感想
久しぶりの感想エントリーです。
というかこれ日本にいる間(=10月)に読んだのでそろそろ感想書いとかなければ。
とはいえこれからずっとさりげなくお世話になることも多そうな本なので急ぐのもあれな気持ちですが・・・

とにかく今回感想を書くのは織田正吉著「ジョークとトリック」です。
両親が去年マレーシアに移住するときかなり荷物を祖父母(両サイド)の家に置いてったのですがその中にこの本がありました。父はマーチン・ガードナーのパズルの本とかいっぱい持っててこれも一緒の箱に入ってたためたぶん父の本。ただ内容を読んでみると母の守備範囲でもあるっぽい。

この本はそんな父の好きな発想の転換とか柔軟な思考とか視点の変換とかそういう系統の話についての本なのですが、他の同系統の本と違うのが一つの形態(パズルとか)に特化するのではなく色んなジャンルを扱っていること。
例えばジョーク、奇術、落語、しゃれ言葉、古典文学、そして外国のジョークや文学作品など。その全てでどうして人の脳は騙されるか、どうしてやられた!と思うのか、どうして粋を感じたり、面白く感じたりするのかを説明している本です。

外国のしゃれ(ルイス・キャロルやシェイクスピアが挙げられています)はもちろん、同じ日本語でも落語や短歌などはある程度の知識・教養がないと分からなかったり、歌詞とかでも面白いとおもってもどう面白いのか分からない場合がある。そういった「どう」面白いのか、「どうして」面白いのかの基礎知識をつけてくれる、という側面があります。

そして表紙のタイトルの下に書いてある「頭を柔らかくする発想」の通りこういったジョークやトリックなどがどういった固定観念などを利用しているか、どういう思考に誘導しているかを知り、柔軟でとらわれない思考につなげる、という側面もありますね。

こういう「どうひっかけてくるか」「どうして粋・面白いのか」という受動的な話は同時にどういう風に粋で面白いジョークや文章を作るか、どういう視点に注目してひらめきを得るか、という能動的な話につながります。ありきたりの言葉・アイディアの向こうを(例えば自分だったら文章書きに生かせたらなあ、と思うのですがなかなか難しい。しゃれとかたとえ話のレベルでもうーんとなる。なので「ずっとさりげなくお世話になることも多そう」な本なのです)

そういう意味で参考したいなーと思ったのが「秘すれば花」辺りの隠匿に関する話。いかに全てを言わずに表現するか、いかに読み手・受け取り手の想像力や好奇心を掻き立てるか、いかに限られた情報から推測し全体像を作り上げるか。

あと面白いと思ったのが日本語におけるジョークやユーモアだけでなく前述ルイス・キャロルやシェイクスピアの掛詞やしゃれなど、そして日本語と外国語をどっちも使ったしゃれやジョークなども入ってるところ。粋も好奇心もユーモアも(性質や言語は違えど)文化に特異な物でなく人類みな楽しむもの、ということですね。

本当にいろいろなジャンル(音楽もありました)から色んなエピソードや問題、ジョークが出てく売るこの本ですが、一番お気に入りだったのは水滸伝の毒を混ぜるエピソード。水滸伝は昔読んでるはずなのですがうっすらとしか覚えてなかった。でもあれは活劇のエピソードというよりちょっとしたミステリですね(笑)金田一少年とかでもよくある奇術的な側面のあるトリック。

ということでものすごく大きなインパクトの本とはちょっと違う、ちょっとずつ勉強になったり面白かったりする本でした。
やっと紹介出来ましたし余裕ができたらまた本読みたいです。読書がちょっとご無沙汰になっているので。
(あとは両親が日本にこないだ行ったときに頼んだ漫画も来るはずですし、手元にはないながらもSTAYシリーズの感想も書きたいなあ・・・どうしませう)


今日の一曲: スウェーデン民謡 「Tusen Tankar」



去年クロノス・カルテットのコンサートに行ったとき2曲アンコールをやって、最初に第1バイオリンの方が「静かな方がいい?盛り上がるほうがいい?」と聞いて結局どっちも弾いたのですが、「盛り上がる方」はClint Mansellの「Death is the road to awe」(映画The Fountainでクロノスが弾いた曲)だったのですが、「静かな方」はスカンジナビアのどっかの民謡だということしか分からなかったのです。
それが最近ようつべ経由でこの曲だと分かって、探してみたら映画「Death and the Civil War」のサウンドトラックに「アルバムのみ」購入とあったのでサントラアルバム丸ごと購入したという経緯。

これが美しい曲なのですよ。もっと早くに入手したかったくらい。
1番と2番はこの曲を歌ったバンドの版がベースということなのですが、元の民謡の素材を生かしてアレンジもシンプルで、弦楽器の奏法の中でも特に古楽器や民族楽器なんかに音を似せる時に使うビブラート無しの音が特にシンプルで。
弓の動き、フレーズとともに音がふくれたりしぼんだりするのも面白い。

Tusan TankarというのはA thousand thoughtsと英語に訳される・・・ということは日本語にすると「千の想い」かな?叶わぬ愛を歌った曲だそうです。静かでどこか悲しげなところがある、でも暖かい。北欧をぱっとイメージするとこういう暖かさが浮かびますね。
そして北欧の森や木造建造物・家具とかの「木」のイメージが弦楽器の飾らない音の印象と重なったりも。

ちなみに「Death and the Civil War」のサウンドトラックに「Gettysburg Address」という曲がありますがこれは「Tusen Tankar」のアコースティックギター版。こちらもまた素朴な音のアレンジです。
他のトラックも1回聞き流した程度ですがなかなか良い音楽です。


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