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前回のエントリーに拍手ありがとうございます。
思いの外ネタが早く固まったので早速投下。
ちょっとiTunesのライブラリを漁っていて思ったのですが、結構短い曲でいい音楽ってのもありますね。
ゲームの音楽とかビートルズアンソロジーのリハ・スピーチ部分とかエスニック音楽のサンプルとか変奏曲のトラック分けとかそういったものが結構あるにしても、例えば1分30秒未満(設定理由は後述)のトラックは960曲くらいライブラリに存在しています。これは全部で9700曲オーバーの中の10%に相当。
クラシックの音楽ってコンサートからの連想でちょっと長めなイメージがあるかな、と思うのですが今回はそんな短い時間の中でも楽しめる、短いからといってあなどれない魅力を持った曲を紹介したいと思います。
自分のiTunesライブラリを時間でソートして短い側をざっと見た感じ1分くらいなら(1分くらいでも)紹介出来る曲は集まりそうだなーと思いました。1分未満だと「良い曲」は限られてくるので1分から1分半の演奏時間でしっかり楽しめる曲を選びました。もちろん同じ曲でも演奏によってテンポが違い演奏時間も変わってくるのですが今回選んだ曲はそれを考慮してもだいたい1分~90秒に収まるはず。
それではコレクションへ。括弧内は手持ちの録音の演奏時間を目安として。
(1)フランツ・リスト 超絶技巧練習曲第1番「前奏曲」(52秒)
正にオープニングにふさわしい華やかな練習曲。1分もないとはいえしっかり技巧を披露する場所があり、練習曲とはいえ爆発するような色彩とめくるめく展開も備えている、一曲の音楽として欠ける要素はないしっかりした音楽。マジックショーにしては短く、挨拶にしてはインパクトが強い、ちょっとした音楽のびっくり箱。実際の時間より短く、あっという間に過ぎていくので聴き逃さないように注意です。
(2)レナード・バーンスタイン 「ウェスト・サイド物語」のシンフォニック・ダンスより「スケルツォ」(1分18秒)
このブログでも何回か言及した、若者同士の抗争の現実の狭間で見る自由の夢。スケルツォは交響曲でいうとちょっとした息抜きの役割を(本来)担うようなところがありますが、盛り上がるダンスナンバーともロマンチックな歌のナンバーとも違うこの短い合間の曲も確かにそういう感じですね。なので本来は「全体のうちの一部」として楽しむ曲ではありますがこれ単品でも十分素敵な曲です。心に1分18秒ぶんのすき間が出来て、そこからそよ風が吹く感じ。
(3)エドワード・エルガー 「エニグマ変奏曲」より第7変奏「Troyte」(58秒)
エルガーの「エニグマ変奏曲」はその各変奏がエルガーの身の回りの人物を描写する作品。58秒で人間1人を描くというのは難しいですがエルガーは見事にそれをやってのけています。このめまぐるしい音楽を聴いてる中でTroyteなる人物の気質や動き方、しゃべり方なんかが浮かんでくるだけでなくそのキャラクターが愛しく思え、エルガーがこの人物を愛を持って描いてるのも分かる。1分未満で人1人ちょっと好きになれる音楽というのもちょっと珍しいですね。
(4)ピョートル・チャイコフスキー バレエ「くるみ割り人形」より「中国の踊り」(1分11秒)
くるみ割り人形がそもそもミニチュアの世界のお話でちまっとした魅力が溢れる曲が多いですが、この曲に特にスポットライトを。その異国的な雰囲気・キャラクター描写だけでなく各楽器のパートにちゃんと弾き応えがあるのがこの曲のすごいところ。メインであるピッコロのソロももちろんですし、伴奏してるファゴットやクラリネットのパートもシンプルに思えますがしっかり作りこんである。精密なミニチュアです。
(5)ヨハン・セバスチャン・バッハ コラール前奏曲「キリストは死の縄目につながれたり」(1分20秒)
コラール前奏曲はキリスト教の教会で礼拝の際みんなで歌うコラールの前にオルガンが演奏する曲で、この後合唱が同じ曲に合わせて歌います。コラールは大抵何番も繰り返しがあるのですがコラール前奏曲は1回のみ演奏、そして合唱なしでオルガンの演奏だけ比較的さらっと聴ける(私は器楽のほうが耳が馴染みやすいです)。コラール前奏曲を集めたCDならオルガンの音色の多様さをいろんな短い曲で味わえたり、コラール前奏曲と共通する題材でバッハの他の音楽を聴き広げるスターティングポイントとしても可能性があります。
(6)パウル・ヒンデミット 「葬送音楽」第2楽章(44秒)
ヒンデミットが英国王ジョージ5世の葬儀のために依頼されて一晩で書いたこのビオラと弦楽のための「葬送音楽」。全体も短い曲ですが、4つの楽章一つ一つ、そして全体としての完成度も魅力もなかなか凄い曲です。その中で1番短い第2楽章は静かな悲しさと美しいビオラのメロディーが印象的。体感時間でもため息3つほどの長さですが、もしかしたら初聴きでは一番印象に残る楽章になるかもしれません。
(7)ガブリエル・フォーレ 前奏曲第8番(1分11秒)
去年のリサイタルのプログラムに入れた曲(ただし演奏時間は自分のではないです)。こんなに短いのにこんなに難しい、が弾いた印象でしたが聴く分には魅力的な曲。短い時間の中で色彩や明暗や性格が何転もして、軽やかながらもいろんな要素が凝縮された音楽。優雅だけれど精密で、弾くだけでなく聴くにもちょっと耳を鋭くしないと魅力を逃す恐れが。短いから・フランスだから・フォーレだからと侮っちゃあいけない曲です。
(8)ローベルト・シューマン 「謝肉祭」より「ショパン」(44秒)
「謝肉祭」は軽く弾ける&聴ける面白くてキャラの立ってる短い曲の宝庫なのですが(ただ難しいやつは難しい)、その中の約1分級の曲で一番好きなのがこの「ショパン」。あたかもショパンの即興曲のように夢見るようなアルペジオと歌うメロディー、表情豊かな和音使い、うまく再現しています。まるでショパンの音楽を一つのコンパクトな絵に描いたよう。ちなみに「謝肉祭」で約1分級といえば「スフィンクス」(37秒)の謎もまた別方面で面白いですよ。とにかく謎。
(9)ジョージ・クラム マクロコスモス第1巻 第2楽章「プロテウス」(1分16秒)
クラムも実は小規模曲がものすごく光る作曲家。とにかく個々の曲のキャラが強い。まるで神話の本とか想像上の生物の本を読んでいるように変で素敵なやつらがどんどん出てきます。そんななかで「プロテウス」はちょっと特別。即興的で気まぐれだけど計算されてたり、つかみどころがない素早さと液体的な性質。そしてこんなに短い曲なのに無音の部分も多い。曲調から、タイトルから、色んな方向から想像を広げて1分強の曲が生き物になるだけでなく一つの世界になる、これもクラムの音楽のすごさです。
(10)アレクサンドル・スクリャービン 前奏曲変ホ短調 op.11-14(59秒)
1分級の音楽の王様は実はスクリャービンではないかと私いつも思っています。前奏曲や練習曲、本当に小さい曲なのに独特の技巧的・音楽的な難しさがあって、特に初期のただ聴きやすいだけでなく純粋に美しい小品は宝石のよう。その中でもこの変ホ短調は1分の中にドラマがあり、もっと長い音楽と全く変わらない内容の充実さ。1分だとは思えない。15/8という5拍子×3つのかなりレアな拍子が刻む異常とも言える焦燥、感情の高ぶりや全体的に不穏な雰囲気。濃厚な1分音楽です。
実は音楽の世界での時間の感覚って普段思うのと大分違うと思うんですよ。これはまた別にエントリーを立てられたらいいなと思ってる話なんですが要するに音楽における1秒ってかなり長いし、1秒で弾ける音って多いわけで、1分あるってのは短いようで結構長かったりするんです。
前述スクリャービンやクラム、シューマンのようにこの1分をものすごい体験に(しかもかなり安定して)変えられる作曲家ってちょこちょこいて、そういう側面で作曲家や作品を評価するのも面白そう・・・というのが今回の趣旨でした。
ちなみに長い時間の音楽でいうとラヴェルの「ダフニスとクロエ」バレエ全曲が56分弱で一番長い。ただこれは3部に分けてほしいんだ。あとオーストラリアの鳥の鳴き声のBGMのCDが40分強。これはどうしようもない。
単一楽章だとやっぱりマーラー6番(テンシュテット指揮)の33分強が一番長いけどマーラー3番の第1楽章が小分けされてなければもっと長いはず。長いとは言え無駄が少ない、長くてしょうがない音楽ですね。
今日の一曲はお休みです。
思いの外ネタが早く固まったので早速投下。
ちょっとiTunesのライブラリを漁っていて思ったのですが、結構短い曲でいい音楽ってのもありますね。
ゲームの音楽とかビートルズアンソロジーのリハ・スピーチ部分とかエスニック音楽のサンプルとか変奏曲のトラック分けとかそういったものが結構あるにしても、例えば1分30秒未満(設定理由は後述)のトラックは960曲くらいライブラリに存在しています。これは全部で9700曲オーバーの中の10%に相当。
クラシックの音楽ってコンサートからの連想でちょっと長めなイメージがあるかな、と思うのですが今回はそんな短い時間の中でも楽しめる、短いからといってあなどれない魅力を持った曲を紹介したいと思います。
自分のiTunesライブラリを時間でソートして短い側をざっと見た感じ1分くらいなら(1分くらいでも)紹介出来る曲は集まりそうだなーと思いました。1分未満だと「良い曲」は限られてくるので1分から1分半の演奏時間でしっかり楽しめる曲を選びました。もちろん同じ曲でも演奏によってテンポが違い演奏時間も変わってくるのですが今回選んだ曲はそれを考慮してもだいたい1分~90秒に収まるはず。
それではコレクションへ。括弧内は手持ちの録音の演奏時間を目安として。
(1)フランツ・リスト 超絶技巧練習曲第1番「前奏曲」(52秒)
正にオープニングにふさわしい華やかな練習曲。1分もないとはいえしっかり技巧を披露する場所があり、練習曲とはいえ爆発するような色彩とめくるめく展開も備えている、一曲の音楽として欠ける要素はないしっかりした音楽。マジックショーにしては短く、挨拶にしてはインパクトが強い、ちょっとした音楽のびっくり箱。実際の時間より短く、あっという間に過ぎていくので聴き逃さないように注意です。
(2)レナード・バーンスタイン 「ウェスト・サイド物語」のシンフォニック・ダンスより「スケルツォ」(1分18秒)
このブログでも何回か言及した、若者同士の抗争の現実の狭間で見る自由の夢。スケルツォは交響曲でいうとちょっとした息抜きの役割を(本来)担うようなところがありますが、盛り上がるダンスナンバーともロマンチックな歌のナンバーとも違うこの短い合間の曲も確かにそういう感じですね。なので本来は「全体のうちの一部」として楽しむ曲ではありますがこれ単品でも十分素敵な曲です。心に1分18秒ぶんのすき間が出来て、そこからそよ風が吹く感じ。
(3)エドワード・エルガー 「エニグマ変奏曲」より第7変奏「Troyte」(58秒)
エルガーの「エニグマ変奏曲」はその各変奏がエルガーの身の回りの人物を描写する作品。58秒で人間1人を描くというのは難しいですがエルガーは見事にそれをやってのけています。このめまぐるしい音楽を聴いてる中でTroyteなる人物の気質や動き方、しゃべり方なんかが浮かんでくるだけでなくそのキャラクターが愛しく思え、エルガーがこの人物を愛を持って描いてるのも分かる。1分未満で人1人ちょっと好きになれる音楽というのもちょっと珍しいですね。
(4)ピョートル・チャイコフスキー バレエ「くるみ割り人形」より「中国の踊り」(1分11秒)
くるみ割り人形がそもそもミニチュアの世界のお話でちまっとした魅力が溢れる曲が多いですが、この曲に特にスポットライトを。その異国的な雰囲気・キャラクター描写だけでなく各楽器のパートにちゃんと弾き応えがあるのがこの曲のすごいところ。メインであるピッコロのソロももちろんですし、伴奏してるファゴットやクラリネットのパートもシンプルに思えますがしっかり作りこんである。精密なミニチュアです。
(5)ヨハン・セバスチャン・バッハ コラール前奏曲「キリストは死の縄目につながれたり」(1分20秒)
コラール前奏曲はキリスト教の教会で礼拝の際みんなで歌うコラールの前にオルガンが演奏する曲で、この後合唱が同じ曲に合わせて歌います。コラールは大抵何番も繰り返しがあるのですがコラール前奏曲は1回のみ演奏、そして合唱なしでオルガンの演奏だけ比較的さらっと聴ける(私は器楽のほうが耳が馴染みやすいです)。コラール前奏曲を集めたCDならオルガンの音色の多様さをいろんな短い曲で味わえたり、コラール前奏曲と共通する題材でバッハの他の音楽を聴き広げるスターティングポイントとしても可能性があります。
(6)パウル・ヒンデミット 「葬送音楽」第2楽章(44秒)
ヒンデミットが英国王ジョージ5世の葬儀のために依頼されて一晩で書いたこのビオラと弦楽のための「葬送音楽」。全体も短い曲ですが、4つの楽章一つ一つ、そして全体としての完成度も魅力もなかなか凄い曲です。その中で1番短い第2楽章は静かな悲しさと美しいビオラのメロディーが印象的。体感時間でもため息3つほどの長さですが、もしかしたら初聴きでは一番印象に残る楽章になるかもしれません。
(7)ガブリエル・フォーレ 前奏曲第8番(1分11秒)
去年のリサイタルのプログラムに入れた曲(ただし演奏時間は自分のではないです)。こんなに短いのにこんなに難しい、が弾いた印象でしたが聴く分には魅力的な曲。短い時間の中で色彩や明暗や性格が何転もして、軽やかながらもいろんな要素が凝縮された音楽。優雅だけれど精密で、弾くだけでなく聴くにもちょっと耳を鋭くしないと魅力を逃す恐れが。短いから・フランスだから・フォーレだからと侮っちゃあいけない曲です。
(8)ローベルト・シューマン 「謝肉祭」より「ショパン」(44秒)
「謝肉祭」は軽く弾ける&聴ける面白くてキャラの立ってる短い曲の宝庫なのですが(ただ難しいやつは難しい)、その中の約1分級の曲で一番好きなのがこの「ショパン」。あたかもショパンの即興曲のように夢見るようなアルペジオと歌うメロディー、表情豊かな和音使い、うまく再現しています。まるでショパンの音楽を一つのコンパクトな絵に描いたよう。ちなみに「謝肉祭」で約1分級といえば「スフィンクス」(37秒)の謎もまた別方面で面白いですよ。とにかく謎。
(9)ジョージ・クラム マクロコスモス第1巻 第2楽章「プロテウス」(1分16秒)
クラムも実は小規模曲がものすごく光る作曲家。とにかく個々の曲のキャラが強い。まるで神話の本とか想像上の生物の本を読んでいるように変で素敵なやつらがどんどん出てきます。そんななかで「プロテウス」はちょっと特別。即興的で気まぐれだけど計算されてたり、つかみどころがない素早さと液体的な性質。そしてこんなに短い曲なのに無音の部分も多い。曲調から、タイトルから、色んな方向から想像を広げて1分強の曲が生き物になるだけでなく一つの世界になる、これもクラムの音楽のすごさです。
(10)アレクサンドル・スクリャービン 前奏曲変ホ短調 op.11-14(59秒)
1分級の音楽の王様は実はスクリャービンではないかと私いつも思っています。前奏曲や練習曲、本当に小さい曲なのに独特の技巧的・音楽的な難しさがあって、特に初期のただ聴きやすいだけでなく純粋に美しい小品は宝石のよう。その中でもこの変ホ短調は1分の中にドラマがあり、もっと長い音楽と全く変わらない内容の充実さ。1分だとは思えない。15/8という5拍子×3つのかなりレアな拍子が刻む異常とも言える焦燥、感情の高ぶりや全体的に不穏な雰囲気。濃厚な1分音楽です。
実は音楽の世界での時間の感覚って普段思うのと大分違うと思うんですよ。これはまた別にエントリーを立てられたらいいなと思ってる話なんですが要するに音楽における1秒ってかなり長いし、1秒で弾ける音って多いわけで、1分あるってのは短いようで結構長かったりするんです。
前述スクリャービンやクラム、シューマンのようにこの1分をものすごい体験に(しかもかなり安定して)変えられる作曲家ってちょこちょこいて、そういう側面で作曲家や作品を評価するのも面白そう・・・というのが今回の趣旨でした。
ちなみに長い時間の音楽でいうとラヴェルの「ダフニスとクロエ」バレエ全曲が56分弱で一番長い。ただこれは3部に分けてほしいんだ。あとオーストラリアの鳥の鳴き声のBGMのCDが40分強。これはどうしようもない。
単一楽章だとやっぱりマーラー6番(テンシュテット指揮)の33分強が一番長いけどマーラー3番の第1楽章が小分けされてなければもっと長いはず。長いとは言え無駄が少ない、長くてしょうがない音楽ですね。
今日の一曲はお休みです。
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