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昨日の豪ABCでのコンサート放送面白かった-!
タスマニア交響楽団と合唱団によるMONA(Museum of Old and Artsというタスマニアの州都ホバート近郊の現代芸術を主にしたイベントなどもある美術館)で冬至の夜と闇と光をテーマにしたコンサートをやったのですが、これが演奏も素晴らしければ曲の取り合わせもセットアップもシチュエーションも全てすごくて感銘を受けました。
こういうイベントで冬至を感じるのもいいなあ、ということをちょっと長々とTwitterの方でつぶやいてしまいました。こっちではまあいいや。
さて、今日は随分長いことやってなかった国毎に音楽紹介をまたやってみようかなと。寒いメルボルンの冬(気温はそんなに低いわけじゃないですが)に熱くなるロシア音楽をテーマに。
地理歴史の関係で「ロシア」がどこら辺までを指すかはちょっと曖昧に。とりあえず一般に言われるロマン派のロシア音楽、それからソヴィエトの音楽のなかでも今のロシアに近い部分をおおまかに(バルト三国とかフィンランドとかは明らかに除外)カバー。「ロシア音楽」というと大体音楽畑の人達は一緒の範囲を指すのですが改めて定義しようと思うと難しいですね。
ロシアの歴史では西欧の影響が本格的に入ってきたのがピョートル大帝の時代で、クラシック音楽もやっとよく知られてる名前が出てくるのは19世紀、ロマン派から。
西欧化とはいいますが、ロシアの民謡がクラシック音楽の作品に頻繁に取り入れられるのもロシア音楽の特徴。ロシア民謡のメロディーはピアノでいえば片手の5本の指で弾けるようなシンプルで素朴なメロディーが多いです。
そしてロシアの歴史といえば先ほども言及があったようにでかい国土に様々な変化があって、一口にロシアといえども色んな文化を含んでいることも特徴的です。ロシアからずっと西の方に至るエキゾチックな風味だったり、北欧ノルウェーやフィンランドの音楽にも通じるところもあったり、西方のキリスト教のスタイルとはちょっと違った宗教音楽だったり。
ロシアの音楽で前から面白いと思ってるのがハーモニー。基本的な三和音を(七度とか足さず)使うことが多く、それから基本的な三和音の真ん中の音(和音が長調か短調か決まる音)を抜くopen fifthも頻繁に使われる。比較的シンプルで素朴な和音なんだけどその音の重ね方とか楽器の使い方でものすごく重厚なサウンドになるのがロシア。
重厚さもそうですが独特の土臭さ(多分和音がもとになってる)や寒さと熱さの共存、ある種の暗さや厳しさ、そして比較的ストレートな表現がロシア音楽の魅力だと思います。ちょっと前衛的な音楽でも比較的ストレートに響きやすいところがあるんだよなあ。
今楽器の使い方と書きましたが大編成のオーケストラが基本だったロマン派以降で活躍したロシアの作曲家はみんなオケの使い方がものすごくうまいですね。すでにそのメソッド的なものが確立してたってのもあるのですがチャイコフスキーとかリムスキー=コルサコフとかストラヴィンスキーとかラフマニノフとかショスタコーヴィチとかプロコフィエフとかみんな楽器使いが素晴らしい。
特にロシアの音楽は打楽器の使用数が平均多くてしかも打楽器に力が入ってる印象です。
あとロシアの音楽はバレエが強い。オペラももちろんありますがバレエが強い。チャイコフスキーの3大バレエからバレエ・リュス関連の作品まで、優れた踊り手を多く輩出する国であると同時に踊りのための音楽の作曲も充実。
それから特にロシア革命後のソヴィエトでの映画音楽のジャンルの大きさ(ショスタコ始め)ってかなりすごいと思います。クラシック音楽からの観点だとちょっと注目されない傾向にありますが。
1917年の革命によりロシアがソヴィエトになったことの政治的変化は大きいですが、音楽への影響も多大でした。革命前後に多くの作曲家(演奏家も)が国外亡命してヨーロッパやアメリカで活動したり、国内に残った作曲家も政府から圧力がかかって作品のアウトプットが大きく変わったところもあります。20世紀に起こったヨーロッパ全般のモダン化・前衛化と共通すること・ちょっと違うことがありますし、そして革命以前のロシア音楽の精神を受け継いでるところもあり、ソヴィエトはソヴィエトで色々面白いです。歴史の変動の影響をものすごく受けてる音楽ですからね(なので歴史的背景を調べながら音楽に会うのも楽しい)。
私は幼少の頃にロシア・ソヴィエトの音楽をピアノでよく弾く機会があったり(ピアノコスモスシリーズにて)、そしてよく考えれば生涯で最初に好きになったハチャトゥリアンの剣の舞とかムソルグスキーの展覧会の絵もロシア音楽。こっちに来てから最初に習ったピアノの先生がロシア人だったり、それからオケでもロシアの作品色々弾いて。重厚さや暗さやストレートさや感情表現が若い人に響きやすいと思うんですよね。ショスタコは中でも自分にとっては幼なじみのような音楽です。そんなわけで好きですロシア音楽(行き着くとこはそこか)。
ではロシアの主な作曲家の作品とスタイルを短く紹介のコーナーへ。
ピョートル・チャイコフスキー(交響曲第6番「悲愴」、くるみ割り人形、ピアノ三重奏曲「偉大な芸術家の思い出に」)一番有名である意味元祖ロシアの作曲家。土臭さのある壮大な音楽も有名ですがミニチュアの世界の美しさも唯一無二。
ニコライ・リムスキー=コルサコフ(シェヘラザード、スペイン奇想曲、熊蜂の飛行)変幻自在の楽器使いで外国の風景まで音楽で描き出す、色彩とメロディーの印象が強い作曲家。
モデスト・ムソルグスキー(展覧会の絵、禿げ山の一夜、死の歌と踊り)実は有名な曲の多くは他の作曲家が編曲した版だったり。でも元のものもまた独特のしっかりとした魅力があります。
アレクサンドル・スクリャービン(練習曲 op. 8-12、詩曲「炎に向かって」、法悦の詩)ショパンのようなスタイルから独特の神秘と炎と共感覚の世界にはまりこんだ変わり者。音楽も思想もキャラクターもぶっとんでます。
セルゲイ・ラフマニノフ(交響曲第2番、合唱交響曲「鐘」、交響的舞曲)ロマンチックな作風が有名で、ピアニストとしても偉大な作曲家。ピアノ、オケ、合唱など各分野で楽器の使い方がうまいのが実はすごい。
セルゲイ・プロコフィエフ(ピアノ協奏曲第2番、交響曲第5番、ロミオとジュリエット)モダンだったり新古典派だったり何をやっても精密でパワフルな作品を書いています。弾く方は決まって難しいけど!
ドミトリ・ショスタコーヴィチ(交響曲第5番、チェロ協奏曲第1番、ビオラソナタ)ソヴィエトの圧力をもろに受けそれを音楽としてアウトプットした作曲家。公のための交響曲、私的な弦楽四重奏もありますが映画音楽を多く残したことも有名。
アラム・ハチャトゥリアン(ガイーヌ、スパルタクスよりアダージョ、バイオリン協奏曲)ロシアの西の方のエキゾチックなフレーバーが作品の随所に現れるちょっと毛色の違う作風が特徴的。
あとは残念ながらあぶれてしまった作曲家としてはグリンカやバラキレフ、ボロディン、そして革命後だとカバレフスキーやシチェドリンなんかもいます。ロシア出身ではないけれどシュニトケもソヴィエト音楽に大分近いような(あんまり詳しくないですが)。
プロコフィエフ、ショスタコーヴィチの双璧の後の時代の作曲家ってちょっと知名度が下がるのですが結構まだまだいるんですよ。そこももっと知ってみたい。(シチェドリンはほんと出会って面白かったですし)
今回久しぶりにこのくくりで書いてみて思ったのはロシア音楽の面白さとか魅力って伝えるの難しいなあと。文章の拙さがまずあるのですがその音楽が自分に近すぎるというか当たり前というかで。同時に前述双璧の後の作曲家はあんまり知らなかったり死角も多いことに反省。
もっと面白いロシアの音楽に出会いたいです。
今日の一曲: ピョートル・チャイコフスキー ピアノ三重奏曲「偉大な芸術家の思い出に」 第1楽章
壮大なロシアの音楽の歴史の中からこれを選ぶのもどうかな、という感じはするのですがロシアのエッセンスの一部を濃く表していると思いますしあとこのブログではさっきまで言及したことが全くなかったことに気づいて(汗)
昔手が小さいけどものすごくパワフルな演奏をするロシア系の女性ピアニストのためにこの曲のページめくりをしたことがあったんですよ。以前書いてると思いますが普段あんまり意識してない曲でもページめくりするとその曲との独特な距離から好きになるところがありまして。
この曲も正にそうでした。スコアを見て聴くだけではなく、弾く手を見て曲を間近で浴びてなんてすごい曲なんだと圧倒されました。
タイトルの「偉大な芸術家の思い出に」というのはこの曲がニコライ・ルビンシテインの追悼のために書かれた作品を指しています。
最初の音から悲痛さがストレートにヒットする曲で、それだけでなく悲しさがものすごく長く続くのもすごい(これもまたなんかロシアっぽい気がする)。すすり泣きのような静かな悲しさから激しい慟哭、深い絶望など様々な悲しみを旅する壮大な音楽です。
本文の方で書いたロシアの特徴だと比較的シンプルなメロディーとハーモニー、重厚なサウンド、ストレートな感情表現、冷たさと熱さ、一種の土臭さ、厳しさと暗さなど多くの特徴が見られます。ピアノの技巧に関してもアルペジオとか和音の使い方などすっごいロシアだなーという感じがします。
この第1楽章もそうですし、変奏曲となってる第2楽章の最後の変奏(第1楽章への回帰の前の)もそうなのですが、長調(イ長調)だからといって曲調が明るかったりハッピーにならないところが何より凄いと思います。空に太陽が輝いててもその周りに暗雲が立ちこめてて激しく雨が降ってることがあるように、長調の音楽でも悲愴さがあって、辛さと悲しさに満ちている。むしろ長調で表現するからこそそれが痛々しい。ショスタコーヴィチがユダヤの音楽に関して「笑いながら泣く、明るい踊りで悲しみを表す」みたいなことを言ってたと思うのですが文化的にそういうものがロシアにもあるのかな。
色々とin-your-faceなストレートさが魅力のピアノ三重奏曲。もちろんピアノのパートは難しいです。弾きたいかというとちょっと微妙だなあ・・・技巧はもちろん音楽的・感情的に自分ができるかどうか自信がない(笑)
ところでチャイコフスキーはこんなに素晴らしい作品を書いてるのに室内楽作品は意外と少ないんですね。他ジャンルでの活躍も凄いですがちょっと勿体ない気も。
リンクしたのは手持ちの録音。カップリングがショスタコーヴィチのピアノ三重奏曲です(ただこっちの演奏はちょっとイマイチだなあ)。曲の組み合わせはものすごく良いです。違いもあれば共通点も見えるコンビネーション。
タスマニア交響楽団と合唱団によるMONA(Museum of Old and Artsというタスマニアの州都ホバート近郊の現代芸術を主にしたイベントなどもある美術館)で冬至の夜と闇と光をテーマにしたコンサートをやったのですが、これが演奏も素晴らしければ曲の取り合わせもセットアップもシチュエーションも全てすごくて感銘を受けました。
こういうイベントで冬至を感じるのもいいなあ、ということをちょっと長々とTwitterの方でつぶやいてしまいました。こっちではまあいいや。
さて、今日は随分長いことやってなかった国毎に音楽紹介をまたやってみようかなと。寒いメルボルンの冬(気温はそんなに低いわけじゃないですが)に熱くなるロシア音楽をテーマに。
地理歴史の関係で「ロシア」がどこら辺までを指すかはちょっと曖昧に。とりあえず一般に言われるロマン派のロシア音楽、それからソヴィエトの音楽のなかでも今のロシアに近い部分をおおまかに(バルト三国とかフィンランドとかは明らかに除外)カバー。「ロシア音楽」というと大体音楽畑の人達は一緒の範囲を指すのですが改めて定義しようと思うと難しいですね。
ロシアの歴史では西欧の影響が本格的に入ってきたのがピョートル大帝の時代で、クラシック音楽もやっとよく知られてる名前が出てくるのは19世紀、ロマン派から。
西欧化とはいいますが、ロシアの民謡がクラシック音楽の作品に頻繁に取り入れられるのもロシア音楽の特徴。ロシア民謡のメロディーはピアノでいえば片手の5本の指で弾けるようなシンプルで素朴なメロディーが多いです。
そしてロシアの歴史といえば先ほども言及があったようにでかい国土に様々な変化があって、一口にロシアといえども色んな文化を含んでいることも特徴的です。ロシアからずっと西の方に至るエキゾチックな風味だったり、北欧ノルウェーやフィンランドの音楽にも通じるところもあったり、西方のキリスト教のスタイルとはちょっと違った宗教音楽だったり。
ロシアの音楽で前から面白いと思ってるのがハーモニー。基本的な三和音を(七度とか足さず)使うことが多く、それから基本的な三和音の真ん中の音(和音が長調か短調か決まる音)を抜くopen fifthも頻繁に使われる。比較的シンプルで素朴な和音なんだけどその音の重ね方とか楽器の使い方でものすごく重厚なサウンドになるのがロシア。
重厚さもそうですが独特の土臭さ(多分和音がもとになってる)や寒さと熱さの共存、ある種の暗さや厳しさ、そして比較的ストレートな表現がロシア音楽の魅力だと思います。ちょっと前衛的な音楽でも比較的ストレートに響きやすいところがあるんだよなあ。
今楽器の使い方と書きましたが大編成のオーケストラが基本だったロマン派以降で活躍したロシアの作曲家はみんなオケの使い方がものすごくうまいですね。すでにそのメソッド的なものが確立してたってのもあるのですがチャイコフスキーとかリムスキー=コルサコフとかストラヴィンスキーとかラフマニノフとかショスタコーヴィチとかプロコフィエフとかみんな楽器使いが素晴らしい。
特にロシアの音楽は打楽器の使用数が平均多くてしかも打楽器に力が入ってる印象です。
あとロシアの音楽はバレエが強い。オペラももちろんありますがバレエが強い。チャイコフスキーの3大バレエからバレエ・リュス関連の作品まで、優れた踊り手を多く輩出する国であると同時に踊りのための音楽の作曲も充実。
それから特にロシア革命後のソヴィエトでの映画音楽のジャンルの大きさ(ショスタコ始め)ってかなりすごいと思います。クラシック音楽からの観点だとちょっと注目されない傾向にありますが。
1917年の革命によりロシアがソヴィエトになったことの政治的変化は大きいですが、音楽への影響も多大でした。革命前後に多くの作曲家(演奏家も)が国外亡命してヨーロッパやアメリカで活動したり、国内に残った作曲家も政府から圧力がかかって作品のアウトプットが大きく変わったところもあります。20世紀に起こったヨーロッパ全般のモダン化・前衛化と共通すること・ちょっと違うことがありますし、そして革命以前のロシア音楽の精神を受け継いでるところもあり、ソヴィエトはソヴィエトで色々面白いです。歴史の変動の影響をものすごく受けてる音楽ですからね(なので歴史的背景を調べながら音楽に会うのも楽しい)。
私は幼少の頃にロシア・ソヴィエトの音楽をピアノでよく弾く機会があったり(ピアノコスモスシリーズにて)、そしてよく考えれば生涯で最初に好きになったハチャトゥリアンの剣の舞とかムソルグスキーの展覧会の絵もロシア音楽。こっちに来てから最初に習ったピアノの先生がロシア人だったり、それからオケでもロシアの作品色々弾いて。重厚さや暗さやストレートさや感情表現が若い人に響きやすいと思うんですよね。ショスタコは中でも自分にとっては幼なじみのような音楽です。そんなわけで好きですロシア音楽(行き着くとこはそこか)。
ではロシアの主な作曲家の作品とスタイルを短く紹介のコーナーへ。
ピョートル・チャイコフスキー(交響曲第6番「悲愴」、くるみ割り人形、ピアノ三重奏曲「偉大な芸術家の思い出に」)一番有名である意味元祖ロシアの作曲家。土臭さのある壮大な音楽も有名ですがミニチュアの世界の美しさも唯一無二。
ニコライ・リムスキー=コルサコフ(シェヘラザード、スペイン奇想曲、熊蜂の飛行)変幻自在の楽器使いで外国の風景まで音楽で描き出す、色彩とメロディーの印象が強い作曲家。
モデスト・ムソルグスキー(展覧会の絵、禿げ山の一夜、死の歌と踊り)実は有名な曲の多くは他の作曲家が編曲した版だったり。でも元のものもまた独特のしっかりとした魅力があります。
アレクサンドル・スクリャービン(練習曲 op. 8-12、詩曲「炎に向かって」、法悦の詩)ショパンのようなスタイルから独特の神秘と炎と共感覚の世界にはまりこんだ変わり者。音楽も思想もキャラクターもぶっとんでます。
セルゲイ・ラフマニノフ(交響曲第2番、合唱交響曲「鐘」、交響的舞曲)ロマンチックな作風が有名で、ピアニストとしても偉大な作曲家。ピアノ、オケ、合唱など各分野で楽器の使い方がうまいのが実はすごい。
セルゲイ・プロコフィエフ(ピアノ協奏曲第2番、交響曲第5番、ロミオとジュリエット)モダンだったり新古典派だったり何をやっても精密でパワフルな作品を書いています。弾く方は決まって難しいけど!
ドミトリ・ショスタコーヴィチ(交響曲第5番、チェロ協奏曲第1番、ビオラソナタ)ソヴィエトの圧力をもろに受けそれを音楽としてアウトプットした作曲家。公のための交響曲、私的な弦楽四重奏もありますが映画音楽を多く残したことも有名。
アラム・ハチャトゥリアン(ガイーヌ、スパルタクスよりアダージョ、バイオリン協奏曲)ロシアの西の方のエキゾチックなフレーバーが作品の随所に現れるちょっと毛色の違う作風が特徴的。
あとは残念ながらあぶれてしまった作曲家としてはグリンカやバラキレフ、ボロディン、そして革命後だとカバレフスキーやシチェドリンなんかもいます。ロシア出身ではないけれどシュニトケもソヴィエト音楽に大分近いような(あんまり詳しくないですが)。
プロコフィエフ、ショスタコーヴィチの双璧の後の時代の作曲家ってちょっと知名度が下がるのですが結構まだまだいるんですよ。そこももっと知ってみたい。(シチェドリンはほんと出会って面白かったですし)
今回久しぶりにこのくくりで書いてみて思ったのはロシア音楽の面白さとか魅力って伝えるの難しいなあと。文章の拙さがまずあるのですがその音楽が自分に近すぎるというか当たり前というかで。同時に前述双璧の後の作曲家はあんまり知らなかったり死角も多いことに反省。
もっと面白いロシアの音楽に出会いたいです。
今日の一曲: ピョートル・チャイコフスキー ピアノ三重奏曲「偉大な芸術家の思い出に」 第1楽章
壮大なロシアの音楽の歴史の中からこれを選ぶのもどうかな、という感じはするのですがロシアのエッセンスの一部を濃く表していると思いますしあとこのブログではさっきまで言及したことが全くなかったことに気づいて(汗)
昔手が小さいけどものすごくパワフルな演奏をするロシア系の女性ピアニストのためにこの曲のページめくりをしたことがあったんですよ。以前書いてると思いますが普段あんまり意識してない曲でもページめくりするとその曲との独特な距離から好きになるところがありまして。
この曲も正にそうでした。スコアを見て聴くだけではなく、弾く手を見て曲を間近で浴びてなんてすごい曲なんだと圧倒されました。
タイトルの「偉大な芸術家の思い出に」というのはこの曲がニコライ・ルビンシテインの追悼のために書かれた作品を指しています。
最初の音から悲痛さがストレートにヒットする曲で、それだけでなく悲しさがものすごく長く続くのもすごい(これもまたなんかロシアっぽい気がする)。すすり泣きのような静かな悲しさから激しい慟哭、深い絶望など様々な悲しみを旅する壮大な音楽です。
本文の方で書いたロシアの特徴だと比較的シンプルなメロディーとハーモニー、重厚なサウンド、ストレートな感情表現、冷たさと熱さ、一種の土臭さ、厳しさと暗さなど多くの特徴が見られます。ピアノの技巧に関してもアルペジオとか和音の使い方などすっごいロシアだなーという感じがします。
この第1楽章もそうですし、変奏曲となってる第2楽章の最後の変奏(第1楽章への回帰の前の)もそうなのですが、長調(イ長調)だからといって曲調が明るかったりハッピーにならないところが何より凄いと思います。空に太陽が輝いててもその周りに暗雲が立ちこめてて激しく雨が降ってることがあるように、長調の音楽でも悲愴さがあって、辛さと悲しさに満ちている。むしろ長調で表現するからこそそれが痛々しい。ショスタコーヴィチがユダヤの音楽に関して「笑いながら泣く、明るい踊りで悲しみを表す」みたいなことを言ってたと思うのですが文化的にそういうものがロシアにもあるのかな。
色々とin-your-faceなストレートさが魅力のピアノ三重奏曲。もちろんピアノのパートは難しいです。弾きたいかというとちょっと微妙だなあ・・・技巧はもちろん音楽的・感情的に自分ができるかどうか自信がない(笑)
ところでチャイコフスキーはこんなに素晴らしい作品を書いてるのに室内楽作品は意外と少ないんですね。他ジャンルでの活躍も凄いですがちょっと勿体ない気も。
リンクしたのは手持ちの録音。カップリングがショスタコーヴィチのピアノ三重奏曲です(ただこっちの演奏はちょっとイマイチだなあ)。曲の組み合わせはものすごく良いです。違いもあれば共通点も見えるコンビネーション。
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