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~名もない蛾と虹の錯乱~ 内の思いと外の色彩をつらつらと。
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国立音楽アカデミーコンサート「Simone Young Conducts」感想
今回のエントリーは昨日行ったコンサートの感想ですが、その前に一つ。

昨日、オーストラリアを代表する作曲家Peter Sculthorpeの訃報が入ってきました。
オーストラリアはイギリスから人間とともに文化も持ち込み引き継いで出来た国ですが、一つの国としてその存在が確立してくるとともにイギリスとは違ったオーストラリア独自の音楽文化を創りだしていくのですが、その中で「他の何物でもないオーストラリアの音楽」を作ったのがSculthorpeなのです。
原住民の音楽や楽器、アジアの音楽文化、そしてなによりオーストラリアの大地の景色から音楽を作りあげたSculthorpe。Sun MusicシリーズやKakadu、Requiemといった大規模作品だけでなく弦楽四重奏曲を多数残していることでも有名で、オーストラリア内外の作曲家、演奏家に多大な影響を与えました。
(ABC Classic 2に彼についての基本を押さえた紹介記事(英語)がアップされてたのでリンク。ようつべの動画が埋め込んであって作品も聞けますよ)
惜しい人を亡くしたという思いもそうですが、今までのSculthorpeの貢献から新しい世代の時代になっていくということでもあり。まだまだオーストラリアの音楽はこれからも伸びるぞ。楽しみ。

ということで急遽Peter Sculthorpeに捧げられました昨日のコンサート。
オーストラリア国立音楽アカデミー(ANAM)のオーケストラのコンサートでした。
ANAMに初めて行った(私は通ったことはないですが)10年前は人数も少なかったのに今はここ数年における管楽器・打楽器などの枠充実により今や(ゲスト奏者もいるものの)21世紀の作品ができるほどのオケのサイズになってびっくり。(国の補助と個人・企業の寄付で生徒の学費などがまかなわれているのでここまで大きくなるってのはすごいことなんだろうな)

指揮者にオーストラリア出身の女性指揮者Simone Youngを迎え演奏したプログラムがこちら。
国立アカデミーコンサート「Simone Young Conducts」
指揮:Simone Young
オリヴィエ・メシアン L'Ascension
Brett Dean ビオラ協奏曲(ビオラ:Brett Dean)
(休憩)
ヨハネス・ブラームス 交響曲第4番

なかなか渋いプログラム。どれも録音は持ってて少し聴いたことはあるながら詳しくは知らない、生で聴くのは初めての曲。生で聴ける機会はそんなに多くない曲ばかりで貴重な演奏でした。

メシアンは初期の作品でしたが(前奏曲集と似たような時代かな)すでにしっかりメシアンの音楽言語もオケのスタイルも出来てて面白い。金管がかっこいいんですよね、コラ-ルのような長い和音。きっと音程を合わせるのも長く伸ばすのも簡単ではなかったりするのかもしれないけど(メシアンオルガン弾きなので)、でも聴いててマジメシアンでした(笑)
演奏としてはちょっとあっさりめで透明感があったのも面白かったです。それから第3楽章の最後の踊りのようなセクションが良かった。狂喜というほどではないですがバイタリティに溢れた力強い音楽、弦の元気さに心躍りましたね。

Brett Deanのビオラ協奏曲は作曲家曰くバイオリンともチェロとも違うビオラならではの声を目指したそうですが確かにビオラにしかできないこと、ビオラでしか出せない音満載の協奏曲でした。
Deanらしい難解で複雑な曲調は健在なのですが、ビオラを主役にしてしまうとその難解なのもなんか(分からないながらも)しっくりきちゃうのが不思議。ビオラならではまた一つ。

Deanのまっすぐで力強く渋さもあるビオラの音はこれぞビオラ!みたいな印象だったのですが、中でも第2楽章、第3楽章で見れたビオラのTrue Berserker状態が最高でした。こんなに荒々しく鋭い牙をむくんだ!ビオラの凶暴方面のポテンシャルは知ってたはずですがこんな演奏を生で聴いちゃうとさらにびっくり。ビオラってかっこいいぜ。

あとDeanの音楽の音量が低い場所を生で聴くとそれがものすごーいうすーいレイヤーがいくつも重なってできているのが視覚的・聴覚的に分かってこれまた面白い。ソクラテスとかもそうなんだろうなあ、また聴いてみたい。

それから指揮者のSimone YoungがまたDeanの音楽と相性が良い。
前回彼女の指揮を見たのが確かメル響のDeanのソクラテス聞いたときかな。同じタッグなんですよね。その時を振り返ってみるとそうだったのですが音楽が複雑であればあるほど指揮が的確に感じるというか、分かってる頼もしさがあるというか。それでいてあのパワフルな指揮と音楽性を音楽の複雑さで損なうことないのもすごい。
(ちなみにあんな体力使うビオラ協奏曲弾いた後なのにBrett Deanが後半のブラームスではオケに混じってビオラ弾いてました。これもまたすごい。)

ブラームスはやっぱ冬ですね!特にこの第4番の渋さと厳しさが昨日聴きにいってぴったりだと思いました。ブラームスの交響曲だと大体お気に入りは普段第1番か第4番か、みたいな感じなのですがこの演奏で僅差でトップになりました。
メシアンでもそうでしたがブラームスでも指揮者が終始ぐいぐい引っ張っていくのが効いていて。こないだ聴いたマーラー1番と似たようなざくざく進んでいくような厳しさがここでも味わえました。

そして普段はあんまり好きではない第3楽章の演奏が素晴らしかったです。アンサンブルが一番ぴたっと合ってたのがこの楽章で、そのぴたっと具合が音楽的にもものすごく効果的でパワフルでした。
第4楽章の剣のような鋭さもかっこよかった。あのエッジは生で聴いて肌で感じてこそ。

ということで冬にこのブラームスを味わえてよかったですしコンサート全体楽しかったです。
まだまだ夜も寒い日が続きますが色々コンサートやってるのでめんどくさがらず聴きにいきたいです(と自分に言い聞かせる)。


今日の一曲: Peter Scuthorpe Sun Music III



コンサートでやった曲は要フォローアップなのでSculthorpeの曲を紹介。
作品数も多く、初聴きでちょっと聴きやすくないものもあるので私だったら初めてのSculthorpe候補としてこの曲をあげるかな、と。
実際この曲も大学のオケでやったときはみんな最初はそんなに好評でなかったのですが弾いているうちにみんな口を揃えて良い曲だと言うようになった、やっぱ最初の印象だけで音楽を決めるもんでもないな、といういい例だったり。

前述のとおりSculthorpeは音楽におけるオーストラリアのアイデンティティを確立した作曲家で、特に白人としてのオーストラリアの文化のルーツであるイギリス(ヨーロッパ)でなく地理的に近いアジアの音楽文化に目を向けた人でもあります。
(実際オセアニアとはいいますが原住民含めた文化はオーストラリアはNZや他のオセアニア諸国よりもアジアに近いんですよ)
その試みの代表的な作品が4つのSun Music。オーケストラのために書かれた作品で、特にユニークな打楽器群が活躍するのが特徴的。

 4つの中で多分一番聴きやすいSun Music IIIで活躍するのはビブラフォーンをはじめとした金属の打楽器たち。東洋の音楽で使われるペンタトニック(五音音階)を奏でるビブラフォーンや、小さいシンバル(Crotales)をつなぎ合わせ打ち合わせる音や、とにかく金属の音が魅力的。

金属の音といえばこの曲はトロンボーンのソロがとても好きで。大きいソロではないのですがトロンボーンのゆったりした音が味わえるのがいい。そして控えめ音量でも魅力的だってのもまた好き。

結局(少なくとも私から見ると)Sculthorpeや他のオーストラリアの作曲家が見いだした「オーストラリアの音楽」はこの曲ほどアジア寄りでもなかったのですが、でも影響は確かにあるような。どこが、と言われると難しいのですが。でもやっぱりつながってる。

Sculthorpeの音楽は大学の図書館で借りれないのが多く、置いてないのも少なくないのでなかなか聞けていません。とりあえずリンクしたCDは買ったのですが。
これから自分が聴きたいSculthorpeの作品は(とりあえずのところ)レクイエムとKakaduあたりかな。そしてクロノス・カルテットが弦楽四重奏曲を演奏してるのでそちらもいずれ。
まだまだ勉強することたくさんで追いつけない!生で聴く機会もあるといいなあ・・・


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