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3日ぶりに夜家でゆっくりできてちょっとほっとしています。コンサートに行くのもリハーサルに行くのも楽しいですが家でだらだらするのも大事。
とりあえず今日は日・月のコンサート2つまとめて感想。
日曜日はオーストラリア国立音楽アカデミー(ANAM)によるメシアンのオーケストラ作品「峡谷から星達へ・・・」の作曲40周年のコンサートでした。なんでもオーストラリアでは1988年にメシアンが来豪して演奏して以来(クイーンズランド州だっけ)26年演奏されてないとのこと。ただその時に聴きに行ったという人が何人かいるのがすごい。意外と上の世代の音楽家にメシアン好きが(同世代よりも)多いのはメシアン来豪の影響があるのかな・・・?
「峡谷から星達へ・・・」コンサートの詳細は:
指揮:Fabian Russell
演奏:ANAMオーケストラ
(ピアノ:Jacob Abela、ホルン:Ben Jacks、鉄琴:Peter Neville、シロリンバ(木琴の一種):Kaylie Melville)
この曲はCDも持ってて結構よく知ってると思ったんですが生で聴くと入ってくる情報の量が段違いで前半頭がついていかなかったです(汗)意外と聞き流してるんだなー・・・
ちなみにオケ作品といっても44人編成(主に弦が少ない)の小規模オーケストラ。こぢんまりしているというよりは複雑な諸々を実現するためにそぎ落とした少数精鋭、という感じです。なので室内楽的とまではいかないながらもタイトなアンサンブルでした。さすがはオーストラリアの精鋭。
何よりピアノの安定さが強く印象に残りました。こんなに複雑な作品をオケと一緒に弾いてるからってのももちろんあるんですが自分も(少なくとも20のまなざしは)あれだけ安定したメシアンを弾きたいです。
あとホルンの強い音色もかっこよかった。独奏の部分ももちろんですがその他ソロがある部分でも。そしてやっぱりオーストラリアでメシアンを振るのはFabianだよなーと。指揮のテクニックもそうですが頭脳に関しても。(しかも2日前に全く別のプログラムを別のオケで振ってたっていうんだからさらにすごい)
それからこのコンサートはプログラムのデザインが鳥をあしらったり白黒の細い線のデザインでまとめたり素敵でした。永久保存版。
そして月曜のコンサートはこちらでも何度も紹介しているトリオPlexusのコンサートでした。
プログラムはこちら。全曲世界初演です(作曲家は5人中3人来てました)。
Plexus 「Spotlight」
バイオリン:Monica Curro、クラリネット:Philip Arkinstall、ピアノ:Stefan Cassomenos
Jose Hernan Cibils「Chacarera Rara」
Gerard Brophy 「Trinity (Three Meditations)」
Robert Davidon 「Lost in Light」
Julian Yu 「Classical Stories」
Larry Sitsky 「Blood from the Moon」
Julian Yu(中国生まれのオージー)は日本にも縁のある作曲家みたいですね。銀座のヤマハに楽譜が置いてあるの見たことがあります(あそこに楽譜置いてあるラリアの作曲家ってVineとYuくらいなんじゃないかな)。
今回演奏された作品はパロディーというかパスティーシュというかユーモアが強い曲で、聴きやすかったりわかりやすかったりはするものの奏者・聴衆共に評価は分かれるようでした。うまいこと書かれてはいるんですけどね、その曲の目的に対して。
必ずしも分かりやすかったり聴きやすかったりするという意味での「ウケの良さ」が聴衆にとっての「ウケの良さ」、音楽体験の全てじゃないんだな、ということが実感されたケースでした。(これは巷のクラシック関連諸々に対しても言えることですね)
むしろポジティブな反応が多かったのはSitskyの作品でした。Sitskyの作品にしては(これまでのピアノ作品と比べて)比較的わかりやすいとはいえど難しい音楽で。でもものすごく魅力的でした。Sitskyの音楽には説明できないけど惹きつけられる物がどうもあるようで。特にこの「Blood from the Moon」は月を題材とした曲にはちょっと珍しいほどの禍々しさが素敵。是非録音が欲しい。
で、実は今年そのLarry Sitskyの80歳の誕生日ということでコンサートの後にケーキでお祝いしました。80歳っていったらうちの先生よりも10年近く年上ということでなかなか想像がつかない。
ただあんな難解な音楽を(しかもこの年齢で)書いた人とはちょっと思えない穏やかでユーモアのある人でした。奥さん共々まだまだ元気で、トリオのバイオリニストのMonicaの家族(家族ぐるみで長い付き合いだそう)にまつわる音楽こぼれ話をいろいろしてくれました。
その中で特に面白かったのがオケ作品「Apparitions」の作曲に関する話。Monicaのお父さんであるJohn CurroはSitskyにピアノを習っていて、指揮者になってからも日頃からSitskyの音楽は前衛的すぎる、みたいなことをしょっちゅう愚痴っていたそうで。そんな彼がクイーンズランド州のユースオケが演奏するためにSitskyに作曲を依頼したそうです。
その際になんかあんまり前衛的な音楽にしないで欲しい的なことをJohnが言ったらしく。「ハ長調って知ってる?」みたいな感じだったかな。で、結果Sitskyは20分強の曲のほぼ全ての音がド・ミ・ソ(ハ長調の主和音)になっている曲を書いてよこしたそうです。(しかも最後の音が+シ♭で属七和音になっているというおまけ付き)
音がドミソしかないまま20分強ということで弾いている人はもちろん、指揮する方も曲のどこに何があるのかものすごくわかりにくい。話によるとJohnはこの曲は「生涯振った曲で一番難しい」と言ったらしくドレスリハーサルでもオケに「みんなどうか助けてくれ」と請うたそうで、完全にぎゃふんと言わされたのでした。
しかしSitskyはそれをチャレンジとして曲(音楽としても結構いい曲らしい)を書き上げたのもすごいですが人1人ぎゃふんと言わせるのにオケ1つ巻き込むのもすごい。
実は今こうやって現代の、特にオーストラリアの作曲家の作品と演奏家の演奏を楽しんでいる間にも国の政府が国営放送ABCの財源を大幅に削減して、それが人員削減に繋がったり、さらにこういったコンサートの録音やラジオ放送(私もtwitterやここで紹介してます)に多大な悪影響を与えたりしていて、オーストラリアのクラシック音楽界、特に現代のオーストラリア人による作曲・演奏に関しては非常にゆゆしき事態を迎えています。
こっちで参政できないのが今本当に悔やまれるのですが、とりあえず自分が好きで楽しみにしている音楽の諸々への影響がなるべく少なくすむよう願っています。
長くなってしまったので今日の一曲はお休み。
とりあえず今日は日・月のコンサート2つまとめて感想。
日曜日はオーストラリア国立音楽アカデミー(ANAM)によるメシアンのオーケストラ作品「峡谷から星達へ・・・」の作曲40周年のコンサートでした。なんでもオーストラリアでは1988年にメシアンが来豪して演奏して以来(クイーンズランド州だっけ)26年演奏されてないとのこと。ただその時に聴きに行ったという人が何人かいるのがすごい。意外と上の世代の音楽家にメシアン好きが(同世代よりも)多いのはメシアン来豪の影響があるのかな・・・?
「峡谷から星達へ・・・」コンサートの詳細は:
指揮:Fabian Russell
演奏:ANAMオーケストラ
(ピアノ:Jacob Abela、ホルン:Ben Jacks、鉄琴:Peter Neville、シロリンバ(木琴の一種):Kaylie Melville)
この曲はCDも持ってて結構よく知ってると思ったんですが生で聴くと入ってくる情報の量が段違いで前半頭がついていかなかったです(汗)意外と聞き流してるんだなー・・・
ちなみにオケ作品といっても44人編成(主に弦が少ない)の小規模オーケストラ。こぢんまりしているというよりは複雑な諸々を実現するためにそぎ落とした少数精鋭、という感じです。なので室内楽的とまではいかないながらもタイトなアンサンブルでした。さすがはオーストラリアの精鋭。
何よりピアノの安定さが強く印象に残りました。こんなに複雑な作品をオケと一緒に弾いてるからってのももちろんあるんですが自分も(少なくとも20のまなざしは)あれだけ安定したメシアンを弾きたいです。
あとホルンの強い音色もかっこよかった。独奏の部分ももちろんですがその他ソロがある部分でも。そしてやっぱりオーストラリアでメシアンを振るのはFabianだよなーと。指揮のテクニックもそうですが頭脳に関しても。(しかも2日前に全く別のプログラムを別のオケで振ってたっていうんだからさらにすごい)
それからこのコンサートはプログラムのデザインが鳥をあしらったり白黒の細い線のデザインでまとめたり素敵でした。永久保存版。
そして月曜のコンサートはこちらでも何度も紹介しているトリオPlexusのコンサートでした。
プログラムはこちら。全曲世界初演です(作曲家は5人中3人来てました)。
Plexus 「Spotlight」
バイオリン:Monica Curro、クラリネット:Philip Arkinstall、ピアノ:Stefan Cassomenos
Jose Hernan Cibils「Chacarera Rara」
Gerard Brophy 「Trinity (Three Meditations)」
Robert Davidon 「Lost in Light」
Julian Yu 「Classical Stories」
Larry Sitsky 「Blood from the Moon」
Julian Yu(中国生まれのオージー)は日本にも縁のある作曲家みたいですね。銀座のヤマハに楽譜が置いてあるの見たことがあります(あそこに楽譜置いてあるラリアの作曲家ってVineとYuくらいなんじゃないかな)。
今回演奏された作品はパロディーというかパスティーシュというかユーモアが強い曲で、聴きやすかったりわかりやすかったりはするものの奏者・聴衆共に評価は分かれるようでした。うまいこと書かれてはいるんですけどね、その曲の目的に対して。
必ずしも分かりやすかったり聴きやすかったりするという意味での「ウケの良さ」が聴衆にとっての「ウケの良さ」、音楽体験の全てじゃないんだな、ということが実感されたケースでした。(これは巷のクラシック関連諸々に対しても言えることですね)
むしろポジティブな反応が多かったのはSitskyの作品でした。Sitskyの作品にしては(これまでのピアノ作品と比べて)比較的わかりやすいとはいえど難しい音楽で。でもものすごく魅力的でした。Sitskyの音楽には説明できないけど惹きつけられる物がどうもあるようで。特にこの「Blood from the Moon」は月を題材とした曲にはちょっと珍しいほどの禍々しさが素敵。是非録音が欲しい。
で、実は今年そのLarry Sitskyの80歳の誕生日ということでコンサートの後にケーキでお祝いしました。80歳っていったらうちの先生よりも10年近く年上ということでなかなか想像がつかない。
ただあんな難解な音楽を(しかもこの年齢で)書いた人とはちょっと思えない穏やかでユーモアのある人でした。奥さん共々まだまだ元気で、トリオのバイオリニストのMonicaの家族(家族ぐるみで長い付き合いだそう)にまつわる音楽こぼれ話をいろいろしてくれました。
その中で特に面白かったのがオケ作品「Apparitions」の作曲に関する話。Monicaのお父さんであるJohn CurroはSitskyにピアノを習っていて、指揮者になってからも日頃からSitskyの音楽は前衛的すぎる、みたいなことをしょっちゅう愚痴っていたそうで。そんな彼がクイーンズランド州のユースオケが演奏するためにSitskyに作曲を依頼したそうです。
その際になんかあんまり前衛的な音楽にしないで欲しい的なことをJohnが言ったらしく。「ハ長調って知ってる?」みたいな感じだったかな。で、結果Sitskyは20分強の曲のほぼ全ての音がド・ミ・ソ(ハ長調の主和音)になっている曲を書いてよこしたそうです。(しかも最後の音が+シ♭で属七和音になっているというおまけ付き)
音がドミソしかないまま20分強ということで弾いている人はもちろん、指揮する方も曲のどこに何があるのかものすごくわかりにくい。話によるとJohnはこの曲は「生涯振った曲で一番難しい」と言ったらしくドレスリハーサルでもオケに「みんなどうか助けてくれ」と請うたそうで、完全にぎゃふんと言わされたのでした。
しかしSitskyはそれをチャレンジとして曲(音楽としても結構いい曲らしい)を書き上げたのもすごいですが人1人ぎゃふんと言わせるのにオケ1つ巻き込むのもすごい。
実は今こうやって現代の、特にオーストラリアの作曲家の作品と演奏家の演奏を楽しんでいる間にも国の政府が国営放送ABCの財源を大幅に削減して、それが人員削減に繋がったり、さらにこういったコンサートの録音やラジオ放送(私もtwitterやここで紹介してます)に多大な悪影響を与えたりしていて、オーストラリアのクラシック音楽界、特に現代のオーストラリア人による作曲・演奏に関しては非常にゆゆしき事態を迎えています。
こっちで参政できないのが今本当に悔やまれるのですが、とりあえず自分が好きで楽しみにしている音楽の諸々への影響がなるべく少なくすむよう願っています。
長くなってしまったので今日の一曲はお休み。
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