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~名もない蛾と虹の錯乱~ 内の思いと外の色彩をつらつらと。
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"The Vampire Armand"感想
やーっと読み終わりました!

Anne Rice "The Vampire Armand" (邦題:美青年アルマンの遍歴)


(日本語版)


(英語)

二言まず言わせてください。
何よりも深い!そして濃い!

あらすじは、というと・・・
ウクライナの田舎に生まれ、とらわれ奴隷として売られるためにヨーロッパに渡ったアンドレイ(アルマンの元の名前)は、マリウスという男に救われ、ヴェネツィアで彼の元で暮らすこととなる。
マリウスはアンドレイをたいそう愛し、愛しそして教育していく・・・が、マリウスは実はヴァンパイアだった。
アルマンとマリウスとの生活、そしてヴァンパイアになったいきさつ、人間としてそしてヴァンパイアとしてマリウスから学んだこと、そして彼らに降りかかった悲劇、時代の移り変わりと共に生きていくということ・・・
アルマンの人間として、そしてヴァンパイアとしての長い長い人生を彼の視点から綴る本です。

実はこのヴァンパイア・クロニクルというシリーズのなかでこの本は6作目ですが、私はまだ1作目とこれしか読んでません。
2作目の"the Vampire Lestat"が図書館で見つからないので・・・(汗)
でもタイトルでも分かるようにこのシリーズの本はヴァンパイアの主要人物一人ずつに密着した伝記スタイルなのでそこまで順番は・・・最終的に全部読めば大丈夫なんじゃないかなーと独断で決めてしまいました。

断っておきますが前半は結構性的描写が多い・強いです。(笑)
アルマンの性癖・・・というものの性質上、異性とだけではなく男同士のものも含まれます。
でもそれもまたこの物語の魅力の一部と深く結びついているような気もします。

この本で見事だと思ったことが3つあります。
1つはヴァンパイアという存在についての深い考察、哲学。ヴァンパイアとは一体「何」なのか、何を信じてこの長い時を生きて行けばいいのか・・・など。
一人称の伝記的な物語とすることによって、個々のヴァンパイアの感情、信仰、哲学などが深く感じられるのが本当に面白いし、素晴らしいと思います。
2つめは「時」の表現。アルマンがマリウスと過ごしたヴェネツィアの昔と、そして20世紀末のアメリカでの・・・ヴァンパイアである主人公達の周りでどんなに時間が変わったか(彼ら自身の精神も不変ではないのですが)、時代がどんなに移り変わり、世界が変わってしまったかということが人間である読者の心にひしひしと感じられます。

3つめはこれはヴァンパイア文学のなかでも随一だと思うのですが、色彩の表現です。
例えばトワイライトシリーズだとわざと色をあまり使わないようにしていますし、ポーの一族もイギリス中心でまた色が限られてきます。他の作品もしかり。
もともとヴァンパイアは夜の生き物なので、色彩の世界ではない・・・はずなのですが、前半の舞台がヴェネツィアで、マリウスが絵描きだと言うこともあって物語の前半がまあカラフルなんですよ!
アルマン自身も「ボッティチェリの天使」と呼ばれるほどですし、見事にその世界の住人で。
さらに、その色彩が物語の中で主人公の境遇と心境などとともに変化していくのもまた見事です。

あと物語を通じてアルマンの名前が変わっていくこともまた自身の認識、アイデンティティについての考えを表しているようで興味深いです。

最初言ったように、全て深い、そして濃いんですよね。
リアルであるというのは違うんですが、本当に心から共感することがたくさん。
それが愛であれ、性行為であれ、価値観であれ、苦しみであれ・・・
本当に心に強く訴えてくる本でした。

映画にもなった "The Queen of the Damned"も興味深いですが、このシリーズからは次はマリウスの物語である "Blood and Gold"を読んで彼の言い分も聞いてみたいところですね。


今日の一曲: ルートヴィッヒ・ファン・ベートーヴェン ピアノソナタ 第23番 「熱情」(Appassionata) 第1楽章



ベートーヴェンのピアノソナタの中で個人的なFavourite・・・という理由だけで今日紹介したのでは実はありません。

なんと!この曲は"The Vampire Armand"で重要な役割を果たしているのです!
20世紀のアメリカでアルマンの新しい心の支えとなった少女・Sybelleが常に(冗談じゃありません。本当にほとんど常にです)弾いているのがこの曲。
彼女は本当にこの曲に思い入れがあって・・・演奏する人はみんなそういう曲がありますが(それはまた別の機会に・・・)、Sybelleはこの曲があれば他に何もいらないくらいの勢いです。

この曲もまた深く、濃いですね・・・
「熱情」、またはAppassionataという異名もこの第1楽章を最後まで聴いていただけたらうなずけると思います。
実際ベートーヴェンの一番光る曲想は悲劇、とか英雄的、とかいうよりもこの「熱情」という言葉に凝縮されているのではないかと個人的に思うくらいです。

弾くにもまたその独特の「手応え」があって。
手にとって、腕にとって、つまり身体にとってものすごく重みというかを感じるんですね。
プラス感情的な重みです。
本当に心の底から前に前に行って表現しないと音楽に負けてしまいそうですわ(初見で負けました、私・・・)。

だいたいベートーヴェンの題名が付いている曲(運命、田園、クロイツェル・ソナタ、月光、etc)は間違いなく名曲ですが、その中でもこのソナタはある意味別格なところもあります。
そして他のどんな作曲家にもまねできないユニークな、何よりもベートーヴェンらしい音楽です。

本では全楽章無限リピートされていますが(笑)、とりあえず第1楽章からどうぞ。


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