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~名もない蛾と虹の錯乱~ 内の思いと外の色彩をつらつらと。
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Oliver Sacks著「Hallucinations」感想
前回のエントリーに拍手ありがとうございます。

メルボルンの現代音楽の祭典Metropolisのメル響のコンサートが明日なので今日更新しちゃおうと思いまして。
Metropolisではメル響のコンサートは明日・来週の水曜日・来週の土曜日と三つあるのですが、映画音楽で有名なTan DunやJonny Greenwoodなど現在活躍中の作曲家、そして20世紀の偉大な作曲家の作品が演奏されるそう。3つともチケット予約しちゃいましたぜー♪未だ出会ってない色んな曲に出会えるのが楽しみ。

さて、マレーシアからの帰りに読み終わったのに感想書くの忘れちゃってたこの本。



以前紹介した「Musicophilia」を書いたOliver Sacksによる「幻覚」についての本です。
幻覚といえば見えるはずのないものが見える、頭がおかしくなった症状、といったイメージを抱く人も多いと思われますが、そういったイメージはこの本で扱う幻覚の実態のほんの1%にも満たない、それだけ広い世界があるのだと分かります。

一言に幻覚といっても色々あります。それが視覚、聴覚など様々な感覚のどれに起こるものか、いつ、どんな病気・状態で起こるものか、図形などなのか、人物などが見えるのか、全く自分に関係ないunfamiliarなものか、それとも特定の感情を引き起こすものか、などなど。
幻覚の様々な形がこの本では言及、説明されていて、さらに金縛り、臨死体験、デジャヴ、幽霊など幻覚と関連あるの?と思われる現象についても話が出てきます。

「Musicophilia」でも書いたと思うのですが、Sacks博士の本で大きな魅力となっているのが症例の面白さ。よくこんな面白い患者さんに出会うなーと思います。(あと歴史上の話もでてきたりするんですよね)
今回題材が幻覚、つまり患者さんだけに見えたりするものなので患者さんがそれをどう説明し、語るかというのがものすごく大事になってきます。そういうところもこの本で面白いポイントになっていますし、なにより貴重な体験談です。
さらに今回その症例としてSacks博士自身の話も出てきます。「そこまでするか!?」と思うようなちょっと危ない話なのですが・・・(汗)

この本に出てくるとおり幻覚とは様々な原因や状態で起こって、その起こり方は人それぞれで。必ずしも頭がおかしい人だけに起こるものではなく、割と身近な現象であること。
さらにその人それぞれの幻覚の内容、そして幻覚に一人一人が出会ったり向き合ったりしていく体験。
それから人間の脳のこと、そして人間が脳を介して周りの世界をどう見て感じているかというメカニズムが幻覚を通じて分かっていきそうな、そういう意味でも面白いところがたくさんありました。

ちなみにこの本が出版されたのは2012年。幻覚・脳についてこれだけの事が分かりかけつつあるのだったら10年後、20年後はどうなってるだろうとわくわくする本でもありますね。
またそのうちSacks博士の面白い症例の話も読みたいですし、この本で言及されてる文献や著書、これからの研究なんかにもアンテナ張っていきたいと思います。

さて次回はMetropolisコンサート(第1弾)の話になるかな。
ちょこちょこコンサートが続きそうですがゲームの話とかもしたいぞー。


今日の一曲: グスタフ・マーラー 交響曲第2番「復活」 第4楽章「原光」



前回のswoonな曲から1曲。自分の好みの傾向の関係でマーラーの交響曲のなかでも2番を語れる機会はそうないのでできるときはやっとかなきゃ。

マーラーといえばあらゆる意味で大規模な、世界まるまる一つのような交響曲を書くことで有名です。2番も例外ではなくとんでもないmassiveさの交響曲です。
ただ2番の魅力はなんといっても後半の昇天するような美しく繊細な音楽。この第4楽章は正に時が止まるような美しさ、静けさ、そして神々しさを持ち合わせています。

暖かく純粋なアルト歌手(あれ、前回メゾソプラノって書いてたかも)のメロディー、そしてここまでの音が嘘だったかのように繊細で神々しい金管のコラール、下から優しく支えるコントらファゴット。変ニ長調をベースとしたデリケートな色彩の和音の連なり。
Ulricht=原光、はじめの光の名にふさわしい音楽ですね。

マーラーは9つ+α交響曲を書いていて、ソロ歌手や合唱が入る作品も少なくないのですが(あとオケ伴奏歌曲も色々書いてる)、こういう風に歌付の短い楽章を挟むやりかたって珍しいかもしれませんね。元々美しい曲ですが、歌曲としてではなく交響曲だからこそその美しさが際立つんじゃないかなと思います。
この曲で時が止まるというのも曲の美しさ、書かれ方に加えて交響曲の楽章間に挟まってること、そしてその挟まり方が絶妙だからってのもあると思います。全てマーラーの計算通りですよ。

なので第4楽章聞いても十分心が洗われるような体験になると思いますができればこの地球規模の交響曲全体を味わって欲しいと思います。
他の楽章も魅力的ですしね!私は第3楽章も大好きです。マーラーのユダヤsideがにじみ出てるスケルツォ。マーラーのちょっと重めで闇のあるスケルツォはいいですなー。

そしてあった!シュテンツ指揮のメル響の演奏!やっぱりこの曲はこの組み合わせでお勧めしたい。試聴はリンク先にはないですが多分これが同じ録音。是非第4楽章から試聴してみてください~

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