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~名もない蛾と虹の錯乱~ 内の思いと外の色彩をつらつらと。
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終わりに近づく
さっそくお知らせから。

Zelman Symphony Orchestra
「End Games」
12月1日(土)午後8時開演
Performing Arts Centre, Camberwell Grammar School
指揮者:Rick Prakhoff
フランツ・ヨーゼフ・ハイドン 交響曲第104番「ロンドン」
リヒャルト・シュトラウス 四つの最後の歌(メゾ・ソプラノ:Miriam Gordon-Stewart)
ヨハネス・ブラームス 交響曲第4番
昨日はリハーサルでした。今週末本番ですが明日もリハーサルがあります。今年弾いた他の諸々よりは難易度は低いかなと思われるプログラムですが必要な木曜リハーサル。
特に私が弾いてるシュトラウスはソリストとのリハーサルが昨日と明日だけ。どんなに歌手がうまくてもオケ側もものすごく細やかに対応しなきゃいけない曲なのでバランスとかブレス調整とかしっかり確立しておく必要があります。

それとは全く別に色々歌曲に使われてる詩を調べてて、漢詩って(マーラーの大地の歌以外で)どんな風に使われてるかなーと思ったら出会ってしまったAlec Rothの「Songs in Times of War」。しかもマーラーで使われてない杜甫の詩。しかも前Plexusが弾いた曲で題材になってたやつ以外で結構好きな詩が使われてる。さらにさらに試聴してみたら古き良き、ではないですがイギリスの歌曲のスタイルをベースにした感じでツボなだけでなく(西洋音楽の中では)杜甫の詩と比較的相性がいい。(たとえば李白はマーラーとかシュトラウスが楽しそうですけどね)

それとシュトラウスとこないだのハムレットと総合して思うのはすでに完成している詩や戯曲という言葉の作品が音楽と組み合わせることでまた違う地平線が広がってくることの不思議。
もともと自分があんまり歌を聴いてて歌詞が聞こえにくいってのもあるのですがどんなに詩を読み込んでも感覚的に入ってこないことが楽器パートまで含めて聴いてすっと通じることがどれだけ多いことか。
それは言葉だけじゃ足りない、ということではなく別の入り口から入って違った角度で見れるってことのはずで。何はともあれ同じ作品でも複数回新鮮に楽しめるのはお得な感じです。

逆に楽器パートから歌とか歌詞の役割を見る、という角度だともっともっと複雑な話になってきます。たとえばリストによるシューベルトの歌曲のピアノ編曲だったりワーグナーのオペラのオケのみ版とかで言葉がなくて完成度に欠けるところがあるとは思えないし、そもそも言葉がないというのと声がないというのの違いがどうとか、あとヴォカリーズだったりクラムの作品みたいな「言葉でない楽器的な声の使い方」なんてのもあるし、かなり交絡因子が複雑で自分の頭では分けて考えられないなあ。

でも歌曲って必然的に「出会い」の数が単純に増えるから面白いですね。
まずは作曲家が詩とかの文学作品に出会って、そこから例えばあんまり文学に明るくない私みたいな音楽畑の人が音楽を通してそういう作品に出会って、そこからまた他の歌や詩とかに興味が広がっていく、作品だけでなくて出会うプロセスそれぞれも面白い。
(ただ未だに文学方面の興味が音楽を通した出会いに頼りっきりで例えばスペイン文学なんかはほぼロルカしか知らないことにこないだ気づきました。ちょいと反省です)

今回のコンサートで弾く「眠りにつくとき」(チェレスタ唯一の出番の第3楽章)もヘッセの詩なんですがヘッセは短編小説はあんまりはまらなかったんですよね。でもこの詩は好き。ほんと何があるかわからない。ついでに言えばラヴェルの「夜のガスパール」の元ネタの詩を作ったベルトランは他にどんな作品があるんだろうとか思って調べたら見事に音楽関連・夜ガス関連の話ばっかり出てくるんですよね。何がきっかけで作品や詩人が有名になるかもわからない。

シュトラウスの四つの最後の歌は(チェレスタパートは小さいながらも)ずっと弾きたかった曲で、今週で終わりなのがちょっと名残惜しいです。でも弾く機会があってよかった。来年も良い曲が弾けるといいんだけどこればかりは指をクロスするしかない。


今日の一曲: リヒャルト・シュトラウス 「四つの最後の歌」より最終楽章「夕映えの中で」



Twitterの方でもつぶやいたのですが第3楽章だけ弾いて詩もいいし音楽も美しいしで相当あの楽章に愛着があるんですけど、やっぱりソリスト付きで全部聴くと最終楽章は他と違う何かがある。格別な作品です。

そもそもこれだけ詩の作者がヘッセじゃなくて(アイヒェンドルフの詩)一番最初にこの楽章が書かれたけど最後に配置される(それに作曲家がどれくらい噛んでるかはちょっと不明なのかな?)思い入れとか、先ほどの「出会い」の話の続きですがそういう経緯も含めてこの曲に特別なものを感じます。

オケの使い方もちょっと歌曲の伴奏という表現の範囲を超えてる感があるんですよね。例えばマーラーの歌曲の(ソリストがマイクなしで一人で歌ってるのに)がっつり交響曲並に世界観を書き込むのとはまたちょっと違う、人物がいなくてもしっかりメインとして成り立つ風景画みたいなさりげないけど鮮やかなオケ使い。

この楽章の自分のイメージというか思い入れはもういろんなところで書いたり話したりしてるような気もするので今回はぐっと我慢して割愛。
そういえば前うちのピアノの先生がシュトラウスの最後の4つじゃない別のオケ伴奏の歌曲のピアノ編曲版をアンコールで弾いてたのですがそういうのってどれくらい数&質があるんだろうな。そのうち探したり弾いたりしてみた方がいいのかもしれない。

手持ちの録音はエリザベス・シュワルツコップが歌ってるのですが録音の古さもあってちょっと古い感じに聞こえてしまうのがおすすめする上で悩み。人の声って美しさそのものは時代を超えても不変なところはあるけどやっぱりちょっと昔と今では(楽器以上に)好まれやすい声って変わるのかなあ、と思いつつルネ・フレミングにしてしました。手持ちにするにも今の録音プラスもっと最近の録音が欲しい気持ちがあります。将来的に検討したいところ。

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もうすぐ12月なのに
異常気象が通常運転なメルボルン。
こないだまで冷たいおそばを家で食べてそば湯うまいなーとかいう日もあったのに今は春とは?夏手前とは?みたいな気候になってます。Falls Creekなんかスキーも出来てもともと涼しい地方ではありますが11月の終わりに吹雪いて雷雪嵐とかびっくり。


こないだの毛糸でこれ編んでますが夏がちゃんと来る前に余裕で編み終わりそうです。10 ply=並太の毛糸なんですぐ進む(ただし間違えて毛糸の中に引っかけたりとかするてまどいはありますが)。リハーサルの帰りの長いトラム&トラム旅にとってあります。

そうそうリハーサルですよ。今週も行って来ました。

Zelman Symphony Orchestra
「End Games」
12月1日(土)午後8時開演
Performing Arts Centre, Camberwell Grammar School
指揮者:Rick Prakhoff
フランツ・ヨーゼフ・ハイドン 交響曲第104番「ロンドン」
リヒャルト・シュトラウス 四つの最後の歌(メゾ・ソプラノ:Miriam Gordon-Stewart)
ヨハネス・ブラームス 交響曲第4番

まあ前も書いたようにいくつか和音をぽんと弾くくらいのパートで、しかも古い小さい型のチェレスタで聴衆にはどれくらい聞こえるかなーというところです。いつものホール(Xavier College)ならある程度は通るかもしれませんが今回のホール(前ショスタコ13番のリハーサルでも使いましたが)ではどうだろう。
そしてまだ天気予報は出てませんが12月でも多分演奏服の下にヒートテックの可能性大です。まあそれくらいは珍しくないっちゃあないんですがね。

ちなみにこちらのオケはまだですがもう一つお世話になってるStonnington Symphony Orchestraの方はレギュラーシリーズのコンサートが終わって来年のプログラムが発表されてたり。ピアノが結構入ってるんですよこれが。2つのオケの兼ね合いをなんとかしてなるべくたくさん弾きたいです。

メルボルンでは暦の上では夏とはいえ12月ではそんなにがっつり暑くなるわけじゃないんですよね。特に夕方とか夜は涼しめが普通。
そんななか12月22日に豪サッカーA-LeagueのMelbourne City vs Melbourne Victoryの観戦に行くことになりました。いわゆる「メルボルン・ダービー」と言われる同都市チームの対戦カード(試合を選んだのは私、席は妹が選びました)。ちなみに今週末のシドニーとMelbourne Victoryの対戦だと"The Big Blue"(両チームの色と「Blue」=喧嘩や激しい口論(青痣にかけて?)が由来)と呼ぶらしいです。欧州に比べると因縁の歴史も浅いですがやっぱりシドニーとメルボルンはライバル同士扱いですね。

12月も楽しみなこと色々ありますがその前に今週末はメルボルン・ペンショーに参戦予定。
今年は色々日本でも買い物してるんで(ということもあってこの時期は冷静に遊びに行けます)とりあえずインクくらいなら欲しいものがあったら買ってもいいことにはしてあります。予算設定ゆるいのは承知です。
例えばRobert Osterからラメ入りインクが色々でてるのに店舗ではみないので来てないかな-とか。去年みたいに色々試したりできるといいなあ。とりあえず空のペンは一つ持ってかないと。

時間が決まってるイベントがないときは暖かい天気の時に外にでるよう諸々調整してますが寒くても雨が降っても動き回らなければなこの期間。暖かくなったらもちょっと遠くも行きたいなあ。いつもの景色と違う景色が見たいです。計画とかしなきゃ。そのうち。多分。


今日の一曲: フランツ・リスト 「2つの伝説」より第1番「小鳥に説教するアッシジの聖フランチェスコ」



オケでやってる曲じゃなくてピアノで練習してるレパートリーから。
鳥関連の曲とあって前々から自分の弾けるレパートリーに加えたかったのですが今回の一時帰国でリストの楽譜をいくつか買ってやっと始めることに。この曲が、というよりは今後「巡礼の年」など晩年のリストの長期プロジェクトにつなげていく一つのステップとしても機能しています(そして今弾いてるスペイン曲もアルベニスの「イベリア」の長期プロジェクトにつなげていくステップでもあります)。

結局弾いてみて楽譜面ほど難しくはなかったですし自分に色々と合う曲でした。ものすごくがっつり愛してるって感じじゃないですが好きですこの曲。正確さと繊細さと幅と遊び心と自分の演奏に色々なことを教えてくれている気がします。ただ自分が弾くと全然荒くて雑ですがね。あと幅にも両方向問題あり。まだまだ要修行でし。

もちろんメシアンとかもっと正確に描写してる鳥の曲を弾いてるとどうしても「ピアノ寄り」な鳥の表現ではありますがこの曲の題材になった逸話に出てくるように鳥たちがあたかも一同にリアクションしているような、例えば自然界だとムクドリの大群の飛行みたいに整った動きをしているような感覚があってこれはこれで面白いなと思う描写です。色々な作曲家の鳥の曲をレパートリーに増やして弾き比べしてみたいですねえ。

2つの伝説セットで色々録音がありますがリンクしたのはピアノソナタロ短調、そして悲しみのゴンドラ2つを合わせたアルバム。悲しみのゴンドラは前チェロ+ピアノ版を友達のコンサートで聴いてちょっと気になってます。地味さはあるけどなんとなく難解さも感じるのでいずれそちらも。

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コンサート感想ダブルで
あらーちょっと書いてないうちにまたコンサート話に。しかも金曜と今日で二つまとめての感想に。なので早速。

金曜の夜はRichmondに恒例の友人のコンサートシリーズに。今回はソロ・デュオ・トリオが楽しめるプログラムでした。

Soiree on the Hill
St. Stephen's Anglican Church, Richmond
ピアノ:Tristan Lee、チェロ:Blair Harris、バイオリン:Francesca Hiew
フランツ・リスト ペトラルカの3つのソネット(「巡礼の年」第2年より)
アルヴォ・ペルト Spiegel im Spiegel
ドミトリ・ショスタコーヴィチ ピアノソナタ第2番

当初はもちょっと違うプログラムと書いてあったのですが弦楽器奏者2人がAustralian String Quartetで活動していたり(=州外に行ったり含め)していたこともあり以前も弾いたペルトとショスタコが組み入れられました。ただショスタコはかなり長く知ってるし聴く機会も多い曲ですが何度聞いてもその強烈さには慣れないですね。それは素晴らしいことなんですけど。

リストに関しては個人的にこれまでのトリスタンの演奏のベストだと思いました。本人は暗譜がーとか言ってましたがそういうことを言ってるんでないのですよ私は。音そのものだったり音とその向こうにある詩にある感情だったり質感みたいなものを扱うにあたってこんなに繊細に響く演奏は聞いたことないと素直に思いましたね。「巡礼の年」は近々自分も着手するけどハードルが上がるばっかりです(良いことではあるんですけどね)。今度彼がフルで演奏するリサイタルに行けないのがほんと残念(せめてリハーサルの時間がもちょっと後だったらなあ)。

そして今日行って来たのはメル響(というかそのartist in residenceという位置づけのPlexus)とビクトリア国立美術館(NGV)の主催のコンサートイベントでした。
NGV International(別にオーストラリアの美術に特化したNGV Australiaもあります)といえば無料で入れるステンドグラスの天井の中世風の大広間が有名ですが今回はその大広間でそのステンドグラスや飾ってある大きなタペストリーの作品・作者にもトークで言及しながらの演奏でした。(そもそもあれタペストリーだったんだ・・・)芸術作品ができる過程の人と人の協力の話などもあって面白かったです。

MSO at NGV: Plexus & Roger Kemp
バイオリン:Monica Curro、クラリネット:Philip Arkinstall、ピアノ:Stefan Cassomenos
Robert Cossom 「Lux Aeterna」(打楽器:Robert Cossom)
Mary Finsterer 「Julian Suite No.1」より第1楽章「Nobility」
Luke Speed-Hutton  (タイトルがプログラムに書いてなかった)(打楽器:Robert Cossom)

ちなみにFinstererは前も演奏された曲、Lux Aeternaは以前演奏されて今回打楽器パートを足した新バージョン、そして最後の曲は全くの初演。そういう意味でも面白いプログラムでした。

今回の演奏場所はいつもPlexusを聴くMelbourne Recital CentreのSalonと同じく横長のスペースですが広さに関してはずっと大きく、音響ももちろん変わってきます。コンサート後でモニカも話してましたがこういう場所だとトリオに打楽器を加えることで音の響きがぐんとよくなるのがほんと面白い。今回使ってた打楽器は銅鑼だったりcrotaleだったり音の余韻を楽しむ楽器が多くてピアノ・バイオリン・クラリネット(と今回なぜかリコーダーも担当)がカバーできない音の響きをううまく補えていたように思えました。

そしてRob Cossomはメル響ではシンバルのスペシャリストですが打楽器のいろんな方面に造詣が深く広く。そういう人が打楽器とそれ以外の楽器のミックスのために音楽を書くってのは非打楽器奏者の作曲家とはかなり視点が違うんだろうなあ。今回は「打楽器を足す」という形になったけどそもそも打楽器の音から音楽を見ているんですよね。なかなか想像がつかないや。

私が弾くコンサートももうすぐですが(お知らせしてないなー)メルボルン全体コンサートシーズンが終わりに近づくこの季節。Plexusはあと1回コンサートがあるそうですがいけるかなー。今年はPlexus分ちょっと少なめでしかも今日は無料イベントだったのでなんか貢献が足りないような気持ちなのです。そしてまだまだ新しい曲に出会いたい。


今日の一曲は久しぶりにお休み。リストとも考えたけどまたこんど改めて。


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コンサート「Celebrating Brett Dean」感想
昨日はシティで事件もあり少しショックを受けてはいましたが電車も通常運転でその後もシティの中を通らずコンサート場所までいけたので何ら予定を変えることなく久しぶりのコンサートに行って来ました。改めて見てみると一時帰国から戻ってきて初コンサート。相当久しぶりだなあ。

今回行ってきたのは国立音楽アカデミー(ANAM)によるBrett Deanの作品をフィーチャーしたコンサートでした。
国立アカデミーといえばサウスメルボルン・タウンホールを拠点に授業、レッスン、一部コンサートなどもそこで完結していますが2週間ほど前にその建物の天井が崩壊したり水漏れがしたり、リサイタルなどの試験を含め学業に多大な影響が出たそうで。今回のコンサートもリハーサル期間が短い上にゲスト含めかなり大きい編成のオケだったのでリハーサル場所を確保するのも苦労だったはず。ただそんな事情は演奏には全然出てませんでした。

コンサートの詳細は以下の通り。
Celebrating Brett Dean
国立音楽アカデミーのオーケストラ
指揮:Brett Dean
Richard Meale 「Clouds Now and Then」
Brett Dean  「From Melodious Lay」(ソプラノ:Lorina Gore、テノール:Topi Lehtipuu)
(休憩)
Lisa Illean 「Land's End」
Georges Lentz 「Jerusalem (after Blake)」

4曲とも作曲家はオーストラリア人(しかもDean以外これまで聞いたことなかった作曲家)、そのうち3人は現在活動中、そしておそらく全曲メルボルン初演という超がつくほどフレッシュなプログラム。Brett Deanというおそらく世界で一番すごい(ものさしはまあそれぞれですが)作曲家が選ぶオーストラリアのオケ作品というのもいいですね。

Mealeの曲はなんと松尾芭蕉の俳句「雲をりをり人をやすめる月見かな」が題材となっています。それを感じ取るかどうかは聴き手次第と思いますがオケが作り出す様々のtextureが月の前を通り過ぎる色々な雲の質感にも通じるものがあるなと私は思いました。打楽器とか金管楽器とかその組み合わせ方がオーストラリアの作曲家ちょこちょこ面白いことしてる印象がありますねー。

Brett Deanの新しい曲を聴くのはソクラテス以来になるのかなあ、ソクラテス再演ももちろんですが新しい作品ももっと聞きたい!と思ってていろんなメルボルンじゃない都市で新作オペラ「ハムレット」上演の話を聞いては転がり回っていたので今回のハムレット題材の「From Melodious Lay」は聴けてほんと嬉しかったです。もう聴いてこの複雑さ、ドラマチックさ、これを望んでいたんだ!という気持ちでいっぱいに。難しいけど爽快さがあるんですよね。あくまでも声楽付きのオケ曲というフォーマットですが円熟したtheatre作品という雰囲気があって素晴らしい。テノールの方の声とあとその歌うパートもブリテンの作品を連想したり、あとソプラノの方の声がちゃんと現代オペラな感じなんだけど可憐さもあってすごいオフィーリア。

Illeanの作品は打って変わってぐっと編成を小さく絞った作品。弦を中心としていろんな楽器の組み合わせや音の繊細なバランスが絶妙な音楽でした。休憩後のトークで後半の作品は「水」のイメージが強いと言及がありましたが固体でもなく気体でもない存在感と流れ方の表現が好き。他の曲が思考の頭をがんがん使う曲だったのですがこの曲はフィーリングで聞くのを大事にしたくなります。

そして今回のフィナーレ「Jerusalem」。面白い曲でした。Deanの曲と肩を並べるくらい、というか同じプログラムである意味正解ですがよく並び立たせたなという。なにより大編成のオケ(ホールの後ろにも打楽器+エレクトロニクスあり)でのパワフルなというか爆発的なサウンドが真っ先に印象的。もっとでかいホールでやった方がよかったかもと思うくらい。でも最初がフーガになってたり複雑なようでシンプルな要素もあったり、なんか明確に響いてくることも多かったり。そしてそんな巨大な世界観から最後「携帯電話を使ったエレクトロニクス」といういわば手のひらにおさまる音楽に変化するというアイディア&結果のエフェクト。ものすごく魅力的な曲だし圧倒されて掴みきれないこともあったのでまたじっくり聞きたいです。

ということでガチなシリアスの曲4つを立て続けに聴いて思考もフル回転でしたが心の方も色々衝撃を受けるコンサートでした。でもなんか知らない曲ばっかり聴く新鮮な感じやっぱりすごく好きです。(今年はPlexusのコンサートあんまり行けてないので・・・)
自分もそういう刺激をちょくちょく受けたいですし、同時にオーストラリアの音楽を支え続けたいと改めて思いました。まずはもっと国内でBrett Deanの音楽を!特にtheatre作品は難しいけどかなり受けが良いんじゃないかと思うので個人的に推したいです。


今日の一曲: Brett Dean 「From Melodious Lay」

(録音はまだない!)

普段はここでは手元に録音がある作品を主に紹介してますがとにかくBrett Deanは録音が出ないので待たずにどんどん紹介せねば。

今年中にシェイクスピアを新しく読む、という目標は「十二夜」読んで達成しましたがまだまだシェイクスピア読みたい!ということでEmilie Autumn「Opheliac」とこの曲経由で次はハムレットになりそうです。

ハムレットはなんかwikipeで調べたらシェイクスピアの戯曲の中で最長だそうですがこの作品に使われてるのは何らかの原典の部分だそうで。(読むときはもちろん全部読む予定)
それでその部分を抜き出してハムレットとオフィーリアの関係に焦点を当てた作品に仕立てた結果色んなものがものすごい濃縮液になった気がするのは私だけでしょうか。

なんかオケが歌い手を伴奏しているという感じが全然なくてむしろ歌い手がオケをまとって歌い手から放出されたオケの音が渦巻いているみたいな。あと戯曲によくある大げさな自己陶酔的な演出がこの作品ではガチリアルな狂気方面にシフトしていて聴いててずっとすごい。たまに忘れるけどハムレットもオフィーリアもどっちも狂ってるんですよね。

作風としてはオケに前のソクラテスと似たような表現が見られたほかブリテンの戦争レクイエムとかそっちに似た感じもあり、でもさらに歌と楽器の表現のオーバーラップが進化してる印象があって面白かったです。オペラ・・・は実際この作品とどれだけ関連してるのかよくわからないのですがそっちも聴いてみたいです。

オーストラリアの音楽ってかなり幅が広くてなかなか単純に説明できないところもありますが、今回のコンサートで思ったのは意外と(=国民性と比較して)「どシリアス」が得意な作曲家多いなと。アメリカやヨーロッパの作曲家にひけをとらないパワフルな作品が生まれてるのはもっと国内でも海外でも知られて欲しいです。

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ほぼ日で(もうすぐ)一年
一週間ぶりですこんばんは。
世間はメルボルン・カップ周りで賑わってるようですがとにかく天気が不安定な上に今月の主たる買い物はもう済ませてるので家で仕事したりピアノしたりサッカー見たりゲームやったり編み物したりテレビ見たりして過ごしています。来週は暖かくなるみたいなので外も出たいなあ。

↑の事を毎日色々やってるだけで万年筆もそれなりに使います。日本にいってもメルボルンに居ても大体インクは1ヶ月に1回数本詰め替えるくらいのペース。使ってるノートも色々メーカー、スタイルありますが一番使う事が多いのはほぼ日手帳。

去年の一時帰国のときに初めてA5ほぼ日手帳+シンプルなカバー+カバーonカバー+路線図と買って2018年の始めに使い始めもうすぐ丸1年。まだまだ最適化とはいきませんが結構使い道は定まってきたような気がします。
定まってきた結果ほぼ純粋にスケジュール管理に使ってますね、結局。
毎日のアクティビティの記録だったり予定だったり出費だったりちょっとしたバレエのレッスンメモだったり。A5だとそれだけで大分埋まりますね。

ほぼ日が自分の身の回り全体をざーっとカバーする手帳というポジションで、あとサッカーだったりバレエだったりピアノ(あるんですよ)だったり、トラベラーズノートは旅メモ+その他色々だったり、インクの色やsheenをしっかり見せたいならトモエリバ-のノート(ほぼ日とは別)だったり、ペンケースに入れて持ち歩く用のノートもあり、という特化したノートが散らばっている(物理的にも)というシステムかな。あとトラベラーズノートもう一冊漢詩書くのに使いたいかもとか。

システムはあるにはあるんだけどとっちらかってるなーとは思いますね。とはいえ個々で参照したいから別々のノートがあるしほぼ日を増やすとかも違う気がするし。それぞれ求めるものが違うから違うタイプのノートを使ってるわけだし。なかなか悩むところが多いです。

そして振り返って見るとほぼ日に書き込むのに使う万年筆インクの色も大分色々使ってきました。今年はインクもかなりお試ししたり買ったりしたのでそれが反映されてるというのももちろんありますが普段使いに関しては大分落ち着いてきたみたいだし色分けも安定するといいなあ(汗)

さらに手帳以外でも万年筆で書く機会をもっともっと増やしたいとは思ってます。気持ちが落ち着かないときとか純粋に万年筆で書く感触とインクの色を楽しみたいときとかどんな紙に何を書こうかよく分からないのもまた別の悩みだったりします。そういう「unorganized」でフリーな書き物を後押しするノートとシステムが欲しい。

来年の分のほぼ日手帳(中身だけ)ももう買ってありますが日本を発つときに船便で送った荷物の中なのでまだ手元にありません。もうすぐ着くかなあ。あれが届くと大分物欲もおさまるはずなんだけど。

そういえばもう11月、といえば今月末にはメルボルンペンショーが開催されます。すっかり馴染みの店も出展するみたいですし去年よりも万年筆界隈はジャンルとして盛り上がっててラインアップも増えたり広がったりしてるかな?と期待。今年も福袋目当てで早めの参戦予定、そして一応ちょっとならインク買い物したりしても良いことにはしています。インクとか紙・ノートあたり何かいいのがあるかな。試筆もまたあるといいなあ。


今日の一曲: フェデリコ・モンポウ 「歌と踊り」第7番



日本から帰ってきてからのピアノでの練習レパートリーではなんというか演奏のソフトさというか柔軟さというか可塑性というかを学ぶことが多い気がします。特にテンポ面において自分の演奏は堅かったり前のめりだったり、もっと息をする演奏がしたいなあと今練習してる曲を弾いてて思うことが多く。

そんな中でもそんな閉塞感に対する突破口となってくれたのがスペイン音楽2曲。フレーズの終わりの力の抜き方に今になって悩んでる自分にとにかくやさしい。特にこの「歌と踊り」に関しては(第7番に限らずですが)自分が勝手に「ノスタルジー」と呼んでいる、特に大きくないフレーズでも終わりでテンポを落としたり強弱を弱めたりペダルをぼかしたりする遊び、じゃなくて技法で色々試してみたり。これがバッハ(今弾いてる平均律第2巻の嬰ヘ短調はバッハにしても柔軟さを入れる余裕がある面白い曲です)だったりラヴェル(ウンディーヌ)だったりシューベルト(菩提樹)みたいなもちょっと余裕がなくなりがちな曲に応用できるようになるといいんだけど。

そして前この曲集から紹介したときも書いてるかも知れませんがモンポウの和音のちょっとした工夫がニクいですね。聴いててさりげない色彩が粋というのもありますがそういう時に限って彩り担当の音がちょっと届きにくいところにあったり(9度の和音とか)、そういった意味でも。
シンプルだけど、シンプルだから音が抜かせなかったり。

「歌と踊り」だと5番6番が人気で単独で取り上げてる録音もたくさんありますがこの2曲は創作要素が強いため今回弾くのは見送った経緯があり(でもものすごい好きなんですよねこの2曲)。第7番も同じくらい良い曲なのですが入手可能な録音となると全曲録音かな。全曲ついでにモンポウのピアノ音楽全集の録音をリンクしてみました。とはいえモンポウはほぼ小品ばっかり(しかも一つ一つも短め)書いてますしささやかな感じのする作品が多いのでささっと聴いてみるのにとても良いです。演奏する機会があったらささっとプログラムに足したりささっと弾いたりしてみるのにもかなりオススメです。

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