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~名もない蛾と虹の錯乱~ 内の思いと外の色彩をつらつらと。
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MRC Great Performersシリーズ「Maxim Rysanov & Ashley Wass」感想
前々回のエントリーでAge of Wonders 3の次回(初)の拡張で新しい種族が複数追加されると書きましたがフォーラムで今回出るのはこれからいくつか種族が追加されるうちの第1弾として一つ、という指摘がありました。実際の公式開発ブログの本文を見てみるとそうも読めますね。どっちとも読めるんだけど一つと読むのが妥当かな。とりあえずFrostling説が強いですが楽しみにしてます。

さて、昨日はコンサートに行ってきました。おなじみMelbourne Recital Centreでは海外の音楽家を招いてGreat Performersというコンサートシリーズをやっていますが今回はビオラ奏者Maxim Rysanovが来豪ということで、しかもショスタコーヴィチのビオラソナタを演奏、ということで行かないわけにはいかないコンサートでした。

大学やアカデミーでやるコンサートだとビオラ(とピアノ)のコンサートってのは珍しくないのですが、プロレベルだとそもそものソロ演奏人口の少なさかそれとも人口が少なく室内楽・オケでの忙しさでかあんまり聴く機会がないような。
私は不思議な縁からビオラ弾きが周りに結構多く、ビオラという楽器とそのレパートリー(少ないけど!)に心底惚れ込んでいるので今回は本当に楽しみでした。

プログラムはこんな感じ。
2014 Great Performersシリーズ
Melbourne Recital Centre, Elisabeth Murdoch Hall
ビオラ:Maxim Rysanov、ピアノ:Ashley Wass
フランツ・シューベルト バイオリンとピアノのためのソナタ(ソナチネ)ト短調 D.408(M. Rysanov編曲)
ローベルト・シューマン バイオリンとピアノのためのソナタ第1番 op. 105(M. Katmis編曲)
セルゲイ・プロコフィエフ バレエ「ロミオとジュリエット」組曲より3曲(V. Borisovsky編曲)
(少女ジュリエット、騎士の踊り、マーキューシオ)
(休憩)
ドミトリ・ショスタコーヴィチ ビオラとピアノのためのソナタ op.147

今回のこのプログラムではショスタコ以外の3曲が元々別の楽器に書かれた曲の編曲。実際ビオラのためのレパートリーは(特に19世紀以前は)少なく、今でも編曲レパートリーはビオラのレパートリーで重要になっています(ということがちゃんとプログラムで説明してありました)。
ビオラで弾くことによって元々の曲にはない魅力が出てきたり、また別の物語になったり、そういうところがまた良いです。(一般的にビオラが弾くと渋さ、深さ、暗さが増す傾向があります。)

それが顕著に表れたのがシューマンのバイオリンソナタ。シューマンの作品によくある飛び翔るような曲調は(この曲の元自体は知らないですが)バイオリンでは正に燃えながら天を翔るようで、物理的でなく魂や感情、思考の音楽だなという感じがするのですが、このバイオリンソナタをビオラで弾くともうちょっと足が地に着くというか、飛んでっちゃわない感じが魅力的。ブレーキ書けた分燃える部分が増えてパワーが増す。
シューベルトの方はちょっと曲自体がぴんとこなかったのですがシューベルトにしては(ソナチネというどちらかというと小さなフォーマットで)軽い感じがモーツァルトのようで、それにほどよい暗さを維持するのがビオラの音のいいところかな。

プロコフィエフは前述2曲と違って元がオケ(しかも結構大きいオケ)の曲。それをビオラとピアノ2人でどう弾くかと思っていたらなかなかすごいアレンジでした。
ビオラって結構器用な楽器で音域も音色の幅もあり、しかもメロディーから超絶技巧から表現の深さもある楽器。そういった強みだけでなくビオラがオケや室内楽でとにかく伴奏の音型が強い、というのをソロに活かしたのがこのロミジュリの編曲でした。あんなパートやこんなパート、主旋律に限らずがんがんビオラのソロに弾かせてしまう大胆さ。弾く方にもかなり難しそう。でも聴き応えがあってものすごく楽しかったですしもっとビオラで聴きたい曲です。

それからビオラってちょっと音がくぐもったり重めだったりすところがあるのdすが、今回の演奏はこれだけ速い音、重音などを弾いてもずっとクリアで、特に重音(弓で弾いてもピチカートでも)の綺麗に同時に音が出てまっすぐ響くのが印象的でした。特に後述ショスタコでその強さが光りましたね。

そして今回のコンサートで唯一元からビオラのために書かれたショスタコーヴィチのビオラソナタ。ショスタコの最後の作品で、自分にとっても並ならぬ思い入れがある曲。今回生で聴く機会に出会えて本当によかった。(生で聴いたのが覚えてないな。第2楽章だけ友達と弾いたけど)

ちょこちょこ自分の思い描いてるショスタコと違うところはあれど素晴らしい演奏でした。
前述の演奏スタイルの魅力だったり、ショスタコの晩期らしい、ビオラらしい暗さと息の長さが美しく。曲が一つの世界で魂で、他にはない存在感がありました。
暗さといえばピアノの闇もよかったです。ビオラと別々に動く部分も多いながらビオラと同じ闇を語る、低音の質のショスタコらしさ。
アンサンブルとしても良かったのですが作品を通してちょくちょくあるビオラ一人の部分の間の取り方とか音のまっすぐさや姿勢などで作り上げる世界が印象強かったです。

ついでに言えば第3楽章の美しさはほんと前の日に見てきたアステカ展の生死観とすごい対照的でしたね。アステカの文化では自然死は9層の地獄行きで、そういう価値観とこのショスタコのビオラソナタのエンディングの「全うする」感じの差。長い間知ってる曲ですがこのタイミングでアステカ展に行ったことで新しい見方がやってくるとは。

ショスタコのビオラソナタは前述の通り自分にとって特別な曲で、それを語り出すとまた暴走が始まりそうで今はやめておきます。言葉で語れないことも多々ありますし。いつか弾きたいですし、それだけでなくいつか語れるようになりたい。
そしてまたビオラのコンサートに行きたいです。もっと20世紀以降のビオラレパートリーも聴きたいです。(今回聴いたRysanovも音の感じからするともっとそっちが聴きたいですし)

今日の一曲は後から調べたら結構びっくりしたこの曲。


今日の一曲: セルゲイ・プロコフィエフ バレエ「ロミオとジュリエット」組曲(V. Borisovskyによるビオラとピアノのための編曲)より「少女ジュリエット」



実は今回のプログラムによると演奏されるのは少女ジュリエット、騎士の踊り、ジュリエットの死の3曲とあったのですが実際の演奏を聴いてみたら最後がマーキューシオでフィニッシュで。
つまりは元々3曲のみを選んで編曲したんじゃなくてバレエの一部を何曲か編曲したということなんだな、と思って調べてみたらみつかったのがこのリンクした録音
元のバレエの半分以上カバーしてるじゃないですか!どんだけ頑張ってビオラとピアノのため(一部ビオラ2台とピアノのため)に編曲したんだ!(汗)

ロミジュリは例えば作曲家自身によってオケのため、ピアノのための組曲に仕立てられた編曲もありますがそういう場合って割と元のバレエでの物語がちょこちょこっと進む分とかカットする場合も多く。
ただこのビオラとピアノのための編曲は割とカット部分が少なく流れが元々のバレエに近いままになってる箇所が多い。
しかもそのカットしないのが元々のバレエの版に近づけるためではなくカットしなかった部分でビオラの魅力と器量をさらに色々披露してしまおうというものすごいアレンジ。見事に付加価値が付いてきます。

少女ジュリエットはオケの弦楽器の各楽器のオーディションでも課題として登場することがあるほど技巧が問われる曲。オケでないんで若干テンポ落としてクリアさを維持する自由もありますがそれでも難しい。前述のとおりビオラはちょっと音がくぐもりますしね。
ただ速いパッセージも和音も(ジュリエットのドレスを表す)メロディーも、また主旋律でないところも全て魅せてくれるのがこの曲。ビオラって凄い!と驚きっぱなしです。

もちろんこの曲だけでなく他の曲もビオラという楽器をフルに使う面白い&素晴らしいアレンジになってます。某携帯会社のCMなどでも有名な「騎士の踊り」もしっかり聴き応えがある曲になってものすごく気に入ってます。
ビオラのために書かれた曲の素晴らしさももちろんですがこういったビオラ愛とビオラの魅力を引き出す曲も大好きです。
両方のレパートリーからの魅力的な曲の演奏でもっとビオラに惚れて欲しい!


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豪ABC Classic FM カウントダウン100「バロック以前」おおざっぱに感想
前回のエントリーに拍手ありがとうございます。

その前回のエントリーで豪ABC Classic FMが今年のカウントダウンやってたという話をしたのですがその話です。
特集ページとカウントダウン(ほとんどの曲にようつべ動画リンク付いてます)がこちら。ページ右側にあるListen Againで再放送が聞けます。
ちなみに101位から200位までのリストもここにあります。

今回のテーマは「バロック以前」。カウントダウン対象曲の作曲年の下限は決まってなくて、上限はヨハン・セバスチャン・バッハの没年である1750年まで。
前回や前々回と同じく投票が始まる前に曲の追加申請することができるシステムで、投票期間があって先週末6日から9日の間にトップ100の放送がありました。

結構専門外というかあんまり知らない時代の音楽でリアルタイム放送も逃してる(そのうち小分けで再放送聞きたい)なのでそんなに深く感想を書けるわけではないですが毎回恒例でちょっと楽しみにしてて、あとやっぱりラインアップを見ると思うこともあるので少しばかり。

とりあえずトップ10を見てみるとヘンデルの多さ!毎年年末にメル響が演奏する1位の「メサイア」(ハレルヤ・コーラスが有名ですね)を含め実に10曲中4曲ヘンデル作曲。
大バッハ(ヨハン・セバスチャン・バッハ)の曲の中で一番順位が高い曲で5位ですからね(マタイ受難曲)。

大バッハといえばこちらの集計(グラフ拡大はこちら)によるとカウントダウン100曲のうち33%が大バッハの楽曲だったようです。書いた曲も多ければクオリティの高い曲も多く、有名な曲も多い。関係ないですが子供も多い。ただ今回のカウントダウンで大バッハ以外のバッハの楽曲は息子CPEバッハのMagnificatが62位にランクインしたのみ。(200位までだとあと3曲くらいCPEがありますね)

そして全体的な傾向としてイギリス勢強いですね(101位~200位にも強く続いてる傾向です)。とりあえずヘンデルは音楽ジョークにあるように「ドイツとイタリアとイギリスが半分ずつ(でかなり大きい人間だった)」という音楽的バックグラウンドのためイギリス圏での人気が高いですが、他にもパーセル(最高順位は「ディドとエネアス」が7位)やタリス(最高順位は「Spem in Alium」が10位)などちょこちょこランクインしてます。ACOのTimelineでもやってたヘンリー8世の曲とかも200位までに入ってたり。これは英語圏以外だとやっぱり順位が変わってくるのかどうか気になるところです。

「バロック以前」というテーマだとどうしてもクラシック音楽最初の黄金時代でもあるバロック時代がメインになりますね。バロック時代までなら遡っても今の楽器や演奏スタイルでの演奏が通るというか(もちろん当時の楽器やスタイルでも演奏されています)、その後の時代の音楽ともなんらかのつながりがあって演奏のプログラムに一緒に組み込みやすい面があると思います。
ルネッサンスや中世の音楽だとちょっとそうはいかないみたい。

ただトップ100のラインアップを見てみるとルネッサンス・中世の音楽も食い込んできてるにはきてる。前述タリスはルネッサンス時代の作曲家ですし、30位にリュート歌曲がランクインしたダウランドもルネッサンスのイギリスの作曲家。中世だとヒルデガルト・フォン・ビンゲンが55位と58位にいます(ACOのTimelineつながりで知って気になってる作曲家)。

さて、もう一度トップ10を見てみるとさすがというか有名な曲揃い。メサイアに四季に水上の音楽にパッヘルベルのカノンに・・・と見ててふと気づいたのが3位のグレゴリオ・アレグリの「Miserere mei, Deus」。これ聞いたことないぞ!と思ってようつべで聴いてみたらどっかで聴いたことがある。ただ実はこの曲、ACOのTimelineで聴いた印象が強くてその前にどこで聴いたかが思い出せない!どこで聴いたんだろう。3位にランクインするくらいだから相当有名な曲なんだろうけど。

10位のタリス「Spem in Alium」とか11位のバッハのダブル(2台のバイオリンのための協奏曲)とか高い順位にランクインして良かったなーと思ったり、パッヘルベルのカノンが6位とかやめてくれーと思ったり(チェリストとして)、バッハのパッサカリアとフーガハ短調が90位、無伴奏チェロ組曲第5番が104位(一番好きな組曲なんだよ!)は低すぎる、とかランキングに一喜一憂するのも毎年恒例。そこまで含めてカウントダウン100ですよやっぱり。

豪ABCはカウントダウン結果を毎回CDセットとして出しているのですが(過去のもABC Shopで売ってます)、今回のバロック以前100はすでにかなり売れているようです。企画として色々うまく行っているようでなにより。
実は最近出来たABCラジオのクラシックチャンネル2号のアカウントが若干フライング気味に「来年のテーマは何かな!?」とつぶやいてましたが実際次回のテーマは気になりますね。次あたりまた国縛りじゃないかな。ドイツは今回結構出たのでロシアあたりとか?

さて、今日の一曲もバロック以前でひとつ。


今日の一曲: ヨハン・セバスチャン・バッハ 無伴奏チェロ組曲第5番より前奏曲



バロック以前のくくりだとメジャーすぎるほどメジャーですがバッハでいかせていただきます。
一時はチェロ弾いてた身としてやっぱりこの無伴奏チェロ組曲6つは外せない。

そんな6つの組曲ですが今回のランキングでは一番有名な第1番が14位、第2番が77位、第3番が68位、第4番が111位、第5番が104位、第6番が74位と全部がトップ150におさまってます。
なかなかチェロ弾きインサイダーとしてはこの順位が納得いかないというか実感が湧かないというか。とはいえ他にどういう順番だったら良かったのか、と言うのも難しい。

調で言えばニ短調の第2組曲とハ短調の第5組曲が自分にとって特別です。それにはもちろん短調ならではのバッハの音楽の深みがあるというのもそうですが、調だけに限らない魅力があって。
なかでも第5組曲はバッハの音楽世界とチェロの音楽世界を包括しているというか、6つのなかでも一つの聖域になっている。

大体バッハのチェロ組曲で有名なのは一番最初の楽章である前奏曲です(第1番でもそうですし、第3番もそう)。一番技巧的にも音楽的にも充実している楽章なんですよね。他の楽章がメヌエットやクーラントのように踊りの特徴を持っているのに対して前奏曲はそういった決まった形式・キャラクターからある意味自由な曲。なので各組曲の前奏曲同士を比べると他の楽章同士よりもバリエーションに富んでいる、といえます。

第5番の前奏曲は即興的な前半とフーガのような後半に分かれていて結構長い曲です。その性質は弦楽器独奏の曲というよりはオルガンなど鍵盤楽器の曲のようで、チェロの幅広い表現の世界をフルに活かしています。
前半と後半、曲のキャラクターは違うとはいえどちらにしても瞑想的な部分があって、かつ宗教テイストが比較的薄いというか。暗いけど絶望しない、思考も感情も深く作り上げていく世界にたまらなく惹かれます。

バッハに限らず無伴奏の曲は(ピアニストはいつでもそうですが)ステージに一人っきり。弾く側も作曲する側もその一人っきりで作り上げる世界を感じ創っている独特な場。
なのでやっぱり生でそれを味わいたいし、バッハの各組曲やブリテンの同じく無伴奏の各組曲やいろんな「一人が創る世界」を感じたいと思います(創るのはほんと難しいしおっかないですからね!一回やりましたけど!)

バッハの無伴奏チェロ組曲は全てのチェリストが必ず通る道、そして戻ってくる道。一つのバイブル的なポジションではあるかな。そんなわけで巷にはたくさん録音が出てますし、そのそれぞれがユニークな世界で。
そんなわけでどの演奏がいいよとかはっきり言うのはとても難しいのですがとりあえずAmazonであさってみたらフルニエの演奏があって試聴もあってちょろっと聴いたら良い感じだったのでリンク。
演奏を色々あさってみるのも楽しいですよ。そして無伴奏チェロ組曲はチェロ以外にもビオラやサックス、ギターなど色んな楽器の編曲があるのでさらに探すのを広げて見るとまた面白いです。

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Lyrebird Commission Concert & Chick Corea & Gary Burton Duet感想
前回の記事に拍手ありがとうございます。
メルボルンは今日祝日(Queen's Birthday)で連休だったのですがその間に豪ABC Classic FMのクラシックカウントダウン100、テーマ「バロック以前」が放送されました。外出が多いなかちょこちょこTwitterで追ったりラジオちょこちょこっと聞いていましたが印象はまばら。なので改めてリスト(ここに出ているようです)を読んだりしてさらっと感想書ければなと思います。恒例なので。

さてコンサートラッシュ終わりの昨日、コンサート2つの感想を短めに。

まずは昼の部、4月に聴きに行った友達のトリオ「Plexus」のコンサート。
メルボルンにある音楽愛好会?Lyrebird Music Society主催のコンサートで、聴衆は主に会員(年間の会費で主催コンサート行き放題)で、平均年齢かなり高め。Plexusは作曲家に新しい音楽を書いてもらう=現代音楽中心のレパートリーでうけるかなーと思ってたのですが良い感じだったようです。今回レパートリーの工夫の一部としてソロ・デュオの曲を交えたのもよかった。

Plexus
Stefan Cassomenos(ピアノ)、Monica Curro(バイオリン)、Philip Arkinstall(クラリネット)
Richard Grantham 「The Lyrebird in my Piano」(2014)
オリヴィエ・メシアン バイオリンとピアノのためのテーマと変奏曲(1932)
ルートヴィッヒ・ファン・ベートーヴェン バガテル op.33より第1,2,7番(1823~24)
ジェラルド・フィンジ クラリネットとピアノのための5つのバガテル
チャールズ・アイヴス クラリネット、バイオリンとピアノのためのラルゴ(1934)
Charles Hoag SweetMelancholy(lostyourdolly)SlowDragRag(1990)

今回Lyrebird Societyの委託で作曲されたのが最初の曲。もしもモノマネ名人のコトドリが自分のピアノのなかに住んでいたらどんな音楽を真似した音楽を紡ぐのか、というテーマで書かれた曲そうです。3つの楽章それぞれが2人の20世紀の作曲家のミックス(タイトルも)になっていて、その合わさり具合がものすごく分かる、でも全く新しい音楽になっている。モノマネというコンセプトがうまく生きている印象でした。壮大な音楽ではないですが美しく、かつ面白くてうまくできてる。

他の曲だとフィンジのバガテルはほんとに魅力的な曲でした。これまでフィンジは歌曲をちょろっと聞いただけですが(でも好きな曲が多い)、歌曲と似たような世界観とスタイルで。フィンジは調の変化がうまいですねー。ちょっとこれはつながるのか?というキーチェンジもちょっとクサくないか?というキーチェンジも上手にこなす。その色彩が良い。
そして最後の曲・・・については今日の一曲で。聞いててとっても楽しかったです。

そして夜はHamer HallでMelbourne International Jazz Festivalのトリのコンサート、Chick CoreaとGary Burtonのデュエットを聴きに行きました。
ジャズのコンサートは初めてですが場所がいつものHamer Hallなので気持ちは楽でした。

去年父の持ってるCDから聞き始めて・・・というかその1枚しかCD持ってないもんでコンサートでは知らない曲ばっかりでした。どの曲でもビブラフォーンがびっくりするほど荒ぶってました!(笑)技巧的にも「こんなに音弾く!?」というパートばっかりなのですが音楽的表現の幅も「こんな音も出るんだ!?」という驚き。弾くときの動きはそんなに変わらないのに強弱やタッチや色々多彩で多彩で。

もちろんピアノもすごいですよ。自在に動く音、絶妙なリズムの柔軟さ。で、よく見ると&聴くとペダルもあんまり使ってなくてペダルを多用する(まあレパートリーの関係もありますが)ピアノ弾きとしてはちょっと耳が痛いというか頭が下がったまま上がらないというか。
で、リズムの柔軟さに関して面白いのはGary Burtonのリズムがものすごく精密であんまり崩さないというか(強弱とかタッチで崩してるんですよね)、リズムの表現のしかたに2人違いがあるけどそれでもアンサンブルは噛み合う。それも43年一緒に弾いてるらしいですからね。

それで曲の紹介で2人が交互にちょこっとしゃべってたのですがCorea氏のトークのゆるさ(笑)昔の話がかなりおおざっぱだったりステージで聴衆やGaryの写メとったりとか、それがまた演奏の自由さとなんか繋がるようなところがあってちょっと納得でした。
そんな感じでゆるい話を挟みながらずっと進んで、演奏もクラシックと違って似たような長さの曲がずっと続くので(あと初めてのジャズコンサートだったので)コンサート終わりでもっと聴きたい気持ちでいっぱいでした。

それにしても刺激受けましたね。ピアノはあれですがチェレスタでならジャズやりたいかも、とか思ってしまう。ジャズに直に触れてからしばらく急性的に刺激を受けた状態になってしまって。でも時間が経つとまた距離ができちゃう。他の諸々もそうですががっつり取り組むには定期的に浴びて刺激を維持しなきゃいけないんだろうなあ・・・
次の機会がいつになるかわかりませんがもちょっとジャズと触れあうようにしたいです。


今日の一曲: Charles Hoag SweetMelancholy(lostyourdolly)SlowDragRag



長ーいタイトル。表記がいくつかあるみたいですがスペース無しがどうも正式っぽい。
上記友達のトリオPlexusはバイオリン奏者Monicaの先生のトリオ(The Verdehr Trioという同じピアノ・バイオリン・クラリネットの編成)が作曲家に作曲を依頼してそれらを世に出すというフォーマットをとっていたのをモデルにしているというか受け継いでいるらしいです。以前はこの楽器編成のためには8つほどしか曲がなかったのがそのthe Verdehr Trioの活動によってレパートリーが200曲以上にふくれあがったそうです。

今回のこのslowdragragもそんなVerdehr Trioの委託で作曲された曲の一つ。短いけれど魅力的な曲です。
そもそもラグというシンコペーション(ずれるリズム)が特徴的な舞曲は20世紀初頭からあるスタイルで、この曲も1990年作曲とはちょっと思えない古風な雰囲気があります。
そのテイストは古風であるだけでなくちょっとベタというかちょっとシリアスに捉えられない部分があって。
ただこの曲はそのベタなのを出し過ぎない、でもものすごく堂々としてて大胆さがあって、そこにちょっと色気があるような。そして古いスタイルのなかにちょこちょこ新しいハーモニーを入れてくさりげなさ。

そしてなによりクラリネットが格好いい。クラリネットが堂々と歌い上げる様子が1920年とか古い型のフォーマルウェアをさらっと着こなしてる風でちょっと惚れ惚れするような。
それならバイオリンはこれまた古いスタイルのドレスを着こなしている感じかな。ピアノもまた一歩後ろでサポートに徹している部分が多いながらまたあなどれないおしゃれさ。

まあ比較的新しい曲で依頼されて作曲された曲ってのもありで録音は少ないみたいです。ようつべでも見つからなかった。あとタイトルの区切りで検索しにくいのもあるのだろうか。リンク先には試聴がないですが、ここ(iTunes store)は試聴があります。あとAmazonで楽譜も売ってるみたい。メインディッシュな音楽ではないですがもっと演奏されてもいいんだけどなー。

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MCO&ANAMコンサート 「Double Entendre」感想
コンサートラッシュ引き続き!明日の2つでとりあえず聴きに行くのに忙しいのは終わりですがその後に感想など書くので終わりと言えるのはちょっと遅れます。

その感想の前に一つ。
タスマニアのホバート近郊(いまだに正確な場所はわからない)にある現代芸術を専門にするMuseum of Old and New Artsで2年前だったかな?メシアンの音楽を中心に音楽や美術などの分野を駆使した「Synaesthesia」(共感覚)というイベントをやってたんですが、この「Synaesthesia」が今年8月にまた開催されるとのことです。メシアンやスクリャービンの演奏やら色々企画されてるようでわくわく。行きたい!ただお値段が!そして8月ってタスマニアすごく寒いよ!

さて昨日のコンサートの感想。こないだ行ったばかりの国立アカデミー(ANAM)にまた行ってきました。
今回は弦楽器を主とした室内オーケストラMelbourne Chamber Orchestra(MCO)とANAMの共同コンサート。室内オケが1つではなく2つに分かれたdouble chamber orchestraという編成(バロック時代に特に使われた編成で、その後もちょこちょこレパートリーがあります)で書かれた現代の音楽4曲が演奏されました。うち2曲はオーストラリアの作曲家の作品で世界初演。
2つに分けたオケをどう扱うかがちょっとずつ違ってきて面白いです。

プログラムは以下の通り。
MCO & ANAM 「Double Entendre」
指揮者:Michael Dahlenburg
Director:William Hennessy
Gordon Kerry 「Music for Double Chamber Orchestra」(2014年)
フランク・マルタン バイオリン独奏と2つの小編成の弦楽オーケストラのための「Polyptyque」(1973年)(バイオリン:Doretta Balkizas)
(休憩)
Peter de Jager 「Fugue, Forest, Chorale & Toccata」(2014年)
マイケル・ティペット 二重弦楽オーケストラのための協奏曲(1934年)

演奏時間は1時間半くらいですが長さとか曲の規模とか関係なくMassiveでした。質量と密度がすごい。弾く方も指揮する方も大変そう。聞いててもちょっと捉えられない部分が多かった。
なのでなんとか感想が書けそうなマルタンとピーターの曲に絞って書きます。

マルタンは今回初めて聞いた&聴いた作曲なのですがなんでもスイスの作曲家(これも初)で数学とか科学とかをやっていた人だそうで、キリスト教関連の題材で多く曲を残しているそう。
一見そんなにものすごく変わったことはしていないような作風なのですが無調的な曲調と過去の伝統から流れてきてるような曲調がそれぞれ独特で、さらにそのバランスというか棲み分けがまた独特。
「Polyptyque」の曲自体の美しさもすごいのですがバイオリンソロの演奏には驚きの連続。レガートで音をつなげるそのつなげ方がものすごく粘度が高いというか、なめらかを超えたつながり方をしてものすごく濃い音で。ああいう感じの音はこれまでに聞いたことがなかったかも。

そして今回目当てで楽しみに行ったピーターの「Fugue, Forest, Chorale & Toccata」。
ものすごく好みな曲でしたが同時にものすごく難しい曲でした。
その複雑さから2つの室内オケを使っている感がちょっと薄い感じはしたかな。2つのパーツの掛け合いというレベルでない楽器の絡み合い。
4つのセクションそれぞれにユニークなtextureがあって各々の世界を展開していくのですが中でもフーガとForestが特に良かったと思います。

Forestでの自然を思わせる音の風景の静と動、まるで命を持っているような音の動き。そしてフーガの緻密さ。ものすごく詳細まで作り込んであって、顕微鏡レベルで耳をすますと後から後から主題が見つかるまるでフラクタル。それでいてマクロレベルで聞くtextureの魅力。フーガという形式に、そしてtextureという言葉をさらに高いレベルまで持ってったような印象です。
(このフーガを参考にこれまでのフーガの解釈・演奏の仕方を改めて見直したくなります、ほんとに)

ピーターの書く曲は良くも悪くも「安定している」というか、決まった一つの世界の中の秩序みたいなイメージがあります。それが良い方に働いたのがフーガで(完全な秩序未満だとカオスになりかねない)、逆にトッカータでは動きがないような印象になってしまっているような。たたみかけるようなエレメントがあるといいのかなあ、と思ったり。
あとピーターの作曲した音楽を聴くといつも絵を描きたくなります。幾何学的な作風だったり自分の書くステンドグラス風の絵が上記「決まった一つの世界の中の秩序」に合うところがあったりで。気が向いたらまた絵もやりたいです。しばらく手付けてないからなー。

今回のコンサートは作曲家(ピーター)と指揮者(ユースオケ以来のチェロ仲間で大学も同級生)だけが知り合いというちょっと変わった感じでした。
(directorはでも大学ではホビットにしか見えなかったり髪の毛をネタにされたり色々と有名な人で、まだまだ現役で演奏など続けててちょっと安心しました)
なので作曲サイドの話も聞きましたし指揮サイドの話も聞きましたし、そしてあとで飲みに行って初めまして(またはほぼ初めまして)の人から演奏サイドの裏話も聞いて。いろんなとこで難しいこと多々あったみたいでやっぱ演奏関連諸々楽しいことばかりじゃないんだな、と改めて思いましたが何より本番の演奏が良い結果で良かった。

そしてここしばらくのコンサートラッシュで色んな人に久しぶりだったり初めましてだったり会って音楽に関係あることないこと色々話してほんと楽しいです。コンサートとそのあとの打ち上げに関しては音楽関係者でよかったと毎回思います。次の機会が楽しみ。

ということで明日は2つコンサートに行ってきます。ホームじゃないジャンルのコンサートもありますがなんとか感想を書けたらいいな(汗)


今日の一曲: フランク・マルタン バイオリン独奏と2つの小編成の弦楽オーケストラのための「Polyptyque」より第4楽章「Image de Géthsémané」



今回のコンサートで演奏された曲は初演以外も結構知名度が低い曲だそうですが、マルタンのこの曲は是非紹介したいと思い初聴きで今日の一曲に挑戦。(一応録音とかもいくつか出てる曲だしピーターの曲よりは紹介しやすいはず・・・)

本文でも書きましたがマルタン(マーティンって英語読みで読んでた・・・)はスイス出身の作曲家でキリスト教関連の作品を色々書いていますが、「Polyptyque」もその一つ。~ptyqueという言葉には「~枚セットの(特に宗教的な)絵画」という意味があって、他にもTriptyqueとかDiptyqueなどがあります。(Poly=たくさんの、ですがpolyptyqueっていう言葉の字面がなんかむずむずします。ポリープ入ってるし。)

「Polyptyque」はキリストの受難を題材にした絵のセットとして書かれた音楽で、エルサレム入り(現代で祝われるPalm Sunday)から神に召されるまでを6つの楽章で描いています。
構成としてはエルサレム入り→弟子たちとの対話→ユダ→キリストが独りで瞑想する→キリスト十字架にかけられる→神の栄光になってます。
バイオリンのソロはほとんどの楽章でキリストを演じているようです(ユダの楽章のみユダなんだろうか)。このソロパートの一人のキャラクター感というか、独立したパートでありキャラクターに溢れているのがまた魅力的。

第4楽章のImage de Géthsémanéは前述要約でいうと「キリストが独りで瞑想する」部分にあたり、バイオリンのソロカデンツァを始めソロパートがものすごくでかい楽章です。(それでいてバックの弦楽オケが醸し出す雰囲気や感情もまた見事)

作品を通じてこの美しくも不思議な作風はもっと知りたくなりますね。いわゆる十二音技法みたいなのを使ってるのですがそれがトータル・セリーのスタイルとは全然違って、強いて言うならショスタコーヴィチの晩年の十二音技法に似てるかも。ショスタコもそうですが音楽の美しさを保ったまま20世紀の新しい音楽言語に進化しているという感があって、そこが自分にとってはツボなのかな。(あと特に宗教的な題材で以前の時代の形式を意識したり進化させたりの作曲ってのもあるのか)

とにかく埋もれさせておくにはものすごく勿体ない曲だと思います。大学の図書館で録音が見つからなかったのが残念ですが是非手元に欲しい曲。そしてマルタンの他の曲も知りたいです。

とりあえずAmazonでmp3録音は見つかりました。これ以外にもあるみたいですしNaxosからもCDが出てますし(Naxosはなんでもありますね)。試聴でどれくらい味わえるか微妙な曲の性質ですが是非。

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まだまだ続くコンサート(国立アカデミーFellowship Project)
前回のエントリーに拍手ありがとうございます~
引き続きコンサートの感想を。

一昨日行ったコンサートは国立音楽アカデミーの卒業生によるコンサート。
友達2人が弾くというのでこれはいかなきゃ、と聴きに行きました。
プログラムは以下の通り:

国立音楽アカデミー Fellowship Project
Jessica Foot(オーボエ)&Peter de Jager(ハープシコード)
国立アカデミーの生徒&先生&卒業生

フランソワ・クープラン 趣味の融合 コンセール11番
アンリ・デュティユー 「Les Citations(引用)」
クラウス・フーバー 「Noctes intelligibilis lucis」
マニュエル・デ・ファリャ クラヴサン協奏曲
(アンコール:「アダムズ・ファミリー」のテーマ)

オーボエもハープシコードもソロで生で聴くことが少ない楽器ですがこのコンビのためのレパートリーが意外とあることにびっくり(それでもオーボエのレパートリー自体が小さくて知名度が低いらしいですが)。そもそも音の性質がオーボエの丸さに対してハープシコードのツメではじく尖った音で正反対とも言えますし。
そしてクープランはバロック時代で他は20世紀。ハープシコードは後述のとおりその間の時代には使われない楽器なのですがオーボエももしかしたらソロレパートリーはその2つの時代に集中してるのかな。

なのでオーボエの音色の印象もそのバロック・現代で大きく分かれます。クープランでの丸くてなめらかで黄金に光るような音の輝かしさはもう素晴らしかったですが、現代作品での暗さと緊張感のある音色もまた魅力的。
そしてオーボエといえばやっぱりメロディーを歌い上げる楽器。クープランはバロック時代によくある踊りを集めた組曲なのですが終始踊りよりも歌のキャラクターが強い。そしてフーバーみたいな抽象的でアップダウンが激しい(2オクターブとか音が平気で飛ぶ)曲でもひとつながりの線が世界を創る、旋律の力強さ。

反面ハープシコードはピーター曰くすでに音ができあがってる楽器で変えることができない部分も多いらしいです。あといわゆる車にオートとマニュアルがあるのとちょっと似てハープシコードでも色々ペダルで調整できるのとできないのがあって、今回オート(仮)のハープシコードだったためレバー調整とかが大変だったそうです。
20世紀のハープシコード音楽ってものすごい!不協和音の響き方も独特ですし、キーがピアノより軽いのもあり遠慮無く速いパッセージ入ってきますし。なんかキャラクターとしてはカムバック前と全く別物として捉えられているみたいです。

それにしても今回知らない曲ばかりで(ファリャだけ録音持ち、でも改めて聴かなきゃ)、しかもデュティユーとかフーバーとかものすごく難解でびっくりしました。1回聴いただけじゃ分からないなあ・・・
でも特にデュティユーはジャズっぽいところがあったり(ベースがかっこよかった!)引用のエレメントがあったりで魅力はつかみかけた感が。デュティユーという作曲家は木管友達からは良く名前を聞くのに他では全然聴かない作曲家ですが、書いてるのは必ずしも木管作品に限らないのでこれを縁にまたいつかフォローアップしたいです。

そしてアンコールのアダムズ・ファミリーですがこれは国立アカデミーのdirector、Paul Deanがファリャの楽器編成(フルート、クラリネット、オーボエ、バイオリン、チェロ、ハープシコード)のためにアンコール用として編曲したものだそう。最初のドアがきしむ音をハープシコードの蓋で表すところからずっと面白かったです。弾いてて絶対楽しいじゃないですか。

そうそう、普通こういうメインの奏者がいて共演者が何人かいるコンサートではメインの奏者が共演者にチョコレートやワインとかお礼に贈ることが多いのですが今回ジェシカは共演者に鉢植えの植物をプレゼントしていました。これには驚きました(ただ過去にカボチャあげたりしたこともあるそうです)。

コンサートの後には国立アカデミーの(主に大学卒業してから初めて出会った)友達と近くのバーで飲んだり食べたりしてきました。今回演奏したジェシカも含め久しぶりの人も多くかなり新鮮な集まり。色々励まされることも多く感謝しきれません。最近ちょっと低めで推移しているので(特にピアノで)引き続きがんばらなきゃ。

明日行くコンサートも国立アカデミーでのコンサート。Melbourne Chamber Orchestraと国立アカデミーのジョイントコンサートで、特にバロック時代であったような弦楽オケが2つある編成で書かれた20世紀以降の作品を演奏するそうです。指揮者が大学時代のチェロ友達で、あと演奏される曲にピーター作曲の新しい作品もあるので大変楽しみです。



今日の一曲: マニュエル・デ・ファリャ クラヴサン協奏曲 第2楽章



今Wikipediaで調べたら正式な題名は「チェンバロ(またはピアノ)、フルート、オーボエ、クラリネット、ヴァイオリンとチェロのための協奏曲」だそうです。
協奏曲というと普通ソロ+バックにオケという編成が浮かびますがこの曲はチェンバロと他の5つの楽器のみが演奏する室内楽作品でもある協奏曲。

言い忘れましたがクラヴサン=チェンバロ=ハープシコードです。バッハやクープランなどが生きたバロック時代ではメインの鍵盤楽器として使われていますがピアノの台頭(ピアノはハープシコードとは別の仲間で派生したものではないそうです)とともに廃れ、19世紀にはハープシコードのための音楽はみんなピアノで弾かれていたそうで。

それが20世紀になってワンダ・ランドフスカというピアニストがチェンバロを再興しようと作曲の委嘱や演奏に動き出し、ファリャ作曲のオペラ「ペドロ親方の人形芝居」を皮切りに20世紀でもハープシコードの演奏が始まり、ハープシコードのために曲が書かれるようになったそうです。(この協奏曲もランドフスカの委嘱、演奏で世に出た作品)

この曲を聴いているとハープシコードのための協奏曲というよりも、そして室内楽作品というよりも6つの楽器全員のための協奏曲という印象です。(つまり正式な題名が正確に表しているわけですね)
6人が一つの音楽を一体になって作っている、というよりも6人がそれぞれの役目をこなしながら適宜ソロとして一歩前に出る、みたいな感じ。

第2楽章の最初で見られるようなハープシコードの即興的なアルペジオはバロック時代のハープシコード音楽をちょっと思わせます。全体としてはスペインの祭りなどである宗教的な行進を表しているそうで、宗教的なテイストもありエキゾチックな色彩もあり民族的な素朴さもありでものすごく不思議な曲調。なかなかぱっと馴染むものではないのかもしれませんがすごく面白いです。生で聴いて好きになりました。

今リンクする録音を探していたらデュトワ指揮のファリャのオケ作品集のCDの演奏がちょっと宗教的な風味が強くて面白かったのでリンク。収録されてるのはほとんど知らない曲ですが、前述のハープシコード付きのオペラも入ってますね。

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