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~名もない蛾と虹の錯乱~ 内の思いと外の色彩をつらつらと。
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メル響「Mahler 6」感想
ずーっと前のエントリーでメルボルンの芸術関連施設は近いところにかたまってると書いたような来ますが昨日の夜はそれがものすごく顕著に表れてたというか。
Hamer Hallではメル響のマーラー6番のコンサート、State TheatreではロミジュリバレエにSingin' in the Rainのミュージカル、それがみんな似た様な時間に終わってState Theatreのバーに音楽畑の人々が集まる集まる。晴れてたとはいえ冬だというのにみんなで外で集まって飲んでました。楽しかったー。

さてコンサート自体の感想ももちろん。
プログラムはこんなでした。
メルボルン交響楽団「Mahler 6」
指揮:Sir Andrew Davis
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト ピアノ協奏曲第21番(ピアノ:Jonathan Biss)
(休憩)
グスタフ・マーラー 交響曲第6番

モーツァルトは割とよく演奏される協奏曲でしたがちょっと真面目な感じの演奏でしたね。
色々思うことはありますがちょっと割愛。でも有名なスローな第2楽章はよかったです。

何よりメインディッシュのマーラーについて色々書きたくて。(そうです、マーラーサイクルの続きです)
メル響のコンサートプログラムには演奏される曲それぞれにメル響による初演・最近の演奏の年と指揮者(とソリスト)が書いてあるのですがマーラー6番はなんと10年ぶり。その10年前のコンサートも行きましたがもう10年経ったのか。でもそれくらいなのかもなあこの曲が演奏される頻度は。

なんたってマーラーの交響曲の中でも暗さ・重さ・濃さが半端ないこの6番。
聴く方も聴き応えを通り越したがっつり感がありますし、もちろん弾く方も大変。
でもマーラーの交響曲の中で、そして交響曲のレパートリーの中で、さらには音楽全体のなかで独特の存在感と圧倒的な体験ができる曲です。生で聴けるときにはしっかり生で味わっておかなかいと(今後ももちろん)。

オケの編成もこれまた半端ない。木管は5管編成でホルンは(アシ含め)9人。
もちろん今回も活躍してましたコントラフォルテさん。もしかしたらこんなにぼいぼいクリアにパートを響かせるのは本来のマーラーの意図を超えてるのかもしれないけどかっこいいぜコントラフォルテ。
本来のマーラーの意図を超えて、といえば交響曲での出演は珍しいチェレスタも。弾いてるときはバルコニーの後ろの席からもはっきり聞こえました。マーラーの頃の楽器は私がちょくちょく弾かせてもらってるやつみたいだったのかな、元は3台必要とか指示にあったそうです。

金管の皆さんのスタミナには本当に頭が下がります。特にホルン。吹く箇所もかなり多いですし、3日連続公演、その間にリハもあったりしたそうでみんな第4楽章の最後の方までずっとあの音量ってどうやるの!?・・・ということを後で(7番吹いてた)ホルン友達に聞いたら「多分アドレナリン」だそうで。弾いてたみんなもすごいがそれができる曲を書いたマーラーも凄い。

マーラー6番といえば打楽器も活躍。リハではバランスが難しかったらしいカウベル、そして第4楽章で2回振り下ろされるハンマー。結構音でかいですねあれ。中がある程度は空洞になってるのか。あと「楽器らしくない」音だから余計に異質。今回は台が縦に長い箱状で、ハンマーを叩くにはちょっとした階段を上らなくちゃいかなかったのと、あとハンマーの台があるところにスポットライトが当たってたのでこの曲を知らない人にも分かりやすかったんじゃないかな。

それにしてもすごい曲。音の密度がとんでもないんですね。音量と複雑さと弾いてる人数全部合わせて。この曲を知ってる人でも多分全部の音は聞き取れない&脳で処理しきれないと思うんです。(多分すごい指揮者だと大分近づくのではないかと思われますが)
それに圧倒される体験というのもこの曲の楽しいところだと思います。そしてそんな音楽を一人の人間が書くことができるという驚きも。

その複雑さ、濃さ、カオスさがMAXになる第4楽章はテンポを引き下げる箇所でもそうすることなくがんがん前に進んでいく感じが印象的でした。ぐーっと引き延ばすことで得られる効果もありますがこういうエフェクトもあり。もうこの楽章は戦場でしたね。
逆にテンポ落ち着きめのスケルツォ(6番は真ん中のスローな楽章とスケルツォの順番で色々議論があるみたいですが今回スケルツォは第3楽章として演奏されました)の重みもよかった。スケルツォ史上最重。

さて、ちょっと早い気もしますがマーラーサイクルの今年分はこれで終わり。次は7番、来年までお預けです。7番も好きで(やっぱり5・6・7がお気に入り)、オケにとっても色々大変らしいのでその話を聞くのも含めて楽しみです。


今日の一曲: グスタフ・マーラー 交響曲第6番 第4楽章



マーラー6番の第4楽章は私のipodに入ってる曲の中でも1トラックとしては最長クラスなのですが(30分くらい)、今回聴いたときはあっという間に感じましたね。前述立ち止まらずざくざく進んでいく感じが効いたのかな。
ただ3番みたいに第1楽章がとんでもなく長い(45分とか)よりは最後が長いほうがまだ聴きやすいのかも。ただ第4楽章にたどり着くまえの音楽情報量が多いことには変わりないですが。

第4楽章は特に人の心の緊張とか盛り上がりをうまーく操作してる気がします。最初のチェレスタの微妙な(?)和音だったり、長和音→短和音のモチーフの使い方だったり、ハンマーやハープの特殊奏法的な音だったり、スローで静かな部分での楽器の使い方だったり、終始マーラーに振り回されっぱなし。ただそれがいい。

そしてみんながみんな忙しい&アグレッシブ。ベルアップの木管やホルン、勇ましいトランペット、そして荒々しいビオラも味わえます!弾いてる方も聴いてる方もアドレナリンがよく出そう。私は出ます。こうやって考えてるだけで出ます。
色んな意味でオケの限界に挑戦するような音楽だなーこれは。

そのエキサイティングなのを生で味わうこと以外でもマーラー6番は生演奏or映像つきで聴くのがものすごくオススメです。
というのは音楽があまりにも複雑すぎるので、視覚情報をヒントにした方が聞こえやすいという理由もあり。さらに聴き所だけでなく見所も満載なので。ハンマーを振り下ろすのとか、ちょっと変わった奏法で弾くハープの姿とか、ベルアップする奏者の姿とか、そして指揮者の動きとか。聴いて楽しい見て楽しい。

とはいえ聴くのにやっぱりある程度の時間とエネルギーと覚悟(?)のいる曲ではあるのは確か。マーラー初めての方は交響曲1番とか5番とか4番とかから入るのがいいかも。
ただ素晴らしい曲で好きな曲でもっとたくさんの人に体験してほしい音楽なことは確か。
なのでベルリンフィルによる3分ほどの一部動画を2つあげときますねー。
Harding指揮の第1楽章Rattle指揮の第4楽章

リンクしたのは手持ちのTennstedt指揮の録音。今のところこの録音が一番好きです。でも思い入れがあるのでさらに探し続けてます。

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