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せっかく疲労が回復しつつあるのに若干無理をするようですが聴きました。
こちらでも何回か紹介しています現代音楽中心、でもそれに限らず多岐に活動しているクロノス・カルテット(弦楽四重奏ですがその性質からString QuartetでなくQuartetと名乗っています)。
彼らの活動40周年を記念してニューヨークのWQXRというラジオ局(クラシックを専門に現代音楽もたくさん扱っているみたいです)のQ2 Musicというチャンネルで現地時間3月24日0時から24時間ラジオマラソンを放送、ということで昨日のメルボルン時間午後3時から今日の3時半くらいまでご飯・お風呂・就寝中以外はずっと聴いていました。
プログラムはクロノスが生まれるきっかけとなったクラムの「Black Angels」に始まり、元々の専門分野である現代音楽を始め古音楽や映画音楽や様々な国の音楽、様々な音楽家との共演作品の録音を通じてクロノスの40年の歴史の長さ、広さと深さを味わえる24時間になっていました。
途中で短めでしたがコンサートを生中継の部分もあり。
(まだCDになってない演奏もありました。あと映画音楽は私が寝てる間に主にやってたようでちょっと残念)
音楽だけでなくメンバーだけでなく共演した音楽家とのインタビューなどもあり、クロノス・カルテットという独特のアンサンブルがどうやって音楽にアプローチしているのか、どうやって活動を続け広げているのかが分かるようにもなっていました。
インタビューは聴き逃したところも多いですが、創始者であり第1バイオリン奏者のDavid Harringtonの話がちょこちょこ印象に残っています。クロノス・カルテットが生まれることになり今のようになるまでには彼の音楽への姿勢と行動がものすごく大きな役割を果たしていたんだ、ということが分かります。
インタビューでDavidがクロノスで弾いた曲について語るときって必ずといっていいほど「聴いたときから弾かないわけにはいけないと思った」的な事を言ってて。共演者のインタビューでも「Davidはあれだけ多忙なツアースケジュールでも常にCDを何枚も持ち運んでいて」というくだりがあったり。とにかく常に新しい音楽との出会いを求めている、その飽くなき好奇心がクロノスの活動を広げていった一因だと思います。
(その他にはDavidの言葉では「自分はクロノスで演奏するためにバイオリンを弾いているので自分をバイオリニストとしては捉えていない」とか「音楽において醜さも必要とされる場合もあり、なにより表現の豊かさを目指している」みたいなことを言ってたのが印象強かったです。自分も色々考えることが多い方面なので)
そしてもう一つの要因が人間のネットワーク。上記のように聴いて知った作曲家(国内外)にアプローチするだけではなくクロノスのコンサートに若い作曲家が自分の書いた楽譜を持ってくることもあるらしいですし、ここ10年ほど「Under 30's Project」という若い作曲家の発掘プロジェクトも開催していたり、とにかく機会作り、人と接点を作るのがものすごく上手なんだなという印象を受けました。
さらにクロノス・カルテットに去年入ったチェロのSunny Yangの話も面白かったですね。クロノスのオーディションでなんか見たこともない楽器を弾かなくちゃいけなかったとか(インターネットで検索したりしたそうです)、やっぱりクロノスは「普通の」弦楽四重奏ではないんだなと。
放送された音楽は知ってる曲も知らない曲も本当にたくさんあったのですがとりあえずオスバルド・ゴリホフとウラジミール・マルティノフの作品は要履修ですね。素晴らしい音楽ですし、「今」のクラシック音楽の一角を表しているような気がします。
それからオーストラリアのSculthorpeの弦楽四重奏もクロノスの演奏で是非欲しいですし、フィリップ・グラスのサイレント映画「Dracula」のための音楽も(しんどいですが独特の意味で)ツボりましたし、ヒルデガルト・フォン・ビンゲンの曲ももっと聴いてみたい。
それからクロノス・カルテットの代表作の一つであるスティーヴ・ライヒの「Different Trains」の演奏が手元にないのが自分でも信じられない(汗)ああいう人の語りが入る曲って(同じくライヒのWTC 911やクロノス外だとBrett DeanのVexations and Devotionsもそうですが)言葉の内容が分からないのにその指すところの雰囲気は音楽を通じて(声の調子は割と淡々としてたり)伝わってきたりするのがちょっとだけ苦手意識あるのですが、でも嫌いではないんです。
こんなにずっと音楽聴いてばっかりで飽きないかと言われればやっぱり音楽の多彩さもあって飽きないです・・・が、やっぱりこれだけ音楽聴いて、しかも半分以上初めましての曲でしたから結構疲れました(笑)でも本当に楽しかったです。クロノス・カルテットが今後も広く深く音楽の世界で活躍すること、そして5月発表されるはずの2014年シーズンにメルボルンでの公演が入ってることを強く願っています。あと4月上旬に届く予定のCD「A Thousand Thoughts」楽しみ!
そしてWQXRのサイトには英語記事ですがクロノス・カルテットのCDおすすめの10枚の記事がありました。CD購入の際には是非参考に。この中だとBlack Angelsがやっぱり基本かな、ある意味。クラシックからちょっと外にでたところだと楽しく聞けるNuevoやエキゾチックなFloodplainもおすすめ。
今日の一曲: ジョージ・クラム 「Black Angels」第1部「Departure」より「Threnody I: Night of the Elementic Insects」


クロノス・カルテットの始まりの始まりだったクラムの「Black Angels」。David Harringtonがこの曲を聴いて「これは弾かずにはいられない」発動、そこから最初のリハーサルが実現し、次も続けられるといいな、来週も続けられるといいな、が積み重なり40年のクロノスの歴史になったたそう。
その40年の中でいろんな音楽がクロノスのアンサンブルとしての性質・キャラクターを形作り、広げて新しい形にしていますが、この「Black Angels」の時点でも方向性はかなり決まってたように思われます。
従来の弦楽四重奏曲と違って「Black Angels」はエレキ弦楽器を使ったりアンプを使ったり、さらにはグラスハーモニカや銅鑼なども使い、弦楽器自体の音も従来の音色に限らず特殊奏法を使って耳障りとも思える音を出したり。今のクロノスにとってある意味基本になっている特徴ですね。
ただこの曲で求められる性質には従来の弦楽四重奏と共通するもの(そしてより強く求められるもの)もあります。それは4人の奏者が一体となること。個々の奏者の音が違い、個々の動きが目立つピアノ三重奏や木管五重奏と違って弦楽四重奏や金管五重奏は似たような音の楽器が集まり、アンサンブルが一つの生き物として動くことが大事になってきます。
この曲もその「一つの生き物感」がほんと凄い!生き物というかもはや現実に存在しないクリーチャーですが(笑)独特の電気的な、非現実的なキャラクターを作り出すには4人全員の意志と動きがぴたっと(縦も横も)あってることは絶対条件。
それが特にこの曲の冒頭から痛感されますね。ちょっと聞きめちゃくちゃな音楽(というかノイズ)に聞こえますが、もちょっと聴き込むと全部計算済なのがものすごく分かります。ぱっと強弱が変わったり、同じフレーズが別の奏者に違う形で現れたり(それをまた奏者が同じように弾くのがすごい)。
Black Angels独特の特徴といえば数字のこだわり。「7」と「13」が様々な形で繰り返し繰り返し繰り返し出てきます。奏者が様々な言語で数字をコールすることもあれば、音符の数や長さ、はたまた休符の長さなんかにも表れています。
その数字のこだわりは楽譜(A3よりでっかいはず)を見ると一番よくわかるのですがなんせ楽譜が入手しにくい。耳で探してみるのも面白いですよ。特に冒頭はわかりやすく「7」があります。
(傾向として聞きやすい楽章よりノイジーで聞きにくい楽章に数字が多く隠れているような)
ちょっと初めましてはショッキングな曲かもしれませんがそこを超えるといろんなレベルで面白い曲です。前述数字の話だったり、トリッキーな楽章タイトルだったり、作曲家は何を考えているんだろう、と自分なりに考えてみるにもいい曲だったりします(クラム全般そうですが)。
なによりクラムの代表的な作品として、そしてクロノス・カルテットの代表的な演奏としてものすごくおすすめの曲です。
リンクはもちろんクロノスの演奏。ついでにショスタコーヴィチの弦楽四重奏第8番もお楽しみに。
こちらでも何回か紹介しています現代音楽中心、でもそれに限らず多岐に活動しているクロノス・カルテット(弦楽四重奏ですがその性質からString QuartetでなくQuartetと名乗っています)。
彼らの活動40周年を記念してニューヨークのWQXRというラジオ局(クラシックを専門に現代音楽もたくさん扱っているみたいです)のQ2 Musicというチャンネルで現地時間3月24日0時から24時間ラジオマラソンを放送、ということで昨日のメルボルン時間午後3時から今日の3時半くらいまでご飯・お風呂・就寝中以外はずっと聴いていました。
プログラムはクロノスが生まれるきっかけとなったクラムの「Black Angels」に始まり、元々の専門分野である現代音楽を始め古音楽や映画音楽や様々な国の音楽、様々な音楽家との共演作品の録音を通じてクロノスの40年の歴史の長さ、広さと深さを味わえる24時間になっていました。
途中で短めでしたがコンサートを生中継の部分もあり。
(まだCDになってない演奏もありました。あと映画音楽は私が寝てる間に主にやってたようでちょっと残念)
音楽だけでなくメンバーだけでなく共演した音楽家とのインタビューなどもあり、クロノス・カルテットという独特のアンサンブルがどうやって音楽にアプローチしているのか、どうやって活動を続け広げているのかが分かるようにもなっていました。
インタビューは聴き逃したところも多いですが、創始者であり第1バイオリン奏者のDavid Harringtonの話がちょこちょこ印象に残っています。クロノス・カルテットが生まれることになり今のようになるまでには彼の音楽への姿勢と行動がものすごく大きな役割を果たしていたんだ、ということが分かります。
インタビューでDavidがクロノスで弾いた曲について語るときって必ずといっていいほど「聴いたときから弾かないわけにはいけないと思った」的な事を言ってて。共演者のインタビューでも「Davidはあれだけ多忙なツアースケジュールでも常にCDを何枚も持ち運んでいて」というくだりがあったり。とにかく常に新しい音楽との出会いを求めている、その飽くなき好奇心がクロノスの活動を広げていった一因だと思います。
(その他にはDavidの言葉では「自分はクロノスで演奏するためにバイオリンを弾いているので自分をバイオリニストとしては捉えていない」とか「音楽において醜さも必要とされる場合もあり、なにより表現の豊かさを目指している」みたいなことを言ってたのが印象強かったです。自分も色々考えることが多い方面なので)
そしてもう一つの要因が人間のネットワーク。上記のように聴いて知った作曲家(国内外)にアプローチするだけではなくクロノスのコンサートに若い作曲家が自分の書いた楽譜を持ってくることもあるらしいですし、ここ10年ほど「Under 30's Project」という若い作曲家の発掘プロジェクトも開催していたり、とにかく機会作り、人と接点を作るのがものすごく上手なんだなという印象を受けました。
さらにクロノス・カルテットに去年入ったチェロのSunny Yangの話も面白かったですね。クロノスのオーディションでなんか見たこともない楽器を弾かなくちゃいけなかったとか(インターネットで検索したりしたそうです)、やっぱりクロノスは「普通の」弦楽四重奏ではないんだなと。
放送された音楽は知ってる曲も知らない曲も本当にたくさんあったのですがとりあえずオスバルド・ゴリホフとウラジミール・マルティノフの作品は要履修ですね。素晴らしい音楽ですし、「今」のクラシック音楽の一角を表しているような気がします。
それからオーストラリアのSculthorpeの弦楽四重奏もクロノスの演奏で是非欲しいですし、フィリップ・グラスのサイレント映画「Dracula」のための音楽も(しんどいですが独特の意味で)ツボりましたし、ヒルデガルト・フォン・ビンゲンの曲ももっと聴いてみたい。
それからクロノス・カルテットの代表作の一つであるスティーヴ・ライヒの「Different Trains」の演奏が手元にないのが自分でも信じられない(汗)ああいう人の語りが入る曲って(同じくライヒのWTC 911やクロノス外だとBrett DeanのVexations and Devotionsもそうですが)言葉の内容が分からないのにその指すところの雰囲気は音楽を通じて(声の調子は割と淡々としてたり)伝わってきたりするのがちょっとだけ苦手意識あるのですが、でも嫌いではないんです。
こんなにずっと音楽聴いてばっかりで飽きないかと言われればやっぱり音楽の多彩さもあって飽きないです・・・が、やっぱりこれだけ音楽聴いて、しかも半分以上初めましての曲でしたから結構疲れました(笑)でも本当に楽しかったです。クロノス・カルテットが今後も広く深く音楽の世界で活躍すること、そして5月発表されるはずの2014年シーズンにメルボルンでの公演が入ってることを強く願っています。あと4月上旬に届く予定のCD「A Thousand Thoughts」楽しみ!
そしてWQXRのサイトには英語記事ですがクロノス・カルテットのCDおすすめの10枚の記事がありました。CD購入の際には是非参考に。この中だとBlack Angelsがやっぱり基本かな、ある意味。クラシックからちょっと外にでたところだと楽しく聞けるNuevoやエキゾチックなFloodplainもおすすめ。
今日の一曲: ジョージ・クラム 「Black Angels」第1部「Departure」より「Threnody I: Night of the Elementic Insects」
クロノス・カルテットの始まりの始まりだったクラムの「Black Angels」。David Harringtonがこの曲を聴いて「これは弾かずにはいられない」発動、そこから最初のリハーサルが実現し、次も続けられるといいな、来週も続けられるといいな、が積み重なり40年のクロノスの歴史になったたそう。
その40年の中でいろんな音楽がクロノスのアンサンブルとしての性質・キャラクターを形作り、広げて新しい形にしていますが、この「Black Angels」の時点でも方向性はかなり決まってたように思われます。
従来の弦楽四重奏曲と違って「Black Angels」はエレキ弦楽器を使ったりアンプを使ったり、さらにはグラスハーモニカや銅鑼なども使い、弦楽器自体の音も従来の音色に限らず特殊奏法を使って耳障りとも思える音を出したり。今のクロノスにとってある意味基本になっている特徴ですね。
ただこの曲で求められる性質には従来の弦楽四重奏と共通するもの(そしてより強く求められるもの)もあります。それは4人の奏者が一体となること。個々の奏者の音が違い、個々の動きが目立つピアノ三重奏や木管五重奏と違って弦楽四重奏や金管五重奏は似たような音の楽器が集まり、アンサンブルが一つの生き物として動くことが大事になってきます。
この曲もその「一つの生き物感」がほんと凄い!生き物というかもはや現実に存在しないクリーチャーですが(笑)独特の電気的な、非現実的なキャラクターを作り出すには4人全員の意志と動きがぴたっと(縦も横も)あってることは絶対条件。
それが特にこの曲の冒頭から痛感されますね。ちょっと聞きめちゃくちゃな音楽(というかノイズ)に聞こえますが、もちょっと聴き込むと全部計算済なのがものすごく分かります。ぱっと強弱が変わったり、同じフレーズが別の奏者に違う形で現れたり(それをまた奏者が同じように弾くのがすごい)。
Black Angels独特の特徴といえば数字のこだわり。「7」と「13」が様々な形で繰り返し繰り返し繰り返し出てきます。奏者が様々な言語で数字をコールすることもあれば、音符の数や長さ、はたまた休符の長さなんかにも表れています。
その数字のこだわりは楽譜(A3よりでっかいはず)を見ると一番よくわかるのですがなんせ楽譜が入手しにくい。耳で探してみるのも面白いですよ。特に冒頭はわかりやすく「7」があります。
(傾向として聞きやすい楽章よりノイジーで聞きにくい楽章に数字が多く隠れているような)
ちょっと初めましてはショッキングな曲かもしれませんがそこを超えるといろんなレベルで面白い曲です。前述数字の話だったり、トリッキーな楽章タイトルだったり、作曲家は何を考えているんだろう、と自分なりに考えてみるにもいい曲だったりします(クラム全般そうですが)。
なによりクラムの代表的な作品として、そしてクロノス・カルテットの代表的な演奏としてものすごくおすすめの曲です。
リンクはもちろんクロノスの演奏。ついでにショスタコーヴィチの弦楽四重奏第8番もお楽しみに。
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