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~名もない蛾と虹の錯乱~ 内の思いと外の色彩をつらつらと。
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MRC Great Performersシリーズ「Maxim Rysanov & Ashley Wass」感想
前々回のエントリーでAge of Wonders 3の次回(初)の拡張で新しい種族が複数追加されると書きましたがフォーラムで今回出るのはこれからいくつか種族が追加されるうちの第1弾として一つ、という指摘がありました。実際の公式開発ブログの本文を見てみるとそうも読めますね。どっちとも読めるんだけど一つと読むのが妥当かな。とりあえずFrostling説が強いですが楽しみにしてます。

さて、昨日はコンサートに行ってきました。おなじみMelbourne Recital Centreでは海外の音楽家を招いてGreat Performersというコンサートシリーズをやっていますが今回はビオラ奏者Maxim Rysanovが来豪ということで、しかもショスタコーヴィチのビオラソナタを演奏、ということで行かないわけにはいかないコンサートでした。

大学やアカデミーでやるコンサートだとビオラ(とピアノ)のコンサートってのは珍しくないのですが、プロレベルだとそもそものソロ演奏人口の少なさかそれとも人口が少なく室内楽・オケでの忙しさでかあんまり聴く機会がないような。
私は不思議な縁からビオラ弾きが周りに結構多く、ビオラという楽器とそのレパートリー(少ないけど!)に心底惚れ込んでいるので今回は本当に楽しみでした。

プログラムはこんな感じ。
2014 Great Performersシリーズ
Melbourne Recital Centre, Elisabeth Murdoch Hall
ビオラ:Maxim Rysanov、ピアノ:Ashley Wass
フランツ・シューベルト バイオリンとピアノのためのソナタ(ソナチネ)ト短調 D.408(M. Rysanov編曲)
ローベルト・シューマン バイオリンとピアノのためのソナタ第1番 op. 105(M. Katmis編曲)
セルゲイ・プロコフィエフ バレエ「ロミオとジュリエット」組曲より3曲(V. Borisovsky編曲)
(少女ジュリエット、騎士の踊り、マーキューシオ)
(休憩)
ドミトリ・ショスタコーヴィチ ビオラとピアノのためのソナタ op.147

今回のこのプログラムではショスタコ以外の3曲が元々別の楽器に書かれた曲の編曲。実際ビオラのためのレパートリーは(特に19世紀以前は)少なく、今でも編曲レパートリーはビオラのレパートリーで重要になっています(ということがちゃんとプログラムで説明してありました)。
ビオラで弾くことによって元々の曲にはない魅力が出てきたり、また別の物語になったり、そういうところがまた良いです。(一般的にビオラが弾くと渋さ、深さ、暗さが増す傾向があります。)

それが顕著に表れたのがシューマンのバイオリンソナタ。シューマンの作品によくある飛び翔るような曲調は(この曲の元自体は知らないですが)バイオリンでは正に燃えながら天を翔るようで、物理的でなく魂や感情、思考の音楽だなという感じがするのですが、このバイオリンソナタをビオラで弾くともうちょっと足が地に着くというか、飛んでっちゃわない感じが魅力的。ブレーキ書けた分燃える部分が増えてパワーが増す。
シューベルトの方はちょっと曲自体がぴんとこなかったのですがシューベルトにしては(ソナチネというどちらかというと小さなフォーマットで)軽い感じがモーツァルトのようで、それにほどよい暗さを維持するのがビオラの音のいいところかな。

プロコフィエフは前述2曲と違って元がオケ(しかも結構大きいオケ)の曲。それをビオラとピアノ2人でどう弾くかと思っていたらなかなかすごいアレンジでした。
ビオラって結構器用な楽器で音域も音色の幅もあり、しかもメロディーから超絶技巧から表現の深さもある楽器。そういった強みだけでなくビオラがオケや室内楽でとにかく伴奏の音型が強い、というのをソロに活かしたのがこのロミジュリの編曲でした。あんなパートやこんなパート、主旋律に限らずがんがんビオラのソロに弾かせてしまう大胆さ。弾く方にもかなり難しそう。でも聴き応えがあってものすごく楽しかったですしもっとビオラで聴きたい曲です。

それからビオラってちょっと音がくぐもったり重めだったりすところがあるのdすが、今回の演奏はこれだけ速い音、重音などを弾いてもずっとクリアで、特に重音(弓で弾いてもピチカートでも)の綺麗に同時に音が出てまっすぐ響くのが印象的でした。特に後述ショスタコでその強さが光りましたね。

そして今回のコンサートで唯一元からビオラのために書かれたショスタコーヴィチのビオラソナタ。ショスタコの最後の作品で、自分にとっても並ならぬ思い入れがある曲。今回生で聴く機会に出会えて本当によかった。(生で聴いたのが覚えてないな。第2楽章だけ友達と弾いたけど)

ちょこちょこ自分の思い描いてるショスタコと違うところはあれど素晴らしい演奏でした。
前述の演奏スタイルの魅力だったり、ショスタコの晩期らしい、ビオラらしい暗さと息の長さが美しく。曲が一つの世界で魂で、他にはない存在感がありました。
暗さといえばピアノの闇もよかったです。ビオラと別々に動く部分も多いながらビオラと同じ闇を語る、低音の質のショスタコらしさ。
アンサンブルとしても良かったのですが作品を通してちょくちょくあるビオラ一人の部分の間の取り方とか音のまっすぐさや姿勢などで作り上げる世界が印象強かったです。

ついでに言えば第3楽章の美しさはほんと前の日に見てきたアステカ展の生死観とすごい対照的でしたね。アステカの文化では自然死は9層の地獄行きで、そういう価値観とこのショスタコのビオラソナタのエンディングの「全うする」感じの差。長い間知ってる曲ですがこのタイミングでアステカ展に行ったことで新しい見方がやってくるとは。

ショスタコのビオラソナタは前述の通り自分にとって特別な曲で、それを語り出すとまた暴走が始まりそうで今はやめておきます。言葉で語れないことも多々ありますし。いつか弾きたいですし、それだけでなくいつか語れるようになりたい。
そしてまたビオラのコンサートに行きたいです。もっと20世紀以降のビオラレパートリーも聴きたいです。(今回聴いたRysanovも音の感じからするともっとそっちが聴きたいですし)

今日の一曲は後から調べたら結構びっくりしたこの曲。


今日の一曲: セルゲイ・プロコフィエフ バレエ「ロミオとジュリエット」組曲(V. Borisovskyによるビオラとピアノのための編曲)より「少女ジュリエット」



実は今回のプログラムによると演奏されるのは少女ジュリエット、騎士の踊り、ジュリエットの死の3曲とあったのですが実際の演奏を聴いてみたら最後がマーキューシオでフィニッシュで。
つまりは元々3曲のみを選んで編曲したんじゃなくてバレエの一部を何曲か編曲したということなんだな、と思って調べてみたらみつかったのがこのリンクした録音
元のバレエの半分以上カバーしてるじゃないですか!どんだけ頑張ってビオラとピアノのため(一部ビオラ2台とピアノのため)に編曲したんだ!(汗)

ロミジュリは例えば作曲家自身によってオケのため、ピアノのための組曲に仕立てられた編曲もありますがそういう場合って割と元のバレエでの物語がちょこちょこっと進む分とかカットする場合も多く。
ただこのビオラとピアノのための編曲は割とカット部分が少なく流れが元々のバレエに近いままになってる箇所が多い。
しかもそのカットしないのが元々のバレエの版に近づけるためではなくカットしなかった部分でビオラの魅力と器量をさらに色々披露してしまおうというものすごいアレンジ。見事に付加価値が付いてきます。

少女ジュリエットはオケの弦楽器の各楽器のオーディションでも課題として登場することがあるほど技巧が問われる曲。オケでないんで若干テンポ落としてクリアさを維持する自由もありますがそれでも難しい。前述のとおりビオラはちょっと音がくぐもりますしね。
ただ速いパッセージも和音も(ジュリエットのドレスを表す)メロディーも、また主旋律でないところも全て魅せてくれるのがこの曲。ビオラって凄い!と驚きっぱなしです。

もちろんこの曲だけでなく他の曲もビオラという楽器をフルに使う面白い&素晴らしいアレンジになってます。某携帯会社のCMなどでも有名な「騎士の踊り」もしっかり聴き応えがある曲になってものすごく気に入ってます。
ビオラのために書かれた曲の素晴らしさももちろんですがこういったビオラ愛とビオラの魅力を引き出す曲も大好きです。
両方のレパートリーからの魅力的な曲の演奏でもっとビオラに惚れて欲しい!


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