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~名もない蛾と虹の錯乱~ 内の思いと外の色彩をつらつらと。
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When anxiety becomes an illness
本題に入る前に一つ。
この一連の災害のなかで日本にいたときに住んでいた福島県いわき市のTwitterハッシュタグ(#iwaki)をフォローしています。
最近一部の地域で水道が使えるようになったり、ガソリンスタンドが機能するようになったり物資が届いたりとだんだんツイートがポジティブなものになってきたり、切羽詰まったツイートが比較的に少なくなってきたり、ツイートの間隔が長くなってきたりと少しずつ良い方向に向き始めているようです。
風評被害、ガソリン不足など課題も多いのですが少し安心しています。
いわきだけでなく他のエリアにもまだ目の前のことで手一杯の人がたくさんいると思います。今日を明日へ少しずつでも繋げていける力を、少しでも心が安まる時を願っています。

もちょっと早くやっときゃよかったエントリーその2。不安障害についてです。初め取り扱うので全般的な、緒言として受け取っていただけると嬉しいです。

不安障害には全般性不安障害、パニック障害、そして最近特に注目が集まっている急性ストレス障害(ASD)や心的外傷後ストレス障害(PTSD)、強迫神経症などが含まれます。
(気分障害と同じく症状により集められた疾患群ですね)
カテゴリー全体としては不安障害は珍しくないです。主疾患だけではなく合併症、さらに他の身体・精神疾患において不安障害の症状の一部がみられることもよくあります。
(私も不安障害を患ったわけではないですが鬱の症状のなかに不安障害の症状がちょっと現れた時期もありました)

不安、というものは誰もが経験するものです。
将来のことだったり、自分や周りの人になにか悪いことが起こった時など・・・
不安というのは一種の警戒状態でもあります。文字通り「不安」を感じて落ち着かなかったり、不安の対象が頭から離れなかったり、最悪のケースを考えてしまったり。興奮したり、いらいらしたり、混乱したように、コントロールを失った、狂ってしまうように感じたり。
不安は気持ちや思考だけでなく、身体的にも表れます。例えば震え、そして貧乏揺すりやその場で歩き回るのような反復的な動き、そして心拍数が上がったり汗を掻いたり呼吸数が上がったり。

警戒の状態、というのは生物が危機に陥ったとき本能的に「戦うか逃げるか」の判断をなるべく速く行うために交感神経が働く状態です。戦うにしても逃げるしても素早く動くことが求められるので心拍を上げたりその対象に意識が集中する・・・ということらしく。

先ほど書きましたようにこれらは普通に暮らしていてなんらかの危機に陥ったときに誰にでも自然に起こる現象です。
ただし、こういった不安の状態が通常の度合いを超え、コントロールできなくなり、日常生活に支障をきたす場合があります。これが不安障害です。
(精神疾患の定義ってどれもあいまいなものですがやはり「日常生活に支障をきたす」のが治療を行うかどうかの決め手ではないでしょうか。)

不安障害にも先ほどのようにいろいろな種類があります。
分類の基準としては例えば症状が急性であるか、持続的なものか、あと症状が起こるきっかけが存在するかなどが考慮されます。

ある特定のものに恐怖を覚え、その対象をみたりすることで不安症状を発症する「恐怖症」(広場恐怖症、閉所恐怖症など)。
特定の出来事以来長期的にその出来事のフラッシュバックや悪夢などを経験するPTSD(そしてこのもっと急性的・短期間なバージョンがASDですね)。
急性的・突然の不安症状(パニック症状)を経験するパニック障害。
身の回りの様々なことに不安を抱くGAD。
特定の不安思考に支配されて特定の行動(儀式的なものである場合が多い)をとらないと不安になってしまう脅迫神経症。
そして以前取り上げました摂食障害でも不安障害のエレメントは強くみられます。
(大変ざっくりした説明ですみません)

不安障害の症状・治療には厄介というか、難しい要素がいくつかあります。
まず一つは身体症状、ことに過呼吸。
不安の引き金に出会った際不安を感じ、先ほど書きました身体反応が起きます。呼吸が浅くなり、苦しくなるために呼吸をもっとしよう、と身体が反応するわけです。ただ、そうすることで過呼吸が起き、さらに苦しくなり。
同時に苦しい、という感覚から死ぬのではないか、心臓発作が起こるのではないかという思考が生じ、さらに不安を煽り、呼吸が浅くなり・・・というネガティブスパイラルに陥るそうです。これがいわゆるパニック症状で。
ここで「大丈夫、この発作じゃ死なない」「心臓発作じゃない」という思考でスパイラルを断ち切ることが必要なのですが、もちろん簡単じゃないです。
(パニック症状に限っては急性かつ短期間なので10分ほど、もちょっと長く?で収まるそうです)

もう一つが不安を感じるメカニズムとなっている思考の不合理さ。
特に強迫神経症が分かりやすいかなあ。手を洗わないと全てにばい菌がついているようで不安になるケースだと、確かにいろんなものに色んなばい菌はついていますがそれが自分に害をなす、というところが理不尽だったり。
全般不安症(GAD)でもほとんどといって起こりえない最悪のケースを想定して不安になったり、という傾向の裏にはそういった認知・思考のゆがみがあります。

さらに不安の引き金を避ける行動、「回避」も問題です。
一見自然な行動に見えますが、不安の対象を避けることで恐怖・不安を増幅させる効果があるのです。
もちろん不安の対象と対面していると不安を感じますが、「逃げる」のでなく「戦略的な退却」というスタンスをとることは推奨されています。本能のまま恐怖を感じて逃げるのではなく、なるべく冷静に考えていつか向き合うことを心に念じて遠ざかる、ということらしいですが・・・

他にも不安障害に関連する症状として不眠(落ち着かなくて睡眠導入に問題がある、睡眠が浅いなど)も多くみられますし、さらに全般性不安障害などでは不安状態が続くため慢性的に緊張が起き、肩こりや頭痛として表れることも多いそうです。

不安障害の発症には様々な要因があります。
先ほどもありました思考のゆがみを起こしやすい性格というのもありますし、普段はなんともなくともストレスをきっかけに(ストレスに対応するスキルを持ち合わせていない、など)発症したりもします。
そのストレスの源の一つとして災害が挙げられます。PTSDももちろんそうですが、他の不安障害を引き起こすことももちろんあります。(ただもちろん災害などのストレスを経験した人が全員不安障害を発症するとは限りません。)

不安障害の治療について。
もちろん薬物治療もあります。不眠が本当にしんどい!という場合や不安症状がどうしても抑えられない、原因が見つからないまま苦しんでいる場合などは薬の助けを借りる場合もあります。
が、睡眠薬にみられる依存性、そして薬を症状から回避することに使ってしまう可能性などを考慮しても薬に頼るのは必ずしもベストと言えません。さらに症状を抑えることは根本的に病気を治療することと同じではありません。一時的な対応であり、病気が起こるのを防ぐには不安の原因を特定し、それを改善したりすることが必要です。

なので不安障害には認知行動療法が用いられる事が多いです。
内容はこないだの自己ケアについてのエントリー(不安障害を食い止めることとも通じますね、このエントリーの内容は)とかぶるところが多いのですが・・・
不安を起こしている引き金を見つけ、不安対象と不安症状をつなぐ思考・認知のゆがみを直したり。
先ほどの「この発作で死ぬことはない」と自分に言い聞かせるのも一つですね。
そして自分の感覚(身体)でなく、自分の思考がどうなっているかに注目する、ということもここに含まれます。
症状をやり過ごすことで「大丈夫なんだ」と改めて自覚することも大切です。

さらに特定の対象に対して恐怖・不安を抱く場合はその対象と徐々に向き合う(もちろん医師のガイダンスにそって)ことも大切になってきます。英語ではExposure therapyというのですが、不安の引き金に対する条件反応を「大丈夫」の積み重ねで段階的に慣らしていく、というかその繋がりを解いていくというものです。
これ最初に読んだとき絶対つらいだろうなーと思いました。でも対象から逃げ続けて動きがとれなくなる(広場恐怖症・社会恐怖症の場合は家にこもったり)、そして不安や恐怖の症状を感じ続けるだけでなく増幅するのはもっと辛いものなので・・・
とっても大変なんだな、といつも思います。

最後に、心、身体の緊張をほぐし、不眠を和らげるにはリラクゼーション法も有効です。
病院で毎日やってたのですが、最初にいったときに爆睡してしまったので何も学べず・・・(汗)
なので別の機会に扱いたいと思います。もちろん方法は一つではありませんし。

直接被災している人だけではなく、もっと多くの人が通常よりも大きなストレスにさらされている今、心や体への影響が少しでも食い止められることを何よりも願っています。
(もちろん災害時以外でも、ですよ!)


今日の一曲: アルヴォ・ペルト 「Summa」



なによりも「落ち着く」曲を、ということでのチョイス。
アルヴォ・ペルトは以前紹介したと思いますがミニマル・ミュージックの作曲家(ヨーロッパスタイル)の中でもよく知られた、親しみやすい音楽を書きます。
彼が良く使う弦楽の音はまるで「呼吸」そのもの。だから今回不安障害の話をするに当たって選んだということもあります。

Summaは名前でもちょっと分かるかしら?ガーシュインの「Porgy & Bess」の「Summertime」のメロディーをモチーフに書かれているらしく。最初の0.5秒くらいで分かる方もいるかな?

昔名古屋博物館で「無限音階」といって永遠に登り続けるように錯覚して聞こえる音がありましたが、ペルトの音楽にも似たような効果があります。
繰り返しによって無限に広い音楽の空間が表れる、という感覚でしょうか。
どこか浮遊感があって、驚きや不安要素を忘れて身体と心を任せられる、穏やかで透明な音楽。
本当に自然で、空気のような、先ほど書きました「呼吸のような」音楽です。

そしてミニマル・ミュージックにみられる繰り返しってものすごく心地良い物があって。
その繰り返しでもしかしたら良いこと眠りに誘ってくれるかも?
(私はたまにそうなんですけどあんまり不眠で悩んだことはないので参考にならないと思われます・・・)

そういった効果を期待しなくても純粋に本当に美しい音楽です。
あとなんか「お、計算されてるな?」と思う部分があって(ミニマル・ミュージックは計算要素が強いのですが印象としてはそんなに計算が前に出てくるわけではありません。特にヨーロッパのミニマル・ミュージックは)。
この音楽の絶妙な「落ちてき様」は心地良いですわ~計算なければできないでしょ!という気味の良さもあり(笑)

全部ひっくるめて、そして全部抜きにしてもいい曲なので是非、お勧めです。


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